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2025/01/18

和漢三才圖會卷第八十七 山果類 橙

 

Daidai

[やぶちゃん注:よく見ると、右の中央の実が三つ生っている枝には、ちゃんと棘(とげ)が、三本、描かれてある。枝ごと折れて、家の塀の庇に引っ掛かった果実が、描かれるなど、趣向が施されてある。]

 

かぶす   金毬 鵠殻

     【和名安倍太知波奈】

        俗云加布須

        又云太伊太伊

だいだい

 

本綱橙木高枝葉不甚類橘亦有刺其葉有兩刻缺如兩

段其実大者如𰤸頗似柚經霜早熟色黃皮厚蹙衂如沸

馥郁┏橙 橘    晚熟耐久
  ┃ 乃 屬之大者
  ┗柚 柑    早黃難留

[やぶちゃん字注:二行目の「𰤸」は「盌」(ワン)の異体字。橘と橙の対比部分は、原本では大きな丸括弧〔 ( 〕であるが、かく、した。]

橙皮【苦辛溫】可以𤋱衣可以芼鮮可以和𦵔醢可以爲醬虀

 可𮔉煎可以糖製【名之橙丁】可以𮔉制【名之橙膏】嗅之則香食

 之則美誠佳果也今止以爲果宿酒未解者食之速醒

  六帖わきも子にあはて久しくむましたのあへたちばなの苔おふる迠

△按橙樹大者高丈余許周過於尺嫩時有刺老則無剌

 其葉匾大似乳柑而短背色淡五月開小白花【橘柑橙柚花皆

 相似而小白花】凡歴八年者結實形圓其氣苦臭霜後黃熟

 其瓣苦微酸不堪食至春色濃耐久夏復變青新舊不

 可辨故俗呼名代代雖不噉而以爲歳始嘉祝果乾枯

 者經年不敗皮硬褐色用爲佩腰之具

 春月摘之破瓣漸汁乾粒粒離如覆盆子和沙糖食之

 至夏月則瓣中汁自枯竭每核皆生芽白根食之亦佳

 未離枝果中生芽者異物也

 凡用橙皮𤋱烟甚辛臭香能避蚊仍名加不須蚊𤋱之

 訓下畧也又乾橙皮用爲倭方疝氣藥也然本草謂消

 痰下氣利隔寛中解酒之功不謂爲肝膽疝氣藥而倭

 知其效驗亦妙也不唯橙如萍蓬草治折傷無花果解

 魚毒青鵐解諸毒或番椒治小鳥之病山𣾰治金魚之

 病之類不勝計誰人始試之耶

唐橙【加良加不須】葉似橙而微長其實正黃色皮厚理宻而形

 長團味酸微苦

△按此乃眞橙也近年希有之尋常稱橙者乃本草所謂

 有一種氣臭者是也凡橙葉本有刻缺爲叚如見果蒂

 乳柑柚温州橘櫠椵類皆然也

 𮔉柑柑子包橘金柑之類葉微窄而無叚狹長

 

   *

  

かぶす   金毬《きんきう》 鵠殻《こくかく》

     【和名、「安倍太知波奈《あべたちばな》」。】

        俗、云ふ、「加布須《かぶす》」。

        又、云ふ、「太伊太伊《だいだい》」。

だいだい

 

「本綱」に曰はく、『橙《たう》≪の≫木、高く、枝・葉、甚《はなはだ》、橘《きつ》に類《るゐ》せず。亦、刺《とげ》、有り。其の葉、兩《ふたつ》≪の≫刻缺《きざみかけ》[やぶちゃん注:東洋文庫訳のルビは『きれこみ』。サイト「花しらべ 花図鑑」の「ダイダイ」の、この写真を参照されたい。]、有り、≪恰(あたか)も、葉に、≫兩《ふたつ》≪の≫段《だん》のごとし。其の実、大なる者、𰤸(わん)[やぶちゃん注:蓋を持たない椀。]のごとく、頗《すこぶ》る、柚《ゆ》[やぶちゃん注:何度も注している通り、中国語の「柚」は、古くから、東南アジア・中国南部・台湾などを原産とするミカン属ザボン Citrus maxima を指す。]に似たり。霜を經て、早く、熟す。色、黃。皮、厚し。蹙-衂《しゆくぢく》[やぶちゃん注:強烈な香気で、鼻が曲がるほどであることを言う。「衂」は元来、「鼻血」を意味する感じである。]≪にして≫、沸《ふつす》がごとく、馥郁《ふくいく》たり。』≪と≫。

