阿部正信編揖「駿國雜志」(内/怪奇談)正規表現版・オリジナル注附 「卷之二十四上」「奇兒現橋上」
[やぶちゃん注:底本はここ。]
「奇兒現橋上《きじ きゃうじやうに あらはる》」 庵原郡江尻驛巴川《ともゑがは》にあり。傳云《つたへいふ》、『慶長十六年九月、神君、命、有《あり》て、始《はじめ》て此橋を架《かけ》らる。極老《ごくらう》の夫婦をして、始渡《はじめわたし》の式を行はれんとす。時に水中より、奇兒、出現して、橋上を府中の方《かた》に向《むかひ》て、步み去る。故に「兒橋《ちごばし》」と號《なづ》く。云云。』。是、河伯《かはく》の類《るゐ》にや。
[やぶちゃん注:「江尻驛巴川」清水区銀座の、ここに、ズバり、「稚児橋」(ちごばし:グーグル・マップ・データ)がある。またまた、ズバり!(胡瓜持っとる!) 河童が!!(甲羅バッちり! 相撲をとる瞬間か?) 橋の橋四方の柱の上に!!!(蓮の葉の日傘や!) 立乗っとるがね!!!!(スゴ過ぎ! 女の子の河童でんがな! 総て同サイド・パネル画像)
「慶長十六年九月」開幕から八年後。グレゴリオ暦で一六一三年十月十四日から十一月十一日。
「始渡の式」所謂、橋の「渡り初(ぞ)め」である。当該ウィキによれば、『日本では、その地域の三世代の家族をはじめ、自治体の関係者などが最初に渡って祝う行為。神式で渡り初めを行う場合は、「手水→修祓→降神→献饌→祝詞奏上→清祓→玉串拝礼→撤饌→昇神→渡り初め」という順序で行うのが一般的。またその渡り初めの行列は、「前導所役、大麻所役、斎主、祭員、伶人、長老夫婦、子夫婦、孫夫婦、主祭者、匠長、匠、参列者」とし、「斎紐」は主祭者が斎鋏で切るのを本義とする』とある。所謂、長生きしている老人とその代々の永い福にあやかって、橋の安全へと転移させる類感呪術の一種である。現代でも行われている。
「河伯」ここは河童のこと。「河伯」は中国の河川(特に黄河に代表される)の神。本邦では河童と同義に用いられるが、全くの別物である。]
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