茅野蕭々譯「リルケ詩抄」正規表現版「時禱篇」(若き兄弟の聲。……)
若き兄弟の聲。
私は零れちる。こぼれ散る、
指の間から漏れる砂のやうに。
私は俄に澤山の官覺を持つ、
而も皆な異ふやうに渴いてゐる。
私は數百箇所が
腫れて痛むのを感じる。
一番痛むのは心臟の眞中だ。
死にたい。私を獨にしておけ。
脈搏が碎け散るほど、
悲しくなれるだらうと
私は思ふのだ。
[やぶちゃん注:「官覺」再版「詩集」では、「感官」に書き変えてある。「感官」の方が躓かない。]
« 和漢三才圖會卷第八十七 山果類 枇杷 | トップページ | 茅野蕭々譯「リルケ詩抄」正規表現版「時禱篇」(何うなさります、神樣、私が死にましたら、……) »