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2025/02/07

和漢三才圖會卷第八十七 山果類 毗梨勒

 

Momotamana

 

なんばんくるみ  三果

 

毗梨勒

         出本艸夷果

          之部

 

 

本綱毗梨勒出西域及南國樹似胡桃子形似胡桃核

似訶梨勒而圓短無稜有毗卽臍也

 

   *

 

なんばんくるみ  三果《さんくわ》

 

毗梨勒 

          「本艸≪綱目≫」の

          「夷果《いくわ》」

           の部に出づ。

 

 

「本綱」に曰はく、『毗梨勒《ひりろく》は西域、及び、南國に出づ。樹、胡桃《こたう》に似て、子《み》の形も、胡桃に似たり。核《さね》は、「訶梨勒《かりろく》」に似て、圓《まろ》く、短く、稜《かど》、無く、毗《ほぞ》[やぶちゃん注:ここは以下の「臍」から、「出っ張り」或いは「有意な凹(へこ)み」の意であろう。]、有り。卽ち、臍《へそ》なり。』≪と≫。

 

[やぶちゃん注:これは、「株式会社 ウチダ和漢薬」の「生薬の玉手箱」の「訶子(カシ)」

によって、

「毗梨勒」は、

双子葉植物綱フトモモ目シクンシ(使君子)科モモタマナ属モモタマナ Terminalia bellirica

で、

「訶梨勒」は、

モモタマナ属ミロバラン Terminalia chebula

である。さらに、この二種の『果実はもともとアーユルヴェーダ』(ラテン文字転写:Āyurveda:インド亜大陸の伝統的医学)『薬物で』、中国では、『この』二『種に』、「庵摩勒」、則ち、

キントラノオ目コミカンソウ(小蜜柑草)科コミカンソウ属ユカン(油甘) Phyllanthus emblica

『の果実を加えて』、★☞『「アーユルヴェーダ三果」』☜★『と呼ばれるほど有名な生薬で』ある、とあった。

 まず、「モモタマナ」のウィキを見ると(注記号はカットした。下線・太字は私が附した)、『シクンシ科』Combretaceae『に所属する植物は』、『熱帯を中心に種数が多いが、日本に産するものは』三『種ほどしかない。本種はそのうちの』一『つである。太平洋諸島からインドにわたる熱帯域を中心に分布し、日本では琉球列島と小笠原に分布する。葉が大きくて倒卵形をしている。果実が水に浮いて分散する』。『大きな木になるが、枝が水平に伸び、また大きな葉をまとめて広げるので、木陰を作る。その』ため『もあり、古くから村落の集会所や墓地などに植栽されてきた。現在でも街路樹や公園樹としてよく利用される。また果実は食用にもなる』。『半落葉性の高木。大きいものでは高さ』二十五メートル、『幹の径は』一メートル『にも達し、樹冠は平らに広がる。小枝は輪生するように出て、無毛、またはほぼ無毛。葉はその先端に束生する。葉は革質で、長さ』二十~二十五センチメートル、『全体にほぼ無毛ながら』、『葉柄と中脈に多少の毛がある。葉柄は短くて太く、溝があり、先端には蜜腺がある場合がある。葉身は倒卵形で、縁は滑らかで先端は丸く、基部は耳状、つまり葉柄に着くところは』、『くぼんで』、『両側が丸く突き出す。落葉する前には、往々にして紅葉する』。『花期は』五~七『月。穂状花序を葉腋に生じる。花序は長さ』六~八センチメートル『で、先端の方には雄性花を、基部の方には雌性花、あるいは両性花をつける。花は白くて径』五ミリメートル、萼『は鐘型で内側に星状毛が密生し、萼裂片』五『個は早くに脱落する。花弁はない。果実は熟すると長さ』三~六センチメートル『になり、楕円形で多少とも扁平、両側に竜骨状の突起があって、緑色か、その上に赤みを帯びる。果皮は繊維質で、内側の内果皮は硬く、海水に浮くことが出来る』。『この木は枝が横に広がり、上が平らな樹形になりやすい。これは上向きの枝があまり伸長せず、その前にその下から側方に伸びる枝がより発達するためである。その側枝が横に伸びてゆくために、平らに広がった枝振りが作られる。この様な茎の伸び方を添伸型(てんしんけい)と言うが、本種はこの型の成長をするものの代表的なものである』。『モモタマナが標準和名であるが、別名はコバテイシである。ただし初島』(一九七五年)『はコバテイシの方を標準名に採用している。この名は沖縄における方言名に由来するようで、沖縄県各地でコバテイシ、あるいはクファディーサ、あるいはそれらに類する方言名が伝えられる』。『日本では沖縄島以南の琉球列島、及び小笠原諸島に分布し、国外では台湾、中国南部から旧世界の熱帯域に広く分布する』。『下述のようによく栽培されるが、自生のものは海岸にある。果実が水に浮くため、海水に浮かんで漂流し、潮流によって分散するものと考えられる』。『モモタマナ属には世界に』二百五十『種ほどが知られる。日本には本種ともう』一『種』、『テリハモモタマナ』 Terminalia nitens 『葉は本種よりやや小さくて長さ』十~十五センチメートル、『葉の基部はくさび形であること、全株無毛である点などで区別出来る。日本では琉球列島の西表島にのみ産し、国外ではフィリピンから知られる』。『水平に広がって出る枝先に束生する大きな葉が広がり、その下は気持ちの良い木陰となる。そのため』、『日陰を作る街路樹として広く植栽される。沖縄では古来より村落の集会所や墓地によく栽培され』てきている。『材質として、辺材は淡黄色で、中心はより色濃くて暗褐色になる。材質は緻密で、工作は比較的容易である。建材や家具材、造船材に使われる。南洋ではカヌーを作るのに用いる』。『果実からは油が取れる。仁を炒って食べるとラッカセイに似て美味である。これを Country almond と呼ぶ。小笠原諸島では、子供を中心に食べる文化がある』。『他に、葉が染料に使われる』とある。

