阿部正信編揖「駿國雜志」(内/怪奇談)正規表現版・オリジナル注附 「卷之二十四上」「笛吹松」
「笛吹松」 有渡郡北長沼村《うどのこほりながぬまむら》、八町啜《はちちやうなわて》に出《いづ》る切通しにあり。一株の松にして、五郞松共《とも》云《いへ》り。是、某《なにがし》五郞が塚也。云云。笛を習ふ者、此松に祈誓すれば、必《かならず》上達す。
[やぶちゃん注:「長沼村八町啜」現在の静岡市葵区長沼。「ひなたGPS」の戦前の地図を見たが、「八町啜」は不詳。但し、旧長沼村の西には現在は谷津山(やつやま)と呼ばれる標高百七・九メートルを含む里山があり、当該ウィキによれば、『かつて谷津山は統一された名前がなく、峰によって(西から)清水山、柚木山(谷津山の「山頂」にあたる)、正木山、愛宕山と呼ばれていた』とあり、長沼の周辺は水田であるから、ここで、「八町啜に出」る「切通し」というのは、この丘陵地帯を西、或いは、北西に越える山道を指しているようにも思われる。長沼の真南に「天白松」というのがあるが(針葉樹記号が打たれてある)、田圃の真ん中であるから、これではない。
「五郞松」不詳。]
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