和漢三才圖會卷第九十 菰果類 葡萄
[やぶちゃん注:栽培用の架(たな)が描かれてある。]
ぶだう 蒲桃 草龍珠
【和名衣比加豆良
葡萄 乃美】
ゑびかづら
プウ タ゚ウ
本綱葡萄漢張鶱使西域還始得此種而神農本草已有
葡萄則漢前隴西舊有伹未入關耳淮南不植葡萄亦如
橘之變于河北也
折藤壓之最昜生春月萠苞生葉頗似括樓葉而有五尖
生鬚延蔓引數十𠀋三月開小花成穗黃白色仍連着實
星編珠聚七八月熟有紫白二色其根莖中空相通暮漑
其根而晨朝水浸子中矣甘草作釘鍼葡萄立死以麝香
入葡萄皮內則葡萄盡作香氣其愛憎異于他木又葡萄
架下不可飮酒恐蟲屎傷人
圓者名草龍珠 長者名馬乳葡萄 白者名水晶葡萄
黑者名紫葡萄 綠葡萄熟時色綠 珀瑣葡萄大如五
味子而無核
葡萄實【甘平濇】 益氣倍力強志利小便痘瘡不出食之可
【甘而不飴酸而不酢冷而不寒味長】属土有水與木火【東南人多食病熱西北人食之無恙】
△按葡萄甲州之產顆大而味甚佳駿州次之河州富田
林村之產亦次之北國希有之取新熟者拭浄盛桶向
下埀不相捎密封在髙𠙚以防風濕則宜超歳
古今醫統云葡萄樹宜濕地米泔澆之作架引蔓根旁以
草束唯避蛇蟲怕麝香一法種近棗樹春鑚棗樹作一孔
引葡萄枝從孔中過伺其大塞滿棗樹竅而後截使托棗
生實大而甘美【托者斥開也】蓋愛麝香與怕之異說有
*
ぶだう 蒲桃《ぶだう》 草龍珠《そうりゆうしゆ》
【和名「衣比加豆良乃美《えびかづらのみ》」。】
葡萄
ゑびかづら
プウ タ゚ウ
「本綱」に曰はく、『葡萄は、漢の張鶱《ちやうけん》、西域に使《つかひ》して、還《かへり》て、始《はじめ》て此の種を得たり。「神農本草」に、已に「葡萄」、有り。則《すなはち》、漢より前に、隴西《らうせい》には、舊(もと)、有りて、伹《ただ》、未だ關≪中≫《くわんちゆう》に入《い》らざるのみ。淮南《わいなん》に葡萄を植へ[やぶちゃん注:ママ。]ざる≪のみなり≫。亦、橘《きつ》の、河北に≪ては≫變ずるなり。』≪と≫。
[やぶちゃん注:「張鶱」(?~紀元前一一四年)は前漢の軍人・外交官。本貫は漢中郡城固県。小学館「日本国語大辞典」に、『武帝の時、匈奴を牽制するため』、紀元前一三九年頃、『大月氏と同盟を結ぼうと出発』、『同盟は不成立だったが、大宛、大月氏、大夏などをまわり、のちに烏孫にも使』い『して、西域への交通路と知識を中国にもたらした。また、その間、匈奴征伐に従って功をたて、博望侯に封ぜられた』(その翌年に没した)とある。当該ウィキが詳しい。先行する「卷第八十七 山果類 石榴」(ザクロ)や「第八十七 山果類 胡桃」(クルミ属)でも、彼が中国に齎したことが記されてある。
「神農本草」漢代に書かれた最古の本草書「神農本草經」のこと。
「關≪中≫《くわんちゆう》」現在の陝西省。
「淮南《わいなん》」淮河の南の地方。淮河以南、揚子江以北の地を指す。]
『藤《つる》[やぶちゃん注:植物のフジではなく、蔓性植物の総称で、単に「蔓」をも指し、本邦では「つる」「かづら」とも読む。ここは東洋文庫訳のルビを採用した。]を折《をり》て、之≪を≫壓(さ)して、≪植うること、≫最《もつとも》、生(つ)き昜《やす》し。春月、萠苞《まうはう》[やぶちゃん注:植物の莟(つぼみ)を包む苞(ほう)が、未だ完全に開いていない状態を言う。]、生ず。葉、頗る括樓《クワツラウ》[やぶちゃん注:皆さんお馴染みの、私の好きな双子葉植物綱スミレ目ウリ科カラスウリ属カラスウリ Trichosanthes cucumeroides の仲間であるトウカラスウリ Trichosanthes kirilowii 、キカラスウリ T.kirilowii var. japonicum 、 又は、オオカラスウリ T.bracteata 。]の葉に似て、五《いつつ》≪の≫尖《とがり》、有り。鬚《ひげ》を生≪じ≫、蔓を延(ひ)きて、數《す》十𠀋に引く。三月、小≪さき≫花を開き、穗を成す。