阿部正信編揖「駿國雜志」(内/怪奇談)正規表現版・オリジナル注附 「卷之二十四下」「陰摩羅鬼」
[やぶちゃん注:底本はここ。段落を成形し、句読点・記号を変更・追加した。]
「陰摩羅鬼《おんもらき》」 安倍郡《あべのこほり》、安倍川原《あべがははら》の渡頭《ととう》、刑罪塲《けいざいば》にあり。里人云《いふ》、
「陰雨《いんう》寂寞《じやくまく/せきばく》たる夜《よ》、安倍川の御仕置塲《おしおきば》に於《おい》て、奇火《きくわ》を見る者、あり。其色、靑くして、人の彳《たたずむ》に似たり。又、所々の古戰塲《こせんじやう》、及《および》、墳墓の舊地より、此《この》火《くわ》を顯《けん》ずる事、あり。號《なづけ》て、
『幽靈火《ゆうれいび》』と云《いふ》。是《これ》、人血《じけつ》の土中《どちゆう》に凝《こり》て、永く消滅せざるが、なす處《ところ》にして、
『陰摩羅鬼』
と云《いふ》。此陰火《いんくわ》、成《なる》べし。云云。」。
[やぶちゃん注:「陰摩羅鬼」私の「太平百物語卷五 四十二 西の京陰魔羅鬼の事」の私の注を見られたい。
「安倍川原の渡頭、刑罪塲」しまむー氏のサイト「街道の行く先へ」の「安倍川の渡し」に、地図と渡しのルート位置が記されてある。刑場は一般に、川原によく配され、街道道中の者への見せしめとされた。駿府城から執行人が来る関係上、安倍川の左岸にあったものと推定してよいであろう。]
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