阿部正信編揖「駿國雜志」(内/怪奇談)正規表現版・オリジナル注附 「卷之二十四上」「馬骨治病馬」
[やぶちゃん注:底本・凡例その他は、初回の冒頭注を見られたい。底本の本項はここ。]
「馬骨治病馬《うまのほね びやうばを ぢす》」 有渡郡《うどのこほり》丸子驛《まりこえき》泉が谷《いづみがや》【小地名】にあり。熊谷次郞右衞門《くまがいじらうゑもん》と云《いふ》百姓あり。此家の入口、右の柱の上、梁の臍《へそ》に馬首の骨をかけたり。是《これ》名馬摺墨《するすみ》の骨にして、梶原源太左衞門尉景季の乘る處也。六百餘年相傳《さうでん》して、此家火災なし。病馬あれば、爰に繫ぐ事一兩日にして病《やまひ》愈ゆ。相傳の由來は家記《かき/けき》を失《うしなひ》て知れず。云云。
[やぶちゃん注:「有渡郡丸子驛泉が谷【小地名】」「ひなたGPS」で、現在の静岡県静岡市駿河区丸子の、ここに、旧新の地名で「泉ヶ谷」を見出せた。旧東海道の丸子宿はここ(グーグル・マップ・データ航空写真)。
「是名馬摺墨の骨にして、梶原源太左衞門尉景季の乘る處也」私の好きな景季と摺墨の話は、多くの記事を書いているが、話しを知らない方には、一番いいのは、かなり私の注が長いが、『柳田國男 山島民譚集 原文・訓読・附オリジナル注「馬蹄石」(20) 「馬塚ハ馬ノ神」(2)』がお薦めである。是非、読まれたい。
「家記」その家に伝承される先人・父祖等の日記・記録類。平安以後、儀式などの先例を知るために重用された。]
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