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2025/02/20

和漢三才圖會卷第八十七 山果類 椎子

 

Si

 

[やぶちゃん注:左右下方に「椎子」の「どんぐり」を三個、描いてある。これは、良安の描いたものであるから、形状から見ても、マテバシイのように私には見えるが、良安は、評言で実の色を「紫褐色」と言っており、その色は、マテバシイではなく、シリブカガシとなる。しかし、形状を見るに、これは、ずんぐり型のシリブカガシのそれではなく、断然、私が食に於いて偏愛するマテバシイのそれである。

 

し ひ   鐵櫧

      【和名之比】

椎子【音埀】

      椎字音爲和名

 

本綱椎子似鉤栗而圓黑木亦黒子味甜謂之鐵櫧

△按椎木葉似樫而鋸齒細強冬亦葉不落其子長尖似

 筆頭紫褐色仁白色作兩片味甘丹後伯耆之産佳參

 州之產圓短此合本草所謂似鉤栗而圓黑者凡椎木

 心似白樫而粗理微黑似堅易蛀不堪爲屋柱唯用纎

 長木爲椽之用【俗云椎丸太】

椎木皮【俗云加之波木】用染魚網

[やぶちゃん注:「網」は、原本では、(つくり)が、縦長型の「囗」の中に「メ」の入った字体であるが、表示出来ないので、「網」とした。]

 

   *

 

し ひ   鐵櫧《てつしよ》

      【和名、「之比」。】

椎子【音「埀」。】

      「椎」の字音を和名と爲す。

 

「本綱」に曰はく、『椎子《すいし》は、鉤栗(いちい[やぶちゃん注:ママ。ここは「クリツ」と音読みすべきである。思ったのだが、これ、或いは、本邦の「椎」を俗では、例えば、「市比」と書いて「しひ」と読んでいるのを、発音のまま、「いちい」とルビしてしまったものではなかろうか?])に似て、圓《まろ》く黑く、木も亦、黒く、子《み》の味、甜《あま》し。之れを「鐵櫧」と謂ふ。』と[やぶちゃん注:非常に珍しいことに、引用の「と」が振られてある。]。

△按ずるに、椎《しひ》の木の葉は、樫《かし》に似て、鋸齒≪有りて≫、細《ほそき》に≪して≫強く、冬、亦、葉、落ちず。其の子《み》、長く尖り、筆≪の≫頭《かしら》に似て、紫褐色。仁《にん》、白色。兩《ふたつながら》≪の≫片を作《な》す。味、甘し。丹後・伯耆の産、佳し。參州の產、圓く、短し。此れ、「本草≪綱目≫」に所謂《いはゆ》る、「鉤栗《くりつ》」に似て、圓く、黑しと云ふ者に合ふ。凡そ、椎の木、心[やぶちゃん注:木の「芯」に同じ。]は、「白樫(しらかし)」に似て、粗く、理(きめ)、微《やや》黑≪し≫。堅《かたき》に似て《✕→るも》、蛀(むしい)り易く、屋の柱と爲(す)るに堪へず。唯《ただ》、纎長(ほそ《なが》)き木を用《もちひ》て、椽(たるき)の用と爲す≪のみ≫【俗に云ふ、「椎丸太《しひまるた》」。】

椎の木皮《きかは》【俗に云ふ、「加之波木《かしはき》」。】用て、魚網を染む。

 

[やぶちゃん注:最初に言っておくと、「本草綱目」の記載は、実は、「漢籍リポジトリ」の「卷三十」の「果之二」の「櫧子」([075-56b]以下)の「集解」の中の、「時珍曰」の中の、

   *

其色黑者名鐵櫧

   *

という七文字しかないのである。而して、この「鐵櫧」は、私は、既に「櫧木」の考証で、

双子葉植物綱ブナ目ブナ科コナラ属コナラ亜属 Mesobalanus 節アラカシ(粗樫)Quercus glauca 

に同定比定した。但し、今回、中文サイトを、いくら探しても、「鐵櫧」は見当たらなかった。ウィキの「アラカシ」と、「維基百科」の「青剛櫟」(別名に似たような「鐵椆」がある)を見られたいが、唯一、「Weiblio辞書」の日外アソシエーツの「植物名辞典」のここに、

   *

鉄櫧

読み方:クロガシ(kurogashi

アラカシの別称。

ブナ科の常緑高木、園芸植物

学名 Quercus glauca

   *

とあるのを、確認は出来た(学名が斜体になっていないのはママ)。但し、これは本邦での漢字表記であるから、決定打とは言えない)。今回は、ウィキの「アラカシ」を引いておく(注記号はカットした。太字・下線は私が附した)。しかし、注意されたいが、

