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2025/08/25

和漢三才圖會卷第第九十一 水果類 芡

 

Onibasu

 

みづふき   鷄頭  鷄雍

       鴈頭  鴻頭

【音儉】

       雁喙  卯蔆

       蒍子 水流黃

ケン     倭名三豆布々木

 

本綱芡生池澤三月生葉貼水大于荷葉皺文如縠蹙䘐

如沸靣青背紫莖葉皆有刺其莖長至𠀋餘中亦有孔有

𮈔嫰者名蒍𦵸【一名䓈菜】剝皮可食五六月生紫花花開向日

結苞外有青刺如蝟刺及栗毬之形花在苞頂亦如雞喙

及蝟喙剥開肉有班駁軟肉裹子累累如珠璣殼內白米

狀如魚目取收食其根狀如三稜煮食如芋

芡實【甘平】治濕痺腰脊膝痛補中益精氣強志令耳目聰

 明久服輕身饑耐老【芡實一斗以防風四兩煎湯浸過用且經久不壞】

△按芡生池澤狀似蕗故俗名水蕗似蕗而生山谷者曰

 𭭎冬俗名山蕗【今名豆和者也】牛蒡似蕗而葉大故和名曰馬

 蕗【牟末布布木】皆以和名可辨

 

   *

 

みづふき   鷄頭《けいとう》  鷄雍《けいよう》

       鴈頭《がんとう》  鴻頭《こうとう》

【音「儉《ケン》」。】

       雁喙《がんくわい》  卯蔆《うりやう》

       蒍子《いし》 水流黃《すいりわう》

ケン     倭名、「三豆布々木《みづふふき》」。

 

「本綱」に曰はく、『芡《けん》は池澤《ちたく》に生ず。三月、葉を生《しやう》≪じ≫、水に貼(つ)いて、荷葉《かえふ/はす》より大なる。皺文《しはもん》、縠(ちゞみ)のごとく、蹙䘐《シユクジク》≪して≫[やぶちゃん注:この二つの漢語は孰れも語意の中に「縮まる」の意を持つので、二字で当て訓して「ちぢみて」と仮に訓じてもよい。東洋文庫訳でも『ちぢんだ』と訳してある。]沸くがごとし。靣《おもて》、青く、背、紫なり。莖・葉、皆、刺《とげ》、有り。其の莖、長さ𠀋餘に至る。中に亦、孔《あな》、有り、𮈔《いと》、有り。嫰《わかき》者を、「蒍𦵸《いこう》」と名づく【一名、「䓈菜《いさい》」。】。皮を剝(む)いて、食ふべし。五、六月に、紫≪の≫花を生ず。花、開き、日に向ふ。苞《つと》を結ぶ外《ほか》に、青≪き≫刺《とげ》、有り、蝟《はりねずみ》≪の≫刺、及《および》、栗-毬(いが[やぶちゃん注:二字へのルビ。])の形のごとし。花、苞の頂《いただき》に在り、亦、雞《にはとり》≪の≫喙《くちばし》、及《および》、蝟≪の≫喙のごとし。剥《はぎ》開くに、肉に、班-駁《まだら》≪なる≫軟《やはらか》なる肉、有《あり》て、裹《うら》の子《み》、累累として、珠-璣《たま》のごとし[やぶちゃん注:「璣」は「角ばった玉」の意で、実際の実の画像を、多数、確認したところ、基本は球形であるが、普通に丸いものや、少し凸凹を有したものがあり(精製されたものでは、皆、丸いものの、実際の実は、寧ろ、こちらの方が多いように見受けられる)、そうしたものの混じった総体を、かく言って表現している熟語と採るべきである。「アリナミン製薬株式会社」公式サイト内の「からだ健康サイエンス」の「薬用植物フォトライブラリー」の「オニバス」のページの果実の画像を見られたい。]。殼の內の白米≪の≫狀《かたち》、魚≪の≫目のごとし。取收《とりをさめ》、食ふ。其《その》根、狀《かたち》、三稜《さんりやう》のごとし。煮《に》、食《くひ》て、芋のごとし。』≪と≫。

