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2025/06/30

和漢三才圖會卷第八十九 味果類 呉茱萸

 

Gosyuyu

 

ご しゆゆ

        和名加波波之加美

呉茱萸

 

ウヽ チユイ イユイ

 

本綱呉茱萸今𠙚𠙚有之江淮四川猶多木髙𠀋餘皮青

綠色枝柔肥葉長而皺似椿而闊厚紫色三月開紅紫花

七八月結實於梢頭纍纍成簇而無核嫩時微黃至熟則

深紫有粒大者小者二種小者入藥爲勝懸其子於屋辟

鬼魅

子【辛温有小毒】 浮而降陽中陰也【足太陰經血分及少陰經厥陰經氣分】其用

 有三去胸中逆氣滿塞【一】止心腹感寒㽲痛【二】消宿酒

 爲白豆蔲之使【三】也皆取其散寒温中燥溼解鬱之功

 而已陳久者良不宜多用恐損元氣

 九月九日折茱萸以揷頭或用絳囊盛茱萸以繫臂上

 登髙飮菊花酒則能辟惡氣【見風土記及統齋諧記】

△按吳茱萸本朝古有之今絕無


 おほたら  越椒 欓子 辣子 藙【音毅】

 食茱萸 榝【音殺】 艾子 和名於保太良

 

本綱食茱萸南北皆有之其木亦甚髙大有長及百尺者

枝莖青黃上有小白㸃葉類油麻其花黃色子叢簇枝上

綠色其味辛辣蜇口惨腹【蜇音浙螫也ヒリツク也慘音參酷毒也痛也】

實【辛苦有小毒】 功同呉茱萸力少劣爾【此與呉茱萸一類二種也】

 以椒欓薑爲三香入食物中用之而今貴人罕用之

△按食茱萸亦古者本朝有之今無乎

 

   *

 

ご しゆゆ

        和名、「加波波之加美《かははじかみ》」

呉茱萸

 

ウヽ チユイ イユイ

 

「本綱」に曰く、『呉茱萸は、今、𠙚𠙚《しよしよ》に、之れ、有り。江淮《かうわい》[やぶちゃん注:長江と淮水(黄河と長江の間を東西に流れる第三の大河。下流にある湖で二手に分かれ、放水路は黄海に注ぎ、本流は長江に繋がる。現代では「淮河」と呼称する)。]・四川に、猶を[やぶちゃん注:ママ。]、多し。木の髙さ、𠀋餘《じやうよ》。皮、青綠色。枝、柔にして、肥へ[やぶちゃん注:ママ。]、葉、長《ながく》して皺(ちぢ)み、椿(チヤンチン)[やぶちゃん注:双子葉植物綱ムクロジ目センダン科 Toona 属チャンチン Toona sinensis 本邦の椿(つばき=藪椿:ツツジ目ツバキ科 Theeae 連ツバキ属ヤブツバキ Camellia japonica )とは全く縁がない。これは、本プレジェクトの「卷第八十三 喬木類 椿」で、最初の迂遠な考証で明らかにしてあるので、見られたい。]に似て、闊(ひろ)く、厚く、紫色。三月に、紅紫≪の≫花を開く。七、八月、實を梢の頭《かしら》に結ぶ。纍纍《るいるい》として、簇《むらがり》を成して、核《さね》、無し。嫩《わか》き時、微黃、熟するに至《いたり》ては、則《すなはち》、深紫なり。粒、大なる者、小《ちさ》き者、二種、有り。小き者、藥≪に≫入《いれて》、勝《すぐ》れりと爲《なす》。其《その》子《み》、屋《おく》に懸《かく》れば、鬼魅《きみ》を辟《さ》く。』≪と≫。

『子【辛、温。小毒、有り。】』『浮《うき》て、降《くだ》る。陽中の陰なり【足の「太陰經」の血分、及び、「少陰厥陰經」の氣分≪なり≫。】。其の用、三つ、有り。胸中の逆氣滿塞《ぎやくきまんそく》を去る【一つ。】。心腹の感寒・㽲痛《こうつう》[やぶちゃん注:急性の腹痛。]を止む【二つ。】。宿酒《ふつかよひ》を消し、「白豆蔲《びやくづく》」[やぶちゃん注:インド産のショウガ科の植物アモムム・スブラトゥム(単子葉植物綱ショウガ目ショウガ科アモムム属 Amomum subulatum )の果実。別に本邦では「しろづく」(現代仮名遣「しろずく」)とも呼ぶ。]の使《し》と爲《す》る【三つ。】なり。皆、其《それ》、寒を散じ、中《ちゆう》を温め、溼《しつ》を燥《かは》かし、鬱を解《かい》するの功を取るのみ。陳久《ちんきう》なる者[やぶちゃん注:採取から時間が経った古い物。]、良し。≪但し、≫多く用《もちひる》≪は≫、宜しからず。恐らくは、元氣を損《そんず》≪ればなり≫。』≪と≫。