アラカシは、本項の「椎子」=シイ属とは、「どんぐり」仲間ではあるものの、全くの別種である

ので注意されたい。『アラカシ(粗樫』『)は』、『ドングリのなる木で、その年の秋に熟す。別名で、クロガシ、ナラバガシ、ホソミノアラカシ、ヒロハアラカシ、ナガバアラカシともいう。山陰地方で「カシ」というと、一般に本種アラカシを指す』。『常緑広葉樹の高木』。『高さは』十~二十『メートル』『になる。樹皮は黒っぽい灰色で、成木でも表面に裂け目や割れ目などはなく、ほぼ平滑である。若い木では、樹皮が褐色を帯びることがある。若枝は紫褐色で、皮目がある』。『樹形は広葉樹に特徴的な丸みを帯びたものである。大径木では根が若干であるが』、『板根(英:buttress root)のようになる』。『葉は互生し、長さ』五~十三『センチメートル』、『幅』三~六センチメートル『の長楕円形から倒卵状長楕円形で先端が尖る。葉柄は長さ』一・五~二・五センチメートル。『葉身は革質で硬く、葉脈の側脈は』八~十一『対あり、葉縁の中央から先端にかけて粗い鋸歯があり、下部は全縁であることが特徴的である。葉の表面はつやのある緑色で、裏面は粉を吹いたように毛が多く、白味を帯びている。芽吹きの頃の新葉は、赤褐色でよく目立つ。冬芽は長卵形で、重なり合った多数の芽鱗に包まれて葉の付け根につき、枝先の頂芽は頂生側芽を伴って複数つく』。『開花期は』四~五『月で、雌雄同株。雄花序は長さ』五~十センチメートルで、『垂れ下がり、雌花序は上部の葉腋につく。果期は』十~十一月で、『果実は長さ』十五~二十『ミリメートル』『の楕円形をした堅果(いわゆるドングリ)で、その年の秋に熟す。殻斗(ドングリの基部についているもの。いわゆる「皿」、「椀」「帽子」などと呼ばれる部分)には環状の模様が出る。 コナラ属でも』、『日本産ナラ類は』、『この部分が鱗状の模様となっており見分けられる』。『発芽は地下性(英:hypogeal germination)で』、『子葉は地中に残したまま本葉が地上に出てくる。このタイプの子葉は栄養分の貯蔵と吸出しに特化し、最初に根を伸長させ、次に本葉を展開させ』、『自身は地中で枯死する』。『ブナ科の堅果の内部には子葉の他に未発達の胚珠の干からびたものが』五『つ入っている。この』五『つが』、『どこの位置にあるのかはブナ科』Fagaceae『内での分類にも使用されている』。『他のブナ科樹木と同じく、菌類と樹木の根が共生して菌根を形成している。樹木にとっては菌根を形成することによって菌類が作り出す有機酸や抗生物質による栄養分の吸収促進や病原微生物の駆除等の利点があり、菌類にとっては樹木の光合成で合成された産物の一部を分けてもらうことができるという相利共生の関係があると考えられている。菌類の子実体は人間がキノコとして認識できる大きさに育つものが多く、中には食用にできるものもある。土壌中には菌根から菌糸を通して、同種他個体や他種植物に繋がる広大なネットワークが存在すると考えられている。外生菌根性の樹種にスギやニセアカシアが混生すると』、『菌根に負の影響を与えるという報告がある。土壌の腐植が増えると』、『根は長くなるが』、『細根が減少するという』。『花は地味なものであり、花粉は風媒(英:anemophily)される。風媒花はシダ植物の胞子散布の様で原始的な花だと思われることもあるが、ブナ科やイネ科は進化の末にこの形質を獲得したとみられている』。『種子は重力散布型であるが、動物の影響も大きい。カシのドングリは渋くて食べにくく、実際に有毒である。ツキノワグマやイノシシは唾液中にタンニンを中和する成分を持ち、しかもタンニンが多い種類のドングリを食べる時期だけ』、『中和成分を増加させることが報告されている。一般にブナ科樹木の発芽にはネズミが地中にドングリを埋めるという貯食行動によるものが大きいと見られている。ネズミがドングリをその場で食べるか、貯食するかは周囲の環境の差も大きい。ネズミもタンニンに耐性を持つが、常に耐性を持っているのではなく時期になると』、『徐々に体を馴化させて対応しており、馴化していない状態で食べさせると死亡率が高いという。イノシシが家畜化されたブタは例外として、その他のウシやウマなどではドングリ中毒(英:acorn poisoning)というのも知られている』。『新規侵入地へのカシの定着にはネズミが運ぶには長距離の分布地域もあり、カケス( Garrulus glandarius 、カラス科)の貯食行動が関与しているのが疑われる地域もある』。『菌根の種類、花粉の媒介、種子の散布様式という』三『つの事象は独立して進化してきたように見えるが、連携して進化してきたのではないかという説が近年提唱されている。外生菌根、風媒花、重力散布(および風散布)はいずれも同種が密集する状況ほど有利になりやすい形質であると考えられている』。『ドングリは昆虫の餌にもなっており、種子の死亡率としては動物以外にこちらも大きい。北海道における観察例ではクリシギゾウムシなどのシギゾウムシ類と、ハマキガ類が殆どである。この年の虫害率は全種子の』八『割、虫害による死亡率は同』七『割であった。虫害を受けても完全に死ぬわけでなく』、『一部は生存し発芽もするが、実生はやや小さいという。野外ではたいていのドングリは虫害を受けているため、これに対するネズミの反応も調べられている。ヒメネズミでの実験では』、『完食する場合は健全堅果の方を好むが、虫害果も食べないわけではない。巣へ運ぶ個数などは雌雄差が見られた』。『ドングリは』、『秋に地上に落ちるとすぐに根を伸ばし、春先には本葉を展開させる。形態節のように地下性の発芽様式をとり、子葉は地中のドングリ内に残る。ネズミは地下に残る子葉目当てに、掘り起こして捕食することがあり、初夏までの死因はこれが多いという。時期、および』、『過度な掘り起しが起きなければ』、『子葉の捕食自体は致命的でない場合もあると見られ、大きい種子を付けることで実生から遠ざけ』、『子葉に誘引する生存戦略なのではという説もある。前述のように虫害でも種子内部が完全には捕食されずに生き残る例が知られている』。『種子は落下後すぐに根を伸ばす性質から埋土種子や土壌シードバンク』(Soil seed bank:土壌中に含まれる種子(埋土種子)の集団のこと。「埋土種子集団」とも言う。通常、発芽能を持った種子の集団を指す)『は形成しないと見られている。戦略としては耐陰性の高い実生を地上に大量に用意し、ギャップの形成を待つ陰樹に多いタイプである。耐乾性はあり尾根筋にも定着できるが、条件の良い谷筋で優勢な群落を作ることが多い。これは重力散布になるドングリの影響もある。実生の耐陰性はツブラジイ(コジイ)より高く、イチイガシより若干低いと見られ、暗い林床では樹高成長よりも横に枝を伸ばし』、『光を求める樹形になるという。