茅野蕭々譯「リルケ詩抄」正規表現版「形象篇」「第一卷」 「隣人」
隣 人
知らない提琴よ、お前は私の跡を追ふのか。
幾つの遠い都會で、お前の寂しい夜が、
私の夜に話したらう。
お前を奏でるのは多數の人か、または一人か。
凡ての大きな都會には。
お前なしでは流の中に消えさうな
そんな人たちが住むのか。
そして何故いつも私に出逢ふのだらう。
何故私はいつも、
生活はあらゆる物の重みより重いと
臆病のお前を强ひて歌はせ、云はせる
人々の隣人とはなるだらう。
[やぶちゃん注:「提琴」バイオリンのこと。]
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