茅野蕭々譯「リルケ詩抄」正規表現版「第一詩集」「冠せられた夢」(一八九七年) 「夢みる(二十八章の中)」「八」
八
あの上に漂ふことの出來る
あの雲が羨ましい。
日の當つた草原に
黑い影を投げたこと。
太陽を暗くするなんて、
なんて大膽に出來たらう。
地は光を欲しがつて、
雲の飛ぶ下で恨むでるのに。
あの太陽の金色の光の潮を
私も遮つてやりたいな。
一瞬間であらうとも。
雲よ、お前が羨ましい。
[やぶちゃん注:「潮」「うしほ」と訓じておく。]
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