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2025/06/26

和漢三才圖會卷第八十九 味果類 畨椒

 

Tougarasi

 

たうがらし   畨者南畨之

        義也

畨椒

        俗云南蠻胡椒

        今云唐芥子

 

 

草本花詩譜云畨椒叢生白花子儼如禿筆頭味辛色紅

甚可觀子種

△按畨椒出於南蠻慶長年中此與煙草同時將來也中

 𬜻亦太明之末始有之故本草綱目未載之今立于椒

 薑之右二月下種葉如柳而小亦似胡椒木葉而柔叢

 生枝脆𠙚𠙚多栽之或栽盆中玩賞之五月開小白花

 結子有數品如筆頭如椎子如櫻桃如椑柹或攅生或

 向上皆生青熟赤【或有黃赤色者】中子如茄子仁甚辣麻唇舌

 或噎得火則愈烈生熟用少投羹中或和未醬食之有

 微香能進食【性大温多食之動火發瘡墮胎】能治行人胼胝【畨椒燒末拌飯糊傅】

又能治小鳥之病養樊中者或脹或糞閉不餌啄者急用

 畨椒剉浸水令吞其水則活【屢試之有効】畨椒近來之物誰

 人始用之耶殊不理所推

食畨椒噎者急吃沙糖則解之或吃濃未醬汁亦佳

 

   *

 

たうがらし   「畨」とは「南畨」の

        義なり。

畨椒

       【俗に云ふ、「南蠻胡椒」。

        今、云ふ、「唐芥子」。】

 

 

「草本花詩譜」に云はく、『畨椒、叢生して白き花。子《み》、儼《おごそか》に「禿筆《とくひつ》」の頭《かしら》[やぶちゃん注:毛筆の擦り切れた筆先。]のごとし。味、辛《からし》。色、紅《くれなゐ》。甚だ、觀るべし。子《さね》を種(う)へる。』≪と≫。

△按ずるに、畨椒は、南蠻に出づ。慶長年中[やぶちゃん注:一五九六年から一六一五年まで。]、此れと煙草(たばこ)と、同時≪に≫將來≪せる≫なり。中𬜻にも亦、太明《たいみん》[やぶちゃん注:明代。]の末《すゑ》、始《はじめ》て、之れ、有る。故《ゆゑ》、「本草綱目」、未だ、之《これ》≪を≫載せず。今、「椒《せう》」・「薑《きやう》」の右に立≪てたり≫。二月、種を下《くだ》す[やぶちゃん注:植える。]。葉、柳のごとくにして、小《ちさ》く、亦、胡椒の木《き》の葉に似て、柔かな《✕→かにして》、叢生《さうせい》して、枝、脆(もろ)し。𠙚𠙚《しよしよ》に、多く、之れを栽《う》ふ。或《あるい》は、盆中に栽《うゑ》て、之れを玩賞す。五月、小≪き≫白花を開き、子を結ぶ。數品《すひん》、有り、筆の頭のごとく、椎子《しゐ[やぶちゃん注:ママ。]》のごとく、櫻-桃(ゆすら)のごとく、椑柹(さるがき)のごとく、或は、攅生(すゞなり)、或は、上に向《むき》して、皆、生《わかき》は、青、熟せば、赤し【或いは、黃赤色の者、有り。】。中≪の≫子《さね》、茄子《なす》の仁《にん》のごとく、甚だ、辣《から》し。唇・舌を麻(しびら)かし、或は、噎(む)せる。火《ひ》を得れば、則《すなはち》、愈《いよ》いよ[やぶちゃん注:最初の「いよ」はないが、送り仮名で繰り返しの「〱」があるので、かく、した。]烈(はげ)し。生・熟≪ともに≫用《もちひ》て、少し、羹《あつもの》≪の≫中に投じ、或は、未-醬(みそ)に和(ま)ぜて、之≪れを≫食へば、微香《びかう》、有り、能く食を進む【性、大温。多く之れを食へば、火《くわ》を動かし、瘡《かさ》を發し、胎《はららご》を墮《おろす》。】。能《よく》、行人《かうじん》の胼-胝(まめ)を治す【畨椒、燒きて、末《まつ》にして、飯糊《めしのり》に拌《まぜ》、傅《つ》く。】。