[やぶちゃん注:以下、改行し、中央の共通項は、繰り返して、示す。全部引用によるパッチワークであるが、引用符は五月蠅いだけなので、附さなかった(無論、「本草綱目」のパッチワークではあるが)。ブラウザの不具合を考えて、それぞれ、一行を短くして、二行で組んだ。]

┏橙は、橘の屬の大なる者≪にして≫、晚《おそ》く
┃熟して、久《ひさしく》≪藏すに≫耐ふ。
┗柚は、柑の屬の大なる者≪にして≫、早《はや》く
 黃≪に熟≫して《✕→而れども》、留《とど》め難し。

『橙皮《たうひ》【苦辛、溫。】以つて、衣を𤋱(ふす)ぶべく、以つて、芼鮮《もうせん》[やぶちゃん注:「芼」は野菜、「鮮」は肉(魚・鳥獣のそれ)を指す。]≪に≫和すべく、以つて、醬虀《しやうさい》[やぶちゃん注:塩と塩水で漬け込んだ野菜。]に爲《な》す。以つて、𮔉煎《みついり》すべく、以つて、糖製《たうせい》[やぶちゃん注:砂糖煮。]【之れを「橙丁《たうてい》」と名づく。】すべく、以つて、𮔉制《みつせい》[やぶちゃん注:蜂蜜漬け。]【之れを「橙膏《たうかう》」と名づく。】すべく、之れを嗅《か》げば、則《すなはち》、香《かんばし》く、之れを食へば、則、美《うま》く、誠に佳《よき》果《くわ》なり。今、止(たゞ)以つて、果と爲≪して≫、宿酒《ふつかゑひ》、未だ解せざる者、之れを食へば、速《すみやか》に醒(さ)む。』≪と≫。

 「六帖」

   わぎも子《こ》に

     あはで久しく

    むましたの

       あへたちばなの

      苔《こけ》おふる迠《まで》

[やぶちゃん注:「六帖」は、平安中期に成立した類題和歌集「古今和歌六帖」のこと。全六巻。編者・成立年ともに未詳。「万葉集」・「古今集」・「後撰集」などの歌約四千五百首を、歳時・天象・地儀・人事・動植物などの二十五項・五百十六題に分類したもの。「第六 木」に所収する。「日文研」の「和歌データベース」のそれの、ガイド・ナンバー「04260」で確認した。]

△按ずるに、橙《だいだい》の樹、大なる者、高さ、丈余許《ばかり》、周(めぐ)り、尺に過ぐ。嫩(わか)き時は、刺《とげ、》、有り、老(ひね)ては、則ち、剌、無し。其の葉、匾《ひらた》く、大《おほきく》、「乳柑(くねんぼ)」に似て、短く、背の色、淡し。五月、小≪さき≫白花を開く【橘《たちばな》・柑《かうじ》・橙・柚《ゆず》の花、皆、相ひ似て、小さき白き花なり。】。凡そ、八年を歴《へ》る者、實を結ぶ。形、圓《まろく》、其の氣、苦臭《にがくさ》く、霜の後《のち》、黃熟《わうじゆく》す。其の瓣《なかご》[やぶちゃん注:ここは果肉の意。]苦《にがく》、微《やや》、酸《すつぱく》≪して≫、食ふに堪へず。春に至《いたり》て、色、濃(こ)く、久《ひさ》に≪藏するに≫耐へ、夏、復た、青きに、變ず。新舊、辨ずべからず。故《ゆゑ》、俗、呼んで、「代代」と名づく。噉(くら)はざると雖も、以つて、歳始《としはじめ》の嘉祝の果と爲《なす》。乾枯《かはきかれ》≪たる≫者、年を經て、敗《くさら》ず、皮、硬く、褐色≪たり≫。用《もちひ》て、佩腰(ねつけ)[やぶちゃん注:根付。]の具と爲《なす》。

