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2025/05/17

和漢三才圖會卷第八十八 夷果類 阿勃勒

 

Saikati_20250517152301

 

なんはんさいかし

       婆羅門皂莢

       波斯皂莢

阿勃勒

      【婆躍門

        西域國名】

      【波斯

        西南夷國名】

 

本綱阿勃勒樹長三四𠀋圍四五尺葉似枸櫞而短小經

寒不凋不花而實莢長二尺中有隔隔內各有一子大如

指頭赤色至堅硬中黑如墨味甘如飴可食

 

   *

 

なんばんさいかし

       婆羅門皂莢《ばらもんさうきやう》

       波斯皂莢《はしさうきやう》

阿勃勒

      【「婆躍門」は、

        西域《さいいき》の國の名。】

      【「波斯」は、

        西南夷《せいなんい》の國名。】

 

「本綱」に曰はく、『阿勃勒は樹の長さ、三、四𠀋。圍《めぐり》、四、五尺。葉、枸櫞(ぶしゆかん)に似て、短小。寒《かん》を經て、凋まず、花あらずして、實(《み》の)る。莢(さや)の長さ、二尺。中に、隔《しきり》、有り、隔の內、各《おのおの》、一《ひとつ》≪づつ≫、子《み》有り。大いさ、指の頭《かしら》のごとく、赤色。至《いたつ》て堅-硬(かた)く、中《うち》、黑《くろく》して、墨《すみ》のごとし。味、甘《あまく》して、飴(あめ)のごとく、食ふべし。』≪と≫。

 

[やぶちゃん注:これは、日中ともに、

双子葉植物綱マメ目マメ科ジャケツイバラ亜科サイカチ(皁莢・皂莢)属サイカチ Gleditsia japonica

(中文名は「維基百科」の同種のページでは「山皂荚」とする)である。当該ウィキを引く(注記号はカットした)。『別名はカワラフジノキ。漢字では皁莢、梍と表記するが、本来「皁莢」は』同属の『シナサイカチ』( Gleditsia sinensis )『を指す』。サイカチとシナサイカチには『幹に特徴的な棘がある』。『樹齢数百年というような巨木もあり、群馬県吾妻郡中之条町』(なかのじょうまち)『市城』(いちしろ)『の「市城のサイカチ」』(ここ。グーグル・マップ・データ)『や、山梨県北杜市(旧長坂町)』(現在の長坂町(ながさかちょう)中丸(なかまる))『の「鳥久保のサイカチ」』(ここ。グーグル・マップ・データ)『のように県の天然記念物に指定されている木もある』。『和名サイカチは、生薬のひとつである皁角子(さいかくし)に由来し、「皁」は黒、「角」は莢を表わしている。中国名は、山皁莢である』。『日本では中部地方以西の本州、四国、九州に分布するほか、朝鮮半島、中国に分布する。山野や川原に自生する。実や幹を利用するため、栽培されることも多い』。『落葉高木で、幹はまっすぐに延び、樹高は』十二~二十『メートル』『ほどになる。樹皮は暗灰褐色で皮目が多く、古くなると』、『縦に浅く裂ける。幹や枝には、枝が変化した大きくて枝分かれした鋭い棘が多数ある。葉は互生または対生する。短い枝では』一『回の偶数羽状複葉、長枝では』一、二『回の偶数羽状複葉で、長さ』二十~三十『センチメートル 』。『小葉は、長さ』一・五~四センチメートル『ほどの長楕円形で』、八~十二『対』、持つ。『花期は初夏(『五~六『月)ごろ。若葉の間から伸びた長さ』十~二十センチメートル『ほどの総状花序を出して、淡黄緑色の小花を多数つける。花は雄花、雌花、両性花を同じ株につけ、花弁は』四『枚で楕円形をしている』。『果期は秋(』十~十一『月)で、長さ』二十~三十センチメートル『で』、『ねじ曲がった灰色の豆果をぶら下げてつける。鞘の中には数個の種子ができる。種子は大きさは』一センチメートル『ほどの丸い偏平形。冬になると』、『熟した黒い果実(莢)が落ちる』。『芽は互生し、半球状や円錐形で棘の下につく。短い枝にできる冬芽は、複数集まってこぶ状になる。側芽の鱗片は』四~六『枚。葉が落ちた痕にできる葉痕は、心形や倒松形で維管束痕は』三『個ある』。『木材は建築、家具、器具、薪炭用として用いる』。『莢にサポニンを多く含むため、油汚れを落とすため石鹸の代わりに、古くから洗剤や入浴に重宝された。莢(さや)を水につけて手で揉むと、ぬめりと泡が出るので、かつてはこれを石鹸の代わりに利用した。石鹸が簡単に手に入るようになっても、石鹸のアルカリで傷む絹の着物の洗濯などに利用されていたようである(煮出して使う)』。『豆果は皁莢(「さいかち」または「そうきょう」と読む)という生薬で去痰薬、利尿薬として用いる。種子は漢方では皁角子(さいかくし)と称し、利尿や去痰の薬に用いた』。『また』、『棘は皁角刺といい、腫れ物やリウマチに効くとされる』。『豆はおはじきなど子供の玩具としても利用される』。『若芽、若葉を食用とすることもある』。『サイカチの種子にはサイカチマメゾウムシ』(甲虫(コウチュウ)目多食(カブトムシ)亜目ハムシ上科ハムシ科マメゾウムシ亜科Bruchidius (シノニム:Megabruchidius )属 Bruchidius dorsalis )『という日本最大のマメゾウムシ科』『の甲虫の幼虫が寄生する。マメゾウムシ科』Bruchinae『はその名前と違って、ゾウムシ』(科 Curculionidae)『の仲間ではなく、ハムシ科に近く、ハムシ科の亜科のひとつとして扱うこともある。サイカチの種子は硬実種子であり、種皮が傷つくまでは』、『ほとんど』、『吸水できず、親木から落下した果実からは』、『そのままでは何年たっても発芽が起こらない。サイカチマメゾウムシが果実に産卵し、幼虫が種皮を食い破って内部に食い入ったとき』、『まとまった雨が降ると、幼虫は溺れ死に、種子は吸水して発芽する。一方、幼虫が内部に食い入ったときに』、『まとまった雨が降らなければ』、『幼虫は種子の内部を食いつくし、蛹を経て』、『成虫が羽化してくることが知られている』。『サイカチの幹からはクヌギやコナラと同様に、樹液の漏出がよく起きる。この樹液はクヌギやコナラの樹液と同様に樹液食の昆虫の好適な餌となり、カブトムシやクワガタムシがよく集まる。そのため、カブトムシを「サイカチムシ」と呼ぶ地域も在る。クヌギやコナラの樹液の多くはボクトウガ』『によるものであるという研究結果が近年出ているが、サイカチの樹液を作り出している昆虫は』、未だ、『十分研究されていない』。『また』、『サイカチは』「万葉集」に『収録された和歌の中にも』「屎葛(くそかづら)」の名で『詠まれている』とある。「万葉集」のそれは、「卷十六」 の「高宮王(たかみやのおほきみ:生没年不詳。奈良時代の歌人・官人。当該ウィキによれば、『名前に「王」が付いているところから皇族出身と推察されるが、詳しい系譜などは不明』で「万葉集」には二首の歌が載る、とある)の「數種(くさぐさ)の物を詠める歌二首」の第一首目(三八五五番)で、

