茅野蕭々譯「リルケ詩抄」正規表現版「形象篇」「第一卷」 「花嫁」
花 嫁
私を呼んで下さい、戀人よ、私を聲高く呼んで下さい。
あなたの花嫁をこんなに長く窗際に立たせてはいけません。
篠懸のふるい並木に
夕暮は最う番をして居りません。
並木は空虛です。
あなたが來て私を夜の家に
あなたの聲で閉ぢ込めないと、
私は自分の兩手から自分を
暗碧色の花園ヘ
注ぎ出してしまひますよ……
[やぶちゃん注:「篠懸」これで「すずかけ」と読む。双子葉植物綱ヤマモガシ目スズカケノキ科スズカケノキ属スズカケノキPlatanus orientalis に同定して良いだろう。これは、同種の上位タクソンにあたるウィキの「プラタナス」(=スズカケノキ属 Platanus )のページにある、『スズカケノキ Platanus orientalis 』の項に、『主にヨーロッパの種類で、種小名 orientalis(オリエンタリス)は、原産地がトルコ、ペルシア、ギリシアなどだったことに由来する』とあったからである。なお、本邦の漢字表記では「鈴掛の木」ともするが、寧ろ、我々の方が、種としては誤って認識している可能性が比較的に強い。何故なら、ウィキの「スズカケノキ」には、スズカケノキは、『属の学名であるプラタナスと呼ばれることが多いが、日本で見かけるプラタナスは、本種よりもモミジバスズカケノキ』( Platanus × hispanica )『であることが多』く、『日本では街路樹として、モミジバスズカケノキが多く使われる』が、『モミジバスズカケノキは、スズカケノキとアメリカスズカケノキ』( Platanus occidentalis )『との雑種である』とあるからである。]
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