阿部正信編揖「駿國雜志」(内/怪奇談)正規表現版・オリジナル注附 「卷之二十四下」「禁杜若謠」
[やぶちゃん注:底本はここ。段落を成形した。句読点・記号を追加した。]
「禁杜若謠《かきつばたの うたひ きんず》」 安倍郡府中御城內にあり。傳云《つたへいふ》、
「御城內に於《おい》て、『杜若』の謠を謠へば、必《かならず》、崇《たた》りあり。云々。」。
或云《あるいはいふ》、
「是を謠へば、龍爪山《りゆうさうざん》より、奇火《きくわ》、飛來《とびきたり》て、卽坐に命を絕つ。故に是を禁ず。云云。」。
いか成《なる》謂《いは》れや有《あり》けん、たへて、知る者、なし。
[やぶちゃん注:「杜若」小学館「日本大百科全書」に拠れば、『能の曲目。三番目物。五流現行曲。世阿弥(ぜあみ)作か。出典は』「伊勢物語」で、『在原業平』『東下(あづまくだ)り、三河』『の国』『八橋(やつはし)で詠んだ「からころもきつつなれにしつましあればはるばるきぬるたびをしぞおもふ」』の、『その杜若の精を美しい女人の姿で登場させ、業平をめぐる女性像と重ね合わせた能』。「伊勢物語」『の情緒の濃さと、初夏の季節感の鮮やかさが映り合って成功した作品である。八橋の杜若に見入る旅の僧(ワキ)に呼びかけた女(シテ)は、僧をわが庵(いおり)へと導く。高子(たかきこ)の后(きさき)の衣装をつけ、彼女の恋人である業平の形見の冠(かむり)を着た女は』、「伊勢物語」『の恋愛絵巻を舞い、歌に秀でた業平を極楽の歌舞の菩薩』『として賛嘆し、草木国土悉皆(しっかい)成仏の仏の力を得て、清澄な世界へ消えていく。草木の精をシテとする能』で、「梅」・「藤」・「芭蕉」、『紅葉の精の』「六浦(むつら)」・「墨染櫻」(すみぞめざくら)・「西行桜」(さいぎょうざくら)・「遊行柳」(ゆぎょうやなぎ)『のなかでも、とりわけ華麗な幽玄味を主張する作品である』とある。詞章は、サイト「無辺光」(むへんこう)のここがよい(漢字は新字だが、PDF版のダウンロードも出来る。但し、そこでは世阿弥の娘婿の『禅竹作』とする。ウィキの「禅竹」をリンクさせておく)。
「龍爪山」以前にも、三度、出たが、ここ(グーグル・マップ・データ)。]
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