阿部正信編揖「駿國雜志」(内/怪奇談)正規表現版・オリジナル注附 「卷之二十四下」「雨米花」
[やぶちゃん注:底本はここ。段落を成形した。句読点を追加した。]
「雨米花《あめふりばな》」 安倍郡府中にあり。「續日本紀《しよくにほんぎ》」云《いはく》、
『仁明天皇承和五年甲申、駿河國言、從二七月一至二今月一有ㇾ物如ㇾ灰、從ㇾ天而雨、累日不ㇾ止。但雖ㇾ似二怪異一、无ㇾ有二損害一老農名二此物米花一ト云也。云云』。
傳云。
「府中、及び、七郡の諸村、此物、降れり。時に、年《とし》、豐《ゆたか》にして、五穀、價《あたひ》、賤《やす》し。」。
[やぶちゃん注:漢文部には、重大な誤りがある。これは、昔からお世話になっているサイト「菊池眞一研究室」の「六国史(荒山慶一氏作成)」で調べたところ、これは「續日本紀」の記載ではなく、「續日本後紀」である(朝日新聞本)。まず、そのままの当該部を示すと、
*
《承和五年(八三八)九月甲申【廿九】》○甲申。從去七月至今月。河内。參河。遠江。駿河。伊豆。甲斐。武藏。上総。美濃。飛騨。信濃。越前。加賀。越中。播磨。紀伊等十六國。一一相續言。有物如灰。從天而雨。累日不止。但雖似恠異。無有損害。今茲畿内七道。倶是豐稔。五穀價賎。老農名此物米花云。
*
である。則ち、本篇は「續日本後紀」から抄録したものであることが判る。それを受けて、推定訓読しておく。前掲のそれとの比較によって、一部に問題のある個所があることが判るので、それを正字で補訂してある。その部分は太字とした。
*
『仁明(にんみやう)天皇承和(じようわ)五年』九月『甲申(きのえさる/かふしん)『【廿九】』[やぶちゃん注:この「甲申【廿九】」は承和五年戊午(つちのえうま/ぼご)の九月二十九日甲申を指す。]』、去る七月より今月[やぶちゃん注:九月。]に至り、『河內・參河(みかは)・遠江(とほたふみ)・』駿河『・伊豆(いづ)・甲斐(かひ)・武藏・上總(かづさ)・美濃・飛驒・信濃・越前・加賀・越中・播磨・紀伊等、十六』國、『相(あひ)續(つづきて)』言ふ、「物、有り、灰(はひ)のごとく、天より雨(あめふ)り、累日(るいじつ)[やぶちゃん注:幾日も続けて。]、止まず。但し、怪異に似たりと雖も、損害、有ること无(な)し。『今、茲(この)畿內七道、俱(とも)に、是れ、豐稔(はうねん)たり。』老農(らうのう)、此の物を「米花」と名づけて云ふ
なり云云(うんぬん)。」。
*]

