和漢三才圖會卷第八十九 味果類 柚山椒
ゆうさんしやう
柚山椒
本綱蘓頌曰東海諸島上有椒枝葉皆相似子長而不圓
甚香其味似橘皮島上麞鹿食其葉其肉自然作椒橘香
△按俗稱柚山椒者是也𠙚𠙚希有之枝葉子皆相似而
其香氣似柚橘之類不上品伹其子長而不圓者少異
而已
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ゆうさんしやう
柚山椒
「本綱」、蘓頌、曰≪はく≫、『東海諸島の上に、椒、有《あり》。枝・葉、皆、相《あひ》似て、子《み》、長《ながく》して、圓《まろ》からず。甚《はなはだ》、香《かほ》ふ[やぶちゃん注:ママ。]。其《その》味、「橘皮《きつぴ》」に似《にる》。島の上≪にては≫、麞-鹿《のろじか》、其の葉を食ふ。其の肉、自然に、椒・橘の香《か》を作《な》す。』≪と≫。
△按ずるに、俗、「柚山椒」と稱するは、是《これ》なり。𠙚𠙚《ところどころ》、希《まれ》に、之《これ》、有り。枝・葉・子、皆、≪山椒と≫相《あひ》似て、其の香氣、柚《ゆず》・橘《たちばな》の類《たぐゐ》に似たり。上品ならず。伹《ただし》、「其の子、長くして、圓かならず。」と云《いふ》は、少《すこし》、異《こと》なるのみ。
[やぶちゃん注:調味料としての「柚山椒」は私の欠かせないものだが、植物種としての「柚山椒」なるものは、ネット上では、如何にしても見出せない。従って、注は、一切、附せられない。東洋文庫訳もシカトしている。植物種として御存知の方は、是非、御教授を乞うものである。
以上の引用本文は、「本草綱目」の「漢籍リポジトリ」の「卷三十二」の「果之四」「味類一十三種内附四種」の冒頭の「秦椒」の「集解」の一部である。
「橘皮」「第八十七 山果類 橘」の本文中の「橘皮」、及び、私の注の「枳実」及び「橘皮」を参照されたい。
「麞鹿」シカ科オジロジカ亜科ノロジカ属ノロジカ Capreolus capreolus。「獐(のろ)」とも。「ノロジカ」は哺乳綱鯨偶蹄目シカ科ノロ亜科ノロ属ノロ Capreolus capreolus 。漢字表記は「麕鹿」「麞鹿」麇鹿」「獐鹿」であるが、単に「ノロ」とも呼び、その場合は以上の「鹿」を除去した一字で通用する。ウィキの「ノロジカ」によれば、『ヨーロッパから朝鮮半島にかけてのユーラシア大陸中高緯度に分布する。中国では狍子』(パァォヅゥ:或いは単に「狍」)『と呼ばれる』。体長は約一~一・三メートル、尾長約五センチメートルと、『小型のシカ。体毛は、夏毛は赤褐色で、冬毛は淡黄色である。吻に黒い帯状の斑があり、下顎端は白い。喉元には多彩な模様を持つのがこの種の特徴である。臀部に白い模様があるが、雌雄で形は異なる。角はオスのみが持ち、表面はざらついており、先端が三つに分岐している。生え変わる時期は冬』。『夜行性で、夕暮れや夜明けに活発に行動する。食性は植物食で、灌木や草、果実などを食べる』とある。私の「和漢三才圖會卷第三十八 獸類 麞(くじか・みどり) (キバノロ)」も参考になろう。]
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