これはモミ属』(樅:裸子植物門マツ綱マツ目マツ科モミ属 Abies )『針葉樹などでも知られる。アラカシは気候的な極相種ではなく、後述のように土地的な条件で極相になると見られる』。『他の植物が嫌う石灰岩質の土壌にも適応する。菌根菌を摂取してやると定着しやすいという。変種アマミアラカシ』(奄美粗樫: Quercus glauca var.amamiana )『も石灰岩地に見られ、サンゴ礁が隆起してできた琉球石灰岩やこれを母材とする島尻マージ』(「マージ」は沖縄語で、同地では、「赤黄色土」と呼ばれる土壌が出来易く、この赤みがかった土を「マージ」と呼称する。特に、沖縄島南部や宮古島に分布するそれを、「島尻マージ」と呼び、暗い感じのする赤みがかった土で、弱アルカリ性の土壌であり、この土は甘藷やタバコなどの栽培に適しているとされる。以上は、こちらの記載に拠った)『が多い南西諸島の土壌に適応している。花崗岩の土壌(真砂土)にも適応する』。『クスノキ』(楠・樟:クスノキ目クスノキ科ニッケイ(肉桂)属クスノキ Cinnamomum camphora )『とアラカシでは乾燥時の戦略が違うという』。『実生更新の他に萌芽更新もよく行う』同属の『コナラ』( Quercus serrata )『が高齢になると』、『萌芽能力が著しく低下するのに対し、アラカシはあまり変わらないという』。『常緑ブナ科の葉はムラサキシジミ族(Tribe Arhopalini)のシジミチョウの食草である。日本産のこの仲間であるムラサキシジミ( Narathura japonica )、ルーミスシジミ( Panchala Ganesa )、ムラサキツバメ( Narathura bazalus )がいるが、いずれも食草が異なる。アラカシに付くのはムラサキシジミであり、この種は』、食性『が広く』、『他のカシ類も食べる。また、幼虫は体から蜜を分泌しアリと共生するというシジミチョウによく見られる生態をもつ。ムラサキシジミは近年分布を拡大しているが、天敵である寄生蜂よりも早く拡大しており、先端地域では全く寄生されない現象がみられるという』。『ナラ枯れ(ブナ科樹木萎凋病、英:Japanese oak wilt)は、本種をはじめ全国的にブナ科樹木の枯損被害をもたらしている病気である。原因は菌類(きのこ、カビ)による感染症であることが』、一九九八『年に日本人研究者らによって発表され、カシノナガキクイムシ』(鞘翅(コウチュウ)目多食(カブトムシ)亜目ゾウムシ上科ナガキクイムシ科ナガキクイムシ亜科 Platypus 属カシノナガキクイムシ Platypus quercivorus )『という昆虫によって媒介されていることが判明した。ミズナラやコナラはこの病気に対して特に感受性が強く、枯損被害が全国的に発生しており大きな問題になっている』。『マツ材線虫病およびナラ枯れの蔓延により、関東地方以西ではアカマツ・コナラ林からシイ・カシ林へと植生遷移が急速に進んでいる地域がある。これには増加するニホンジカの捕食圧の影響も言われており、シカが嫌う植物と母数の多い植物が優勢になっていくのではないかと推測されている』。『中国、台湾、朝鮮の済州島、アジア東南部、日本に分布し、日本においては、本州の宮城県以南・石川県以西、四国、九州、沖縄に分布する』。『カシの名前は「堅し木」に由来するという説があるほど、本種も硬く重い木材である。気乾比重は平均』〇・九『程度だが、成長の良い良材ほど』、『硬く重くなる。道管の配置による分類は放射孔材と呼ばれるもので、年輪は目立たない。また、辺材と心材の区別は不明瞭である。柾目にはトラのような模様(いわゆる杢)が現れ、これが美しいと評価されることが多い。杢は「虎斑」、「虎斑杢」、また見る角度によっては光の反射具合が異なり銀色に見えることから「銀杢」とも呼ばれる。また、板目面にはカシメ(樫目)と呼ばれるゴマ上の模様が見られる。これは放射組織が目立つためである。乾燥は難しく反りやすい』。『アラカシは萌芽能力が高く、定期的に何度も収穫可能であることから、燃料用としては非常に優れている。また、人里近くに生えること、硬く重い木材で火持ちが良いということも、薪や木炭として非常に優秀である。焼き方によって黒炭、白炭のどちらにも加工できる。宮崎県北部にはウバメガシではなく、アラカシを用いた白炭(備長炭)がある』。『材質はシラカシ』( Quercus myrsinaefolia )『やアカガシ』( Quercus acuta )『に劣るとされるが、建築材、農具や工具の柄、餅つきの杵などの他、日本酒の撥ね木搾りの主材に利用される』。『カシ類のドングリの中では』、『イチイガシが比較的渋みが少なく上質とされたが、アラカシも救荒植物として使われたという』。『西日本を含む温帯熱帯のアジア地域には似たような食文化・生活習慣が見られるとし、これを照葉樹が生えるような場所の文化ということで「照葉樹林文化論」というものがある。これは賛否両論で、有名な対抗説としてブナが生えるような寒冷の地域で発達した「ブナ帯文化論」がある。両説は元の意味を外れ、縄文時代の文化を』牽引『したのは西日本なのか』、『東日本なのかという文脈でしばしば用いられる。ブナ帯文化論は青森県の三内丸山遺跡のような縄文時代の巨大遺跡を根拠としていたが』、一九九〇『年代以降』、『九州でも縄文時代の大きな遺跡が見つかっている。また、地層中の花粉分析からは縄文時代の西日本では照葉樹(常緑広葉樹)ではなく、落葉広葉樹が優勢の時代が比較的長く続いていたといい、西日本の文化が東に伝わっていった可能性も指摘されている』。『アラカシは旺盛に水を吸い上げることから』、『葉を一枚とり、葉柄を着色溶液に浸して吸い上げさせ、着色具合を観察させるのに向くという』。『剪定にもよく耐えることから、庭木や生け垣にも用いられる。ただし、根が深く移植を嫌うので、前もって十分な根回しを要する。大きくなり』、『長寿命な点が評価され、寺社にもよく植えられており、後述の天然記念物のようにそのような場所は巨木が見られる』。『分布の北限に当たる宮城県で「要注目種」、福島県で「準絶滅危惧種」の指定を受けている。変種アマミアラカシは鹿児島県において、「分布特性上重要な種」として指定されている』。『コナラ属内の分類は従来』、『形態的特徴に基づき、殻斗の模様が鱗状のものをコナラ亜属(Subgen. Quercus )、環状のものをアカガシ亜属(Subgen. Cyclobalanopsis )と分けられてきたが、遺伝子的な系統に基づく他の分類が幾つか提唱されている』。以下、「種内変異」を六種揚げるが、これは、本項のサブの類似種記載であるので、カットする。

