阿部正信編揖「駿國雜志」(内/怪奇談)正規表現版・オリジナル注附 「卷之二十四下」「飢饉騷動」
[やぶちゃん注:底本はここから。段落を成形し、句読点・記号を変更・追加した。]
「飢饉騷動」 安倍郡《あべのこほり》府中に、あり。傳云《つたへいふ》。
「天明七年、春より秋に到《いたり》て、諸國、飢饉す。
府中、及び、七郡《ななつのこほり》の民、竹實《たけのみ》・琉球芋《りうきういも》、或《あるい》は、草根を掘り食《くひ》て、漸《やうや》く、飢《うゑ》を、しのぐ。故に餓死する者、多し。
此《この》時、群盜《ぐんたう》、競起《きそひおこ》り、市中《いちなか》・村里《むらさと》に押入《おしい》り、家を打破《うちやぶ》り、米穀・雜物《ざうもつ》を掠《かす》めとる事、晝夜の別《わか》ち、なし。
其《その》首領を「天狗小僧」と號《なづ》く。彼《かの》人、何方《いづく》より來《きた》り、何方に皈《かへ》る、更に、在所《ざいしよ》を知らず。
此騷《さはぎ》、華洛《くわらく》・浪速《なには》・江都《かうと》・當府《たうふ》、同時に起りて、同時に止《や》む。
世に、是を「打《うち》こはし」と云《いふ》。
此時、府中・丸子《まりこ》・江尻《えじり》の三驛に、救米《すくひまい》三百石を玉《たま》ふ。其價《そのあたひ》、金一兩を以て、米三斗五升を買《かふ》。云云《うんぬん》。」。
[やぶちゃん注:「天明七年、春より秋に到て、諸國、飢饉す」天明二(一七八二)年から天明八(一七八八)年にかけて発生した「天明の大飢饉」である。詳しくは、当該ウィキを見られたい。
「竹實」私の「和漢三才圖會卷第八十五 寓木類 附 苞木類 竹」の本文、及び、私の注を参照されたい。
「琉球芋」サツマイモのこと。
「天狗小僧」不詳。
「華洛」京都。
「江都」江戸。]
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