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2025/01/21

茅野蕭々譯「リルケ詩抄」正規表現版「形象篇」「第一卷」 「ものおぢ」

 

 ものおぢ

 

うら枯れた森に鳥の聲が一つ。

それはその枯れた森では無意味に見える。

その圓い鳥の聲は、

それを作つた瞬間の中に

大空のやうに廣く枯れた森の上に休む。

萬物は軟かいこの叫びの中に入り、

全地は總べて音なくその中に橫はるやうに見える。

大風もその中へたわみ入るやうだ。

さうして步み續けようとする分(ミニツツ)は、

何人もそれで死ななくてはならない

物を知つてるやうに、蒼ざめて、靜に、

その叫びから踏み出した。

 

[やぶちゃん注:「分(ミニツツ)」ドイツ語の時間・角度の単位である「分」はMinuteで、音写は「ミヌーテ」であるから、ここは、英語のminuteの音写「ミニッツ」を振ったのもの。]

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