 お待たせした。私が跋渉中、必ず偏愛偏食する「シイの実」、本項の良安の言う「椎子」は、

ブナ目ブナ科シイ(椎)属 Castanopsis 及び、近縁種のマテバシイ(馬刀葉椎)属  Lithocarpus

で、本邦では、

スダジイ(すだ椎:別名ナガジイ(長椎)・イタジイ(板椎))Castanopsis sieboldii

ツブラジイ(円椎:別名コジイ(小椎))Castanopsis cuspidata

マテバシイ属マテバシイ Lithocarpus edulis

の三種である。なお、私が味として圧倒的に好むのは、スダジイである(近年、若い人たちは、これらが生食出来ることを知らないのが、甚だ多い。教師時代、校庭にあるそれらを、私が食べているのを見て、驚いていたのを、「騙されたと思って食べてごらん。フライパンで炒ると、諸君には、もっと食べやすくなるよ。」と教えて、生をあげたところ、「おいしい!」と驚いていたものであった。だいたい女生徒の方が、好奇心、大であった)。

★なお、原文の前の挿絵の「実」について、私が疑問を呈したことを、画像で見たい。思いの外、比較してあるページが、あまりない。やっと、個人サイト『~TAKAさんの~「山登り」と「ものづくり」』の「57.シイの実の採取、食べ方」で、三種の実=「椎の実」=シイ類の「どんぐり」の違い(私に言わせれば、一目瞭然!)を画像で見られる。