   *

 𫈇莢(ざふけふ)に

     延(は)ひおほとれる

    屎葛(くそかづら)

   絕ゆることなく

      宮仕(みやづかへ)せむ

   *

である。「𫈇莢(ざふけふ)」ジャケツイバラ亜科ジャケツイバラ属ジャケツイバラCaesalpinia decapetala 。蔓性落葉低木。山地や河原に生える。枝に棘を持ち、葉は羽状複葉。初夏、黄色の花が、多数、開き、果実は莢(さや)状になる。種子は有毒であるが、漢方で「雲実」(ウンジツ)といい、マラリアや下痢に用いる。名は、茎が蜷局(とぐろ)を巻くように見えるのに由来する。別名を「河原藤」(かわらふじ)と呼ぶ(以上は小学館「デジタル大辞泉」に拠った。「万葉集」では、「𫈇莢(ざふけふ)」を訓読で「かはらふじ」と読む説がある。

 なお、「漢籍リポジトリ」の「本草綱目」の「漢籍リポジトリ」の「卷三十一」の「果之三」「夷果類」の「阿勃勒」([077-28a] 以下)からの抄録である。短いので、全文を手を加えて、以下に示す。

   *

阿勃勒【拾遺】 校正【自木部移入此】

 釋名婆羅門皂莢【拾遺】波斯皂莢【時珍曰婆羅門西域國名波斯西南夷國名也】

 集解【藏器曰阿勃勒生拂林國狀似皂莢而圓長味甘好喫時珍曰此卽波斯皂莢也按段成式酉陽雜俎云波斯皂莢彼人呼爲忽野簷拂林人呼爲阿梨樹長三四丈圍四五尺葉似枸櫞而短小經寒不凋不花而實莢長二尺中有隔隔內各有一子大如指頭赤色至堅硬中黑如墨味甘如飴可食亦入藥也】

   *

「西南夷」中国古代に今の四川省南部から雲南・貴州両省を中心に居住していた非漢民族の総称。チベット(蔵)・タイ(溙)・ミヤオ(苗)などの諸民族に属する。滇(てん)・雟(すい)・哀郎・冉駹(ぜんもう)・邛(きよう)・筰(さく)など数多く。それぞれが幾つもの部族に分かれ、習俗・言語を異にした。四川省から西南夷を介してビルマからインドへ、また、南越の番禺(広州市)へと交通路が通じていて、文物の交流に重要な役割を果たした。前漢の武帝はこの地方の経営に乗り出し、これら諸族の君長を圧服、又は、懐柔して、牂柯(しようか)・越雟などの郡を置いた(以上は平凡社「世界大百科事典」に拠った)。

「枸櫞(ぶしゆかん)」ムクロジ目ミカン科ミカン属シトロン変種ブッシュカン Citrus medica var. sarcodactylis 。先行する「山果類 佛手柑」を見よ。]

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