茅野蕭々譯「リルケ詩抄」正規表現版 「巡禮の歌」(一九〇一年) (私の眼を消せ、私はお前を見ることが出來る。……)
私の眼を消(け)せ、私はお前を見ることが出來る。
私の耳を塞げ、私はお前を聞くことが出來る。
そして足は無くてもお前の處へゆくことが出來る。
口がなくともお前に誓ふことが出來る。
私の腕を折れ、私は手でするやうに
私の心でお前をつかむ。
心臟を止めよ、私の額が脈うつだらう。
私の額へ火事を投げれば、
私は私の血でお前を擔ふだらう。
[やぶちゃん注:「擔ふ」「になふ」。]
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