茅野蕭々譯「リルケ詩抄」正規表現版 「貧困と死」 (大都會は眞ではない。彼等は詐いてる……)
大都會は眞ではない。彼等は詐いてる
晝を、夜を、動物等を、小兒を。
彼等の沈默は僞つてゐる。彼等はまた
騷音と、おとなしい事物で僞る。
生成する者よ、あなたを繞つて動く
廣い眞實の出來事の一つも
都會には起らない。あなたの風は吹いても
街々に落ちてその向を變へる。
その颯々の聲は彼方此方にゆく中に、
亂され、激せられる。
その街々はまた花檀にも並木にも來る――
[やぶちゃん注:「詐いてる」「あざむいてる」。
「繞つて」「めぐつて」。再版「詩集」で、かく、ルビを振っている。
「街々は」★再版「詩集」では、「風は」に書き変えてある。]
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