黃白色、仍《より》て、實を、連《つらな》り、着《つ》く。星の如くに[やぶちゃん注:「如」は送り仮名にある。]、編《あ》み、珠の如くに[やぶちゃん注:同前。]聚《あつま》る。七、八月、熟す。紫・白の二色、有り。其≪の≫根・莖、中空にして、相《あひ》通ず。暮《くれ》にして、其≪の≫根に≪水を≫漑(そゝ)げば、而≪して≫、晨-朝(あした)、水、子《み》の中に浸《しん》す。甘草《かんざう》[やぶちゃん注:カンゾウの木部化した根及びストロンを指す。]を、釘《くぎ》に作り、葡萄に鍼《さ》すれば、立《たちどこ》ろに死す。麝香《じやかう》[やぶちゃん注:私の「和漢三才圖會卷第三十八 獸類 麝(じやかう) (ジャコウジカ)」を見よ。]を以《もつ》て、葡萄の皮の內《うち》に入《いるる》時は[やぶちゃん注:「時」は送り仮名にある。]、則《すなはち》、葡萄、盡《ことごと》く[やぶちゃん注:送り仮名に踊り字「〱」がある。]、香氣を作《な》す。其≪の≫愛憎、他≪の≫木に異《ことなる》なり。又、葡萄の架(たな)の下にて、酒を飮むべからず。恐らくは、蟲≪の≫屎、人を傷《きずつく》る≪ならん≫。』≪と≫。
『圓《まろ》き者を「草龍珠」と名づく。』・『長き者を「馬乳葡萄」と名づく。』・『白き者を「水晶葡萄」と名づく。』・『黑き者を「紫葡萄」と名づく。』・『「綠葡萄」は熟する時、色、綠なり。』・『「瑣瑣《ササ》葡萄」は大いさ、五味子のごとくして、核《さね》、無し。』≪と≫。
[やぶちゃん注:中黒(「・」)は私が添えた。]
『葡萄の實【甘、平、濇《しぶし》。】』『氣を益し、力を倍して、志《こころざし》を強《つよく》す。小便を利し、痘瘡≪の內(うち)籠りて≫出《いで》ざるに、之≪を≫、食ふべし【甘にして、而れども、飴(あま)たるからず[やぶちゃん注:「飴(あめ)のような甘さではない」の意であろう。]、酸《すつぱく》からず。冷《れい》にして、寒《かん》ならず。味、長《ちゃう》ず[やぶちゃん注:「優れている」の意であろう。]。】。土《ど》に属して、水《すい》と、木《もく》・火《くわ》と有り[やぶちゃん注:五行の「金(ごん)」以外の四つの性質を合わせ持つことを言う。]【東南の人、多食≪せ≫ば、熱を病《や》む。西北の人、之れを食しても、恙《つつが》が無し。】。』≪と≫。
△按ずるに、葡萄、甲州の產、顆(つぶ)、大にして、味、甚《はなはだ》、佳し。駿州、之≪に≫次ぐ。河州《かはち》富田林村《とんだばやしむら》の產、亦、之≪に≫次ぐ。北國には希《まれ》に、之、有り。新《あらた》に熟する者を取《とり》て、拭-浄《ぬぐひきよめ》、桶《をけ》に盛り、下に向《むけ》て、埀《たら》して、相《あひ》捎(す)らせず[やぶちゃん注:互いの実が擦れ合わぬようにして。]、密封して、髙き𠙚に在(あ)らしめ、以《もつて》、風濕を防ぐ時は[やぶちゃん注:「時」は送り仮名にある。]、則《すなはち》、宜しく、歳《とし》を超《こ》すべし。
「古今醫統」に云はく、『葡萄の樹、濕地に宜《よろ》し。米泔(しろみつ)[やぶちゃん注:米の研ぎ汁。]を之≪に≫澆《そそ》ぎ、架(たな)を作《つくり》て、蔓を引かしめ、根の旁《かたはら》に草≪の≫束《たば》を以《もつて》す。唯《ただ》、蛇・蟲を避《さけ》て、麝香を怕《おそ》る≪べし≫。一法、種《うう》るに、棗《なつめ》の樹に近くすて、春、棗の樹を鑚(き)りて、一≪つの≫孔《あな》を作《つくる》。葡萄の枝を引《ひき》、孔の中より、過《すぐ》し、其≪の≫大(ふと)さ、棗の樹の竅を塞《ふさ》ぎ、滿《みつ》るを伺《うかがひ》て、而して後、截《きり》て、棗を托(の)けしむれば、實を生《しやうじ》、大にして、甘く、美なり。』≪と≫【「托」は、「斥(しりぞ)け、開《ひらく》」なり。】。蓋し、『麝香を愛する』と、『怕(をそるゝ)』の異說、有り。
[やぶちゃん注:これは、
