茅野蕭々譯「リルケ詩抄」正規表現版「第一詩集」「冠せられた夢」(一八九七年) 「愛する(二十二章の中)」「二」
二
それは白菊の日であつた。
私はその重々しい華美(はでやか)さが恐しい位だつた……
その時、あなたが私の魂をとりに來た。
夜ふけに。
私は恐ろしかつた。あなたはやさしく靜に來た――
丁度私は夢であなたを思つてゐた。
あなたは來た。童話の歌のやうに靜に
夜が鳴響いた……
[やぶちゃん注:「鳴響いた」再版「詩集」で「鳴り響いた」としている。]
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