茅野蕭々譯「リルケ詩抄」正規表現版「舊詩集」 (傾聽と驚きのみで、靜であれ、……)
傾聽と驚きのみで、靜であれ、
私の深い深い生命よ。
風が欲することを、
白樺の震へぬ前に知る爲に。
そして若し沈默がお前に語つたら、
お前の官能にうち勝たせろ、
總べての氣息に身を與へろ、從へ。
氣息はお前を愛し搖ぶるだらう。
さうしたら、私の魂よ、廣くなれ、廣くなれ、
お前に人生が成功するやうに。
晴衣のやうに擴げろ、
物を思ふ事物の上へ。
[やぶちゃん注:「靜」「せい」と音読みすべきであろう。
「搖ぶる」再版「詩集」では、「ゆすぶる」とルビを振っている。]
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