和漢三才圖會卷第八十八 夷果類 榧
[やぶちゃん注:右下方に二個の実の図が添えてある。]
かや 柀子 赤果
玉榧 玉山果
榧【音斐】
【和名加倍
俗云加也】
榧字亦作棑
本綱榧生深山中人呼爲野杉其木如栢而微軟其理似
松有文采堪爲噐用其葉似杉絕難長木有牝牡牡者𬜻
而牝者實冬月開黃圓花結實大小如棗其核長如橄欖
核有尖者不尖者無稜而殼薄黃白色其仁有一重黒粗
衣中白色嚼久漸甘美可生啖亦可焙收以小而心實者
爲佳一樹不下數十斛
榧實【甘平濇】 常食治五痔療寸白蟲小兒黃瘦有蟲積者
宜食之以豬脂炒榧黒皮自脫榧子同甘蔗食其渣自
軟【榧子皮反菉豆能殺人也】
△按榧和州吉野之產最良其木理細宻而有文采芬香
用爲棊局又能埋土水不朽用堪浴室之材𤋱火以可
避蚊蚊惡其香去蜈蚣喜其香慕來凡好不好之異如
此者多又有不結實樹【俗呼倍倍榧】凡榧子殼頭近於尖𠙚
有小肬目以指甲押之則能破其中子有紫黒衣此與
栗子衣同味甚澀濇俗呼曰澀皮難脫連殼微焙則澀
皮昜脫甘香美山人摘榧子糝灰經日販之
古今醫統云榧子陳者浸一宿以烈火烘皮皆砧其殼
食之如新
榧油 取中子微炒搾之以其油煎諸果麪及豆腐香味
勝於麻油然本草不言榧油何哉
〇柀子 神農本草以爲別物汪頴爲粗榧蘇恭時珍等
以爲榧異名倭名抄以上柀訓未木異說紛紜恐倭名
抄可爲是
又倭名抄以柏爲榧異名而柏與栢同字故俗多以栢
爲榧訓用皆其誤起于和名抄【柏卽松柏之柏也其木葉似榧而異】
*
かや 柀子《ひし》 赤果
玉榧《ぎよくひ》 玉山果
榧【音「斐」。】
【和名、「加倍《かへ》」
俗、云ふ、「加也《かや》」。】
「榧」の字、亦、「棑」に作る。
「本綱」に曰はく、『榧は、深山の中に生ず。人、呼んで、「野杉《やさん》」と爲《なす》。其の木、栢《はく》のごとくにして、微《やや》軟なり。其の理(きめ)、松に似て、文采《もんさい》、有り。噐《うつは》の用と爲るに、堪《たへ》たり。其の葉、杉に似、絕(たゞ)、長《ちやう》≪ずる≫に難《なん》≪あ≫り。木に、牝・牡、有り、牡は、𬜻《はな》さいて、牝は、實(みの)る。冬月、黃≪なる≫圓《まろき》花を開き、實を結ぶ。大≪いさ≫、小≪さく≫、棗《なつめ》のごとく、其の核《さね》、長《ながく》して、橄欖の核のごとし。尖る者、尖らざる者、有り。稜《かど》、無《なく》して、殼、薄く、黃白色。其≪の≫仁《にん》、一重《ひとへ》の黒≪き≫粗き衣《ころも》、有り。中は、白色。嚼(か)みて久《ひさしく》すれば、漸《やうや》く、甘美なり。生《なま》にて啖《く》ふべし。亦、焙(い)り、收《たくはふ》べし。小にして、心《しん》[やぶちゃん注:芯。]、實《じつ》する者[やぶちゃん注:しっかりと詰まっているもの。]を以《もつて》、佳と爲《なす》。一樹、數十斛に下《くだ》らず。』≪と≫。
『榧《かし》≪の≫實【甘、平、濇《しぶし》。】』 『常に食《くひ》て、五痔を治す。寸白《すはく》≪の≫蟲を療し、小兒、黃≪にして≫、瘦《やせ》、蟲積《ちゆうしやく》有る者、宜《よろ》し≪く≫、之れを食ふべし。豬(ぶた)の脂(あぶら)を以《もつて》、榧を炒れば、黒皮、自《おのづか》ら、脫(ぬ)ぐ。榧の子と、甘蔗(さたうきび)と同《おなじ》く[やぶちゃん注:一緒に。]食へば、其の渣(かす)、自《おのづと》、軟≪かになれり≫【榧の子の皮、「菉豆《ろうとう》」に反《はん》す。能く、人を殺すなり。】≪と≫。』≪と≫。