『九月九日、茱萸を折りて、以《もつて》、頭《かしら》に揷(さ)し、或《あるいは》、絳(もみ)[やぶちゃん注:色名。深紅色。]の囊(ふくろ)を用《もちひ》て、茱萸を盛り、以《もつて》、臂《ひぢ》の上に繫《つなぎ》て、髙《たかき》に登り、菊花酒《きくくわしゆ》を飮めば、則《すなはち》、能く、惡氣《あくき》を辟く【「風土記《ふうどき》」[やぶちゃん注:後で示すが、中国の晋代の書物であるから、「ふどき」とは読まないでおく。]及び「續齋諧記」に見ゆ。】。』≪と≫。

△按ずるに、吳茱萸、本朝、古《いにし》へは、之《これ》、有《あり》て、今は、絕《たえ》て、無し。


 おほだら  越椒 欓子《たうし》 辣子《らつし》

       藙【音「毅《キ》」。】 榝【音「殺」。】

       艾子《がいし》

       和名、「於保太良《おほだら》」。

 食茱萸

 

「本綱」に曰はく、『「食茱萸《しよくしゆゆ》」は、南北に、皆、之《これ》、有り。其《その》木≪も≫亦、甚だ、髙大にして、長さ、百尺に及《およぶ》者、有り。枝・莖、青黃[やぶちゃん注:確かに原本もそうなっているが、「青黃」では緑色になってしまうので、これは、「枝」が「青」で、「莖」が「黃」の意ではなかろうか? と思ったのだが、当該種カラスザンショウ(注で詳細に後掲する)の複数の画像(グーグル画像検索「カラスザンショウ 枝 葉」を見ると、茎は黄色のものも見えるものの、これは、太く木化したもので、多くの枝・葉は「緑」であるものが多い。葉は紅葉すると黄色だが、これは「青黃」で「綠」のことと採るのが無難なようである。「本草綱目」では、以下、「青黃(色)」という表現が頻繁に出るからでもある。]、上に、小≪さき≫白㸃、有り。葉、「油麻《ゆうま》」に類す[やぶちゃん注:胡麻(ゴマ)。双子葉植物綱シソ目ゴマ科ゴマ属ゴマ Sesamum indicum の葉(グーグル画像検索)とカラスザンショウのそれは、葉がちょっと広過ぎるが、似ているといえば、似ていると言えなくもない。しかし、私なら、「同類である」とは逆立ちしても言わないな。]。其《その》花、黃色。子、枝≪の≫上に叢-簇《むらがりな》す。綠色。其《その》味、辛-辣《から》く、口を蜇《さす》。腹を惨《いたむる》』≪と≫。【「蜇」は音「浙《セツ》」。「螫(さ)す」なり。「ひりつく」[やぶちゃん注:「ヒリヒリする」。]なり。「慘」は音「參《サン》」。「酷《むごき》毒《どく》」なり。「痛《いたし》」なり。】[やぶちゃん注:カタカナが用いられているから言うまでもないが、この割注は良安が附したものである。]

『實【辛苦。小毒、有り。】』『功、呉茱萸に同《おなじく》して、力《ちから》、少《すこし》、劣れるのみ【此れ、呉茱萸と一類二種なり。】』≪と≫。

『椒《せう》・欓《たう》・薑《きやう》を以《もつて》、「三香《さんかう》」と爲《なし》、食物の中に入《いれ》て、之《これ》≪を≫用ふ。而≪れども≫、今、貴人、之《これ》≪を≫用ること、罕《まれ》[やぶちゃん注:「稀・希」に同じ。]なり。』≪と≫。

△按ずるに、「食茱萸」も亦、古《ふるく》は、本朝、之《これ》、有《あれども》、今、無《なき》か。

 

