茅野蕭々譯「リルケ詩抄」正規表現版「形象篇」「第一卷」 「秋の日」
秋 の 日
主よ、時です。夏は偉大でした。
あなたの影を日時計の上へ橫たへて下さい、
郊野へ風を放つて下さい。
最後の果實等に充ちるやうに命じ、
なほ彼等に南の二日を與へ、
彼等を完成へ押やり
また最後の甘さを重い葡萄へお入れ下さい。
今家のないものは最う家を立てませぬ、
今一人のものは長く一人で居るでせう、
眼ざめてゐて、讀み、長い手紙を書くでせう。
木の葉の散り動く時、不安に
竝樹の中を往來するでせう。
[やぶちゃん注:「郊野」「かうや」。
「往來」茅野は再版詩集で、この熟語に「ゆきき」とルビを振っている。]
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