阿部正信編揖「駿國雜志」(内/怪奇談)正規表現版・オリジナル注附 「卷之二十四下」「國分寺藥師佛奇」
[やぶちゃん注:底本はここ。記号(変更を含む)を添え、段落・改行を成形した。]
「國分寺藥師佛奇」 安倍郡北安東村《きたあんどうむら》龍池山國分寺にあり。寺記云《いはく》、
『永祿十二年、武田晴信入道信玄、兵を當國に入《いる》るの時、當寺の本尊藥師佛を取《とり》て鑄潰《いりつぶ》し、火砲に用《もち》ゆ。其《その》首《かしら》、爍《と》けず、一夜の內に堂中に飛來《とびきた》る。今、猶《なほ》、首のみ、存せり。若《もし》、諸願ある人、是を擡《もたげ》る[やぶちゃん注:持ち上げる。]に、罪障深き者は、力あり共《とも》あがらず。云云』。
奇成哉《きなるかな》、傳云《つたへていふ》、
「永祿兵災の後《のち》、寺地、年々に破壞して、本尊再建の力《ちから》なく、終《つひ》に木佛を彫《ほり》て本尊とす。」。
[やぶちゃん注:「龍池山國分寺」前の「國分寺大蛇呑經」を見よ。
「永祿十二年」一五六九年。この年の末、信玄は、再び、駿河侵攻を行い、駿府を掌握している。
「奇成哉傳」「近世民間異聞怪談集成」は書名としているが、こんな書は存在しないようであるので、以上のように訓読した。もし、あるというならば、是非、お教え戴きたい。]
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