 春月、之れを摘(むし)りて、瓣《なかご》を破り、漸《やうや》く、汁《しる》、乾き、粒粒《つぶつぶ》、離《はなれ》て、「覆盆子(いちご)」[やぶちゃん注:双子葉植物綱バラ目バラ科バラ亜科キイチゴ(木苺)属 RubusIdaeobatus )亜属ヨーロッパキイチゴ Rubus idaeus 小アジア原産で、中国にも、古くから広く自生していた。European Raspberry。フランス語で、frambose(フランボワアズ)。]のごとし。沙糖に和して、之れを食ふ。夏月に至《いたり》ては、則《すなはち》、瓣の中、汁、自《おのづか》ら、枯《かれ》竭《つくし》、核《さね》每《ごと》≪に≫[やぶちゃん注:レ点はないが、返して読んだ。]、皆、芽《め》、白≪き≫根を生《しやうじ》、之れも、食ふも亦、佳《よし》。未だ、枝を離れずして、果中に芽(め)を生ずること、≪果類中の≫異物なり。

 凡《およそ》、橙皮を用《もちひ》て、烟《けぶり》に𤋱《ふす》≪ぶれば≫、甚《はなはだ》、辛臭《からくさ》き香《かをり》、能《よく》、蚊を避(さ)く。仍《より》て、「加不須《かぶす》」と名づく、「蚊𤋱《かふすべ》」の訓≪の≫下畧なり。又、乾橙皮《かんたうひ》、用て、倭方《わはう》、疝氣《せんき》[やぶちゃん注:急性の腹痛。]の藥と爲《なす》なり。然《しかれ》ども、「本草≪綱目≫」には、『痰を消し、氣を下《くだ》し、隔《かく》を利し、中《ちゆう》を寛《くつろげ》、酒を解《げ》する』の功を謂《いひ》て、肝膽・疝氣の藥《くすり》爲《な》ることを、謂はず。而《しか》≪れども≫、倭に、其の效驗《かうげん》を知るも、亦、妙なり[やぶちゃん注:素晴らしい事実である。]。≪これ≫、唯《ひと》り、橙《だいだい》のみならず、「萍蓬草(かはほね)」の、折-傷(うちみ)を治し、「無花果(いちじゆく)」の、魚毒を解し、「青鵐(あをじ)」の諸毒を解すがごとく、或いは、「番椒(たふがらし[やぶちゃん注:ママ。])」、小鳥《ことり》の病《やまひ》を治し、「山𣾰《やまうるし》」、金魚の病《やまひ》を治するの類《たぐひ》、勝《かつ》て、計(かぞ)へず。誰人《たれびと》か、始《はじめ》て、之れを、試《こころみ》るや。

[やぶちゃん注:『「本草≪綱目≫」には、『痰を消し、氣を下《くだ》し、隔《かく》を利し、中《ちゆう》を寛《くつろげ》、酒を解《げ》する』の功を謂《いひ》』「本草綱目」の「卷三十」の「果之二」の「橙」の項(「漢籍リポジトリ」のここ[075-37a]以降)の「主治」の時珍が記した、『糖作橙丁甘美消痰下氣利膈寛中解酒』に基づく。後回しになったが、前半部の引用も、そこのパッチワークである。

「萍蓬草(かはほね)」の、折-傷(うちみ)を治し』双子葉植物綱スイレン目スイレン科コウホネ属コウホネ Nuphar japonica私の「大和本草卷之八 草之四 水草類 萍蓬草(かはほね) (コウホネ)」を参照されたい。序でに、挿絵のある「大和本草諸品圖上 カハホネ・河ヂサ (コウホネ・カワチシャ)」もリンクさせておく。

『「無花果(いちじゆく)」の、魚毒を解し』スイレン目スイレン科コウホネ属コウホネ Nuphar japonica私の「大和本草卷之八 草之四 水草類 萍蓬草(かはほね) (コウホネ)」を参照されたい。

