茅野蕭々譯「リルケ詩抄」正規表現版「舊詩集」 (平(たひら)な國では期待(まちまうけ)てゐた。……)
平(たひら)な國では期待(まちまうけ)てゐた。
一度も來なかつた客をば。
氣づかはしげな花園は、なほ一度訊ねたが、
やがてその微笑は徐に萎びた。
暇な沼地には
夕暮に見すぼらしい並木。
林檎は枝に怖ぢおそれ、
どんな風もそれをうづかせる。
[やぶちゃん注:「徐に萎びた」「おもむろにしなびた」。]
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