双子葉植物綱ブドウ目ブドウ科ブドウ属 Vitis
で、ウィキの「ブドウ」の「分類」の項の「東アジア種群」を見るに、
「本草綱目」での記載は、中国の北方の代表的種である基本種のブドウ属マンシュウヤマブドウ(満洲山葡萄)であるヴィティス・アムレンシス Vitis amurensis
としてよいように思われる。★注意が必要なのは、本種を中国では「山葡萄」とすることである(「維基百科」)の同種を見よ!)。しかし、後に示す本邦に自生する別種「ヤマブドウ」を「山葡萄」と漢字表記するからである!★)まず、その当該ウィキを引く(注記号はカットした。太字・下線は私が附した。他のウィキでも同前)。『別名はアムールブドウ、チョウセンヤマブドウ』。『落葉性木本蔓植物。若い枝には』『くも毛』(ネット上の信頼出来る諸記載や国立国会図書館デジタルコレクションの植物学関連書籍でも「くも毛」であるのだが、どうも「雲毛」ではなく、「蜘蛛毛」であるようだ。漢字表記の記事は、例えば、サイト「Green Snap」のここ)『があり、巻き髭がある。楕円形の大きな葉には』三『から』五『ヶ所の切れ込みと、柄元に窪み、表面は滑らかだが』、『裏面には毛が生えている。夏に開花し、雌雄異株、円錐花序。果実は黒色である。また他の多くの葡萄品種とは異なり年間降雨量が』七百ミリ『上の湿潤気候と軽度の酸性土壌を好む。また』、『幾つかの病気やブドウネアブラムシ』(カメムシ目腹吻亜目アブラムシ上科ネアブラムシ科 Daktulosphaira 属ブドウネアブラムシ(葡萄根油虫:ダクティラスファエラ・ヴィティフォリエ) Daktulosphaira vitifoliae )『に対しての耐性を持つ』。『ロシアのアムール州、沿海州、中国の黒龍江省、安徽省、遼寧省、浙江省、吉林省、山西省、山東省、河北省 等に自生し、標高』二百『メートルから』千二百『メートルの地域の、山の斜面や渓谷の林や藪に多く見られる。かつて言われていた北海道での自生は誤認だとわかり、ヤマブドウの』一『系統かタケシマヤマブドウVitis coignetiae var. glabrescens だと考えられている』。『マンシュウヤマブドウには』四『つの変種がある』。
Vitis amurensis var. amurensis
Vitis amurensis var. dissecta(深裂山葡萄)
Vitis amurensis var. yanshanensis(燕山葡萄)
Vitis amurensis var. funiushanensis(伏牛山葡萄)
『マンシュウヤマブドウは栽培品種として広く利用されており、一般的にはサンクトペテルブルクを限界とするヨーロッパロシア北部まで栽培されている。旧ソ連の研究機関において耐寒性や病気への耐性賦与のため、他の多くの葡萄品種(主にヨーロッパブドウ)との交雑品種が生み出され、ワインや生食用として生産されており、葉も食用として利用されるほか、黄色の染料用途でも使用される。西欧でも栽培されている交雑種』もある。『初の商業栽培は満洲国通化省においてワインの醸造用に行われた』とある。但し、ウィキの「ブドウ」によれば、『アジア大陸には中国を中心に、約』四十『種の野生ブドウが確認され、日本の野生ブドウと同種または近縁種も確認されている』とある。
一方、日本に分布する種については、同じくウィキの「ブドウ」の「分類」の項の「東アジア種群」によれば、
ヤマブドウ(山葡萄:ヴィティス・コワネティアエ)Vitis coignetiae
シラガブドウ(白神葡萄(☜要注意!) :ヴィティス・シラガイ)Vitis shiragai
を挙げられてある。