△按ずるに、榧は、和州吉野の產、最も良し。其の木理(きめ)、細にして、宻《みつ》にして、文采《もんさい》・芬香《ふんかう》、有り。用《もちひ》て、棊局(ごばん)[やぶちゃん注:碁盤。]と爲《なす》。又、能《よく》、土・水に埋《うづめ》て、朽ちず。用て、浴室の材に堪《たへ》たり。火に𤋱《くん》じて、以《もつて》、蚊を避くべし。蚊は、其の香を惡《にく》んで、去る。≪然れども、≫蜈蚣(むかで)は、其《その》香を喜《よこび》て慕(した)ひ來《きた》る。凡そ、好(すき)・不好(ぶすき)の異、此《かく》のごとくなる者、多《おほし》。又、實を結ばざる樹、有り【俗、呼んで、「倍倍榧」と名づく。】。凡そ、榧の子≪の≫殼の頭《かしら》、尖りに近き𠙚、小《ちさ》き肬《いぼ》≪の≫目《め》、有り、指の甲(つめ)を以《もつ》て、之れを押せば、則《すなはち》、能《よく》、破(わ)れる。其《その》中、子、紫黒《しこく》≪の≫衣《ころも》、有り。此《これ》と、栗≪の≫子《み》の衣と、同《おなじ》く、味、甚だ澀-濇《しぶし》。俗、呼んで、「澀皮」と曰ふ。脫《はぎ》難し。殻を連《つらね》て、微《やや》、焙《あぶ》れば、則《すなはち》、澀皮、脫《はぎ》昜く、甘く、香《か》、美なり。山人、榧の子を摘(つま)みて、灰に糝(まぶ)して、日を經て、之れを販《ひさ》ぐ。
「古今醫統」に云はく、『榧≪の≫子の陳《ふる》者、浸すこと、一宿、烈火を以《もつて》、皮を烘《やく》。皮、皆、其殼(から)≪を≫、砧《たたき》、之≪れを≫食へば、新《あらた》なるがごとし。』≪と≫。
榧の油《あぶら》 中子《なかご》を取《とり》て、微《やや》、炒り、之≪れを≫搾(しぼ)り、其油を以《もつて》、諸果・麪《めん》、及《および》、豆腐を煎(い)る。香味、麻油に勝れり。然《しか》るに、「本草≪綱目≫」、榧≪の≫油を言はざるは、何ぞや。
〇柀子《ひし》 「神農本草」に、以《もつて》、『別物』と爲《なす》。汪頴《わうえい》は、『粗き榧』と爲《なし》、蘇恭・時珍等、以《もつて》、『榧の異名』と爲《なす》。「倭名抄」に柀を以《もつて》「未木(まき)」と訓ず。異說、紛紜《ふんうん》たり[やぶちゃん注:物事の入り乱れているさま。]。恐くは、「倭名抄」を、是《ぜ》と爲《なす》べし。
又、「倭名抄」、「柏(かへ)」を以《もつて》、『榧の異名』と爲《なす》。而≪して≫、「柏」と「栢」と同字なり。故、俗、多《おほく》、「栢」を以《もつて》、「榧」の訓と爲して、用《もちひる》。皆、其《その》誤《あやまり》は「和名抄」に起れり【「柏」は、卽ち、「松柏」の「柏」なり。其の木の葉、榧に似れども、異なり。】。
[やぶちゃん注:本邦の「榧」は、
裸子植物門マツ綱マツ目イチイ科カヤ属カヤ Torreya nucifera
であるが、当該ウィキによれば、『日本の本州(宮城県以西)、四国、九州、屋久島にかけての地域』、及び、『朝鮮半島に分布する』とあって、中国には分布しない。東洋文庫訳の後注にも、『中国の榧も日本のカヤもイチイ科』Taxaceae『であるが、日本のカヤと同種のものは中国にない。しかし、香榧などカヤ属』 Torreya 『のものはあるとされている。』とあった。
そこで、「維基百科」で「香樹」を調べてみると、「榧树」がヒットし、そこの学名は、イチイ科ではあり、繁体字では「榧樹」であるものの、本文で「香榧」とし、学名も、
Torreya grandis (和名は「跡見群芳譜」の「樹木譜」の「カヤ」によって「シナガヤ」(支那榧)であることが判明した)