『芡≪の≫實【甘、平。】濕痺[やぶちゃん注:東洋文庫訳の割注に『(湿邪によっておこる関節炎)』とある。]、腰・脊・膝≪の≫痛《いたみ》を治す。中《ちゆう》[やぶちゃん注:東洋文庫訳の割注に『(脾・胃)』とある。]≪を≫補《ほし》、精氣を益し、志《こころざし》を強《つよ》≪くし≫、耳目《じもく》をして、聰明ならしめ、久《ひさし》く服すれば、身を輕《かろ》くし、饑《う》へ[やぶちゃん注:ママ。]ず。老《らう》に耐ふ[やぶちゃん注:東洋文庫訳は『長寿を保つ』とする。]【芡の實、一斗、防風の四兩を以つて、湯に煎じて、浸過《しんくわ》して[やぶちゃん注:「透き通る状態にし」の意か。]、用《もち》ふ。且《かつ》、久《ひさしき》を經て、壞《くえ》ず。】』≪と≫。

△按ずるに、芡は、池澤に生《しやう》≪ず≫。狀《かたち》、蕗《ふき》に似たる故、俗に「水蕗《みづふき》」と名づく。蕗に似て、山谷《さんこく》に生ずる者を、「𭭎冬《かんとう》」と曰《いふ》。俗、「山蕗《やまふき》」と名づく【今、「豆和《つわ》」と名づく者なり。】牛蒡(ごばう)は、蕗に似て、葉、大《おほき》なる故、和名を「馬蕗《うまふき》」と曰《いふ》【「牟末布布木《うまふふき》」。】。皆、和名を以《もつて》、辨ずべし[やぶちゃん注:和名を以って、その似た対象植物群を区別するのがよい。]。

 

