茅野蕭々譯「リルケ詩抄」正規表現版「第一詩集」「基督降誕節」(一八九八年) 「基督降誕節」
基督降誕節
(一八九八年)
基督降誕節
風は冬の森で雪片の群を
羊飼のやうに逐つてゐる。
多くの樅の木は、間もなく
敬虔に、また燭光で
神聖になるを豫感して、耳を傾け、
白い路の方へ枝を延ばす――用意し、
風を防ぎながら、華やかな
その一夜に向つて生育つ。
[やぶちゃん注:六行目「白い路の方へ枝を延ばす――用意し、」のダッシュは、底本では一字分しかないが、これは誤植と断じ、特異的に補正した。岩波文庫の校注には、これに就いての注は、ない。
「基督降誕節」ドイツ語の「Wikisource」のここに原詩があるが、その原題は‘ Advent ’(音写「アドベントゥ」)である。当該ウィキによれば(下線太字は私が附した)、『アドベント(Advent)は、キリスト教西方教会においてイエス・キリストの降誕を待ち望む期間のことである。日本語では待降節(たいこうせつ)、降臨節(こうりんせつ)、または待誕節(たいたんせつ)という。教派によって名称が異なり、主にカトリックや福音主義教会(ルター派)では待降節、聖公会では降臨節と呼ぶ』。『アドベントという単語は「到来」を意味するラテン語Adventus(=アドベントゥス)から来たもので、「キリストの到来」のことである』。ギリシャ『語の「エピファネイア(顕現)」と同義で、キリスト教においては、アドベントは人間世界へのキリストの到来、そして、キリストの再臨(ギリシア語のパルーシアに相当)を表現する語として用いられる』。『西方教会では』、『教会の』一『年は待降節から始まる』十一月三十日の『「聖アンデレの日」に最も近い日曜日からクリスマス』・『イブまでの約』四『週間で、最も早い年で』十一月二十七日、『遅い年でも』十二月三日に『に始まる』。五『世紀後半に、クリスマス前の断食の時期として、聖マルティヌスの日が開始日と定められたが、後にグレゴリウス』Ⅰ『世の時代に』、四『回の主日と定められた。最初のアドベントを待降節第一主日、もしくは降臨節第一主日と呼び、その後、第二、第三、第四と主日が続く』。『正教会では、アドベントという概念はない』。『正教会では』、『復活大祭および聖神降臨祭が教会暦の節目とされ、アドベントを基準に教会暦を数えることはせず』、十一月十四日から『クリスマスイブまでの』四十『日間』、『「使徒聖フィリップ(フィリポ、ピリポ、フィリポス)の斎」が行われる』。『これを英語圏などでアドベントと呼ぶことがある』但し、『日本の正教会でこの時期を公式にアドベント等と呼ぶことはない』。『正教会の暦は本来』、『ユリウス暦であるが、日本ハリストス正教会ではクリスマスをグレゴリオ暦で行う教会があるため、その場合は「フィリップの斎」の期間が短縮される』、但し、『クリスマスの前後の主日は特別な一連の祭を行う』とあった。]
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