まず、ウィキの「ヤマブドウ」によれば、『野生ブドウの代表格として知られる。果実は小粒で生食されてきたが、近年、ワイン、ジャム、ジュースの原料として活用する動きがある。従来、野山で自生しているものを収穫して利用していたが、岩手県など圃場での栽培を始める地域がみられ始めた』。『日本語』の『古語ではエビカズラと言い、日本の伝統色で山葡萄の果実のような赤紫色を葡萄色(えびいろ) と呼ぶのはこれに由来している』。『和名「ヤマブドウ」は山葡萄の意味で、中国大陸から日本に伝わったブドウ(葡萄)の語源は中国音のブータオ、さらに古代ペルシア語の Buddaw の古代中国における当て字からきているといわれる。別名や地方名で、オオエビヅル、サナヅラ、ヤマブンドなどとよばれている。古くは、ヤマエビ、エビカズラ、オオエビ、ツルエビなどとよばれ、ブドウ渡来以前のヤマブドウの呼び名とされる。「エビ」は葡萄の古語とされる』。『ヤマブドウは、東アジア北東部に分布するチョウセンヤマブドウ(別名マンシュウヤマブドウ、学名: Vitis amurensis )の変種であるとする分類上の意見もある』。『冷涼地に自生する野生種で、樺太(サハリン)、南千島、日本の北海道・本州・四国、および韓国の鬱陵島に分布する。山地の林縁や沢沿いに自生する。寒い地方に多く』、一般の『ブドウより耐寒性は強い』。『落葉』蔓『性の木本』。髓『は褐色で、若い枝や葉にはくも毛がある。太い蔓(つる)で他の樹木に絡みつき、葉の反対側から対生して伸びる巻きひげで、他の植物に巻き付きながら高く伸びて、覆い隠すほど生長する。樹皮は暗紫褐色で、縦に長く裂けて剥がれる。若い枝には綿状の毛がまばらに生えている』。『葉は長い柄がついて互生し、大型で』十~三十センチメートル『大の柄元に窪みのある五角形様の円形やハート形。葉身は浅く』三~五『裂して先は尖り、基部は』ハート『形。若いときの葉の表面にクモ状の毛があり、果期のころ葉裏面に茶褐色の毛が密に生える。秋には濃い赤色から橙色に紅葉し、時が経つと黒っぽく変色する。ブドウ科』Vitaceae『のなかで最も葉が大きいため、紅葉も他の木々より早く色づくことからよく目立つ』。『花期は初夏(』六~七月頃)』で、『花は葉に対生する円錐花序を出して、黄緑色の小花が多数つく。萼(がく)は輪形で、花弁および雄しべは』五『つ、雌しべは』一『つからなる。雌雄異株で、雌しべは健全であるが、発芽能力のない花粉しか持たない雄しべを有する雌花(正確には機能的雌花)しか咲かない雌株と』、『発芽能力のある花粉を持つ雄しべは有するが、雌しべの柱頭および花柱が退化しているため、受粉・受精ができない雄花(正確には機能的雄花)しか咲かない雄株に分かれる』。『果期は』十月頃。『果実は液果で、雌株のみに着生し、雄株は花粉提供のみである。マスカットなどの栽培品種と違って』、一『樹だけでは果実が成らない。そのため、雌木と雄木を混植する必要がある。雌花の花粉は空虚花粉ではなく、細胞質が詰まっており核も存在するが、発芽溝がないために花粉発芽ができない。そのため、訪花昆虫は雌花の蜜のみではなく花粉を食べるために訪花する。また、雄花の退化した子房内には胚珠が存在し、開花の』二『週間前くらいに植物ホルモン処理をすると、退化雌蕊が発達して両全花(両性花)になり、自家受粉して種子が得られることが知られている』。『果実は直径』八~十『ミリメートル』『ほどの球形で房状に下がり、未熟果は緑色であるが』、『秋に熟して黒紫色になる。甘酸っぱく、生食でき、一般のブドウに比べると種子は大きく、酸味が強いが霜に当たるころには甘くなり、クマが好んで食べる。品質は安定しないが、日本の在来種として見直す動きがある』。『冬芽は互生し、暗褐色で無毛の芽鱗に覆われた円錐形で、芽鱗が破れると中から褐色の毛見える。葉痕は半円形で、維管束痕は不明瞭』。『変種に、葉の裏面が無毛に近いタケシマヤマブドウ Vitis coignetiae var. glabrescens がある』。『日本では近年、ワインの原料としても注目されており、他種との交雑など品種改良の動きも見られる。