[やぶちゃん注:この「芡」(ケン)なるものは、日中ともに、

被子植物門スイレン目スイレン科オニバス属オニバス Euryale ferox

である(旧クロンキスト体系(Cronquist system)ではモクレン亜綱)。「維基百科」の同種のページ「芡」(拼音“qiān”:チィェン)を見られたい。当該ウィキを引く(注記号はカットした。画像をリンクした)。『スイレン科』Nymphaeaceae『に属する一年生水草の一種である。水底の地下茎から葉柄を伸ばし、夏ごろに巨大な葉を水面に広げる。葉の表面には不規則なシワが入っており、葉の両面や葉柄にはトゲが生えている(図1)。夏に紫色の花を水上につけるが、開花しない閉鎖花を水中に多くつける』。『本種のみでオニバス属( Euryale )を構成する。名に「ハス(バス)」とあるが、ハス(ハス科)とは遠縁である。また』、『葉が大型で』、『葉や葉柄に大きなトゲが生えていることから、「オニ」の名が付けられた。ミズブキやハリバスなどともよばれる』。『一年生の水生植物であり、水底の地下茎から根を張り、また』、『地下茎から葉を伸ばしている。地下茎は太く短い塊状であり、直径』四~五『ミリメートル』『の太い根が束生している。芽生えの初期の葉は水面には出ない沈水葉であり、長さ』四~十『センチメートル』、『針状から矢じり形、ほこ形となり、トゲはない。初期の浮水葉は長楕円形で基部に切れ込みがあるが、後期の浮水葉は円形で長い葉柄が葉身の中心付近について楯状となる。葉柄には多数のトゲがある』。『浮水葉の葉身の直径は』三センチメートルから一・五『メートル』『ほどになり、さらに直径』二・六『の記録もある。浮水葉の葉身の質は硬いが』、『もろく、水中からつぼみが水上にでる際には』、『その部分の葉身が破れる(下図3a)。大きな浮水葉の表面は光沢があり、著しいシワと』、『葉脈上のトゲがある(下図2a,』『b)。浮水葉の裏面は濃紫色、葉脈が隆起して網目状になり、トゲがある(下図2c』(これは模型である)『)』。『花は地下茎から生じた長い花柄の先端に』一『個ずつ』、『つく。日本では』六~十『月に開花しない閉鎖花を水中に多くつけ、自家受粉して果実となる』。七~九『月には水上に直径』四~五センチメートル『の開放花をつける(閉鎖花より少ない)(下図3a)。開放花は日中に開花し、夜に閉じる。閉鎖花と開放花は基本的に同じ構造をしている。萼片は』四『枚、背面は緑色でトゲがあり、長さ』一~三センチメートル、『宿存性』である。『花弁は多数』あり、『萼片より小さく、外側の花弁は紫色だが』、『内側の花弁は白色(下図3a)。雄しべも多数、内向葯をもつ。心皮は』七~十六『個、合着して』一『個の雌しべを構成する。子房下位で子房表面にはトゲが密生する(下図3a)。子房は心皮数の部屋の分かれており、面生胎座』(laminar placentationウィキの「胎座」によれば、『placenta』で、『植物の子房中の胚珠の接する部分のこと』を指す。この「面生胎座」は『子房室は分かれておらず、心皮の内面全体に胚珠が位置するもの。アケビ科、スイレン科、トチカガミ科など』とある)。『柱頭は凹盤状であり、偽柱頭はない。開放花の結実率は低い』。『果実は液果状で球形から楕円形』で五~十三『×』五~十センチメートル』で、『トゲで覆われている(上図3b)。不規則に裂開し、多数の種子を散布する。種子は球形、直径』六~十ミリメートル、『種皮は顕著なシワをもつものから』、『平滑なものまである。種子は淡紅色の斑点がある肉質の仮種皮に覆われ、しばらく浮遊した後に水底に沈む。種子は翌年』、『発芽するものもあるが、数年から数十年休眠してから発芽することもある。また』、『冬季に水が干上がって種子が直接空気にふれる等の刺激が加わることで発芽が促されることも知られており、そのために』、『自生地の状態によっては』、『オニバスが』、『多数』、『見られる年と』、『見られない年ができることがある。染色体数は 2n = 58』。『東アジアから南アジアにかけて(日本、韓国、中国、台湾、ミャンマー、バングラデシュ、インドなど)分布している。日本では本州、四国、九州に広く生息していたが、環境改変にともなう減少が著しい(下記参照)。かつて宮城県が日本での北限だったが』、『絶滅してしまい』、二〇二〇『年現在では』、『新潟県新潟市北区が北限となっている』。『平地にある』、『やや富栄養の湖沼や、流れの緩やかな河川や水路に生育する。堀や農業用ため池のような人工的な池にも生える。ヒシ(ミソハギ科)』(私の、この前項の「卷第九十一 水果類 芰」を参照)『などとともに生えることが多い(図4)。古くは普通種であったが激減し、下記のように』、『日本では』、『絶滅が危惧されている』。『自家和合性があり、閉鎖花は自家受粉のみを行うが、開放花も開花時にはふつう自家受粉をしている』。『日本では、環境の悪化や埋め立て、河川改修などによってオニバスの自生地の消滅が相次ぎ、絶滅が危惧されている。日本全体としてはオニバスは絶滅危惧II類に指定されている。また』、『下記のように各道府県でも絶滅危惧種に指定され、また既に絶滅した地域もある』として、以下に二〇二〇年現在の、各都道府県に於ける「レッドデータブック」の統一カテゴリ名での危急度を示したリストが載るので、各自で見られたい。但し、以下の『十二町潟オニバス発生地(富山県氷見市)』に関する記載は、私も始めてそこでオニバスを見た、高校時代の思い出と関わるので、特異的に引く。『富山県氷見市の「十二町潟オニバス発生地」は』、大正一二(一九二三)『に国の天然記念物に指定されたが』、一九七九『年以降にオニバスは姿を消してしまった。その後、潟内の浚渫やガマ刈りを行い、近隣地域では自生が確認されたが、天然記念物指定地域では』、『いまだ復活はしていない(』二〇二〇『年現在)。そのため』、『復活を目指した環境整備や移植が行われている(図5)。また氷見市以外でも、各地の自治体によって天然記念物指定を受けているオニバス自生地は多い』。

