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2025/08/10

和漢三才圖會卷第九十一 水果類 芰

[やぶちゃん注:「芰」は「菱」を示す別字。異体字ではない。

 

Hisi

 

[やぶちゃん注:左上方に二個体の菱の実が添えられてある。]

 

ひし    蔆《りやう》 水栗《すいりつ》

      沙⻆《さかく》

【音「岐」。】

      【和名「比之」。】

      【無⻆者名三河芰】

 

本綱蔆落泥中最昜生有野蔆家蔆皆三月生蔓延引葉

浮水上扁而有尖光靣如鏡葉下之莖有股如蝦股一莖

一葉兩兩相差如蝶翅狀五六月開小白花背日而生晝

合宵炕隨月轉移其實有三⻆四⻆或兩⻆無⻆之數種

野蔆自生湖中葉實俱小其⻆硬直刺人其色嫩時青老

黒嫩時剝食甘美老則蒸煑食之野人暴乾刴米爲飰爲

[やぶちゃん注:「飰」は「飯」の別字。異体字ではない。]

粥爲餻爲果皆可代糧其莖亦可暴收和米作飰以度荒

歉蓋澤農有利之物也

家蔆種于陂塘葉實俱大𧢲耎而脆亦有兩𧢲彎卷如弓

[やぶちゃん注:「𧢲」は「角」の異体字。「弓」はグリフウィキのこれだが、表示出来ないので通用字を用いた。]

形者其色有青有紅有紫嫩時剝食皮脆肉美老則殻黒

而硬墜入江中謂之烏蔆冬月取之風乾爲果生熟皆佳

夏月以糞水澆其葉則實更肥美凡蔆花開背日芡花開

向日故蔆寒而芡暖

[やぶちゃん注:二箇所の「日」の字は「月」ほどではないものの、一画の下が突き出て、二画の下方も突き出て左にはねているが、「日」と訂した。]

芰肉【甘平】安中補五臟解暑止消渴然水蔟中此物最不

 治病多食傷人臟俯損陽氣【若過食腹脹者可暖薑酒服之卽消也】

 夫木舟はたをたゝくも淋し宵の間に菱とる舩や江に歸るらん爲相

古今醫統云八九月收老黑子撒池中自生凡種水果只

以牛糞大忌桐油若桐油甁罐投池中卽水果絕死

 

   *

 

ひし       蔆《りやう》 水栗《すいりつ》

         沙⻆《さかく》

【音「岐《き》」。】

         【和名「比之」。】

        【⻆(つの)無き者、

         「三河芰(《みかは》ひし)」と名づく。】

 

「本綱」に曰はく、『蔆、泥中に落ち、最も生(は)へ[やぶちゃん注:ママ。]昜し。野蔆・家蔆、有り、皆、三月に蔓を生じて、延引す。葉、水上に浮き、扁《ひらた》にして、尖《とがり》、有り。光る靣《おもて》、鏡のごとく。葉の下の莖に、股、有り。蝦《えび》の股(もゝ)のごとし、一莖は、一葉、兩兩、相《あひ》差《たがひ》、蝶《てふ》の翅(つばさ)の狀《かたち》ごとし。五、六月、小≪き≫白花を開き、日に背《そむき》て生じ、晝、合《がつ》し、宵(よる)は炕《ほこる》[やぶちゃん注:「昂ぶる」の意であるから、「開く」の意。]。月に隨《したがひ》て、轉移≪す≫る。其實、三つ⻆《つの》、四つ⻆、有り、或《あるい》は、兩⻆《りやうづの》・⻆無《なし》の數種《すしゆ》≪あり≫。野蔆《やりやう》[やぶちゃん注:自然に野原の沼沢に自生するヒシ。]は、自《おのづか》ら、湖中に生ず。葉・實、俱に小なり。其《その》⻆、硬く、直《ちよく》にして[やぶちゃん注:尖っていて。]、人を刺す。其色、嫩《わか》き時は青く、老《らう》なば、黒し。嫩き時、剝(む)きて、食ふ。甘美なり。老(ひね)ては、則《すなはち》、蒸煑《むしに》て、之≪を≫食ふ。野人、暴乾《さらしほし》、米を《✕→のごとく》刴(はつ)り、飰《めし》と爲《なし》、粥と爲《なし》、餻(だんご)と爲《なし》、果《くは》んと爲《なす》[やぶちゃん注:恐らく、「クハント」は「クハト」の誤刻で「果実とする」の意である。]。皆、糧(かて)に代ふべし。其《その》莖、亦、暴收《さらしをさめ》、米に和(ま)ぜて、飰《めし》に作りて、以《もつて》、荒歉《こうけん》[やぶちゃん注:凶作。]を度(すく)ふ。蓋し、澤農《たくのう》[やぶちゃん注:沼沢近くの農民。]、利、有るの物なり。』≪と≫。