で、通称で「中国榧」とあって、『主に中国南部の比較的湿度の高い地域で植生する。現在、同種は、浙江省の東陽・諸曁(しょき)・富陽、安徽省の黟県で、ごく一般的である。 同種の成長と成熟期間は 三 年である。一年目に開花し、二年目で結実し、三 年目に成熟する。果実はオリーブ型で、殻は硬く、淡黄色の身は黒い皮で包まれている。可食で、栄養価も高い。東アジア諸国では、将棋盤を作るのに使われる高級木材である。模式標本は浙江省で採集されたものである。』といった内容が記されてあり、「別名」の項には、『香榧・小果榧・凹叶榧・榧』(☜)『小果榧樹・鈍叶榧樹・葯榧・野杉』(☜)『大圓榧・細か圓榧・栾泡榧・米榧・了木榧・芝麻榧・圓榧』とあった。これによって、
「本草綱目」の「榧」と、良安が評言している「榧」は、同科の別種である
ことが明確となった。但し、
中国には恐らく、Torreya grandis ではない、Torreya 属は他にもありそうに思われる。「跡見群芳譜」の「樹木譜」の「カヤ」を見るに、
Torreya fargesii(巴山榧樹・球果杉・球果榧・崖頭杉・箆子杉)
チャボガヤ Torreya grandis var. radicans nucifera
ヒダリマキガヤ Torreya grandis var. macrosperma
コツブガヤ Torreya grandis var. igaensis
ハダカガヤ Torreya grandis var. nuda
雲南榧樹Torreya yunnanensis
が掲げられてあるが、この内、
「チャボガヤ」(矮鶏榧)は、本邦のカヤが、本州の日本海側の多雪地帯に適応した変種
であるから中国産ではなく(当該ウィキを参照)、ヒダリマキガヤ・コツブガヤ ・ハダカガヤも、学名は本邦のカヤの変種であり、岐阜県「東白川村」公式サイト内の「東白川村の文化財」の「天然記念物」の「邦好(くによし)の大カヤ」の解説を見る限り、本邦産と思われるが、最後の「雲南榧樹」は中文名(「維基百科」の「云南榧树」)から見て、中文名が雲南省由来であるから、中国産カヤ属の一種であることは疑いない。そこで、「拼音百科」を調べたところ、「榧属」があり、そこに、「下級分類」の項で、
巴山榧 Torreya fargesii
巴山榧(原亜種)Torreya fargesii subsp. fargesii
四川榧(亜種)Torreya fargesii subsp. parvifolia
があり、同百科の当該ページで、分布を『陝西省虹陽溝、双河、宣陽、陝西省黄白山、河南省上城、湖北省英山桃花城森林農場、湖南省石門市』、『四川省西部』とあった。少なくとも、以上の太字の種は、中国に分布するカヤ属の種であることは明らかである。
良安は、残念ながら、無論、別種とは考えていない。
なお、引用は、「漢籍リポジトリ」の「本草綱目」の「漢籍リポジトリ」の「卷三十一」の「果之三」「夷果類」の「五斂子」([077-11b]以下)のパッチワークである。
「棗」双子葉植物綱バラ目クロウメモドキ(黒梅擬)科ナツメ属ナツメ Ziziphus jujuba var. inermis 。先行する「棗」を見られたい。
「橄欖」再三、言っているが、オリーブと早まってはいけない。全くの別種である、双子葉植物綱ムクロジ目カンラン科 Burseraceaeカンラン属ウオノホネヌキ(正式和名だが、「カンラン」でないと、通じないな) Canarium album 。先行する「橄欖」を見られたい。