又、能く、小鳥の病を治す。樊《かご》[やぶちゃん注:鳥籠。]の中に養《か》ふ者、或は、脹《ふく》れ、或《あるいは》、糞、閉《へいし》、餌を啄《ついば》まざる者、急《すみやか》に畨椒を用《もちひ》、剉《きざみ》、水に浸《ひた》して、其《その》水を吞ましめば、則《すなはち》、活す【屢(《しば》しば[やぶちゃん注:同前で、最初の「しば」はないが、送り仮名で繰り返しの「〱」があるので、かく、した。])、之れを試みるに、効、有り。】。畨椒は、近來の物、誰人《たれびと》が、始《はじめ》て、之れを用《もちひる》にや。殊《こと》に理《ことわりの》推す所にあらず。

畨椒を食《くひ》て噎《むせ》る者、急《すみやか》に沙糖を吃《きつ》すれば、則《すなはち》、之《これ》、解す。或は、濃(こ)き未醬汁《みそしる》を吃して、亦、佳し。

 

[やぶちゃん注:椒」(=「蕃(蠻)椒」)は日中ともに、

双子葉植物綱キク亜綱ナス目ナス科トウガラシ属トウガラシ(唐辛子・蕃椒) Capsicum annuum

である。「維基百科」の同種「一年生辣椒」を見よ。本邦の当該ウィキを引く(注記号はカットした。非常に記載が長いので、本記載に拘わらない可能性が高い世界的な種については、断らずに省略、或いは、項目リンクのみとした箇所が複数ある。太字・下線は私が附した)。『ナス科トウガラシ属の多年草または低木(日本など温帯では一年草)。また、その果実のこと。メキシコ原産(南米アンデス地方という説もある)。果実は、辛味のある香辛料(唐辛子)または野菜として食用にされる』。『広義にはトウガラシ属をトウガラシと総称することがあるが、ここでは主に C. annuum 』一『種について述べる』。『和名トウガラシは唐(中国)から伝わった辛子(辛いたね)の意味である。ただし、「唐」は漠然と「外国」を指す言葉で』、唐朝を指すのでも、『中国経由ということで』も『ない。別名では、ナンバン、コウライコショウ、ナンバンコショウともよばれる。異名の「ナンバン」(南蛮)は』、十六『世紀ごろに南蛮船によりポルトガル人が日本へ伝えたといわれるところから名付けられたものである』。『植物種としてのトウガラシ(学名: Capsicum annuum )には辛みのある辛味種と辛みがない甘味種があり、一般に「トウガラシ」とよばれるものは辛味種のほうを指している。具体的には、果肉が薄く』、『甘味があるベル形の中果種を「ピーマン」、甘味がある果肉が厚い大果種を「パプリカ」とよび、辛味のない小果種を「シシトウガラシ」(シシトウ)、辛味があり香辛料として使われる小果種を「トウガラシ」とよんで区別している』。『英名はchili pepper(チリ・ペッパー)、仏名はpiment commum(ピモン・コムム)、伊名ではpeperoncino(ペペロンチーノ)、中国語では辣椒(らっしょう、Làjiāo ラーチァオ)と言う』。『学名では、属名 Capsicum はギリシア語で「箱」や「袋」を意味する caspa が語源で、袋状の果実の形状に由来する。異説には「噛む」を意味する kapto が語源との説もある。また種小名の annuum は、「一年生の」植物の意味である』。『温帯では一年草で、熱帯では多年草でやや低木(灌木)状になる。世界の温帯から熱帯の広い地域で栽培されている。植物学上は、トウガラシはピーマン』(トウガラシ属トウガラシ栽培品種ピーマン Capsicum annuum var. 'grossum')・『パプリカ』(トウガラシの栽培品種の一つ、又は、その品種を原料とする香辛料の名称。本邦では肉厚で辛みがなく甘い Capsicum annuum 'grossum' の品種を指す語である)・『シシトウガラシ』(植物学的にはピーマンと同種で中南米原産)『と同種の植物に分類され、ピーマン・パプリカ・シシトウ』ガラシ『ともトウガラシの栽培品種である』。『草丈はふつう』七十~八十『センチメートル』『ほどの草本だが、基部は木質化する。茎は多数に枝分かれし、全体に無毛である。葉は互生。柄が長く卵状披針形、葉の先は尖り』、『全縁』である。『花期は』七~十一『月ごろで、白い花を付ける。花弁には斑点が見られない。花の後に上向きに緑色で内部に空洞のある細長い』五センチメートル『ほどの実がなる。果実は熟すると、一般に赤くなる。品種によっては丸みを帯びたものや短いもの、色づくと黄色や紫色になるものもある。種子の色は、淡黄白色から黄色になる』。『実の皮も種子も辛みがある。辛味成分カプサイシン』(capsaicin)『は種子の付く胎座』(英語:placenta:植物の子房中の胚珠の接する部分のこと)『に最も多く含まれており、トウガラシは胎座でカプサイシンを作り出している。トウガラシの種子にはカプサイシンがほとんど含まれていないため、種子だけを食べると辛味を全く感じない。カプサイシンは果皮にも含まれるが、胎座ほど多くない』。『シシトウガラシなどの甘い品種は辛い品種と交配が可能である。甘い品種の雌蕊に辛い品種の花粉を交配してできた実は(胎座は甘い品種なので)甘いが、この種子から育った実の胎座は辛くなることがある。従って、辛い品種と甘い品種を植えるときはなるべく距離を置くように注意することが必要である』。『中南米の熱帯アメリカ地域が原産とされる。栽培の起源地はメキシコだと考えられていて、メキシコ中部で紀元前』六五〇〇年~五〇〇〇『年頃の栽培型が出土している。アメリカ大陸の各地では、約』二千『年以上前から栽培が行われていた。南米ペルーでは』一『世紀頃の遺跡からトウガラシ模様が入った織物が発見されている。インカ人はトウガラシをアヤ・ウチュ(「辛辣な者」の意)神として崇拝していた』。『ヨーロッパへは、アメリカ大陸に到達したクリストファー・コロンブスが』一四九三『年にスペインへ持ち帰ったことにより、ヨーロッパ全域に広がった。以後、シルクロードを経て、インドや中国に伝わる』。十六『世紀に伝わったインドではヒハツ』(コショウ属 ヒハツ (畢撥)Piper longum 『やコショウに取って代わり、インド料理の味を大きく変えるほど急速に普及した。トウガラシは』十五『世紀に中南米からヨーロッパに紹介されてから』、二百五十『年足らずで』、『ほとんど世界中に広まった。トウガラシは』十九『世紀になるまでアルプスの北側では』、『あまり食べられてこなかった(この地域では辛味を加える食材としては、寒冷な気候でも栽培しやすいマスタード』(mustard;フウチョウソウ(風蝶草)目アブラナ目アブラナ科アブラナ属セイヨウカラシナ変種カラシナ Brassica juncea var. cernua や、アブラナ科シロガラシ属シロガラシ Sinapis alba の種子やその粉末に、水や酢、糖類や小麦粉などを加えて練り上げた調味料)『やホースラディッシュ』(アブラナ科セイヨウワサビ属セイヨウワサビ  Armoracia rusticana)『の』方『が今でも好まれている)』。『日本への伝来は、安土桃山時代以降の16世紀から』十七『世紀頃に複数のルートで同時期に伝わったとされ』、天正二〇(一五九二)『年の豊臣秀吉による朝鮮出兵のときに種子が導入されたという説や』、戦国時代の天文一一(一五四二)『年にポルトガル人によってタバコとともにトウガラシが伝来したという説がある。江戸時代中期から広く栽培されるようになった。江戸時代までは辛味がある品種しかなく、明治時代になって欧米から辛味のない品種(シシトウガラシ)が導入されて、当初は「甘トウガラシ」と呼んでいた』。