『「青鵐(あをじ)」の諸毒を解す』私の「和漢三才圖會第四十二 原禽類 蒿雀(あをじ) (アオジ)」を見られたい。本邦で普通に見かけるのは、スズメ目スズメ亜目ホオジロ科ホオジロ属アオジ亜種アオジ Emberiza podocephala personata 。そこで、良安は、『肉【甘、溫。】 燒きて、性を存〔(そん)〕ぜし〔は〕、能く血を止む〔るに〕神効有り。又、能く毒を解し、食傷を治す。』と述べている。ただ、流石に、現行では、野鳥の肉の効能は、本邦では憚られることなので、見出せない。嘘だと思うなら、Googleで「アオジの肉 解毒」をやって御覧な。頭に出るのは、なんと! 私の上記の記事だから、さ。流石は、中国! 「百度百科」の同種の記事に(一部の簡体字を正字化し、記号も換えた)、『入部位』に、『肉或全体』とあり、『性味』は『味甘、性温。』、『功效』は『壮陽、解毒』、『主治』に『用于陽痿、酒中毒』(「陽痿」は「勃起不全」(!)のこと)、『相関配伍』(「配伍」は薬物を配合することを言う)「1」『治酒中毒:青頭』(アオジの中文異名)一『只。去毛及腸雜焦研面、白水冲服』(「冲服」は「服用」の意)『(「全國中草編」)』とし、「2」『治陽痿。青雀肉煮熟食。連續食用。(「全國中草藥彙編」)、『用法用量』に『内服。適量、煮食。或焦研面、白水冲服』とある。

『「番椒(たふがらし)」、小鳥《ことり》の病《やまひ》を治し』ムクロジ目ミカン科サンショウ属 Zanthoxylum 、及び、そのうちで、香辛料として使われるものを指すか、又は、ナス目ナス科トウガラシ属 Capsicum(タイプ種はトウガラシ Capsicum annuum )、或いは、コショウ目コショウ科コショウ属 Piper(タイプ種はコショウ Piper nigrum )を指す。まず、鳥はトウガラシを食べる。「YAHOO! JAPANニュース」の「唐辛子が辛いのは食べてもらうため!? 鳥と唐辛子の意外な関係性」に、『鳥類のカプサイシン受容体は哺乳類のものとは異なり、辛さに鈍感なことがわかっている。そのため、鳥は唐辛子を平気で食べることができる』とあり、サイト「中津動物病院グループ」の「飼い鳥の健康チェック」の「青菜」の項の最後に、『穀類には全くビタミンAが含まれていませんので、ピーマンやトウガラシ、にんじんや』、『その他の緑黄色野菜を時々与えることも必要です』とあった。

『「山𣾰《やまうるし》」、金魚の病《やまひ》を治する』ムクロジ目ウルシ科ウルシ属ヤマウルシ(山漆)Toxicodendron trichocarpum 。中文名は、同種の「維基百科」で、「毛漆樹」である。しかし、ネットでは、この事実は見当たらない。私のサイト版「和漢三才圖會 卷第四十八 魚類 河湖有鱗魚」の「金魚」にも、ウルシの効用は載っていない。『白楊皮を得れば、蝨〔しらみ〕を生ぜざるなり』とはあった。しかし、『「白楊皮」はヤナギ科ヤマナラシ属ハコヤナギ Populus sieboldii 。なお、ヨーロッパでは古くから、この樹の皮を膀胱炎や、老人の排尿困難等に処方してきた歴史があるらしい。それを金魚のいる水に浸せば、その滲出液の持つ薬効成分が、前二者とは対照的に、以下の金魚につくウオジラミを退治してくれる、という意味である』と私は注した。ウルシでは、ない。何か、御存知の方は、是非、御教授願いたい。

唐橙(からかぶす)【「加良加不須」。】葉、橙《だいだい》に似て、微《やや》、長く、其の實、正黃色。皮、厚く、理《すぢめ》、宻《みつ》にして、形、長く、團《まろし》。味、酸《すつぱく》、微《やや》、苦《にがし》。[やぶちゃん注:「唐橙」不詳。]

△按ずるに、此れ、乃《すなは》ち[やぶちゃん注:ここは、原本では「イ」と振っているが、「チ」の誤刻と断じて、特異的に訂した。]、眞《まこと》≪の≫橙《かぶす》なり。近年、希《まれ》に、之れ、有り。尋-常(よのつね)の、「橙《だいだい》」と稱する者、乃《すなはち》、「本草≪綱目≫」に所謂《いはゆ》る、『一種、氣、臭き者、有《あり》。』と云≪へる≫[やぶちゃん注:「云」は送り仮名にある。]、是れなり。凡そ、橙の葉、本《もと》に、刻缺《きざみかけ》、有《あり》て、叚《だん》を爲《なす》≪こと≫、果《くわ》の蒂(へた)を見るごとし。「乳柑(くねんぼ)」・「柚《ゆず》」・「温州橘(う《しう》きつ)」・「櫠椵(さんず)」の類《るゐ》、皆、然りなり。

