茅野蕭々譯「リルケ詩抄」正規表現版「時禱篇」(若したつた一度全く靜になつたら、……)
若したつた一度全く靜になつたら、
偶然が沈默し、
隣の笑も、自分の感官の作る騷音も、
覺めてゐる私を妨げなかつたら――
千倍の思想で
あなたを端まで考へ、
(微笑一つの間だけ)あなたを我物にされるのだが。
總べての生命にあなたを
感謝のやうに與へるため。
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