茅野蕭々譯「リルケ詩抄」正規表現版「舊詩集」 (私は今いつまでも同じ路を行く。……)
私は今いつまでも同じ路を行く。
薔薇の花が丁度身仕度をしてゐる
花園に沿ひながら。
しかし私は感じる、未だ長い長い間
總べてが私の迎へではない。
感謝も響もなく私は
薔薇のそばを通らなくてはならない。
私は贈物の與へられない、
行列を始める人に過ぎない。
もつと幸福な人々が來るまで、
光つた靜かな容姿が――
すると薔薇は風にふかれて
赤い旗のやうに開くだらう。
[やぶちゃん注:本篇は、再版「詩集」では、多数の手入れがされてあることが、岩波文庫の校注にある(五件)。確かに、以上の訳詩は、日本語として、大きく二箇所で、流れに違和感がある。ここで、正字で全体をそれに従って、書き変えられたものを再現しておく。
*
私は今いつまでも同じ路を行く。
薔薇の花が丁度身仕度をしてゐる
花園に沿ひながら。
しかし私は感じる、未だ長い長い間
總べてが私を迎へはしない。
感謝も響もなく私は
薔薇のそばを通らなくてはならない。
私は、贈物の與へられない、
行列を始める人に過ぎない。
もつと幸福な人々が
光つた靜かな容姿が――來るまでに、
薔薇は風にふかれて
赤い旗のやうに開くだらう。
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