[やぶちゃん注:「櫠椵(さんず)」なかなか、この種が何であるかは、難しい。次の次の項が「櫠椵 ゆこう」で、そこで考証を行う。

「𮔉柑」・「柑子《かうじ》」・「包橘(たちばな)」・「金柑《きんかん》」の類《るゐ》の葉、微《やや》、窄(すぼ)くして、叚《だん》、無く、狹《せば》く、長し。

 

[やぶちゃん注:これは、

双子葉植物綱ムクロジ目ミカン科ミカン属ダイダイ Citrus aurantium

である。中文名は「維基百科」の同種に拠れば、「代代橙」(この現代の中文名称は、日本からの逆輸入である。……しかし……このページ……写真から、主な記載……殆んど……日本語版のそのマンマだぜ!?!……天下の中華が、こんなんで、いいのかッツ!?!)。当該ウィキを引く(注記号はカットした。必要を感じない箇所は指示せずに省略した)。本邦の漢字表記は『橙、臭橙、回青橙』で、『名前が「代々」に通じることから縁起の良い果物とされ、正月の注連飾りや鏡餅に乗せるのでよく知られる。酸味のある未熟果の果汁はポン酢などの調味料に、熟した果皮は漢方薬にも使われる』。『和名ダイダイは、一つの株に数年代の果実がついていて見られる特徴から、「代々栄える」の意味で「ダイダイ」と呼ばれるようになったとされる』。『また、「回青橙」とも呼ばれる』。『インド、ヒマラヤが原産。日本へは中国から渡来した。また、ヨーロッパへも伝わり、「ビターオレンジ」あるいは「サワーオレンジ」として栽培されている』。『日本では静岡県の伊豆半島や和歌山県の田辺市が主産地。その多くは正月飾り用であったが、近年は消費が落ち込んでいるため、ポン酢などに加工されるようにもなった』。『高さ』四~五『メートル』『になる常緑小高木で、枝には刺がある。花期は初夏』で、五~六月。『枝の先に』一『輪から数輪の』五『弁ある白い花が咲き、冬に果実が黄熟する。果実の色は橙色と呼ばれる。葉柄は翼状になっており、葉身との境にくびれがある』(割注したリンク先を参照のこと)。『果実は直径』七~八『センチメートル』『になり、冬を過ぎても木から落ちず、そのまま木に置くと』二~三『年は枝についている。冬期は橙黄色となるが、収穫せずに残しておくと』、『翌年の夏にはまた』、『緑色に色づき、再び冬が来ると』、『その実は橙黄色になる』。十二月頃、『熟した果実を採集し、鏡餅、注連飾りなど正月飾りに使用する。また、果汁は酢として料理に利用したり、薬用にもする』。『果実には、リモネン』(limoneneC10H16:柑橘類に含まれる代表的な単環式のモノテルペン(Monoterpene)))『を主成分とする精油、糖分、クエン酸、リンゴ酸、ヘスペリジン、ナリンギンなどのフラボノン、ビタミンAB群・Cなどを含んでいる。果皮には、リモネン、シトラルなどを成分とする精油や、配糖体、カロチン、キサントフィル、ペクチン、脂肪油、フラボノイド、ビタミンAB群・Cなどを含んでいる。ダイダイの精油には、ヒトの胃液の分泌を高める健胃作用があり、皮膚につけば』、『血行促進作用がある。精油以外の成分は滋養保健効果があるといわれている』。『酸味と苦味が強いため、直接食するのには適さない。マーマレードおよび調味料として利用される。緑色の未熟果の果汁は酸味が強く風味がいいことから、ポン酢の材料としても好まれる』。『北欧では、クリスマスのときに飲む グロッグ(グレッグ)』(デンマーク語及びノルウェー語:Gløgg)(グリューワイン)』(ドイツ語:Glühwein)『にダイダイを用いる。スウェーデンのレシピの特徴は使うスパイスの種類にあり、起源は風味の落ちたワインを調味するためである。また』、『あらかじめ』、『干しぶどうを湯で戻し、アーモンドとともに小さなグラスに入れて準備しておいて、供する時に』、『そこにホットワインを注ぐ点は』、『スウェーデンならでは』、『という』(この以下の箇所は、外国語を下手に訳した結果、日本語として読めないので、カットした)。