「數十斛」「槲」は「石」に同じで、「一槲」は「十斗」。明代の「一斗」は、現在の一斗(十八・〇三九リットル)より少し低い、十七・〇三七リットルであるので、百七十・三七リットル。
「五痔」複数回既出既注だが、再掲しておくと、東洋文庫訳の割注には、『五痔 内痔(脈痔・腸痔・血痔)、外痔(牡痔・牝痔)。』とあったが、これらの各個の症状を解説した漢方サイトを探したが、見当たらない。一説に「切(きれ)痔・疣(いぼ)痔・鶏冠(とさか)痔(張り疣痔)・蓮(はす)痔(痔瘻(じろう))・脱痔」とするが、どうもこれは近代の話っぽい。中文の中医学の記載では、確かに「牡痔・牝痔・脉痔・腸痔・血痔」を挙げているが、やはり具体に病態を記さない。それぞれ想像だが、「牡痔・牝痔」は「外痔核」・「内痔核」でよかろうか。「脉痔」が判らないが、脈打つようにズキズキするの意ととれば、内痔核の一種で、脱出した痔核が戻らなくなり、血栓が発生して大きく腫れ上がって激しい痛みを伴う「嵌頓(かんとん)痔核」、又は、肛門の周囲に血栓が生じて激しい痛みを伴う「血栓性外痔核」かも知れぬ。「腸痔」は穿孔が起こる「痔瘻」と見てよく、「血痔」は「裂肛」(切れ痔)でよかろう。
「寸白《すはく》≪の≫蟲」ヒト寄生性の条虫・回虫・蟯虫等を指す。
「小兒、黃≪にして≫、瘦《やせ》」小児性黄疸であろう。
「蟲積《ちゆうしやく》」同じくヒト寄生虫病による諸症状を指すが、「疳の虫」等という言い方を考えれば、そうでない内臓疾患・精神疾患・神経疾患等も、誤認も含めて、含まれていることも大いにあったろう。
「豬(ぶた)」中国では、この漢字は「豚」を指す。
「甘蔗(さたうきび)」単子葉植物綱イネ目イネ科サトウキビ属サトウキビ Saccharum officinarum 。物自体が奈良時代に齎されているものの、栽培となると、近世で(但し、琉球王国では行われていた)、「日本大百科全書」によれば、中国では、カラサトウキビ(チュウゴクサトウキビ)S. sinensis を唐時代から栽培しており、その栽培技術や砂糖の製法は厳重な管理下に置かれていた。これが日本へ伝えられたのは明代で、一説によると、船が難破して福建省に漂着した奄美大島の直川智(すなおかわち)という人物が、密かに製法を学び取り、慶長一五(一六一〇)年に三本の苗を隠して持ち帰ったのが最初と伝えられる。奄美大島の大和(やまと)村には、直川智を祀る開饒(ひらとみ)神社がある。また江戸後期には、サトウキビは薩摩藩(琉球王国を密かに支配していた)の重要な財源となり、明治維新を裏で支えた、とあった。
「菉豆《ろうとう》」「綠豆」で、これは双子葉植物綱マメ目マメ科マメ亜科ササゲ属ヤエナリ Vigna radiata の種子の名である。「維基百科」の同種は「绿豆」である。要は、我々が食べている「もやし」の種である。詳しくは、先行する「𮅑樹」の私の注を見られたい。
「反《はん》す」食い合わせが禁忌であること。
「蚊は、其の香を惡《にく》んで、去る。≪然れども、≫蜈蚣(むかで)は、其《その》香を喜《よこび》て慕(した)ひ來《きた》る。凡そ、好(すき)・不好(ぶすき)の異、此《かく》のごとくなる者、多《おほし》」個人サイト「感動樹木」の「樹木の見所」
の「榧」のページに、「名前の由来」の項に、『昔、カヤの枝葉を燻して蚊を追い払ったことから、「蚊遣り」→「カヤリ」→「カヤ」となったとの説がある』とある。夏山で、実際に蚊やりに燃やした経験があるが、逆にムカデが好いて寄ってくるというのは、ホンマかいな? 識者の御教授を乞う。
