茅野蕭々譯「リルケ詩抄」正規表現版「第一詩集」「冠せられた夢」(一八九七年) 「愛する(二十二章の中)」「二二」 /「冠せられた夢」(一八九七年)~了
二二
長いことだ――長いことだ……
何時――と私には全く云はれない……
鐘が響いた、雲雀がうたつた、――
心臟が幸福に鼓動した。
天は若い森の傾斜の上に澄み渡り、
リラは花を持つてゐた。
それから日曜著の少女が、すらりと、
驚異の間に充ちた眼……
長いことだ――長いことだ……
[やぶちゃん注:「何時」「いつ」。
「リラ」原文(ドイツ語の「Wikisource」の、ここの「XXII」で確認出来る)“Flieder”(ネイティヴ音写「フリィダー」)は、双子葉植物綱モクセイ目モクセイ科ハシドイ属ムラサキハシドイ(紫丁香花)Syringa vulgaris 。和名より、フランス語の「リラ」(Lilas)、或いは、英語の「ライラック」(Lilac)の方が親しい。当該ウィキに『花冠の先は普通』四『つに裂けているが、まれに』五『つに裂けているものがあり、これは「ラッキーライラック」と呼ばれ、恋のまじないに使われる』とあった。ブログ「日々是好日 とっつあんの雑記帳」の『初夏の花(^^♪見つけると幸運と言われ、恋が叶うという言い伝えもある「ラッキーライラック」』に、『ライラックの花びらは通常』四『枚ですが、四つ葉のクローバーのように珍しいライラック(花びらが』五『枚のラッキー』・『ライラック』( Lucky Lilac )『)が存在します。ラッキー』・『ライラックは、見つけると幸運と言われていますし、恋が叶うという言い伝えもあるとか!?』。『ちなみにライラックの花言葉は、紫色が「恋愛の最初の感情」、「初恋」と「恋の芽生え」、白色が「青春のよろこび」、「無邪気」と「若さ」だそうです』とあった。
「日曜著」「にちやうぎ」。日曜着。言わずもがな、教会へ礼拝に行く際の正装服。]
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