以下、「薬用」の項。『漢方では、熟した橙色の果実を縦に』四『つ切りして、果実の皮を採集して乾燥させたものを橙皮(とうひ)といい、日本薬局方にも収載され、去痰薬・健胃薬として用いられたり、橙皮チンキ、橙皮シロップ、苦味チンキなどの製薬原料にされている。また、未熟果実を乾燥させたものを枳実(きじつ)といい、芳香性苦味健胃、去痰、排膿、緩下薬として用いられる』。『民間療法で、食欲不振、消化不良、胃もたれに、橙皮を細かく刻んで』、『すり潰し、粉末状にしたものを』一『回量』一~二『グラムとして毎食後に服用する。ひび、あかぎれなどには、生の果汁を塗るとよく、あらかじめ肌にすり込んでおけば』、『予防に役立つと言われている』。『ダイダイの皮と果実はシネフリン』(synephrineC9H13NO2:数種の動植物が生成するアルカロイドの一つ)『という化合物を含む。これは生薬の麻黄(エフェドラ)』(裸子植物門グネツム綱 Gnetopsidaグネツム目マオウ科マオウ属シナマオウ(支那麻黄)Ephedra sinica )『に含まれる成分(エフェドリン)』(ephedrine:薬学者・化学者で、日本薬学会初代会頭を勤めた長井長義(弘化二(一八四五)年~昭和四(一九二九)年)が明治一八(一八八五)年、『麻黄からエフェドリンを発見。その後、これが大量に合成可能であることを証明した。これは、気管支喘息患者にとって、呼吸困難から救われる福音となった』(当該ウィキより引用)ことから、彼は「エフェドリンの長井」として知られる)『と類似の構造をもつ。交感神経・副交感神経混合型興奮作用を有していることから、この成分を加工したものが「シトラス」という名称でアメリカでダイエット用の健康食品として使用されているが、エフェドラと同様の作用を示すことから、副作用報告も出ている。なお、「体脂肪を燃焼する」、「運動機能を向上させる」などの、ヒトでの有効性については、信頼できるデータが十分ではない』。

『精油を採取した部分で呼び名が異なる。これらは香料として香水や化粧品、食品等に使用される。アロマテラピーにも用いられる』。『果皮から圧搾法また水蒸気蒸留法で採取された精油はオレンジ油、ビターオレンジ油、橙油と呼ばれる』。『枝葉を水蒸気蒸留して採取された精油は プチグレイン』(Petitgrain)『と呼ばれる』。

以下、「台木」の項。『ダイダイは耐寒性が強く、普通に植えた場合は枯れてしまう種類の柑橘類を接ぎ木で育てる時に』、『根』の側面を『これにすることで、寒い地域でも他の柑橘類を育てられるようになる』。『しかし、カンキツトリステザウイルス』(第四群(Ⅰ本鎖RNA +鎖)クロステロウイルス科 Closteroviridae クロステロウイルス属カンキツトリステザウイルス Citrus tristeza virus 当該ウィキによれば、『全世界で多大な農業被害を与えている』とし、学名の「トリステザ 」は、一九三〇『年代』、『このウイルスの被害を受けた南米の農家が名付けたもので、スペイン語・ポルトガル語で』「悲しみ」『を意味する。ウイルスの媒介は主にミカンクロアブラムシ Toxoptera citricida による』とある)『に感染しやすいことが問題となっている』。

以下、「文化」の項。「大坂冬の陣」の「博労淵(ばくろうぶち)の戦い」で、『砦の指揮官の薄田兼相』(すすきだかねすけ)『は遊女屋に行っている夜』、『徳川勢に突入され、砦を制圧されてしまった。そのため』、『「橙武者」とあだ名がつけられた。理由は』、

『だいだいは、なり大きく、かう類の內、色能きものにて候へども、正月のかざりより外、何の用にも立ち申さず候。さて此(かく)の如く名付け申し』

『(だいだいは大きくて色はいいが、正月の飾りにするよりなんの役にもたたない。だからそう名がついた)」』(「大坂陣山口休庵咄」)『という』とあった。]

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