 次に、英文のミロバランのページを見ると(後のために言っておくと、そこにある果実の写真は、有意に延びたアーモンド型であり、表面に多数の襞状の凹みが確認出来る)、『多くの変種が知られている』として、

Terminalia chebula var. chebula 

Terminalia chebula var. tomentella

の二種が挙がっている。それらには、実・種子の違いは記されていないが、ここで時珍が、『「訶梨勒(かりろく)」に似て、円く、短く、稜部がなく、毗(ほぞ)があって、それは「臍」である。』と言っているのは、種子ではなく、実のことと採らないと、話しが通らない。されば、実は、ミロバラン(訶梨勒)の変種の中には、時珍の言うような形状の実(果実)を持つ種があるのではあるまいか? その証拠に、「維基百科」の同種「子」にある実生の果実の写真は、「丸い」感じで、キャプションにも『果実は楕円形』(☜)『または長楕円形』とある(本文解説にもある)からである。同ウィキの解説には、『元の呼称は「訶梨勒」で、これは、同種のアラビア語“halileh”由来の“halilehに由来するHallile”漢字を当てたもの』とあり、『「本草綱目」の解釈に拠ると、Halile はサンスクリット語で「神が来る」という意味である』とある。但し、この部分の原文は『据《本草目》解黎勒在梵中意“天主持来”』であり、これ、「本草綱目」当該部(「漢籍リポジトリ」の「卷三十一の果之三【夷果類三十一種内附四種】」の「毗梨勒」(ガイド・ナンバー[077-10b]以下)には、逆立ちしても、そんなことは書いてないから、これは、同ウィキの注にある、『程超寰』著の「本草名考訂」(北京・中国中医出版社・二〇一三年刊)で、程氏が注で新たに明らかにしたということであるので注意が必要である。以下、『ベトナム・ラオス・カンボジア・タイ・ミャンマー・マレーシア・ネパール・インド・中国雲南省に分布している。標高八百から千八百四十メートルの疎林に生育する』。『樹高は三十メートルに達し、樹皮は、灰黒から灰色、葉は互生、又は、ほぼ対生し、卵形、又は、楕円形から長楕円形で、腋生、又は、先端生の穂があり、円錐花序を形成することもあり、実は硬く、卵形、または、楕円形で、緑色で無毛であり、熟すと、暗褐色になる。開花期は五月、結実期は七月から九月である』と言った内容が書かれてある。されば、少なくとも、「本草綱目」で時珍の言う、「毗梨勒」が、本当にモモタマナであることには、やや疑義を感じたからである。それは、先の「モモタマナ」のウィキには、漢方としての薬用が記されていないからであったのだが、しかし、「維基百科」の同種「榄仁树」(學名: Terminalia catappa )』には、『樹皮は苦くて冷たく、収斂作用がある。解毒、瘀血の解消、痰の解消、咳、赤痢、痰熱咳嗽、潰瘍の緩和などの治療効果がある。葉と若葉にはヘルニア・頭痛・発熱・関節リウマチに治療効果がある。葉の汁には皮膚病・ハンセン病・疥癬に治療効果がある。種子は苦味、収斂性、清涼性があり、熱を奪い解毒する作用がある。喉の痛み、赤痢や浮腫に治療効果がある』としっかり記されてあったので、不審は解消されたのであった。

 因みに、三つ目の「庵摩」は、「和漢三才圖會」の次の「卷第八十八」の「夷果類」に「菴摩勒」として立項されてあるので、ウィキの「ユカン」をリンクさせるに留め、国立国会図書館デジタルコレクションの中近堂の当該項を示しておく。]

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