されば、まず、ウィキの「スダジイ」を引く(注記号はカットした。太字・下線は私が附した)。『普通、シイという場合には本種を指す。暖地の海岸近くの山野に生えるが、庭や公園、街路樹にも植えられる。果実は食べられる』。『暖地性照葉樹林を代表する樹種のひとつ。中陽樹〜陰樹であるため、適地では優占種として極相林の林冠部を形成する。また材が硬く、耐潮性が強く、丈夫であるため巨木になりやすい。日本では幹周が』十『メートルに達するにまで成長したものも確認されている』。『別名で、シイ、シイノキ、イタジイ、ナガジイ、ホソバスダジイとよばれる』。『常緑広葉樹の高木で、樹高』二十~三十『メートル』、『直径』一~一・五メートル『に達する。成長すると樹冠がドーム状に丸くなり、スダジイ林を上からみると、まるでブロッコリーが集まっているように見える』(YouTubeの「カモ~ンわたり」(Watari town Miyagi)氏の「県天然記念物スダジイから国天然記念物シイノキ」を見られたい)。『幹は黒褐色で直立し、若木の樹皮は滑らかであるが、成長すると』、『樹皮に縦の切れ目が入ることが特徴で、次第に深く割れる。若い枝は灰褐色をしている』。『葉は互生し、長さは』五~十五『センチメートル』『程度の広楕円形で、先端は細く尖る。葉質は革質で厚く、クチクラ層が発達する。葉縁の上半分に鋭い鋸歯があるが、個体によっては鋸歯が鈍く目立たない場合や、鋸歯が認められない場合もある。葉色は表側が濃緑色で、裏側が白色から淡茶褐色を呈する』。『開花期は初夏(』五『中旬』から六月頃)で、『雌雄同株。葉腋から穂状花序で雄花がよく目立ち、淡黄色の小型の花を密につける。雄花序は長さ』六~十二センチメートル、『雌花序は』、『ほぼ同じ長さで本年枝のわきに上向きに出る。虫媒花で甘い香りを放つ』。『果期は、花が咲いた翌年の秋』十~十一月頃)。『果実は長さ』十五~十八『ミリメートル』『程度の卵状長楕円形の堅果(いわゆるドングリ)で、翌年秋に成熟する。堅果ははじめ全体が殻斗に包まれているが、熟すと殻斗の先端は』三『裂し、中にある堅果を覗かせる』。『冬芽は長楕円形で葉の付け根につき、多数の芽鱗に覆われている。冬芽のわきにつく葉痕は半円形で、維管束痕が』三『個ある』。『比較的温暖な地域に生育し、日本では福島県および新潟県以南の本州、四国、九州から与那国島まで、日本国外では韓国の済州島に分布する。寒冷な気候には適さず、約』二『万年前のウルム氷期における本種(暖地性照葉樹林)の分布は九州地方南部が北限となった。以後、間氷期となり気候の温暖化に伴って分布を広げ、現在に至った』。『シイの中でも、スダジイは主に山地に生える種で、同科のマテバシイは沿岸地に生える。平地から山地の林などに自然分布しているほか、人の手によって寺や神社、公園、庭など人里近くにも植えられている』。『本種の分布の中心は温帯から亜熱帯であり、北限は最寒月の平均気温が』摂氏二度『となる等』温『線とほぼ一致する。緯度における北限は佐渡島、南限は波照間島である。特に、奄美群島以南に生育する集団を亜種オキナワジイ( ssp. lutchuensis )と分類することがあり(後述の近縁種と亜種)、この場合』、『基亜種スダジイ( ssp. sieboldii )の南限はトカラ列島である。関東地方に多く、関西地方で少ないのは、庭園樹として武蔵野の各地に植えられていて、公園などで大きな樹形を保った個体も目立つことにもよる。松江市旧八雲村桑並地区にはスダジイの森があるが』、『そこの志多備神社』(したびじんじゃ:ここ。グーグル・マップ・データ(以下、無指示は同じ。サイド・パネルの画像で巨木(写真は複数ある)を見ることが出来る)『には現地で日本一のスダジイの大樹とされている木がある』。『島根・鳥取の神社で荒神を祀る依り代の木で』、『しばしば見られる、藁蛇と呼ばれる八岐大蛇をイメージしたと通常考えられている藁製の作り物が巻き付けられている。水木しげるはこれを見て「(木は)年月が経つと霊気がやどる」とつぶやいたとされる』。『本種は温暖多湿な環境を好むため、冬季に冷涼な地域では個体数が少なく、群落を形成することが少ないことから、新潟県や福島県、栃木県など北限周辺の群落は、各県のレッドリストおよび天然記念物に指定されることが多い』。『佐渡島は、他の生育地と比較して高緯度であるが、対馬海流の影響で比較的温暖なため本種の巨木が多い。その中でも』、柏崎市にある『御島石部』(みしまいそべ)『神社』(ここ。同リンク先の「御島石部神社の参道」のサイド・パネルの画像に「椎の樹叢」の解説板の写真がある)『のシイ樹叢は、本種の純林として珍しく、かつ日本海沿岸の本種樹叢の北限であり、県の天然記念物に指定されている』。『福島県沿岸部(浜通り)は太平洋岸における本種の北限域である。原町市・初発神社のスダジイ群落は県の天然記念物に指定されている』。『栃木県では、唐沢山のスダジイ群落、河井八幡宮のスダジイ群落、高館山のスダジイ群落、綱神社のスダジイ群落及び太平山のスダジイ群落が栃木県版レッドリストに指定されている』。『本種の南限である沖縄県の沖縄島北部や西表島などの森林の優占種として林冠部を形成する。国頭村与那にある琉球大学の演習林における天然林での毎木調査結果では、イタジイの本数は約』一ヘクタール当たり『二千三百個体』『(個体数の割合は』三十二『%)で最も多い。なお、沖縄県では本種のことをイタジイと呼ぶことが一般的である』。「近縁種と亜種」の項。『同属のツブラジイ(コジイ、C. cuspidata )に比べてスダジイの方が細長い堅果(ドングリ)をつけること、樹皮に縦割れを生じることなどいくつかの点で区別されるが、判断の難しい場合もある。スダジイの方が北まで分布し、コジイは関東以南に分布するので、関東以北では単に「シイ」と呼ぶ場合は本種を指す場合が多い。より南部では海岸部にスダジイが、内陸部にコジイが分布する』。『また』、『同じく「シイ」とよばれるブナ科マテバシイ属のマテバシイに比べて、スダジイのほうが葉が細く先端が尖り、丸みのある樹形となり、雄花が立ち上がるマテバシイに対して、スダジイの雄花は穂が垂れ下がる』。『奄美大島以南のに分布する集団を亜種オキナワジイ( ssp. lutchuensis )として区別する場合がある。基亜種スダジイとの差異は、スダジイが堅果(どんぐり)の殻斗(から)の先端が離れているのに対し、オキナワジイが殻斗の先端は完全に合着する点である』。『半日陰の場所で、土壌は適度に湿度を保った壌土で、根を深く張る。植栽適期は』三『月下旬』から五『月上旬』、以下、六『月下旬』から七『月』、及び、九『月下旬から十『月とされる。大木に生長し、特に幹が太くなるため、小さくまとめる場合にはこまめな剪定が必要になる。刈り込みには強く、剪定は』三~四『月上旬と』六『月下旬』から七『月上旬』、九『月下旬』から十『月上旬に行うこととされる。施肥は』一~二『月に行う』。『公園樹、街路樹、庭木などとして植栽され、関東地方では庭木として人気がある。庭園樹として用いられるものは主に、刈込に強くて』、『生け垣や屋敷林に使われる。ブナ科の中でドングリをつける代表的な樹種で、果実はアク抜き不要で、簡単に食用できる。木材は木炭やシイタケ栽培のホダ木になる。スダジイがシイタケ栽培に使われるのは、材が腐りにくく、樹皮に刻みが多くてシイタケ菌の活着が良いことが理由に挙げられている。材質はシイの仲間の中でも大きく育ち、ツブラジイよりも優良といわれる。薪にすると、堅くて燃えないといわれている』。『また、タンニンに富む樹皮を黄八丈の黒色部の染料に用いる』。『果実(いわゆるドングリ)は食用でき、採取時期は』九~十『月ごろで、落ちた実を拾い集めて採取する。アクも気にならず、素朴な甘みがあり、歯で割ってそのまま生で食べることも出来るが、フライパンなどでゆっくり煎ると香ばしくなっておいしさが増す。果実の皮を剥いて、バター炒めにしたり、砕いてクッキーなどの菓子の材料にするなどナッツのような使い方もできる』とある。

