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2025/03/17

和漢三才圖會卷第八十七 山果類 橅

Buna

 

 

ぶな     撫與模同

       俗用之而

【音巴】 字義不當

        附奈木

 

△按橅阿波土佐紀州勢州江州深山多有之人家栽者

 希也俗云橿有八種橅亦其一也葉似橿葉而團小冬

 凋落【橿葉冬亦不落】花似空疏花形而小白色最不美結實有

 稜畧似蕎麥形而大褐色熬食之中子香美也其木膚

 白無繧柔脆不堪材用唯斫成作紀州黒江椀江州多

 賀杓子爾最下品也

 

   *

 

ぶな       「撫」は「模」と同《おなじ》。

         俗に、之れを用ふ。而《しかれ》ども、

         字義、當らず。

【音「謨」。】 

         附奈木(ぶな《のき》)

 

△按ずるに、橅は、阿波・土佐・紀州・勢州・江州、深山に多《おほく》、之れ、有《あり》て、人家に栽《うう》る者、希《まれ》なり。俗、云《いふ》、「橿(かし)に、八種、有り。」≪と≫。橅も亦、其《その》一《ひとつ》なり。葉は、橿の葉に似て、團《まろ》く、小《ちさ》く、冬、凋落《しぼみお》つ【橿の葉は、冬、亦、落ちず。】。花、「空疏(うつぎ)」の花の形に似て、小く、白色。最《もつとも》、美ならず。實を結ぶ。稜(かど)、有《あり》、畧《ちと》、蕎麥(そば)の≪實の≫形に似て、大《おほき》く、褐色(きぐろ)。熬《い》り、之れを食ふ。中子《なかご》、香(かうば)しく、美なり。其の木の膚(はだ)、白く、繧(もくめ)、無く、柔《やはらか》に≪して≫、脆《もろ》く、材用に堪へず、唯《ただ》、斫(はつ)り成して、紀州黒江《くろえ》の椀、江州の多賀の杓子《しやくし》に作るのみ。最下品なり。

 

[やぶちゃん注:これは、

双子葉植物綱ブナ目ブナ科ブナ属ブナ Fagus crenata

である。「日本大百科全書」から引く(読みは一部を除いてカットした)。『ブナ科(APG分類:ブナ科)ブナ属の落葉高木。高さ』二十『メートル以上、直径』一『メートルにも達する。樹皮は灰白色で平滑であるが、地衣類がつきやすくさまざまな斑紋をつくる。葉は左右不対称の卵形から菱形で、縁(へり)は波状の鋸歯がある。側脈は』七~十一『対で、先端は上部へ流れる。花は新葉より』、『すこし早く開く。雌花は新枝の上部の葉腋につき、緑色の総包内に、赤紫色の柱頭をもつ』二『個の花をつける。雄花は新枝の下部につき、細い柄をもつ頭状花序を下垂し、黄色の葯が割れ』、『大量の花粉を放出する。風媒花で、雌性先熟である。一雌花内には三つの子房と六つの胚珠があるが、一胚珠だけが成長して殻斗内に二堅果を結ぶ。秋、黄葉に先だって成熟する。堅果は褐色で三稜のある卵形なので、ソバの実にたとえてソバグリともいう。隔年結果の性質が強く、豊作は』六~七『年に』一『回程度と少ない。堅果はシギゾウムシ』(甲虫目ゾウムシ科シギゾウムシ属 Curculio )『の食害や粃(しいな)が多く、落下後の乾燥にもきわめて弱いことから、天然更新上の一つの障害になっている。ほかのブナ科の種は、発芽のときに地下に種子が残る地下子葉型であるが、ブナだけは双葉が地上に出る特性をもつ。北海道渡島(おしま)半島の尻別川流域を北限とし、鹿児島県高隈(たかくま)山まで分布する。温帯林の肥沃な土地の優占種となり、いわゆるブナ帯を形成する。とくに多雪な日本海型気候下では他種との競争に強く、近年の伐採を免れた美林が残存する。材は人工乾燥と防腐の技術により、最近では家具材やフロアリングのベニヤ板などとして重要となっている』。『ブナ属には、日本産のイヌブナのほか、ヨーロッパブナ、アメリカブナ、タイワンブナなど』十『種以上知られている。かつてヨーロッパ文明をはぐくみ、「森の母」と尊ばれたブナの広大な自然林も、今日では牧畜や農耕や植林のため、その大半が失われてしまった』とある。当該ウィキもリンクしておく。

