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2025/02/15

和漢三才圖會卷第八十七 山果類 鉤栗

 

Castanopsis-tibetana

 

[やぶちゃん注:左下に「どんぐり」と、キャプションで「梂」(かさ:これは既に述べた「殻斗」所謂、「どんぐり・団栗」の類の実の基部に附いているもの。俗に「皿」「椀」「帽子」と呼ぶもの)だけを描いてある。]

 

いちゐ   甜櫧子 鉤櫟

      巢鉤子

鉤栗   【以知比】

      【倭名抄櫟訓以知

       比者非也櫟者橡

       也】

[やぶちゃん字注:「甜」は一画目がないが、こんな異体字はない。国立国会図書館デジタルコレクションの中近堂版も東洋文庫訳も、「甜」とするので、それに従った。]

 

本綱鉤栗卽櫧子之甜者其狀如櫟又謂之鉤櫟生江南

山谷木大數圍冬月不凋其子似栗而圓小

 夫木大井川しくるゝ秋のいちゐたに山や嵐の色を見すらん爲家

[やぶちゃん注:この一首、最終句の「色を見すらん」は「色をかすらん」の誤りであるので、訓読文では、訂した。]

△按鉤栗葉比于櫧子畧薄硬有鋸齒子形似椎子而有

 縱理【櫧子味苦鉤栗味甜】凡樫鉤栗椎子三物梂相似【如小椀俗呼名供噐】

 

   *

 

いちゐ   甜櫧子《てんしよし》 鉤櫟《こうれき》

      巢鉤子《さうこうし》

鉤栗   【≪和名、≫「以知比《いちひ》」。】

      【「倭名抄」、「櫟」を以つて、

       「知比《ちひ》」と訓ずるは、

       非なり。「櫟」は「橡《しやう》」

       なり。】

 

「本綱」に曰はく、『鉤栗《こうりつ》は、卽ち「櫧子《しよし》」の甜(あま)い者≪なり≫。其の狀《かたち》、櫟(とち)のごとく、又、之れを、「鉤櫟《こうれき》」と謂ふ。江南の山谷に生ず。木の大いさ、數圍《すまはり》、冬月、凋《しぼ》は《✕→ま》ず。其の子《み》、栗に似て、圓《まろ》く小《ちさ》し。』≪と≫。

 「夫木」

   大井川

     しぐるゝ秋の

    いちゐだに

         山や嵐の

       色をかすらん 爲家

△按ずるに、鉤栗《いちゐ》の葉、「櫧子(かし)」に比ぶれば、畧(ちと)、薄く、硬く、鋸齒、有り。子《み》の形、「椎子(しひ)」に似て、縱理(たつすぢ)、有り【「櫧子」、味、苦く、「鉤栗」、味、甜《あま》し。】。凡そ、樫・鉤栗・椎子≪の≫三物《さんぶつ》の、梂(かさ)、相似《あひに》たり【小さき椀のごとし。俗、呼んで、「供噐(ごき)」と名づく。】。

 

[やぶちゃん注:この「鉤栗」は、「百度百科」の「钩栗」(「」は「鈎」の簡体字で、「鉤」と同字)の、和名がない、日本に分布しない、

双子葉植物綱ブナ目ブナ科シイ属カスタノプシス・チベタナ  Castanopsis tibetana

である。実は、これは前項の「櫧木」の注で考証比定を終えているものであり、そこで対象比定し、良安の言っている「いちゐ」というのは、

双子葉植物綱ブナ目ブナ科コナラ属イチイガシ(一位樫:歴史的仮名遣「いちゐがし」)Quercus gilva

である(そこで注意喚起した通り、裸子植物門イチイ(一位)綱イチイ目イチイ科イチイ属イチイ Taxus cuspidata ではない

 「本草綱目」の引用は、「漢籍リポジトリ」の「卷三十」の「果之二」の「鉤栗」([075-57a]以下)をパッチワークしたものである。ごく短いので、引いておく(一部に手を入れた)。

   *

鉤栗【拾遺】

 釋名【巢鉤子拾遺甜櫧子瑞曰鉤栗卽甜櫧子時珍曰鉤櫧二字方音相近其狀如櫟當作鉤櫟】

 集解【藏器曰鉤栗生江南山谷木大數圍冬月不凋其子似栗而圓小又有雀子相似而圓黑久食不飢詳櫧子下】

 仁氣味甘平無毒主治食之不飢厚腸胃令人肥健【藏器】

   *

『「倭名抄」、「櫟」を以つて、「知比《ちひ》」と訓ずるは、非なり。「櫟」は「橡《しやう》」なり』「和名類聚鈔」の「卷第十七」の「菓蓏部第二十六」の「菓類第二百二十一」の以下である。国立国会図書館デジタルコレクションの寛文七(一六六七)年版を参考に訓読して示す。

   *

櫟子(いちひ[やぶちゃん注:ママ。]) 崔禹錫が「食經」に云はく、『櫟子【上の音は「歴」。和名、「以知比[やぶちゃん注:ママ。]」。】]相似《あひに》て、椎子《しい》より大なる者なり。

   *

ここで良安が『「櫟」は「橡《しやう》」なり』と言っているのは、中国語の「橡」(これはクヌギを指す)と、日本で「とち」と読む漢字が「橡・櫟・栩・檞」等、有象無象、異なる種に安易に用いた歴史があること、先の全くもって明後日(あさって)のイチイ(一位)等にも当ててしまっているからである。これは、次の次の「橡」で検証しなくてはならないので、そちらに回す。

「櫧子《しよし》」双子葉植物綱ブナ(橅)目ブナ科マテバシイ(馬刀葉椎・待椎)属シリブカガシ(尻深樫) Lithocarpus glaberである。前項の私の注を見られたい。

「夫木」「大井川しぐるゝ秋のいちゐだに山や嵐の色を見すらん」「爲家」既注の「夫木和歌抄」の「卷二十八 雜十」に所収する。「日文研」の「和歌データベース」で確認した(同サイトの通し番号で「14066」)が、そこでは、確かに、

   *

 おほゐかは-しくるるあきの-いちひたに-やまやあらしの-いろをかすらむ

   *

となっていた。なお、私は、和歌嫌いなので、判らぬが、この「いちひ」は、イチイガシではなく、紅葉する正真のイチイのように思われるのだが?

「樫」ブナ目ブナ科コナラ属 Quercus の総称だが、分布からみると、ウラジロガシ Quercus salicina  f. angustata か。

「椎子」双子葉植物綱ブナ(橅)目ブナ科シイ(椎)属スダジイCastanopsis sieboldii subsp. sieboldii だろう。

「供噐(ごき)」小学館「日本国語大辞典」にも立項しないが、いい呼び名だ。]

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