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2025/01/20

茅野蕭々譯「リルケ詩抄」正規表現版「形象篇」「第一卷」 「少女の憂鬱」

 

 少女の憂鬱

 

古い格言のやうに、

若い騎士が思ひだされる。

 

騎士は來た。森の中では、折々あんなやうに

大嵐が來てお前を包む。

騎士は去つた。時あつて祈禱の最中に、

大きな鐘の祝福が……

あんなやうにお前をひとり殘してゆく。

そんな時お前は靜けさの中へ叫ばうとするが、

でも唯全く小聲に

冷たい手巾に深く泣き入る。

 

武裝をつけて遠くゆく

若い騎士が思ひだされる。

 

その微笑の軟かさ、こまやかさは、

ふるい象牙の上の輝きのやうだ、

懷鄕の憂のやうだ、うす暗い村落の

クリスマスの雪降りのやうだ、

眞珠のみに取圍まれる土耳古石のやうだ、

好もしい書物の上の

月の光のやうだ。

 

[やぶちゃん注:「手巾」同時代人の芥川龍之介(と言っても、茅野の方が九歳年上だが)の「手巾(ハンケチ)」(大正五(一九一六)年初出。茅野の、この詩集は昭和二(一九二七)年刊)に倣って、そう読んでおく。

「土耳古石」「トルコいし」。ドイツ語では、“Türkis”(音写「チャキーズ」)。当該ウィキによれば、『英語では turquoise (ターコイズ)と言い、フランス語の pierre turquoise (トルコの石)に由来する。』とあり、『純度の高いものは鮮やかな青色だが、不純物に鉄を含むと緑色に近くなる。青色のものほど上級とされるが、チベットでは緑色のトルコ石が珍重される』らしい。騎士の色なら、青だろう。]

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