『「撫」は「模」と同《おなじ》』は、音が「ブ・モ」である。但し、「橅」を樹種ブナに当てるのは、国字としての用法である。漢語としての「橅」は「かた(形・型)・のり(法・法式)」の意味しかなく、「模」と同義とする。「而《しかれ》ども、字義、當らず」とあるのは、それを指している。

「橿(かし)」「かし」は八種どころか、数々、ありまする! 先行する「櫧木」の私の迂遠注を御覧あれかし! 「日本大百科全書」の「カシ」「かし/樫」「橿」も引用しておく(読みは一部を除きカットした)。『一般にはブナ科(APG分類:ブナ科)の常緑性の種を総称する。分類学的にはコナラ属Quercusのアカガシ亜属Cyclobalanopsisに含まれ、殻斗の鱗片が同心円状に合一し、数層の横輪をつくり、鱗片が瓦』を『重ね』たように『並ぶコナラ亜属とは区別される。したがって、落葉樹が多く』、『かつ』、『コナラ亜属に分類されるoakはナラ類であり、カシと邦訳するのは正確ではない。中国では近年、アカガシ亜属に』「椆」『の字をあて他と区別している。アカガシ亜属以外でカシの名のつくものに、ウバメガシ、コルクガシ(コナラ亜属)とシリブカガシ(マテバシイ属)がある。晩春、尾状の雄花序と』一~三『個の雌花を新葉のわきにつける。堅果(どんぐり)は楕円状球形で、当年の秋までに成熟するアラカシ、シラカシ、イチイガシと、翌年の秋までかかるアカガシ、ハナガガシ、ウラジロガシ、オキナワウラジロガシ、ツクバネガシがある。日本では宮城県以南の暖帯におもに分布し、耐陰性が強く、樹齢も長く、極相林の優占木となる。世界に約』四十『種あり、おもに東アジアに分布し、いわゆる照葉樹林文化の発祥の舞台となった地域と重なる。材は輻射孔材で、カシ(堅木)の名のとおり』、『ブナ科のなかでも強靭で重く、弾力があり』、『水湿にも強いため、古来より農機具、建築、船舶、車両用材に用いられ、果実は飼料、食料として重要であった。庭園樹としても用いられ、関西地方に多いアラカシの生け垣や、関東の農家に残るシラカシの防風・防火林は有名である』。『なお、民間薬の「うらじろがし」は胆石症や腎結石に効くといわれる。この民間薬の薬用起源はきわめて新しく、徳島県東部の勝浦町で』大正一四(一九二五)年頃、『同地方でシラカシとよばれる植物の葉を煎じて服用すると胆嚢結石に著効があったといわれた』昭和三三(一九五八)年、『徳島大学医学部では』十年『年間にわたって』、『この研究を行い、薬効が証明された。このころから多く市販されるようになった』。『カシの材は堅くて弾力性があり、用途が広い。福井県の鳥浜貝塚遺跡(縄文時代)の遺物には、カシの弓、尖り棒、杭などがみられ、なかでも、弓の』六『割がカシ類で、尖り棒もカシ類がもっとも多い。またアカガシ、アラカシ、イチイガシの種子は食用になるが、佐賀県西石田遺跡などからは、貯蔵された種子が大量に出土している。建築材としても優れ、沖縄の守礼門にはオキナワウラジロガシが使われている。ウバメガシは紀伊(和歌山)産の備長炭の原木である』とあった。

「空疏(うつぎ)」漢字表記は「空木」「卯木」で、ミズキ目アジサイ科ウツギ属ウツギ Deutzia crenata

「紀州黒江《くろえ》」現在の和歌山県海南市黒江(グーグル・マップ・データ。以下、同じ)。

「江州の多賀」滋賀県犬上(いぬかみ)郡多賀町(たがちょう)。]

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