阿部正信編揖「駿國雜志」(内/怪奇談)正規表現版・オリジナル注附 「卷之二十四上」「弁忍田池龍」
[やぶちゃん注:底本はここ。「弁忍田池」は国立国会図書館デジタルコレクションで調べたが、ルビを振る資料がない。全くの当てずっぽの思い付きだが、「べんにんだいけ の りゆう」と読んでおく。「忍」は全くお手上げだが、個人的には、「弁」は「べ」で、安倍川(あべかわ)を指しているように感ぜられた。]
「弁忍田池龍」 有渡郡西島村《にしじまむら》弁忍田池にあり。「民部省圖幉《みんぶしやうづちやう》」云、『有渡郡西島鄕、弁忍田池、徃昔有二三丈之靑龍一、而於二此池一、灯二龍火一。一夏後、安弁藤河及二洪水一無二其事瑞一。云云。』今は有やなしや。「巡村記」、當村の條に、池の事を載せず。追《おつ》て尋ぬべし。
[やぶちゃん注:「西島村弁忍田池」この旧地は、諸資料を見た限りでは、現在の静岡県静岡市駿河区西島の、「ひなたGPS」の戦前の地図の、推測に過ぎないが、地名「西島」の右下にある旧「三角点」か、その内陸側に存在したのではないか、と考えている。
「民部省圖幉」「国書データベース」のここで、同書(但し、データに『元亨二』(一三二二)『年の奥書あれど偽書』とある)の当該部が視認出来る。推定訓読を示しておく。
*
有渡郡西島鄕(うどのこほりにしじまむら)、弁忍田池、徃昔《わうじやく》、三丈の靑龍《わうじやく》有り。而して此の池に於いて、龍火《りゆうくわ》、灯《ともる》。一夏《ひとなつ》の後《のち》、安弁《あべ》・藤河《ふじかは》、洪水に及び、其の事瑞《じずい》、無し云云《うんぬん》。
*
「安弁」を、私は安倍川と、とった。後の「藤河」が判らぬが、「大井川」の上流に「東藤川」(現在の静岡県榛原郡川根本町藤川:グーグル・マップ・データ)という地域があるので、大井川のことを指しているのではないか? と踏んだ。]
« 茅野蕭々譯「リルケ詩抄」正規表現版 「新詩集」「私の父の若い肖像」 | トップページ | 和漢三才圖會卷第八十七 山果類 鉤栗 »