また、韓国の全羅北道では製品化されている』。『果実は生食のほか、ジャム、ジュースなどに利用される。また、実を乾燥させ、ドライフルーツ(干し山葡萄)としても食される。ヤマブドウを原料にしてワインを醸造する。北海道十勝地域の池田町では』、一九六三『年、果実酒試験醸造免許を取得し、翌年、ヤマブドウを原料とした「十勝アイヌ山葡萄酒」を醸造、第』四『回国際ワインコンペティションにて銀賞が授与された。これをきっかけに、山形県、岩手県、岡山県など日本各地でもヤマブドウによるワイン醸造が行われている』。『また、一部地域では新芽を山菜としても用いる。若芽やつる先は』四~七『月』頃『が採取の適期とされ、生で天ぷらに、茹でて和え物や煮びたしにする。ヤマブドウの果実の搾りかすを使ってダイコンやカブを漬けると、きれいなブドウ色の漬物が出来上がる』。『栽培化にあたり、系統選抜や栽培種などとの交配による品種改良もみられる。例えば、山形県では、大きな果房をつけ、裂果も少なく病気も強い「Y0」「Y1」「Y2」系統が選別された。また、岩手県では、「涼実紫(すずみむらさき)一号」などが選別され、品種登録もなされた。山梨大学では、ワイン用品種であるカベルネ・ソーヴィニヨンと交配した「ヤマソービニオン」を育成、栽培されている』。『岡山大学大学院の研究グループのマウス実験でヤマブドウの果汁には皮膚がんの発症を抑制する効果があることが確認されている』。『ヤマブドウは、一般的なブドウと比較して、リンゴ酸が』五・五『倍、ビタミンB6が』三『倍、鉄分が』五『倍、カルシウムが』四『倍、そしてポリフェノールが』三『倍も含まれている。特に、ヤマブドウ果実の種子や皮に有効成分であるポリフェノールが多く含まれ、その機能性には、天然の抗酸化成分が多く含まれており、糖尿病などの病気や老化の予防に大いに期待されている。主成分であるプロアントシアニジン、レスベラトロール、アントシアニン、カテキンなどの豊富なポリフェノールが大量に含まれており、このヤマブドウ果実搾汁粕から熱水抽出したエキスにはAGEs』(Advanced Glycation End Products:終末糖化産物)『生成阻害作用が報告されている。糖尿病を誘発させたラットにヤマブドウポリフェノールを配合した餌を』一『ヵ月間食べさせた実験では、肝臓中』の『AGEsの生成抑制が報告されている』。『なお、日本の酒税法』『では、ヤマブドウは「ブドウ」と見なされる。木の実を使った果実酒は、ホワイトリカーに漬けこんで様々なものが作られているが、ヤマブドウの場合は発酵して酒になるため、酒造免許を持たないものが作ると酒税法違反となる』。『埼玉県秩父地方では、ヤマブドウの葉を茶の代用にしたといわれる』。『ヤマブドウの樹皮(蔓)は、日本では籠を始めとする収納用品などの材料として古くから利用されてきた。山村ではブドウ蔓と呼んで、ハケゴ(籠の一種)、細工物、ロープの代わり』に『活用した。ゴムのように粘性の高い強靭な繊維からなる日本産のヤマブドウの樹皮は、それだけに癖の強い性質でもあり、加工しないままでは』、『極めて使いづらいため、なめし加工を施すことで利用可能な状態にする。北海道のアイヌは、ヤマブドウの樹皮でストゥカㇷ゚・ケㇼ(葡萄蔓の靴)と呼ばれる草鞋を編んで履いていた。儀礼用の冠・サパンペも、ヤマブドウの樹皮を芯にして作る』。『現代では籠バッグの(少なくとも日本製のものでは、)最も一般的に使われる材料であり、製品は「やまぶどう籠バッグ」「山葡萄かご」などと呼ばれて市販されている。樹皮のところどころに自然のままに残る皮目を、あえて加工せずに野趣あふれるデザインとして活かす場合もある』。『長野県北部にはヤマブドウを使った伝統の民間療法が残っている。茎をつぶして、虫刺され時に塗る。葉は噛んで蜂刺されに塗り、果実は貧血によいという』とある。