[やぶちゃん注:「呉茱萸」は、

双子葉植物綱ムクロジ目ミカン科ゴシュユ属ホンゴシュユ Tetradium ruticarpum var. officinale

とする。これは、東洋文庫訳の本文で『呉茱萸(ミカン科ホンゴシュユ)』とすることウィキの「ゴシュ」を見たところ、『ゴシュユ』を

ゴシュユ属ゴシュユ Tetradium ruticarpum

としつつ、『シノニムEuodia ruticarpa 』とした後に、『別名ニセゴシュユ』「偽茱庾」であろう)とすることから、「ニセ」でない「ホン」の方が正しいのではあるまいか? と、まず、踏んだことによる。

しかし、やはり、最も信頼のおける「跡見群芳譜」の「農産譜」の「ごしゅゆ(呉茱萸)」を見るに、『シュユ属 』『(呉茱萸 wúzhūyú 屬)には、東』『アジア』と『東南アジア・ヒマラヤに』九『種がある』とされ(ホソバハマセンダンが、二度、出ており、それでは、十種になってしまうので、シノニムとして整理した。完全引用していないのは、学名が斜体になっていないためである。なお、太字は私が附した)、

Tetradium austrosinense(シノニム:Euodia austrosinensis :『華南呉茱萸』:『兩廣・雲南産』

Tetradium calcicola(『石山呉茱萸』:『廣西・雲貴産』)

イヌゴシュユ Tetradium danielli(シノニム:Euodia danielliiTetradium baberi :『臭檀・異花呉茱萸』:『陝西・湖北・四川産』)

Tetradium fraxinifolium (『無腺呉萸・稜子呉萸』:『雲南・チベット・ヒマラヤ産』)

ホソバハマセンダン Tetradium glabrifolium(シノニム:Tetradium taiwanense:『楝葉呉茱萸・檫樹・臭辣樹・獺子樹・野呉芋・山辣子』:『河南・陝西・華東・臺灣・兩湖・兩廣・四川・貴州・雲南・東南アジア・ヒマラヤ産』)

ハマセンダンTetradium fraxinifolium var. glaucum(シノニム:Euodia glauca :日本の『本州三重以西・四国・九州・琉球・臺灣産』)

ゴシュユ Tetradium ruticarpum(シノニム:Euodia ruticarpaEuodia bodinieri Euodia var. bodinieri:『波氏呉茱萸』・『呉茱萸』

ホンゴシュユTetradium ruticarpum var. officinale(シノニム:Euodia officinalis :『石虎・呉芋』)

Tetradium trichotomum(シノニム:Euodia trichotoma :『牛枓呉萸・牛糺樹・茶辣・山呉萸』:『廣西・四川・貴州・雲南・ベトナム産』)

が掲げられてあった。ところが、同ページでは、別に、『漢名を茱萸』(『シュユ』:『zhūyú)と言うものには、次のものがある』とされて(リンクは同サイトの独立ページ。写真有り)、

サンシュユ(山茱萸) Cornus officinalis

ゴシュユ(呉茱萸)Tetradium ruticarpum(シノニム:Evodia rutaecarpa

カラスザンショウ(食茱萸・Zanthoxylum ailanthoides

とあり、『中国で歴史的に茱萸と呼び、その実を』九『月』九『日に食ってきたものは、食茱萸』であると、明確な説明があった。これによって、やはり、

◎ゴシュユ属ゴシュユ Tetradium ruticarpum

が正しいようである。序でに、以上から、

附録の「食茱萸」は、現行では、当該ウィキによれば、

ミカン科サンショウ属カラスザンショウ変種カラスザンショウ Zanthoxylum ailanthoides var. ailanthoides

で決まりである。

ウィキの「ゴジュユ」によれば、『ゴシュユ(学名:Tetradium ruticarpum )とはミカン科の植物の一種。(シノニム Euodia ruticarpa )。別名ニセゴシュユ』。『中国中~南部に自生する落葉小高木。日本では帰化植物。雌雄異株であるが』、『日本には雄株がなく果実はなっても種ができない。地下茎で繁殖する』。八『月頃に黄白色の花を咲かせる』。『本種またはホンゴシュユ(学名 Tetradium ruticarpum var. officinale 、シノニム Euodia officinalis )の果実は、呉茱萸(ゴシュユ)という生薬である。独特の匂いと強い苦みと辛味を有し、強心作用、子宮収縮作用などがある。呉茱萸湯、温経湯などの漢方方剤に使われる』。『有効成分はインドールアルカロイドのエボジアミン(evodiamine)、ルテカルピン(rutaecarpine)』、『ヒゲナミン(higenamine)、シネフリンなど』とある。「維基百科」の「吳茱萸」には、『温暖な地域に植生する。中国では、主に揚子江以南の地域に分布する』とある。その「歴史」の項には、「神農本草經」・「名醫別錄」及び、唐代の陳藏器の説、宋代の蘇頌の説、明代の本「本草綱目」の李時珍の説が、短く紹介されてあり、全体も、以上の本邦のウィキよりも遥かに詳しい。

