阿部正信編揖「駿國雜志」(内/怪奇談)正規表現版・オリジナル注附 「卷之二十四下」「神木鳴動」
[やぶちゃん注:底本はここ。句読点の変更や追加をし、記号を加えた。]
駿 國 雜 志 卷之二十四下
阿 部 正 信 編 揖
怪 異
駿 東 郡
「神木鳴動」 駿東郡《すんとうのこほり》上窪村《かみくぼむら》桃澤《ももざは》の社《やしろ》にあり。傳云《つたへいふ》。「慶長十七年正月三日、當社の神木《しんぼく》、鳴動する事、夥《おびただ》し。此日、富士川、洪水、安倍郡鯨《くじら》か池[やぶちゃん注:ママ。]、溢《あふ》れ、淺畑池に注ぎ入《いる》。當郡松永濱、沼津浦邊、大浪して、獵船數十艘、破損す。是、神木、怪をなして、水災を告《つげ》給ふならん。土俗、云《いはく》、『桃澤神社、今、愛鷹明神とす。云云。』。」。
[やぶちゃん注:「駿東郡上窪村桃澤」現在の静岡県駿東郡長泉町桃沢(ももざわ)。「ひなたGIS」で示した。桃沢川の下流に「元長窪」や「上長窪」の地名も確認出来る。
「桃澤の社《やしろ》にあり」先の前の「ひなたGIS」の最初の位置を考えるなら、グーグル・マップ・データ航空写真の「愛鷹山水神社」であろうか。
「慶長十七年正月三日」グレゴリオ暦一六一七年二月四日。
「安倍郡鯨《くじら》か池」静岡県静岡市葵区下(しも)に現存する「鯨ヶ池」(グーグル・マップ・データ)。由来は、「FNNプライムオンライン」の「テレビ静岡」の調査による『「鯨ヶ池」 池なのにクジラ? 静岡随一の名水といわれた池は大正天皇も訪れていた』が素晴らしい!
「淺畑池」グーグル・マップを見ると、鯨ヶ池の南南東に、現在、「麻機遊水池」、及び、周辺に池様のものが、複数、点在するので、同一場所を、「ひなたGIS」の戦前の地図を見ると、ここに広大な「淺畑沼」が確認出来る。
「當郡松永濱」「ひなたGIS」では、精査して見たが、この名の浜はなかった。しかし、「當郡」とあり、これは、パートが「駿東郡」であること、並置するのが「沼津浦邊」であることから、これは、沼津に近いと考えて探すと、沼津市の東直近に、沼津市内の「松長」があった。現行では、この地区に「片浜海岸」(グーグル・マップ・データ)があるから、これであろうか?
「愛鷹明神」「愛鷹」「愛鷹明神」を名乗る神社は、現在、この広域に、実に十二社もある。]
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