以下、「品種」の項が続き、「日本特産種」の項もあるが、それらさえもネットで調べると、中国と江戸中期の本文には、必要性が疑われるように思われたので、リンクのみにする。

以下、「栽培」の項。『露地栽培では、ふつう春に種をまき、夏から秋にかけて果実を収穫する。高温性があり、栽培適温は』摂氏二十五~三十『度、夜間は』十五『度以上、地温は』二十五『度前後とされる。生育後期は低温に対して強さがあり、晩秋ごろまで生育する。過湿には弱く、根はピーマンよりも繊細であることから、排水性がよい土壌での栽培に適している。一般には、完熟した果実を収穫して、雨の当たらない風通しのよいところに吊して乾燥させてから利用する。未熟果は青トウガラシとして爽やかな辛みを楽しむことができる』。『苗作りは育苗箱に』一センチメートル『間隔で種をまき、日中』二十~三十『度、夜間は』十五『度以上に保温養生して発芽させ、本葉が』一『枚出たころに育苗ポットに移植して、本葉』八~九『枚ぐらいになるまで育苗する。畑は元肥に堆肥などを十分にすき込んで畝をつくり、地温を上げるために黒色ポリフィルムなどでマルチングをして、初期育成の促進に役立てる。苗の植え付けは、畝のマルチに穴を開けて』四十五センチメートル『前後の間隔で行い、早めに支柱を立てて倒伏防止をはかる。定植後の半月後に最初の追肥を行い、以後は』十五~二十『日ごとに畝の周囲の土に肥料を混ぜ込んで土寄せを行う。植え付けから』四十五『日後くらいに収穫期が始まり、葉トウガラシにするときは果実が』四~五センチメートル程度『になったころに株ごと引き抜いて、葉もむしり取って利用する。成熟果は、開花後』五十~六十『日後がたつと』、『実が赤く熟する。株ごと引き抜いて収穫し、軒下などに吊して乾果にしたら』、『随時』、『利用できる』。

