阿部正信編揖「駿國雜志」(内/怪奇談)正規表現版・オリジナル注附 「卷之二十四上」「狐唄謠」
[やぶちゃん注:底本はここ。狐の謠いは、本文中にベタ一行であるが、改行し、ブラウザの不具合を考え、四行書きにした。]
「狐唄謠《きつねうたうたひ》」 有渡郡《うどのこほり》久能濱《くのうはま》にあり。「玉滴隱見」云《いはく》。『万治四年に駿州久能の濱にて、狐が小唄を謳ひけるが、其唱歌は、
今年の世の中は、三八廿四合で、
しやうべい八は、あしからう、
後はよかろう、市郞兵衞、
ことしばかりの安樂じや。
と謳《うたひ》しとなり。云云。
[やぶちゃん注:今年の米問屋の相場への不吉な予言であろう。
「久能濱」ここ(グーグル・マップ・データ)。久能山東照宮の正面の海岸。
「玉滴隱見」天正(一五七三年~一五九二年)の頃から、延宝八(一六八〇)年(徳川家綱(同年逝去)・徳川綱吉の治世)に至る雑説を年代順に記した雑史で、作者は、江戸前期の儒者で林羅山の三男であった林鵞峰(はやし がほう 元和四(一六一八)年~延宝八(一六八〇)年)。国立国会図書館の「レファレンス協同データベース」のこちらによれば、『斎藤道三が土岐家を逐う出世話・本能寺の変・関ヶ原の合戦・大坂の陣・島原の乱・慶安事件・承応事件・伊達騒動・浄瑠璃坂の敵討・末次平蔵の密貿易事件など』、『ほか』、『多くの逸事、 落書・落首を収めた近世期の生の史料』とある。「国書データベース」のここ(写本)で視認出来る。
「万治四年」一六六一年。]
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