以下、「人間との関わり」の項。『日本では古くから知られており』、「枕草子」『では』、『見た目が恐ろしげなものとして』、『オニバスが「みずふぶき(水蕗)」の名で挙げられている』。

   *

 これは、「枕草子」の、所謂る、「物づくし」の中に出る。二箇所あるので、以下に示す。石田穣二訳注「新版 枕草子 下巻 付現代語訳」(昭和五五(一九八〇)年角川文庫刊)を参考に、漢字を恣意的に正字化した。

   *

 恐ろしげなるもの。つるばみのかさ。燒けたる所。水ふふき。菱(ひし)。髮多(おほ)かる男の、洗ひてほすほど。

   *

 見るに異(こと)なることなきものの、文字(もじ)に書きてことことしきもの。覆盆子(いちご)。鴨跖草(つゆくさ)。芡(みづふふき)。蜘蛛(くも)。胡桃(くるみ)。文章博士(もんじやうはかせ)。得業生(とくごふのしやう)。皇太后宮權大夫(くわうたいごうくうのだいぶ)。楊桃(やまもも)。虎杖(いたどり)は、まいて「虎(とら)の杖(つゑ)」と書きたるとか。杖なくとも、ありぬべき顏つきを。

   *

誤訳は附さない。その代わり、karorintaroさんのブログ「枕草子を現代語訳したり考えたりしてみる」の判り易い訳注のある当該二章段をリンクさせておく。前者がここで、後者がここである。以下、引用に戻る。

   *

『中国やインドでは種子を食用としており、そのための栽培をしていることもある(図6)。また』、『果実や若い葉柄なども食用とされることがある』。『種子は芡実(けんじつ)ともよばれ、滋養・強壮や鎮痛のための生薬として用いられることがある』。

以下、「系統と分類」の項。『オニバスは、オニバス属の唯一の種である。オニバスと同様に巨大な浮水葉をもつことで知られ、子供を乗せた写真で知られている植物は』、『南米に生育するオオオニバス属( Victoria )である。オニバスとは異なり、オオオニバス属の葉は縁が立ち上がって「たらい状」になっており、また直径数十』センチメートル『になる大きな花をつける(図7)』。『オニバス属とオオオニバス属は近縁であり、両属は姉妹群の関係にある。この系統群(オニバス属 + オオオニバス属)は明らかにスイレン科に含まれるが、古くはオニバス科(Euryalaceae)として分けられたこともある』。『また』、『分子系統学的研究からは、オニバス属 + オオオニバス属の系統群が』、『スイレン属の中に含まれることが示唆されている。そのため、分類学的にオニバス属とオオオニバス属の種をスイレン属に移すことも提唱されている』とある。最後に。私はこのオオオニバスというと、小学生時代、大好きだった『小学館の学習図鑑シリーズ』(全二十八冊らしいが、二十冊以上は持っていたなぁ。高校生になっても大事に持っていて、何度も見直したもんだ。僕の秘かなワンダー・ランドだったのだ!)の「植物の図鑑」に載っていた少女が乗っている絵を、はっきりと覚えている。

国立国会図書館デジタルコレクションの――ここ――だ!!! 懐かしいなあ!!!

 なお、本項の引用は「漢籍リポジトリ」の「卷三十三」の「果之五【蓏類九種内附一種】」の「芡實」([081-31a]以下)のパッチワークである。]

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