茅野蕭々譯「リルケ詩抄」正規表現版「舊詩集」 (はじめての薔薇が眼ざめた。……)
はじめての薔薇が眼ざめた。
その匂は臆病に
ごく小聲の笑のやう。
燕のやうな平らな翼で、
さつと日をかすめた。
そしてお前の側では
未だ凡てが氣づかはしい。
ものの光もおづおづと、
どの音も末だ馴れないで、
夜は新らし過ぎ、
また美は羞耻(はぢらひ)だ。
[やぶちゃん注:「笑」「わらひ」。]
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