阿部正信編揖「駿國雜志」(内/怪奇談)正規表現版・オリジナル注附 「卷之二十四下」「兩蝕」
[やぶちゃん注:底本はここ。段落を成形し、記号・句読点を変更・追加した。]
「兩蝕《りやうしよく》」 安倍郡府中御在城の時にあり。「當代記」云《いはく》、
『慶長八年二月十九日、朝雨、未剋止、酉剋日蝕有ㇾ之、其色赤事甚。亥剋終時分、月蝕有ㇾ之。兩蝕同日有ㇾ之事、珍事乎。云云。』。
[やぶちゃん注:漢文部を推定訓読し、割注も入れた。
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慶長八年二月十九日[やぶちゃん注:グレゴリオ暦一六〇三年三月三十一日。
なお、この七日前、二月十二日、徳川家康が征夷大将軍に任ぜられ、江戸幕府を開府している。]、朝、雨、未《ひつじ》の剋《こく》[やぶちゃん注:午後一時から三時相当。]、止む。酉《とり》の剋[やぶちゃん注:同、午後五時から七時相当。]、日蝕、有之れ、有り。其の色、赤き事、甚し。亥《ゐ》の剋の終《をは》る時分、月蝕、之れ、有り。兩蝕、同日、之れ、有る事、珍事か。云云《うんぬん》。
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「當代記」安土桃山から江戸初期までの諸国の情勢・諸大名の興亡・江戸幕府の政治等に関する記録。全十巻。姫路城主松平忠明(ただあきら:家康の外孫)の著ともされるが、不詳(以上は平凡社「百科事典マイペディア」に拠った)。しかし、日食と月食が同日に起こったという歴史的事実は、ネットで調べても出てこない。と言うより、天文学的に同時発生することは、あり得ない。国立国会図書館デジタルコレクションで調べたところ、「日本暦学史」(佐藤政次編著・駿河台出版社・一九六八年刊)のここに、本書の記載を載せて、『満月の近くに月食があり、新月の近くにあるのであるが、十九日満月の近くであるから、日食の方がなにかの誤りであろう。』と述べておられる。]
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