「倍倍榧」不詳。『カヤ属の木の二倍体で不実性になるのかな?』などと安易に妄想させる名だな。
「古今醫統」複数回、既出既注。
「榧の油」高知の「榧工房 かやの森」公式サイト内の「榧の実油(100mL) 希少な榧の実から搾った、日本古来の最高級油」がよい。『現在では榧の実油(榧油)の生産はほとんど行われていないため、その存在はあまり知られていません。しかし、この油は徳川家康が食べた天ぷらにも使われ、大正時代の文献では「最高級の植物油」として紹介されるなど、日本の伝統に根付いた貴重な逸品です』とあり、製油過程も詳しい。
『然《しか》るに、「本草≪綱目≫」、榧≪の≫油を言はざるは、何ぞや』何故かは、判らない。
「柀子《ひし》」サイト「家庭の中医学」の「ヒシ・・榧子」には、『イチイ科 Texaceae 榧樹 Terreya grandis Fort. (カヤ)の成熟種子を乾燥したもの』とするが、おかしいだろ? 「産地」の項に『中国』とあるが、それじゃ、本邦と朝鮮半島にしか分布せんぜ? 「臨床応用」には、『薬性がおだやかで薬力が充分であるから、腸管内寄生虫の駆除に広く用いる。 鈎虫には、百部などを配合して、たとえば榧子殺虫丸を用いると確実な効果がある(条虫の駆虫作用もある)。』とある。
「神農本草」漢代に書かれた最古の本草書「神農本草經」のこと。
「汪頴」各種食品の薬効と料理方法などが記載された中国の本草書に「食物本草」があるが、この書は成立に不審な点があり、一つには、古く、元の李杲(りこう:号は東垣(とうえん))著とされるものの、名借りた別人である、この汪頴なる人物が明の一六二〇年に刊行したものともされる。全七巻。
「蘇恭」蘇敬(五九九年~六七四年)の別称。初唐の官人で本草家。
『「倭名抄」に柀を以《もつて》「未木(まき)」と訓ず』「和名類聚抄」の「卷第二十」「草木部第三十二」の「木類第二百四十八」の「柀」。国立国会図書館デジタルコレクションの当該部を参考に訓読する。
*
柀(マキ) 「玉篇」に云はく、『柀【音「彼」。「日本紀私記」に云はく、『末木、今、案ずるに、又、杉の一名なり。「爾雅注」に見ゆ。】は木の名。柱に作る。之れを埋《うづみ》て、能く、腐ちざる者なり。』。
*
『「倭名抄」、「柏(かへ)」を以《もつて》、『榧の異名』と爲《なす》。而≪して≫、「柏」と「栢」と同字なり。故、俗、多《おほく》、「栢」を以《もつて》、「榧」の訓と爲して、用《もちひる》。皆、其《その》誤《あやまり》は「和名抄」に起れり【「柏」は、卽ち、「松柏」の「柏」なり。其の木の葉、榧に似れども、異なり。】』同前で、「卷第十七」の「菓蓏部第二十六」の「菓類第二百二十一」にある「榧子」。同前で示す。《 》は私が補ったもの。
*
榧子(カヘ《ノミ》) 「本草」に云はく、『柏実【「柏」、音「百」。】、一名は榧子【「榧」は音「匪」。和名「加倍」。】』。
*
……でもね……良安さんよ……あんたは、鬼の首捕ったようにブイブイ言ってるがね、あんたが始めた植物部の冒頭の「柏」、日中の「柏」の違いを認識せずに大誤解の無限ループに嵌まり込んでしまっていた踏み出しから悪魔の左足から入り込んじまったことを……知らねえよな?……その高々の鼻……最後にゃ……腐って、落ちるゼ…………]
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