 次にウィキの「ツブラジイ」を引く(同前)。『標準和名は「ツブラジイ」とされるが、「コジイ」という名前も相当普及しており、文献等を調査する場合にはどちらでも調べる必要がある。標準和名「ツブラジイ」は「円らなシイ」ということで、スダジイやマテバシイなどと比較した時の堅果(ドングリ)の形状に因むと見られる。「コジイ」は「小さな椎」でこれも他種の堅果と比較したときに小さいことに因むとみられる。樹高や幹回りの大きさ自体にはいずれも極端な差はなく、どちらも樹高』三十メートル『前後に達する高木である。以下、本項では「ツブラジイ」で統一する』。『「シイ」と呼ばれるほかに、方言名は多くあるものの、殆どが語尾に「シイ」が付く。「マメジイ」「マルコジイ」「タイコジイ」「イボシイ」など丸みを帯びたドングリを指すと見られる名前が多い。「コジイ」系も分布地全域で使われているが、これを短縮した「コジ」「コジノキ」などは九州に見られる。同地ではスダジイを「シ」と呼ぶ名前も知られている。関西から中国四国では「シイガシ」という名前も広く使われている。由来のよくわからない「アサガラ」(九州南部)「サンカラ」(伊豆半島)などがある』。『「シイ」は』、実の『渋みが少なく簡単に食べられるドングリに付けられるが多い。別属のマテバシイが代表的であるが、広島県周辺ではブナを「ノジイ」「ノジ」と呼ぶという』。『シイ属の属名Castanopisは「クリ属( Castanea )に似た」という意味。渋みが少なく食べやすいこと、および海外種にはクリのように棘のある殻斗を持つものが多いという形態的特徴を踏まえた命名と見られる』。『最大樹高』三十メートル、『胸高直径』一・五メートル『に達する常緑広葉樹で、枝はよく分枝し』、『広葉樹らしい丸い樹冠を持つ。樹皮は灰色で滑らか、老木になっても殆ど割れない。葉は濃い緑色の卵状楕円形で葉先は鋭く尖り、裏面は灰褐色でざらざらとした触り心地になる。葉縁には先端側にだけ鋸歯が現れ、特に若い木だと著しいが』、『老木ではわかりにくい』。『雌雄同株で雄花と雌花を同じ株に付ける。雄花は当年生の枝の葉腋にできる。コナラ属やクリ属のように垂れ下がる雄花ではなく、マテバシイ属のように枝先に斜上する。雌花穂も斜上するタイプで、雄花穂より枝先にできることが多い。雌花穂には総苞(幼いドングリの原基になる)が』十『個程度ついている。花は』クリの花と同じく、『動物の精液に例えられる悪臭を放つ虫媒花である。花粉は長球形で毛糸玉が絡まった模様が現れる。これらの点は同じブナ科虫媒花グループのクリ属やマテバシイ属と同じである』。『堅果(ドングリ)は受粉後』、『翌年に熟すものでスダジイに比べて丸いものである。総苞は最初はドングリを完全に包んでいるが、完熟すると』三『つに割れる』。『根系は水平根をよく出すタイプであるが、垂下根も』、『よく伸ばす。細根では根端肥厚が見られ、菌根を形成している』。『スダジイとはよく似る。初島』(一九七六年)『は両者の肉眼的に分かりやすい相違点として樹形、鋸歯の形、ドングリの形状を挙げている。スダジイは枝下高が低く、低い位置から大枝を分枝させるのに対し、ツブラジイは比較的通直で枝下高が高いと言われることが多い』。『スダジイとは雑種を形成し中間的な形質のものが生まれ、葉や堅果の形では見分けにくいものがあるという。小林』(二〇〇八年)『は九州のシイ類について、顕微鏡を用いて葉の断面組織を観察するという方法が提案した、それによれば』、『表層組織が』二『層のものを「スダジイ」』、一『層のものを「ツブラジイ」、両者が混じるものを「雑種」と扱う。根系にも若干』、『差が出ることが指摘されている。前述のようにツブラジイが水平根を発達させるタイプなのに対し、スダジイは垂下根を発達させるという』。『生態的な面では同じブナ科常緑樹ということでシイ・カシとまとめられることが多い。なお、カシ類は同じブナ科に属すもののコナラ属に入り、分類学的には比較的縁遠いグループである』。『他のブナ科樹木と同じく、菌類と樹木の根が共生して菌根を形成している。樹木にとっては菌根を形成することによって』、『菌類が作り出す有機酸や抗生物質による栄養分の吸収促進や病原微生物の駆除等の利点があり、菌類にとっては』、『樹木の光合成で合成された産物の一部を分けてもらうことができるという』、『相利共生の関係があると考えられている。菌類の子実体は人間がキノコとして認識できる大きさに育つものが多く、中には食用にできるものもある。土壌中には菌根から菌糸を通して、同種他個体や他種植物に繋がる広大なネットワークが存在すると考えられている。外生菌根性の樹種にスギやニセアカシアが混生すると』、『菌根に負の影響を与えるという報告がある。土壌の腐植が増えると』、『根は長くなるが』、『細根が減少するという』。『スダジイとは住み分けをしていることが各地で報告されている。概ねスダジイの方が』、『より広い分布適地を持ち、ツブラジイは局所的にスダジイより優勢になるという報告が多い』。『スダジイも含め』、『シイ類は後述のように軽く』、『比較的』、『強度の低い木で、台風による折損や根返りなどの攪乱を受けやすい。これに対して』、『イスノキ』(ユキノシタ目マンサク科イスノキ属イスノキ Distylium racemosum )『は台風での攪乱を比較的受けにくいといい、常緑広葉樹林群落の維持に台風が大きく影響している』。『堅果(ドングリ)は様々な動物の餌になっている。後述のように渋みが少なく人間も食べやすい。イノシシはタンニン結合性タンパク質を含む唾液を分泌することで、渋いドングリを食べることに適応しているが、ツブラジイを食べる時期にはこのタンパク質を分泌せず、渋いコナラを食べる時期だけ分泌することが知られている。タヌキなどはコナラよりも明らかにツブラジイを好むといい、中型動物への餌資源として影響は大きい』。『遺伝的多様性は南方の分布地ほど高い傾向があり、これはスダジイも同じだという』。『ナラ枯れ(ブナ科樹木萎凋病、英:Japanese oak wilt)は、本種をはじめ』、『全国的にブナ科樹木の枯損被害をもたらしている病気である。原因は菌類(きのこ、カビ)による感染症であることが』、一九九八『年に日本人研究者らによって発表され、カシノナガキクイムシという昆虫によって媒介されていることが判明した。ミズナラが特に』、『この病気に対しての強感受性』を持つ『が、ツブラジイはそれよりも低』く、『本種も大径木の方が穿孔されやすいという』。分布は『東アジア地域』で、『日本列島』、及び、『台湾』『に分布する。日本では本州、四国』及び『九州に分布する。南西諸島の「シイ」は本種ではなくスダジイの変種(または亜種)とされるが、台湾に分布するものはツブラジイの変種とされる。なぜ』、『このような飛地的な分布域を示すのかは』、『よく分かっていない』。小林』(二〇〇八年)によって『提案された方法を用いて』、『日本各地のシイ類を分析すると、瀬戸内海沿岸のシイは』、『ほぼ完全にツブラジイと判定される。また、瀬戸内海を中心に東端は愛知県付近、西端は九州北部まではツブラジイが多い。これに対し』、『紀伊半島や四国の太平洋側、九州南部、日本海側各地はスダジイが圧倒的に多い。このような分布を示す理由もよくわかっていない』。『生態的にはカシ類としばしば一緒にされるが、利用は』、『かなり異なる』。『ドングリの中でも渋みが少なく、食べやすい種類である。食味は、スダジイよりもツブラジイのほうが優れていると評されている』(私はこの見解に大いに反論するものである!)『。食用利用は古く、遺跡からもよく出土している』。『日本産シイ類の澱粉は組成的にはトウモロコシのものに比較的近く、糊化温度はジャガイモに近いという』。『道管の配置は環孔材で気乾比重は』〇・五五『程度。コナラ属のナラ類カシ類が』〇・七『から』〇・九『が多いのに比べると』、『軽い木材である。硬いナラやカシに比べると』、『加工はやや楽であるが、耐久性は低い』。『吉野ケ里遺跡から出土した木材を観察した結果、弥生時代に比べて奈良時代には樹種別にほぼ用途が決まっており、井戸枠にはツブラジイやクリが使われていた』とある。

