河原田盛美著「淸國輸出日本水產圖說」正規表現版・オリジナル電子化注上卷(五)鱶鰭の說(その1)
[やぶちゃん注:底本・凡例その他は、第一始動の記事、及び、「(一)鰑の說(その2)」の前注の太字部分を参照されたい。今回はここの左ページから。本文は千七百二十八字であるに対し、注は実に、三万九千七百六十四字になってしまった。恐らく、ブログ一記事では、空前の最大注となった。]
淸國
日本水產圖說中卷
輸出
河 原 田 盛 美 撰
(五)鱶鰭(ふかひれ)の說
鱶鰭は、鯊(ふか)の鰭を乾製(かんせい)したるものなり。此魚(このうを)は軟骨魚類にして、九州にては『ふか』、東國にては『さめ』といふ。『さめ』と『ふか』とは、別物なれども、槪(おほむ)ね、混稱(こんしやう)す。『ふか』には、種類、多く、今、「水族志」に載する所、三十五種あり。『めじろふか』【此ものは、伊勢にて『むぎはらさめ』、紀伊長島にて『いらざめ』、同國九木浦《くきうら》にて『あぶらざめ』、淡路にて『つのこ』、紀伊熊野にて『つまりぶか』といふ。是、「雨航雜錄」「漳州府志」等の『白鯊』《ハクサ》なり。】)、曰く、『ほしざめ』【一名、『かすごろう[やぶちゃん注:ママ。]』。】、曰く、『くろぼし』【一名、『ほしざめ』。】、『ちからざめ』【一名、『ほうずぶか[やぶちゃん注:ママ。]】、曰く、『しろぶか』、曰く、『めじろぶか』【一名、『まいらぎ』、又、『だれ』といふ。漢名、『白眼鯊《ハクガンサ》』。】、曰く、『つのじ』【一名、『つの』、又、『はりさめ』・『つのさめ』。漢名「寧波府志」の『剌鯊《シサ》』。】、曰く、『ぎんさめ』【一名、『ぎんぶか』、又、『はたざめ』・『つのじ』ともいふ。「福州府志」の『劍鯊《ケンサ》』。】、曰く『てんぐふか』【一名、『てんぐさめ』、又、『はたざめ』といふ。】、曰く、『はたざめ』【一名、『てんかひざめ』。漢名、「黑鯊《コクサ》」。】、曰く、『こつうを』【一名『さがぼり』。漢名、『燕尾鯊《エンビサ》』。】、曰く、『かつたひざめ』、曰く、『うばざめ』【一名、『うはぶか』、又、『うさめ』】、曰く、『いつちやう』、曰く、『しゆもくぶか』【一名、『しもくざめ』、又、『かぜふかいてうさめ』。漢名は「閩書《びんしよ》」の『雙髻鯊《サウキツサ》』。】、曰く、『もだま』【大なるを、『いなき』といふ。漢名『魚鮠《ギヨグワイ》』。】、曰く、『おきむば』【一名、『なぬかぶか』、伊勢にて『あぶらこ』、尾張にて『のうくり』、備後因島《いんのしま》にて『お〻ぜ』。「臺灣府志」に云《いはく》、『龍文《りゆうもん》、沙《さ》にして、最佳《さいか》にして、其翅《そのひれ[やぶちゃん注:魚であるので「はね」ではなく、「ひれ」と読んだ。或いは、「はね」と読んでいるかも知れない。]》、尤《もつとも》、美なり。』とす。】、曰く、『おふぜ』【一名、『どぜうざめ』、又、紀伊熊野にて『したち』、『熨斗鯊《のしぶか》』ともいふ。】、曰く『しヽむしやう』、曰く、『さヾいわり』【一名、『ころざめ』、又、紀伊若山にて『ねこざめ』、筑前福間浦《ふくまうら》にて『かねうち』、漢名『虎頭鯊《コトウサ》』。)】、曰く、『なでぶか』【一名『みづいらき』、又、『ひれなか』。】、曰く、『水ぶか』、曰く、『鼠《ねずみ》ざめ』、曰く、『おろか』、曰く『すねぶか』、曰く、『つまりぶか』、曰く、『からす』、曰く、『とがり』、曰く、『たちをざめ』【一名、『はりざめ』、又、『しらざめ』、漢名、「臺灣府志」の『鋸鯊《キヨサ》』。】、曰く、『ゑびざめ』【一名『ゑびぶか』、漢名「廣東通志」の『蝦錯《カサク》』。】、曰く、『ひらかしら』、曰く、『かつたひうちは』【一名、『うちは』、又、『こふたゑひねこ』等なり。】、曰く、『うちはざめ』、曰く、『のこぎりぶか』(漢名は「廣東名勝志」の『鋸鯊《キヨサ》』)、『さかたぶか』【一名、『かいめ』、又、『すきのさき』・『すきゑひ』、漢名、「閩書」の『犁頭鯊《リトウサ》』。】等なり。亦、東國にて鱶を採り、製するものは、『靑(あを)ざめ』・『目白(めじろ)ざめ』【『まめじろ』・『つまり』・『とがり』・『ひらかしら』・『へら』等の別あり。漢名、「寧波府志」の『白眼鯊《ハクガンサ》』。】、『ばげ』、『尾長(をなが)』、『尾羽毛(をぞけ)』、『星鮫(ほしざめ)』、『白鮫(しろざめ)』【漢名、「寧波府志」の『鮧鯊《イサ》』。】、『姥鮫(うばざめ)』、『四ツ目ざめ』、『いらぎ』、『かせざめ』、『みすざめ』、『しゆもくざめ』(漢名『閔書』の『雙馨戴』)、『ふしきり』等(とう)なり。