 序でに、「食茱萸」相当の、本邦の「カラスザンショウ」のウィキも引いておく(注記号はカットした)。『山地や海岸近くに生える』。『サンショウと違ってアルカロイドを含むので、イヌザンショウ』(先行する「第八十九 味果類 蔓椒」を見よ)『とともにイヌザンショウ属(Fagara)に入れる場合がある』。『アゲハチョウ科のチョウの食草になっている』。『中国名は「椿葉花椒」「食茱萸」。学名の「 ailanthoides 」は、「シンジュ( Ailanthus )』(ムクロジ目ニガキ科ニワウルシ属 Ailanthus 。ウルシ(ウルシ科)とは全くの別種で、ウルシのようにかぶれる心配はない)『のような(-oides)」の意味』。『日本では本州(下北半島の脇野沢以南)、四国、九州、沖縄、小笠原諸島に分布する。日本国外では、朝鮮半島南部、中国、台湾、フィリピンなどに分布する。沿岸地や山野に普通に生える。特に伐採跡などの裸地にいち早く伸び出して葉を広げる先駆植物である』。『落葉広葉樹の高木で、高さは』十五~二十五『メートル』『にもなる。上方で枝を大きく横に広げる樹形になる。樹皮は灰褐色で、短くて鋭いトゲがあり、老木では』疣『状になってトゲの痕が残る。若い枝は緑色や紅紫色で無毛で、枝にもトゲが多い。葉は』一『回奇数羽状複葉。葉の形状はニワウルシ/シンジュ(神樹)に似る。小葉は広披針形で、普通のサンショウに比べて』、『はるかに大きな葉をつける。葉の裏は白っぽい。サンショウ同様、葉には油点があり、特有の香りがある』。『花期は』七~八『月。雌雄異株。花は小さく、枝の先に多数』、『咲く。紅紫色の球形をした実をつけて黒い種が露出し、特有の香りを持つ。実は辛味があるが』、『サンショウほどではない。冬でも枯れた果実が枝先に残ることもある』。『冬芽は半球形で小さな鱗芽で、芽鱗は』三『枚ある。枝先に仮頂芽をつけ、側芽は枝に互生する。葉痕は大きく目立ち、維管束痕が』三『個つく』。『サンショウ属の他の種に比べ、葉がはるかに大きいため、類似種との区別ができる。また、他の大柄な羽状複葉をつける樹木とは、幹のトゲと葉のにおいで区別できる』。『本種を食草とするチョウにはカラスアゲハ、ミヤマカラスアゲハ、モンキアゲハ、ナミアゲハ、オナガアゲハ、クロアゲハがある』。以下、「日本の利用」の項。『普通食用にはしないが、若芽・若葉は天ぷらにすることがある。清涼感のある独特の風味の蜂蜜がとれるので、蜜源植物ともされる。また、葉を駆風、果実を健胃薬とし、枝はサンショウ同様』、『すりこぎとしても使用されている。刺部の数が多いことからサンショウの物とは区別ができる』とあった。

 なお、以上の引用本文は、「本草綱目」の「漢籍リポジトリ」の「卷三十二」の「果之四」「味類一十三種内附四種」の「呉茱茰」(ガイド・ナンバー[079-14a]以下)の長い記載のパッチワークであり、附録の「食茱萸」は、その項に次ぐ独立項「食茱萸」(ガイド・ナンバー[079-20a]以下)のパッチワークである。