次に、ウィキの「ブドウ」の「シラガブドウ」の小項目から引く。『岡山県・高梁川流域の限られた地域に自生する野生ブドウ。自生地での個体数が減少していて、絶滅が危惧されている。アムレンシスと同種とする見解もあるが、アムレンシスが寒冷地に自生するのに対しシラガブドウは温暖な地域に自生することから、自生地の気候的要因が余りにも異なるため、アムレンシスとシラガブドウが同一種だとする考え方は否定されることが多い。和名および学名は植物分類学者牧野富太郎が、情報を提供してくれた白神寿吉に因んで命名した。開花時の花はシナモン(ニッキ)の香りがする』とある。但し、現行では、以上に出た「エビカズラ」他の類似した古名は、日本・朝鮮半島、中国の東アジア地域に分布し、日本では本州・四国・九州に分布する、
ブドウ属エビヅル Vitis ficifolia
でもあるので注意が必要である。
以下、ウィキの「エビヅル」を引く。漢字表記は『蝦蔓・蘡薁』(後者は歴史的仮名遣「あうおく」、現代仮名遣「おうおく」)で『雌雄異株』。『和名「エビヅル」は、つる性の植物で、実がエビの目に似ていることから名付けられている』。『古名はヤマブドウとともに「エビカズラ」(葡萄蔓)、「エビ」とはブドウの古名である。ただし、中国では「蘡薁」は Vitis adstricta 』『という別の野生ブドウを指す。学名に Vitis ficifolia を使われることが多いが、Vitis ficifolia のタイプ標本は中国の桑葉葡萄につけられたもので、桑葉葡萄とエビヅルでは形態的な違いも大きい』。『日本、朝鮮半島、中国の東アジア地域に分布し、日本では本州、四国、九州に分布する。山地や丘陵地に』普通『にみられる』。『落葉』蔓『性の木本で、他の木本などに巻きひげによって上昇する。巻きひげは』、『茎に対して葉と対生するが』、二『節ずつついていて』、三『節目ごとに消失しているが、これで他の植物に絡まる。葉には葉柄があり、形は扁卵形で長さ』五~八『センチメートル』で、三~五『裂し、葉裏にはクモ毛とよばれる長い毛がある。葉の先が丸くなるのが特徴。秋には赤色から橙色に紅葉することが多いが、やや地味』である。『花期は』六~八『月で』、『雌雄異株。花序は総状円錐花序で長さ』六~十二センチメートル『になる。花は小さく、雄花、雌花ともに黄緑色で花序に密集する』。『秋には直径』五~六『ミリメートル』『の果実がブドウの房状に黒紫色に熟し、甘酸っぱい味があり』、『食べることができる。しかし、果汁にエビヅル臭という青臭いにおいを有するため、果実品質の評価は一般に低い。花は、新梢が伸長すれば何度も着花するため、同一樹に、様々なステージの果実が着生する』。『果実は生食、ジャムやジュースに加工して利用できる。また、葉を乾燥し、葉の裏のクモ毛をモグサ代わりに利用する。最近では、リュウキュウガネブの葉から抽出したエキスを含有した化粧水が市販されている。葉エキスの主成分はレスベラトロールである。またエビヅルの実を入浴剤として利用する地域がある』。以下、途中で挙げられてある「変種」を示して終わりとする。
シチトウエビヅル Vitis ficifolia var. izu-insularis(七島蝦蔓:『葉が大型になり』、『浅』く『三裂し』、『先端がとがる。伊豆七島に分布する』)
キクバエビヅル Vitis ficifolia var. sinuata (菊葉蝦蔓:『本州南部、四国、九州に分布する。葉の裂刻が深い』)