以下、「用途」の項。『食用にするのは主に果実で、世界中で香辛料として使われていて、日本人にも深くなじみがある。辛味があり』、『香辛料として使用される辛味種と、辛味がないかほとんどない代わりに』、『糖度が高く、主に野菜として食される甘唐辛子(甘味種)がある。熟して赤い辛味唐辛子のこと赤唐辛子といって、別名「鷹の爪」と呼ばれる、乾燥されたものを使うのが一般的である。また、未熟果で緑色をしている辛味唐辛子は青唐辛子といって、タイなどのアジア諸国でよく使われる。甘味種は、品種や栽培環境によって果実に辛味が出る場合がある。辛味種は、赤唐辛子は刺激的な辛味を持ち、特に種子に強い辛味があり、青唐辛子のなかにはシシトウガラシのような味わいを持つものもある』。品種「伏見辛」(ふしみから)『の葉のように、葉の部分を食用にできる品種もあり、特有の芳香と苦味、ピリッとした辛さが好まれ、佃煮やしそ巻きになどに使われる』。『食材としての旬は夏』七~九月『で、赤唐辛子は鮮やかな赤色で、皮につやと張りがあるもの』が、『青唐辛子は、形が揃って緑色が濃いものが良品とされる』。『辛味種は、赤唐辛子でも青唐辛子でも様々な調味料が作られていて、料理に刺激的なメリハリをつける香辛料として、炒め物、パスタ料理、漬物など、幅広く使用される。また』、『甘味種は、煮物、揚げ物などにして、そのものの味を楽しむ料理に使われる。唐辛子を揚げ物に使うときは、実の中の空気が膨張して破裂してしまうので、実は切って使うか、あらかじめ穴をあけておく。葉を使うときは灰汁(アク)が少ないため、下茹でする必要はない』。また、『花をつけた頃から実が未熟な頃にかけて茎ごと収穫し、葉物野菜の葉唐辛子として利用される』。

以下、小項目「薬用」の項。『果実は香辛料として有名だが、食欲増進、消化促進、健胃、唾液分泌促進作用、皮膚刺激作用があり、薬用として使われることがある。秋に果実が赤熟したものを採集して、陰干ししたものを蕃椒(ばんしょう)か辣椒(らっしょう)、または唐辛子と称している。一般用漢方製剤には配合されていないが、主に辛味性健胃薬や筋肉痛、しもやけなどの局所刺激薬として用いられている。日本薬局方では、アルコールなどを加えてチンキにした、トウガラシチンキの製薬原料としている。腰痛、筋肉痛、肩こり、リュウマチ、関節痛、神経痛にトウガラシチンキを塗る。エキスにして温湿布剤に配合したり、筋肉痛、凍傷、養毛に使われたりする』。『民間療法では、食欲がないときや消化がよくないとき、胃腸が冷えているときの腹痛・下痢などに、細かく刻んだ唐辛子を薬味(香辛料)として用いる。足のしもやけ予防に、靴の中のつま先部分に、ガーゼなどに唐辛子』一~二『個を包んで入れておく。神経痛、しもやけの外用薬でトウガラシチンキを作るときは、唐辛子を刻み、約』三『倍量の』アルコール三十五『度のホワイトリカーに約』、一ヶ『月漬けて、患部に塗る。ただし、トウガラシチンキは温める効果が強いため、患部が冷えていることを確認してから塗るなど』、『用法には注意を要する』。