 最後にウィキの「マテバジイ」を引く(同前。また、前掲の記載とほぼダブるところがあるので、無指示でカットした)。『常緑広葉樹の高木で最大樹高』二十メートル、『胸高直径』一メートル『程度にまで育つ。樹形は環境に左右されるが、比較的綺麗な広葉樹らしい樹冠を持つ。幹は灰褐色で平滑、時に縦筋模様が出る。若枝は無毛である。葉は日本産のブナ科樹木の葉としては最大で時に』二十センチメートル『を超えることもある。葉は枝に互生し、形は倒卵型で先は鋭尖、鋸歯は無い(いわゆる全縁)で根元には柄を持つ。葉身は厚い革質で厚く、表面が平滑で光沢がある濃緑色、裏面は灰緑褐色で細かい鱗毛が生えている』。『雌雄同株で雄花と雌花を付ける。花期は初夏。花穂はブナ属やコナラ属の垂れ下がる花と違い、シイ属に近く丈夫なもので直立し上を向く。雌花穂は雄花穂と同じ枝にできるか、もしくは単独となる。雄花と同じ穂にできる場合は雌花が根元側、雄花が先端側に付く。マテバシイの花はクリと同じく動物の精液に例えられる匂いを出し、虫を誘因する虫媒花である。花粉は長球形で、毛糸玉のような模様が入る。同じブナ科虫媒花グループのシイ属やクリ属のものに似るが、シイ属に比べると』、『糸模様は不明瞭である。大きさは』二十四『マイクロメートル』✕十二『マイクロメートル』『前後』。『受粉から結実までは』二『年かかるタイプで、初夏に受粉したあと』、『翌年の秋に熟す。堅果(いわゆるドングリ)で直立する花穂にでき、柄も発達しないためにコナラ属のドングリとは見た目もかなり異なる。長さは』二~三センチメートル、『下部は直径』一・五センチメートル『と』、『細長い形になり、浅い椀形の殻斗を持つ。殻斗の模様は鱗状である。色は同属のシリブカガシ』(尻深樫:シリブカガシ Lithocarpus glaber )『に比べて淡い。日本産ドングリの中では最も堅いものであるという』。『成木の根系は地際でよく分岐し、水平にも垂直にもよく根を伸ばす。稚樹のうちは直根の発達が著しく、これは地下性の発芽様式を持つブナ科の多くの種に共通する』。『冬芽は球形で淡緑色の複数の芽鱗に包まれて、葉の付け根につき、枝先に花芽が数個つく。葉痕は半円形で、維管束痕が』三『個ある』。『同属にシリブカガシがあるが、若枝の毛の有無、葉の大きさおよび形、ドングリの色調など形態的にが分かりやすい相違点として挙げられている』。『生態的な面では同じブナ科常緑樹ということでシイ・カシとまとめられることが多い』が、『カシ類は同じブナ科に属すもののコナラ属に入り、分類学的には比較的縁遠いグループである。また、シイ類のうち』、『スダジイとツブラジイはシイ属に入り』、『本種とは別属である』。『他のドングリ類と同じく、種子の拡散は重力散布、および小動物特にネズミ類による貯食行動に依存した種子散布を行う。マテバシイ属のドングリはクリ属やシイ属と同じく渋みが少なく、動物に対して化学防御以外の方面を発達させたと見られるグループである。特に形態節のようにドングリの殻が非常に硬いものが多い』。『一般に陽樹とされるが、苗木』は『被陰環境では光合成能力を調整し』、『耐陰性は高いという』。『オオバヤドリギ科』(Loranthaceae)『のヤドリギ類の寄生を受けやすい樹種の一つとされ、九州地方での観察事例では特に林冠を構成するような大木には多数が寄生する。このヤドリギは比較的』、『宿主に対し』、『有害性が強く、衰弱し』、『時には枯死する個体もみられた』。『マテバシイの落ち葉は』、『厚く林床に積もる。同じ常緑樹のスギ林と比べると』、『マテバシイ林の林床に積もった落ち葉の方が保水力があるという。純林に近いマテバシイ林はスダジイ林に等に比べても種多様性が低いことがしばしば指摘される。これは落ち葉の厚さ』及び『萌芽能力が高いマテバシイが更新し続けて群落を維持すると見られている。また、マテバシイが優先する群落に出現する特徴的な種はないとされる』。『マテバシイが分布するような暖温帯では常緑広葉樹林では台風、病虫害、大気汚染などによって攪乱を受けており、特に台風の影響は大きい』。『ムラサキツバメ( Narathura bazalus 』:『シジミチョウ科』(Lycaenidae)『)の幼虫の食草はマテバシイの葉である。シジミチョウの仲間にはよくあることだが、本種もアリとの共生関係が見られる。元々』、『西日本に多い蝶であったが、東日本でも分布を拡大している。シジミチョウ類の分布拡大の先端地域では天敵類、特に寄生バチの密度が著しく低い、もしくはまったくいないということがしばしば指摘される』。また、『幾つかのカミキリムシがマテバシイに付くことが知られている。幼虫は単に木部を食べるだけでなく、木材腐朽菌を食べているのではないかと疑われるものもある』。