茅野蕭々譯「リルケ詩抄」正規表現版 「新詩集」「佛陀」
佛 陀
遠くからもう、知らない臆病な巡禮は、
佛陀から黃金色の滴るのを感ずる。
恰も富豪らが悔改めて
祕藏の寶を積重ねたかのやうに。
しかし近く來て、その眉の
氣高さに思ひ迷ふ。
これは富豪等の酒の器具や
その妻の耳飾ではないからだ。
この花のうてなの上の像を
建てるのに、どんな物が鎔かされたか。
言ひ得る人があればいいが。
黃金で出來てゐるよりは、一層
沈默で、落ついて黃色く、
自分へのやうに周圍の空間へも接してゐる。
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