以下、「虫・抗菌効果」の項。『トウガラシには防虫効果がある事が古くから知られており、書物の保存、ひな人形、五月人形などの物品保存などにも使用されてきた。箪笥などの衣装箱に入れておけば、防虫剤になる。また』、『米の保存など食品保存に用いられていた事もある。かつては、倉庫などで唐辛子の粉を火にくべて、ネズミ駆除にも用いられていた。トウガラシを焼酎に漬け込んで害虫忌避効果がある自然農薬を作る菜園家もいる。トウガラシをアブラナ科、ネギ科、キク科の野菜畑のあちこちに植えておいて、害虫よけにする利用法もある』。『アルコール抽出した成分には』、『種の細菌の増殖を抑制する抗菌効果が有るとする報告があるが、乾燥加工した物品では保存中や流通加工工程中で増殖するカビによって、カビ毒に汚染される可能性が指摘されている』。

以下、「栄養素と辛味成分」の項。『トウガラシの果実は全体の約』七十五『%が水分で構成されており、栄養素は比率の多い順で可食部』百グラム『あたり』、『炭水化物』十六・三グラム『が最も多く、たんぱく質』三・九グラム、『脂質』三・四グラム、『灰分』一

・四グラム『と続く。果皮には辛味成分のカプサイシンやデヒドロカプサイシン、赤色素のカプサンチン、黄色素のβ-カロテンのほか、ルチン、ビタミンB1B2Cなどを含んでいる。そのほかには、アデニン、ベタイン、コリン、ジヒドロカプサイシン、ホモカプサイシン、クリプトキサンチン、ルテイン、クリプトカプシンなどが含まれる』。『カプサイシンは非揮発性で、皮膚や粘膜につくと炎症などを起こす、作用の激しい成分である。ただし、注目に値する様々な機能性をもっていることがわかっており、血管を広げて血行をよくして身体を温める作用や、唾液分泌量を増やして食欲を増進させて消化吸収を助ける作用があり、さらに中枢神経を刺激して副腎ホルモンのひとつアドレナリンの分泌量を増やして代謝を活発にする働きもあるとされる。調理にトウガラシを使うと、ヒトが味の塩気の物足りなさを感じにくくなり、食塩の使用量を減らせる効果を得られることについては、カプサイシンそのものが食塩要求量を減らすという研究報告もある。このカプサイシンの割合を示す値はスコヴィル値』(Scoville scale)『と呼ばれ、カプサイシンの含有量と割合の高低を測定する上でその単位は無くてはならないものとなっている』。『トウガラシにはβ-カロテンが豊富で、生にはビタミンCも豊富に含まれている。他の野菜に比べてビタミン・ミネラル類を含む割合は圧倒的に多いが、使われ方から』、『実際に口に含む量はごく少量であるから、栄養源としては期待できない』。『トウガラシの一種、シシトウガラシの栄養成分はピーマンとほぼ同じで、カロテンやビタミンCが豊富に含まれる。トウガラシの葉や葉柄の部分を食用する葉唐辛子は、緑黄色野菜であり、カロテンやビタミンCを多量に含む』。現在の『日本の主産地は、栃木県、徳島県、千葉県、岐阜県などで、シシトウガラシの場合では、高知県、千葉県、和歌山県、岐阜県などがある。海外から日本へは、主に中国、タイなどの産地から輸入されている』。以下、「近縁種」の項だが、省略する。

 なお、以上の引用の「草本花詩譜」は、東洋文庫の書籍注に、『本文に汪躍鯉の撰とあるも不明。『画譜』の中の『草木花譜』の一巻のことであろうか。『八種画譜』の中では『新鐫』(しんせん)『草本花詩譜』となっている。』とある。ここで言っている「画譜」は「八種畫譜」で、明の黄鳳池の編。「唐詩五言畫譜」・「新鐫六言唐詩畫譜」・「唐詩七言畫譜」・「梅竹蘭菊四譜」・「新鐫木本花鳥譜」・「新鐫草本花詩譜」・「唐六如畫譜」・「選刻扇譜」から成るものを指す。早稲田大学図書館「古典総合データベース」のここで、黄鳳池編「新鐫草本花詩譜」が視認でき、当該部は、図が、ここの左丁で、解説が、ここの右丁である。字を起してみると、

   *

 

叢生白花子儼如禿

筆頭味辛色紅

可觀子種

   *

とあり、そのままに引用していることが判る。

「櫻-桃(ゆすら)」良安が偏愛する双子葉植物綱バラ目バラ科サクラ属ユスラウメ Prunus tomentosa 当該ウィキを参照されたい。

「椑柹(さるがき)」双子葉類植物綱ツツジ目カキノキ科カキノキ属カキノキ変種ヤマガキ Diospyros var. sylverstris

であると、私は「卷第八十七 山果類 椑柹」で、かなり苦労して考証した。そちらを見られたい。

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