『足の「太陰經」の血分、及び、「少陰經厥陰經」』東洋文庫訳の後注に、両者の解説がある。但し、「本草綱目」の記載が不全なのか、一部で補足が行われている。しかし、訳文と後注に相違があっておかしな箇所がある。前者の『足の「太陰肺經」は、『巻八十九蜀椒の注一参照。』とある。私の「第八十九 味果類 蜀椒」の「手足の太隂」の注で、そこに『身体をめぐる十二経脈の一つ』とし、『足の太陰肺経は足の親指の末からおこり、脚の内面を上り腹部に入って肺に連なり腎につながる。さらに横隔膜を通って咽喉から舌に行く。支脈は胃部から分かれて心臓に達する。』とある。その次の「少陰經厥陰經」は「少陰經」を分離し、訳では、『足の』『小陰経』とありながら、『足の少陰腎経』となっており(訳と違う)、『足の小指の下から足の裏を通って内股へ上り、腎に入って膀胱(ぼうこう)に連なる。もう一つは腎から肝を通って肺に入り、咽喉・舌までのぼる。もう一つは肺から出て心に連なり胸へ入る。』とある。而して「厥陰經」については、訳を『足の』『厥陰経』とし、注では『足の厭陰肝経』とし(訳と違う)、『足の拇指(おやゆび)の先から内股をのぼって陰部へ入り、下腹部から肝・胆に連なる。さらに側胸部から咽喉のうしろを通って眼に出て頭頂へ上る。もう一つは肝から肺、そこから下って胃に至る。』となっている。

「逆氣滿塞」東洋医学では、気は体内で一定の方向に流れていると考えられており、通常、気は上半身から下半身へ、また、体表から内臓へと下降する流れが正常とされる。この「逆氣」は、気が逆流し、上半身に気が滞り、「のぼせ」・動悸・頭痛・「めまい」などの症状を引き起こし、下半身は冷えやすくなる傾向を示すそうである。「滿塞」は、「みぞおちのつかえ」や「胸脇苦満」(肋骨弓の下の季肋部から脇腹にかけて膨満感・圧迫感・苦痛を感じる状態を指す)といった症状を指す。

「九月九日、茱萸を折りて、以《もつて》、頭《かしら》に揷(さ)し、或《あるいは》、絳(もみ)[やぶちゃん注:色名。深紅色。]の囊(ふくろ)を用《もちひ》て、茱萸を盛り、以《もつて》、臂《ひぢ》の上に繫《つなぎ》て、髙《たかき》に登り、菊花酒《きくくわしゆ》を飮めば、則《すなはち》、能く、惡氣《あくき》を辟く」「重陽の節句」に行われる「登高」(とうこう)の行事である。漢文で杜甫の七言律詩「登高」で何度も教えたものだ。サイト「中国語スクリプト」のこちらを見られたい。当該ウィキより、そこにある「重陽の節句」のページ(同サイト内リンク)が遙かに詳しく、よい。

「風土記《ふうどき》」東洋文庫訳の巻末の書名注に、『晋の』武将『周拠』(しゅうしょ二三六年~二九七年)『撰。歳事記的史料を多く含む地誌。中国南部の記述が多い。原本は亡佚。』とある。

「續齋諧記」南朝梁の官僚・文人・歴史家であった呉均(六九年~五二〇年)によって書かれた志怪小説集。

「按ずるに、吳茱萸、本朝、古《いにし》へは、之《これ》、有《あり》て、今は、絕《たえ》て、無し。」「東邦大学 薬学部付属 薬用植物園」の「ゴシュユ」には、『中国原産の雌雄異株の落葉低木です。日本には江戸時代』、『享保年間』(一七一六年から一七三六年まで)『に小石川植物園に植えられ、これから株分けされて各地に広まりました。しかし渡来したのは雌株だけなので、種子のない果実しかできません』。『それより以前』、(九一八)『年に著された「本草和名」では、日本名はカラハジカミとしています。当時は乾燥果実を中国から生薬として導入していたものが、ハジカミと呼ばれていた山椒に似ていることから“唐の国の山椒”の意でカラハジカミとなったのでしょう。樹高は』三メートル、『葉は対生、楕円形の葉は先が急に尖がり、葉柄、歯の裏には柔毛があります。花期は初夏、円錐花序をだして白い小さな花をつけます。しかし日本には雄株が無いので』、『結実はしませんが、紫褐色の蒴果となります。種子はなくても果実は薬用となります』とある。この良安の謂いは、後者の渡来した漢方薬を勘違いしたものであろうか? 「植生していたのに、今は、ない」ったあ、どの口で言うかねぇ? 良安さんよ! 医師・本草家として、およそ、サイテーだぜ!

「欓《たう》」カラスザンショウを指す。

「薑《きやう》」単子葉植物綱ショウガ目ショウガ科ショウガ属ショウガ Zingiber officinale

『按ずるに、「食茱萸」も亦、古《ふるく》は、本朝、之《これ》、有《あれども》、今、無《なき》か』不審。カラスザンショウは本邦に分布するぜ? 良安さんよ?

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