リュウキュウガネブ Vitis ficifolia var. ganebu (琉球葡萄:『八重山、琉球、奄美諸島、トカラ列島に自生する。葉は無裂刻』。『リュウキュウガネブは、エビヅルと同一種とする記述もいくつか見られる。さらに、シチトウエビヅルと葉の形態が似ているため、リュウキュウガネブとシチトウエビヅルを同一種とすべきだとの意見もあるが、リュウキュウガネブは他のエビヅル近縁種と異なり、芽が無休眠性を示すなどの生態的な差異が大きい。また、最近ではリュウキュウガネブ』の『果皮に含まれるアントシアニンの種類と量が多いことから、その機能性が注目されている。ちなみに「ガネブ」とは九州地方の方言で、ブドウの意味である』)
なお、『対馬に分布するケナシエビヅルは「エビヅル」という名前が付いているが、 Vitis austrokoreana Hatusima の学名が付けられていて、エビヅルとは別種となっている。しかし、詳しいことはよくわかっていない』とある。……公開後、気がついた。何のことはない、次の項、「蘡薁」がエビヅルやったわ……トホホ……
なお、「本草綱目」の引用は、「漢籍リポジトリ」の「卷三十三」の「果之五【蓏類九種内附一種】」の「葡萄」([081-8a]以下)のパッチワークである。
「隴西」旧隴西郡相当の地方名。同旧郡は秦代から唐代にかけて、現在の甘粛省東南部の、現在の甘粛省天水市(グーグル・マップ・データ。以下、無指示は同じ)に置かれていた。現在、隴西県があるが、これは甘粛省定西市にあり、旧隴西郡の北西で、ずれる。さても、「隴西」の地名は、私の偏愛する中島敦の「山月記」(リンク先は私の古いサイト版)を直ちに想起される方が多かろう。私は高校二年生の現代文(私の高校時代は「現代国語」と言った)の初っ端は、この「山月記」の朗読をブチかまして、生徒たちから「李徴」という有難い綽名を貰ったものだった。その私の『中島敦「山月記」授業ノート』もサイト版で公開している(そちらでは、教師駆け出しの頃に作成し、当時、使用した配布用資料の教授用(小汚い書き込み附き)原本『別紙ダイジェスト「人虎傳」』も画像(三分割。1・2・3)で公開してある)。同作は、唐代伝奇の晩唐の李景亮撰になる「人虎傳」(これは先行する晩唐の張読の伝奇小説集「宣室志」にある「李徴」のインスパイア作品である)を元としている。……私は実は、教員を辞めた直後、「山月記」の朗読をネットで公開するのを目論んでいた。何人かの教え子たちから、「楽しみにしてます!」とエールも貰った。しかし、何度か、試みたが、録音した私の声は、どうも、教場で発した演技には、到底、及ぶものではないと知った。教え子たちには、往年の記憶を大事にしておいて呉れれば、李徴のエンディングの台詞よろしく「恩幸、これに過ぎたるはない」と答えておくこととする…………
「草龍珠」これは、ブドウ属ヨーロッパブドウ Vitis vinifera を指す。「百度百科」の「葡萄」の冒頭に「同義詞」として「草龙珠」と添えてあり、そこに『中国には前漢時代に導入され、現在は河北省・河南省・山西省などの省に分布している』とある。しかし、以下、「馬乳葡萄」・「水晶葡萄」・「紫葡萄」・「綠葡萄」・「瑣瑣《ササ》葡萄」については、「馬乳葡萄」と「水晶葡萄」を、真面目に、いろいろと中文記載を見ているうちに、阿呆らしくなって、やめた。何故なら、写真が添えてあるものの、それは、如何にも近年の栽培品種のシャインマスカットの仲間だったり、ある百科記載にはアメリカ原産とあったからだ。思うに、少なくとも、以上の四種は、単なる果実の形状・大小・皮の色の個体変異を名指すのに便宜上、名づけたものに過ぎないと断ずるものである。