『日本の本州の房総半島南端、紀伊半島、四国、九州から南西諸島に分布し』、『温暖な沿岸地に自生している。関東地方に多く、特に房総半島では普通に見られる。人手によって、寺社の境内や公園などにも植えられている』。『植栽可能地は、日本では東北地方南部から沖縄の範囲とされ、各地の暖地に植栽されている。マテバシイは葉が大きく密につくため、列植すると』、『遮音性が高まり防音効果が期待され、大気汚染にも強いことから、往来の多い道路沿いに最適な樹種であると言われている』。『房総半島では、防風林や防火林、生け垣として農家の屋敷林に一般的に使われてきた樹種である。生長が早く、乾燥や湿った土地にも耐え、移植にも強い性質から、庭園樹や公園樹にも向いている。神社の境内にも植えられることも多かったが、街路樹や海岸の緑化材料、工場構内の緑化にも使われている』。『葉を使った試験ではマテバシイの発火限界温度は約』摂氏四百五十度『とされ、造園用の常緑広葉樹の中でも耐火性は高い。常緑広葉樹は落葉広葉樹よりも限界温度は概ね高いが』、『クスノキのように落葉樹と差の無いものもみられる』。『葉の寿命が長いことなどから』、『大気中の微粒子を補足する能力が比較的高く、特に樹冠下部の葉が高いという』。『ドングリはタンニンをあまり含まないため、アク抜きを必要とせず、そのまま炒って食用になる。炒って食べるとおいしく食べられる一方、生食でも食べることはできるが、あまりおいしくはない。食味は、スダジイやツブラジイに比べると落ちると評されている。粉状に粉砕してクッキーの生地に混ぜて「縄文時代のクッキー」として味わうこともできる。長崎県松浦市鷹島では、マテバシイを原料にした焼酎が製造されている。神奈川県では、マテバシイを原材料にしたお菓子、お茶、食品を製造販売している会社も存在する』。『ただし、マテバシイであっても未熟果は完熟したものに比べてポリフェノール濃度が有意に高いといい、比較的有害だと見られる』。『マテバシイ林には菌根性のキノコが発生する。マツタケはアカマツ(Pinus densiflora、マツ科)と共生関係があることが知られているが、中国西部などではマテバシイ属林にマツタケ近縁種が発生するという。アジア圏ではマツタケ近縁種はブナ科広葉樹林に生えることが多いことから、狭義のマツタケのような針葉樹と共生関係を結ぶものは進化の結果なのでは』、『という説がある』。『ヤママユ(いわゆる天蚕)』(𧔝:異名:ヤママユガ(山繭蛾):鱗翅目ヤママユガ科ヤママユガ亜科ヤママユ属ヤママユ Antheraea yamamai )『は自然界ではクヌギなどのブナ科コナラ属を食べていることが多いが、マテバシイの若葉を与えても終齢幼虫まで育てることができ、試験ではブナ科に限らず他科の植物も食べるものがある。クヌギに比べ萎れにくいマテバシイを用いた天蚕養殖についても研究されている』。『道管の配置は輻射孔材で気乾比重は』〇・六『程度、心材と辺材の境は不明瞭である』。『おが屑は』、『きのこの菌床栽培の培地として使うこともできる』。『東京湾岸、特に千葉県の内房地域に見られるマテバシイ林は』、『ノリ養殖用のヒビとして使われたという。昭和中期頃まで特に木更津周辺の基幹産業は漁業、中でも秋から翌年春先にかけて行う海苔の養殖の比重が極めて大きかった』。『標準和名マテバシイの由来は九州地方の方言名が由来になった説がある。実際に九州各地には「マテガシ」「マテカシ」「マテシイ」「マテノキ」などの「マテ」を含む方言名が多く知られ、しかも他の地方には殆ど見られない。常緑樹であり、殆どの場合』、『「シイ」もしくは「カシ」に繋がる。「シイ」はドングリが食用であることを示すことを重視した名前であるが、「カシ」と付く方言名も多く、実際に材質などはカシ類に似る面もある。他の名前として「オオジイ」(関西地方)、「ハビロガシ」(宮崎県)、「ナガシイ」(四国)「クマガシ」(佐賀県)など国内で見られるカシやシイと比較して巨大な葉を指すと見られる方言名が多い。「トージ」(千葉県)「フクエ」(静岡県)「クダン」(沖縄県)など由来のよくわからないものもある。九州には同属のシリブカガシを「マテバシイ」と呼ぶ地域もあるという』。『「マテ」自体は』、『騎馬兵が使った刀身の細長い刀「馬刀(まて)」に葉の形が似ているからとする説、細長い葉を隙間なく茂らせる様が両手を示す「真手もしくは全手(まて)」に似ていることに由来する説など諸説あり』、『はっきりしない。前述のように方言由来であり』、『意味は分からない』とする『説もある』。『種小名 edulisは「可食の」という意味で、ドングリが食べられるということからの命名である』とある。]

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