河原田盛美著「淸國輸出日本水產圖說」正規表現版・オリジナル電子化注上卷(四)乾鮑の說(その4)
[やぶちゃん注:底本・凡例その他は、第一始動の記事、及び、「(一)鰑の說(その2)」の前注の太字部分を参照されたい。今回はここの右ページ。]
其(その)、今日(こんにち)に最も要用なる『明鮑(めいはう)』、『灰鮑(はいはう)』、及ひ[やぶちゃん注:ママ。]、『薄片製(うすへぎせい)』の三法(ほふ)も、一《ひとつ》は品種により、一は製法の精粗(ていねいそざつ)によりて、其品位を異(こと)にせり。左(さ)に、其區別を說き明(あか)すべし。
[やぶちゃん注:「明鮑(めいはう)」アワビの肉を煮てから干した食品で、中国料理の材料として古くから知られる。国立国会図書館の「レファレンス協同データベース」の「干しアワビの作り方を知りたい。」の「回答」には(太字・下線は私が附した)、『②『日本食品大事典 新版』によると、「現在、干しあわびの製法は中国料理などに使われる明鮑(めいほう)と灰鮑(かいほう)が主となっている。」とあり、明鮑は「塩漬した大型のあわびを蒸し煮して、焙乾した後乾燥したもので、あめ色をしたものが良品とされる。」、灰鮑は「すべて小形のあわびを用塩量をやや多くし、煮熟、焙乾を簡略化してからカビ付けを行い、表面がカビにより灰白色を呈したものである。」と説明がある。』とし、『③『日本の伝統食品事典』の中で、「干しアワビはアワビの肉を煮熟後、乾燥したものでほしこ、むしこ、むしあわび、むしかなどとも呼ばれ、明鮑と灰鮑の2種がある。」』とした後に、明鮑『は西日本地方で』、灰鮑は『東北・北海道地方で作られる。」』とある。なお、後の二つに注も参照のこと。
「灰鮑(はいはう)」概説は前注でよいが、今一つ、サイト「第三春美鮨」(そこには、『このサイトは主に長山一夫の著書、仕入覚書を掲載するものです。』という記載がある)の「『増補』 の その後」の「外房の特大マダカアワビを訪ねて(その2) 干鮑の異常な世界」に、
《引用開始》
明鮑(めいほう)と灰鮑(はいほう)、網鮑(もうほう)
日本でつくり中国に輸出される干鮑には、製法の違いから明鮑と灰鮑の2種類がある。
明鮑と灰鮑
明鮑は九州五島列島の加工業者達の加工技術によるもので、灰鮑は三陸の業者の加工技術による。「熊寛」の加工は両者の中間的なやり方となる。
《引用終了》
とあり、次に「網鮑」を立項し、
《引用開始》
網鮑
網鮑は100mからの海底に網を広げ、乗ってきた鮑を漁獲し、そのアワビの加工品のことを言ったのだが、今では網漁は全く行われなくなっている。網漁の特長である瑕の無いものを総称して網鮑と言うようになっている。鮑に糸を通さずに乾燥するため、糸穴が生じていない。
「原料に大型のマダカアワビやメガイアワビを用いた明鮑は、仕上がりも大きく、亀の甲羅のように盛り上がり光沢があって、色は透き通るような鮮やかな橙黄色を呈し、ちょうどベッコウあめ色に干しあがる。黄金色といってもいい。まさに逸品だ。中国向けに高価で取引される。中国では大型のマダカアワビからつくられた明鮑を網鮑と呼ぶ。これを使った料理は、味も見映えもすばらしい料理に仕立てられる。中国で最高値で取引される明鮑は、1斤(600g)3粒くらいの特別に大きいものであり、千葉県夷隅郡大原産明鮑は普通5~6粒程度で、ちょうど手ごろの大きさだった。三陸物のエゾアワビからつくられる明鮑は吉品(キッピン)と呼ばれ、1斤大体20~25粒である。
《引用終了》
とした後に、さらに「灰鮑」を立項されてあり、そこに、
《引用開始》
灰鮑
おもにクロアワビやエゾアワビからつくり、明鮑に比べて小ぶりとなる。ある程度干した後に、かび付けする。一番かびが発生した後に、表面に付いた青かびをはらって日干し、さらに二番かびを付ける。外面に白いかびが繁殖してくる。表面に白粉を帯び、やや暗褐色で、ここから灰鮑という名がついた。特有の香味を持つ。」
参照「あわび文化と日本人 大場俊雄著 ベルソーブックス
《引用終了》
とあった。
「薄片製(うすへぎせい)」先の国立国会図書館の「レファレンス協同データベース」の「干しアワビの作り方を知りたい。」の回答の③に引用が続く④に(太字は私が附した)、『④『鮑』の中でも、明鮑と灰鮑(はいほう)の製造工程が詳しく書かれている。それ以外にも、薄片鮑「トコブシやミミガイを用いた乾鮑である。これを半乾の時に片々に切ったものを薄片鮑とよび中国では嗜好した。」、金銭鮑(きんせんほう)「『日本水産製品誌』では、全く明鮑の製法に異ならず、小形のものを粒を揃えて別に製し、この名称で売ると高くなるとある。」、縄貫乾鮑「小さなアワビを縄に貫いて乾したもの。」、鮑熨斗干瓢(あわびのしかんぴょう)「普通の熨斗のごとく?き[やぶちゃん注:「?」はママ。誤字の指示か。]、洗って日干して貯えて置くもの」の紹介がある。』とあった。
さても、ここで以上の注で出た各種の学名を、順に、示しておく。画像を「ぼうずコンニャクの市場魚類図鑑」で後に附す。なお、そこで属名を「ミミガイ属」とするが、これは和名のシノニムである)
腹足綱直腹足亜綱古腹足上目原始腹足目ミミガイ科アワビ属マダカアワビ(眼高鮑) Haliotis madaka (「ぼうずコンニャクの市場魚類図鑑」はここ。以下ではリンクのみで示す)
アワビ属メガイアワビ(雌貝鮑) Haliotis gigantea (ここ)
アワビ属クロアワビ(黒鮑) Haliotis discus discus(ここ)
アワビ属クロアワビ亜種エゾアワビ(蝦夷鮑) Haliotis discus hannai (ここ。クロアワビの北方亜種とする一方、同一種とする説もある)
アワビ属トコブシ(床伏・常節・常伏) Haliotis diversicolor aquatilis (ここ)
アワビ属ミミガイ(耳貝) Haliotis asinina (ここ)
最後の二種は、(その1)の最後で、別新説を示したが、決定的に和名変更が確実であるかどうかは未確認なので、従わないこととする。]
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