和漢三才圖會卷第八十七 山果類 庭梅 / 卷第八十七~完遂
にはむめ 正字未詳
庭梅
【灌木類也然以
櫻桃之類故附
于此】
△按庭梅叢生髙三四尺三月開花形似梅而小白色帯
紅色蘂黃而甚繁艶美也花落葉生狹長似庭櫻葉結
子小於櫻桃生青熟赤味酸甘
*
にはむめ 正字、未だ、詳《つまびらか》≪なら≫ず。
庭梅
【灌木類なり。然《しかれども》、
櫻桃(ゆすら)の類なるを以つて、
故《ゆゑ》、此《ここ》に附す。】
△按ずるに、庭梅、叢生≪して≫、髙さ、三、四尺。三月、花を開《ひらく》。形、梅に似て、小《ちさ》し。白色≪を≫帯《おび》て、紅色にして、蘂《しべ》、黃にして、甚《はなはだ》、繁く、艶美なり。花、落《おち》て、葉、生じて、狹《せば》く、長《ながく》しえ、庭櫻の葉に似たり。子《み》を結《むすぶ》。櫻桃(ゆすら)より小《ちさ》く、生《わかき》は、青く、熟《じゆくせ》ば、赤《あかく》して、味、酸甘《あますつぱ》し。
[やぶちゃん注:これは、
双子葉植物綱バラ目バラ科スモモ属ニワウメ亜属 Lithocerasus ニワウメ Prunus japonica
である。当該ウィキを引く(注記号はカットした)。『ニワウメ』は『落葉低木。庭などに植えられる。和名の由来は、庭園に植えられウメのような花が咲くことから名付けられている。英語ではJapanese bush cherry、またはOriental bush cherryなどと呼ばれる。中国語では郁李』。『中国華北、華中、華南などの山地に自生し、日本へは江戸時代に渡来した。観賞用のために広く栽培されている』。『Japanese bush cherryはミヤマザクラ』(深山桜:バラ科サクラ亜科サクラ属ミヤマザクラ Cerasus maximowiczii )『をさすこともある』。「詩經」の「小雅」の「常棣」『で常棣や棠棣と呼ばれ、兄弟に喩える』。『落葉広葉樹の低木で、根元からひこばえを出して株立状になり、大きさは』一・五『×』一・五『メートル』『ほどの大きさになる。若木の樹皮は暗紫褐色で、次第に灰色を帯びて縦に裂ける。一年枝は赤褐色で無毛である』。『花期は』四『月で、淡紅色の花を咲かせる。花は雌雄同体で虫媒花である』。『実は甘い香りがし、径』一『センチメートル』『ほどの大きさになり、赤く熟して食べられる』。『パイやジャムなどに利用されることもあるが』、『味はスミミザクラ』(酸実実桜:サクラ属スミミザクラ Prunus cerasus :ヨーロッパや南西アジアに自生する)『と似て酸味が強い』。『各果実には種が一つ入っている。種から増やすことが一般的であるが、取り木』(とりき:layering・marcotting:立木の幼枝や若枝の一部から発根させ、または根から発芽させたものを切り取って新たな株を得る方法)『でも増やせる』。『冬芽は鱗芽で互生し、卵形や球形で』五~七『枚の芽鱗に包まれており、一カ所に数個つく。花芽は球形で、葉芽は小さな卵形をしている。葉痕はほぼ腎形で、維管束痕が』三『個つく』。『森林地帯や日当たりの良い場所で発見された植物で、水はけは良いが』、『湿り気のあるローム状の土を好み、ややかげる程度か』、『日向を好む。土壌中にいくらか石灰が入っているほうが良いが、多くなくて良い』。『果実は乾燥させて利尿薬にする』。『ニワウメの仁は汎用性が高く下剤、利尿剤、血圧降下などに使われ、便秘、浮腫、不眠症に内服として処方される』。『仁以外もまれに利用される。たとえば根は便秘、子供の熱、歯の問題などに利用される』。また、『葉は緑の染料となり、実は灰色がかった緑の染料になる』。以下、「品種および変種」の項には、品種七種と、変種十八種が並んでいる。
「櫻桃(ゆすら)の類なる」良安が、甚だ――異常と言っていい――偏愛する「ゆすらうめ」である。今まで電子化でも、そこらじゅうで、「似てる」「その仲間」的な謂いで出現し、十項目を超えるのである。学名は、