『家蔆《かりやう》[やぶちゃん注:栽培しているヒシ。]は陂塘《はとう》[やぶちゃん注:人口の堤防や土手で囲まれた池沼。]に種(ま)く。葉・實、俱に大に、𧢲《つの》、耎(やはら)かにして、脆《もろ》く、亦、兩𧢲、有《あり》て、彎卷《わんくわん》して[やぶちゃん注:彎曲して。]、弓のごとき形の者≪あり≫。其《その》色、青、有《あり》、紅《くれなゐ》、有、紫、有《あり》。嫩《わかき》時、剝《は》ぎ、食《くふ》。皮、脆《もろく》、肉、美なり。老《ひねる》時は[やぶちゃん注:「時」は送り仮名にある。]、則《すなはち》、殻、黒《くろく》して、硬し。入江≪の≫中に墜《おつ》。之を「烏蔆(くろひし)」ろ謂ふ。冬月、之≪を≫取《とり》て、風に乾して、果と爲《なす》。生・熟、皆、佳《よき》なり。夏月、糞水を以て、其葉に澆《そそ》ぐ時は[やぶちゃん注:「時」は送り仮名にある。]、則《すなはち》、實、更に、肥《へ》、美なり。凡そ、蔆の花は、開《ひらき》て、日に背《そむ》き、芡《みづぶき》の花は、開《ひらき》て、日に向ふ。故に、蔆は寒にして、芡は暖なり。』≪と≫。

[やぶちゃん注:「芡《みづぶき》」は次の項であるが、被子植物門スイレン目スイレン科オニバス属オニバス Euryale ferox で、本「芰」=双子葉類植物綱フトモモ目ミソハギ科ヒシ属ヒシ Trapa jeholensis とは全く異なる水草である。

『芰肉【甘、平。】中[やぶちゃん注:脾胃。]を安《やすんじ》、五臟を補ひ、暑を解≪し≫、消渴を止む。然《しかれ》ども、水蔟《すいぞく》の中《うち》、此物、最も病《やまひ》を治《じ》せず。多《おほく》食へば、人の臟俯を傷《きずつけ》り《✕→(きずつ)け》、陽氣を損ず【若《も》し、過食して、腹、脹《は》る者は、暖《あたたか》なる薑酒《しやうがざけ》、之《これ、》服すべし。卽ち、消ゆるなり。】』≪と≫。

 「夫木」

   舟ばたを

      たゝくも淋し

     宵《よひ》の間《ま》に

    菱とる舩《ふね》や

         江に歸るらん 爲相

「古今醫統」に云はく、『八、九月、老(ひね)たる黑き子《さね》を收《をさめ》、池中に撒(ま)けば、自《おのづか》ら、生ず。凡そ、水果《すいくわ》を種《うう》るに、只《ただ》、牛糞を以《もつて》す。大《おほい》に桐油《きりゆ》を忌む。若《も》し、桐油の甁-罐《かめ》、池中に投ずれば、卽ち、水果、絕死《ぜつし》す。』≪と≫。

 

[やぶちゃん注:ヒシに就いては、私の「大和本草卷之八 草之四 水草類 芰實(ひし) (ヒシ)」の本文と私の注を読まれたい。

 なお、本項の引用は「漢籍リポジトリ」の「卷三十三」の「果之五【蓏類九種内附一種】」の異様に長い「蓮藕」([081-28b]以下)のパッチワークである。

「夫木」「舟ばたをたゝくも淋し宵《よひ》の間《ま》に菱とる舩《ふね》や江に歸るらん」「爲相」日文研の「和歌データベース」で確認した。ガイド・ナンバー[03543]を見られたい。「爲相」は私の「『風俗畫報』臨時増刊「鎌倉江の島名所圖會」 淨光明寺〔附綱引地藏〕」の私の注を参照されたい。

「古今醫統」複数回既出既注だが、再掲すると、明の医家徐春甫(一五二〇年~一五九六)によって編纂された一種の以下百科事典。全百巻。「東邦大学」の「額田記念東邦大学資料室」公式サイト内のこちらによれば、『歴代の医聖の事跡の紹介からはじまり、漢方、鍼灸、易学、気学、薬物療法などを解説。巻末に疾病の予防や日常の養生法を述べている。分類された病名のもとに、病理、治療法、薬物処方という構成になっている』。『対象は、内科、外科、小児科、産婦人科、精神医学、眼科、耳鼻咽喉科、口腔・歯科など広範囲にわたる』とある。以下の引用は、「維基文庫」の「古今醫統大全/80」の「通用諸方 \ 花木類第二」で確認出来る。]

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