「五味子」被子植物門アウストロバイレヤ目マツブサ(松房)科マツブサ属チョウセンゴミシ(朝鮮五味子) Schisandra chinensis 。当該ウィキを引く(注記号はカットした)。『落葉性のつる性木本であり、雌雄異株』。五~七『月頃に黄白色の花をつける。果実は赤い液果で房状につき』、『薬用(滋養、強壮、鎮咳) に用いられる。日本を含むアジア北東部に分布する』。『名は、果実が甘味、酸味、辛み、苦味、鹹かん(塩味)をもつことから名付けられた。江戸時代に生薬として朝鮮半島から輸入されていたため、チョウセンゴミシとよばれるようになった。日本には産しない植物であると考えられていたが、輸入された五味子から得られた種子を平賀源内が』、雇われていた讃岐高松藩の御『薬園で栽培し、これと同じ植物が日本にも自生していることが明らかとなった。陶穀』(五代の後晋・後漢・後周・北宋に亙って仕えた官吏)の小説「淸異錄」(唐から五代にかけての、さまざまな話題の短文を纏めたもの)『に「六亭劑」の別名がある』。『落葉性の』蔓『性木本であ』る。以下のクダクダしい「特徴」の記載はカットし、問題の実の部分に飛ぶ。『花托が花』の『後』ろ『に伸長するため、個々の果実は』、『離れてブドウの房状の集合果になる』。『果実は液果』で、八~九『月頃に赤熟し、大きさは不揃いであり(』五~七・五×四~五ミリメートル。各果実はひどく小さいのである。画像をリンクさせる)、『それぞれ』一~二『個の腎臓形の種子を含む』。『日本を含むアジア北東部に分布する。北海道、本州(中部地方以北)、朝鮮半島、中国北部、シベリア東部、沿海州、アムール、ウスリー、サハリンに見られる』。『冷温帯に自生し、落葉広葉樹林の林縁に生育する』。『果実は五味子(ゴミシ、朝鮮語:オミジャ、満州語:misu hūsiha)とよばれ、生食用やジュース、五味子茶、五味子酒として利用される』。『五味子は日本薬局方に生薬として収録され、鎮咳去痰作用、強壮作用などがあるとされる』。『小青竜湯、清肺湯、人参養栄湯、苓甘姜味辛夏仁湯、杏蘇散などの漢方方剤に配合される』。『長野県阿智村や喬木村では、健康増進のためにチョウセンゴミシのつるを風呂に入れ、入浴する伝統の民間療法がある』とある。
「《かはち》富田林村」現在の大阪府富田林市(グーグル・マップ・データ)。
「古今醫統」複数回既出既注だが、再掲すると、明の医家徐春甫(一五二〇年~一五九六)によって編纂された一種の以下百科事典。全百巻。「東邦大学」の「額田記念東邦大学資料室」公式サイト内のこちらによれば、『歴代の医聖の事跡の紹介からはじまり、漢方、鍼灸、易学、気学、薬物療法などを解説。巻末に疾病の予防や日常の養生法を述べている。分類された病名のもとに、病理、治療法、薬物処方という構成になっている』。『対象は、内科、外科、小児科、産婦人科、精神医学、眼科、耳鼻咽喉科、口腔・歯科など広範囲にわたる』とある。以下の引用は、「維基文庫」の「古今醫統大全/80」の「通用諸方 \ 花木類第二」に(漢字の一部に手を入れ、コンマを読点に代えた)、
*
葡萄最易蔓盛。宜濕地、米泔澆之、作架引蔓。根傍以草束、雄避蛇蟲、怕麝香。一法種近棗樹、春鑽棗樹作一孔、引葡萄枝從孔中過、伺其大塞滿棗樹、核成一家、卽砍去其後截,使托棗生實大而甘美。
*
である。なお、「『麝香を愛する』と、『怕(をそるゝ)』の異說、有り」の食い違いは、私には、判らぬ。まあ、五行説に基づく性質は、実際の科学的真理に基づくものではないものが殆んどであるから、そこをディグする気は、私には、一向、起こらないのである。因みに、瓢簟から駒で、以上の原文を探していたところ、本冒頭の内容が、「古今醫統」の同ページにあるのを見つけたので、以下にソリッドに、同前で引いて、終わりとする。
*
葡萄生隴西、五原、敦煌山谷及河東。舊雲漢張騫使西域得其種還而種之、中國始有、蓋此果之最珍者。今處處有之。苗作藤蔓、而極長大盛者、一二本綿被山谷。葉類絲瓜葉頗壯而邊多。花叉開花極細而黃白色、其實有紫白二色、形之圓銳亦二種。又有無核者、味甘性平無毒。又有一種眞相似,然乃是千歲葉、但山人一槪收而釀酒。
*]
« 阿部正信編揖「駿國雜志」(内/怪奇談)正規表現版・オリジナル注附 「卷之二十四下」「良眞靈」 | トップページ | 和漢三才圖會卷第九十 菰果類 蘡薁 »