バラ目バラ科サクラ属ユスラウメ Prunus tomentosa
である。考証で、えらく手古摺った「櫻桃」を見られたい。そこで引いた当該ウィキから引く(同前の処理をした。太字・下線は私が附した)。漢字表記は『梅桃、桜桃、山桜桃』で、『若枝や葉に毛が生えているのが特徴』で、『単にユスラとも』呼ばれる。『庭園などに植えられる。サクランボに似た赤い小さな実をつけ、食用になる。漢名は英桃。俗名はユスラゴ』。『和名ユスラウメの由来について、植物学者の牧野富太郎の説によれば、食用できる果実を収穫するのに』、『木をゆするので』、『この名がつけられたのではないかとしている』。一説に、『サクラを意味する漢字「櫻」は、元々はユスラウメを指す字であった』ともする。『茨城県西南地域ではユスラウメとは呼ばず』、『「よそらんめ」と方言で呼ぶ。福島県相馬地方では「リッサ」と方言で呼ぶ』。『中国北西部、朝鮮半島、モンゴル高原原産。日本へは江戸時代初期にはすでに渡来して、主に庭木として栽培されていた』。『落葉広葉樹の低木で、樹高は』三~四『メートル』『で』、『よく分枝する。樹皮は紫褐色や暗褐色で、生長とともに灰色を帯び、めくれるように不規則に剥がれる。一年枝や若枝は褐色で、短毛が密に生えている。葉は長さ』四~七『センチメートル』『の楕円形で、葉脈に沿って凹凸があり、全体に細かい毛を生じる』。『花期は』四『月。葉が開くのと同時、または』、『葉が展開する前に、桜に似た白色または淡紅色の五弁の花が葉腋に』一『つずつ』、『咲く。果期は』六『月。花後は』、『小ぶりな丸い果実をつけ、赤色に熟して食用になる。果実はニワウメ』(庭梅:バラ科スモモ属ニワウメ亜属ニワウメ Prunus japonica )『よりやや大きく、ほぼ球形ながら』、『モモの実のように』、『かすかな縦割れがあり、表面には毛がない』。『冬芽は互生し、暗褐色の先が鋭くとがった長楕円形で芽鱗』六~八『枚に包まれており』、一『か所にほぼ』三『個つく。短枝には花芽が集中する。葉痕は心形や半円形で、維管束痕が』三『個ある』。『植栽として』、『庭や庭園などに植えられて栽培される。性質は強健で、耐寒性・耐暑性ともに強く、病害虫にも強い。用土は過湿を嫌うので、水はけの良い土に植える。日照不足になると、株が弱ってしまうだけでなく、果実の収穫も減ってしまうため、なるべく日当たりの良い場所に植える』。三『月頃と果実の収穫後に化成肥料を、また』十一『月頃には有機肥料の寒肥を施す』。『普段の剪定は特に必要ないが、日当たりの悪い枝は枯れやすいので、込み合う枝の間引きと、長く伸びた枝の切り戻しを必要に応じて行う』。『増やし方は、タネを採取しての実生』だが、『その他、挿し木、接ぎ木で増やすことができる』。一『年生接木苗では植え付け後』二~三『年、実生でも』三~四『年で果実がなり始める』。『果実は薄甘くて酸味が少なく、サクランボに似た味がする。そのままでの生食、あるいは果実酒などに利用される』。『大分県豊後大野市清川地区では、ユスラウメにモモを接ぎ木して栽培した「クリーンピーチ」が特産品となっている』とある。
*
最後に。
本『「和漢三才圖會」植物部』は、昨年の二〇二四年四月二十七日に、『ブログ2,150,000アクセス突破記念 「和漢三才圖會」植物部 始動 / 卷第八十二 木部 香木類 目録・柏』として始めた。東洋文庫訳全十八巻の植物部最初の一巻である第十五巻が、この「庭梅」で終っている。植物部は後、二巻と最終巻の百七十六ページ(約最終巻の半分強)で終わっている。このペースだと、今から三年弱で完遂出来そうである。――父の一周忌(三月二十一日)を前に一区切りを終えた――。感慨無量である……]
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