茅野蕭々譯「リルケ詩抄」正規表現版「第一詩集」「冠せられた夢」(一八九七年) 「夢みる(二十八章の中)」「一三」 / 「冠せられた夢」~了
一三
灰白な天、總べての色は
氣づかはしさうに褪せてしまつた。
遠く――ただ一つ眞赤な線が
燃えてる鞭の傷跡のやう。
怪しい反射が消えては現はれる。
そして空氣には
死につつある薔薇の香のやうな
また耐(こら)へてゐる涕泣のやうなものが……
[やぶちゃん注:「涕泣」「ていきふ」。]
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