茅野蕭々譯「リルケ詩抄」正規表現版「舊詩集」 (私は晝と夢との間に住む。……)
私は晝と夢との間に住む。
其處には心の熱い子供がまどろみ、
老人は夕ぐれに坐つて
竃は燃えてその部屋を照らしてゐる。
私は晝と夢との間に住む。
其處には夕の鐘が澄み渡つて消えゆき
少女等は餘韻に捕はれて
疲れて泉の緣にもたれてゐる。
一本の菩提樹が私の愛する樹、
その中に默つてゐるあらゆる夏は
その數千の枝の中に再び動いて
また晝と夜との間に番をする。
[やぶちゃん注:「竃」「かまど」。
「夕」「ゆふべ」と訓じておく。
「緣」先行する訳詩では、総て「へり」とルビしている。]
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