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2025/01/05

和漢三才圖會卷第八十七 山果類 君遷子

 

Mamegaki

 

ぶどうがき 㮕棗 牛奶柹

さるかき  藍棗 下香柹

      紅梬棗

君遷子

      【俗云蒲萄柹

        又云猿柹】

キュン ツヱン ツウ

 

本綱君遭子其木髙𠀋餘類柹而葉長結實小而長狀如

牛奶熟則紫黑色中有汁味甘支濇

一種小圓如指頭大者名丁香柹味尤美

△按君遷子俗云蒲萄柹也其實附生葉背朶梗而狀似

 柹有蒂大如蒲萄味澀經霜熟紫黑色稍甘

 

   *

 

ぶどうがき 㮕棗《なんさう》

さるがき  牛奶柹《ぎうだいし》

      紅藍棗《こうらんさう》

      下香柹《ちやうかうし》

      梬棗《えいさう》

君遷子

      【俗、云ふ、「葡萄柹《ぶだうがき》」。

        又、云ふ、「猿柹《さるがき》。」。】

キュン ツヱン ツウ

 

「本綱」に曰はく、『君遷子《くんせんし》、其の木、髙さ𠀋餘。柹に類《るゐ》して、葉、長《ながく》、實を實を結≪ぶも≫、小にして、長く、狀《かたち》、牛≪の≫奶《ちち》[やぶちゃん注:乳房。]のごとし。熟する時は[やぶちゃん注:「時」は送り仮名にある。]、則《すなはち》、紫黑色。中に、汁、有り。味、甘《あまく》、濇《しぶし》。』≪と≫。

『一種、小≪さく≫圓《まどか》≪に≫して、指頭《ひとさしゆび》のごとくなる、大いさ≪の≫者、「丁香柹《ちやうかうし》」と名づく。味、尤《もつとも》、美なり。』≪と≫。

△按ずるに、君遷子は、俗、云《いふ》、「葡萄柹《ぶだうがき》」なり。其の實、葉の背、朶-梗《ふさえだ》に附≪きて≫生ず。狀《かたち》、柹に似て、蒂、有り。大いさ、葡萄のごとし。味、澀《しぶ》し。霜を經て、熟≪し≫、紫黑色。稍《やや》、甘し。

 

[やぶちゃん注:これは、 東北アジア原産の、

双子葉植物綱カキノキ目カキノキ科カキノキ属マメガキ(豆柿)Diospyros lotus

である。和名異名に「シナノガキ(信濃柿)」「ブドウガキ(葡萄柿)」がある。当該ウィキを引く(注記号はカットした)。『種小名はオデュッセイアに登場するロートスの木』(当該ウィキによれば、英語は『Lotus tree』で、『ギリシア神話の』二『つの話に登場する植物である。ホメーロスの叙事詩』「オデュッセイア」『では、心地よい眠りに誘う実をつける木で、ロートパゴス族と呼ばれる島民の唯一の食物として描かれている。彼らがロートスの実を食べると、彼らは友人や家のことも忘れ、故郷の土地に戻って安逸な生活を送るという願望も失ってしまったという』。『この植物の候補としては』この『マメガキや』、『北アフリカとガベス湾の島が原産で、ナツメに似た実をつける』野生ナツメであるバラ目クロウメモドキ科ハマナツメ連ナツメ属ジズフス・ロータス『 Ziziphus lotusであるとも言われている』。『オウィディウスの』「変身物語」では、『ニュンペー』(妖精)『のロティスは、海と水の神ネプトゥーヌスの美しい娘で』あったが、『プリアーポスの暴力的な求愛から逃れるため、彼女は神の助けを求め、神は、彼女をロートスの木に変えることで』、『その祈りに答えたとされる』。『ロートスの木は』「旧約聖書」の「ヨブ記」(私が聖書中、最も優れた作品と思っているものである)の第四十章第二十一~二十二節『でも、ベヒモスと呼ばれる巨大な生物について書かれた詩の中で言及されている』とある)『に由来する。英名の「date plum」は』、『デーツ』(単子葉植物綱ヤシ目ヤシ科ナツメヤシ属ナツメヤシ Phoenix dactylifera の実を指す英語)『とプラム』(Plum:双子葉植物綱バラ亜綱バラ目バラ科スモモ亜科スモモ属スモモ亜属 Prunus の実を指す英語)『を合わせたような味がすることに由来する。別名は小柿』。『葉は互生し、裏面が白味』が、か『かる』。六『月頃に黄味掛かった白色の花を着ける。雄花は雄しべ』十六本、『雌花は雌しべ』一本『と』、『退化した雄しべ』八本『を持つ。秋には小さな液果が生り、熟すと』、『黄から黒紫に色付く』。『液果は』、『霜が降りる頃に渋が抜ける』ため、『一部』で『食用にも供せられるが、主に未熟果が柿渋の採取に用いられる。 また、幹は稀に』(正倉院御物でも知られるカキ材)『黒柿(くろがき)が取れる』とある。画像はShu Suehiro氏のサイト「ボタニックガーデン」の「まめがき(豆柿)」のページがよい。画像を見ると、「葡萄柿」の謂いが、よく納得される。

 「本草綱目」の引用は、「卷三十」の「果之二」の「君遷子」の項(「漢籍リポジトリ」のここ[075-23b]以降)のパッチワークである。短いので、一部に手を加えて、以下に示しておく。

   *

君遷子【拾遺】

 釋名 【千金作軟棗】【廣志音逞】牛奶柹【名苑】丁香柹【日用】紅藍棗【齊民要術其時珍曰君遷子名始見於左思吳都賦而著狀於劉欣期交州記名義莫詳㮕棗其形似棗而軟也司馬光名苑云君遷子似馬奶卽今牛奶柹也以形得名崔豹古今注云牛奶柹卽㮕棗葉如柹子亦如柹而小唐宋諸家不知君遷㮕棗牛奶柹皆一物故詳證之】

 集解【藏器曰君遷子生海南樹髙丈餘子中有汁如乳汁甜美呉都賦平仲君遷是也時珍曰君遷卽㮕棗其木類柹而葉長但結實小而長狀如牛奶乾熟則紫黑色一種小圓如指頂大者名丁香柹味尤美救荒本草以為羊矢棗誤矣其樹接大柹最佳廣志云㮕棗小柹也肌細而厚少核可以供御卽此】

 氣味甘濇平無毒主治止消渴去煩熱令人潤澤【藏器】

 鎮心久服悅人顔色令人輕健【珣】

   *

この「釋名」の時珍の解説を見ると、「君遷子」の初出は晉の左思が十年を費やして構想した「三都賦」(「蜀都賦」・「吳都賦」・「魏都賦」)の「吳都賦」である(因みに、この賦が完成して、人々が競って伝写したため、洛陽の紙価が高くなったとされ、「洛陽の紙価を高らしむ」の故事成句の元となった)が、「君遷子」そのものの故事は不明らしい。

「丁香柹《ちやうかうし》」「丁香」は、所謂、「クローブ」(Clove)のことで、バラ亜綱フトモモ目フトモモ科フトモモ属チョウジノキ Syzygium aromaticum である。一般に知られた加工材のそれは、本種の蕾を乾燥したものを指し、漢方薬で芳香健胃剤として用いる生薬の一つであり、また、現行の肉料理等にも、よく使用される香料である。先行する「丁子」を見られたい。この柿の香りが、似ているからか。]

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