[やぶちゃん注:「鱶鰭」ウィキの「ふかひれ」に拠れば(注記号はカットした。下線・太字は私が附した)、『大型のサメ(鱶)のひれ(鰭)(主に尾びれや背びれ部分)を乾燥させた中華料理の食材。中国語では「魚翅」』(ユイチー:yúchì)『と言う』。『中国で』、『ふかひれが食べられだしたのは』、『明の時代と言われている。潮州料理など、中華料理の高級食材として利用される。ほぐれた状態のふかひれをスープや点心の具として使うほか、ヒレの形のまま煮込む料理などがある。ジンベエザメ』(軟骨魚綱テンジクザメ目ジンベエザメ科ジンベエザメ属ジンベエザメ Rhincodon typus )『、ウバザメ』(ネズミザメ目ウバザメ科ウバザメ属ウバザメ Cetorhinus maximus )『のものが最も高級とされ、アオザメ』(ネズミザメ目ネズミザメ科アオザメ属アオザメ Isurus oxyrinchus )『、イタチザメ』(メジロザメ目イタチザメ科イタチザメ属イタチザメ Galeocerdo cuvier )『などのものも高級である。一般的には、ヨシキリザメ』(メジロザメ目メジロザメ科ヨシキリザメ属ヨシキリザメ Prionace glauca )『のものが使用されることが多い』。『日本は世界有数のふかひれ生産国であり、江戸時代にはナマコ、アワビと共に中国(明、清)へ輸出されていたが、近年ではシンガポールやインドネシアの生産量の方が上回っている。日本では気仙沼の水揚げが最も多いが、この多くはマグロ延縄漁業の際に釣れたサメからとられたものである。日本の気仙沼産が有名で且つ高級品として扱われるのは、加工技術が優れているためと言われる』。以下、「乾燥品の製法」の項。『生のふかひれを茹でるか』、『鉄板で加熱してから、表面の鮫肌をブラシでこすり』、『取り除く。油脂分を落とし天日干しにして、乾燥品が完成する。皮付きのまま乾燥にした加工品もある』。以下、「調理法」の項。『調理する際は、乾燥したふかひれをまずネギやショウガとともに茹で、さらに蒸した上で皮を剥き、水にさらす。このように下処理をしてから上手に煮込むと』、『臭みが消え、軟骨魚特有の柔らかなゼラチン質の食感が楽しめる珍味となる。ふかひれ自体に』は『味は』、『ほとんどない』。以下、「種類」の項。『ふかひれは』、『形状と大きさにより』、『価格が大きく異なる。形状により』、『味が異なるわけではないが、一般的には元のヒレの形を保ったふかひれが高級品とされている。これは排翅』(パイチー:páichì:より狭義のフカヒレの姿、特にヒレの形をそのまま残した状態のフカヒレを指す中国語である。)『の入手が困難である理由と、形状が保たれている排翅の方が加工済みの魚翅より品質を見極めやすい理由による』。『散翅(サンチー, sǎnchì)』は『最初からバラバラにほぐれたヒレ。缶詰やレトルトパックでも販売されており、一番安価で手ごろに食べられる』。『魚翅(ユイチー, yúchì)』は『中国語でのふかひれの総称。または手のひら程度の小ぶりの物や、一本一本バラバラにほぐれた散翅を指すこともある。基本的にスープとして提供される。主に胸びれが使われる。排翅と比べると値段は安い』。『排翅(パイチー, páichì)』は『 扇のような形状を保った丸ごとの大ぶりなヒレ。基本的に姿煮として提供される。主に背びれと尾びれが使われる。大きさ・形・厚さで値段が大きく変わる』。『天九翅(ティェンジュウチー, tiānjiǔchì)』。『最高級品』で、『ジンベエザメとウバザメの背びれのみ』が『天九翅になる。一本ずつの繊維が』、『モヤシより太い。ジンベエザメとウバザメは捕獲と取引が国際的に規制されているため、天九翅は稀少である。特に形の良い天九翅は、しばしば』、『料理店の権威を表』わ『す店頭ディスプレイとして展示される』とある。以下、「人工ふかひれ」・「贅沢品としての規制」・「原材料となるサメを保護する動き」の項があるが、これは現代の問題であるので、各自で見られたい。
「鯊(ふか)」漢字は誤りではない。「鯊」は本邦では、通常、「はぜ」(=脊索動物門脊椎動物亜門条鰭綱スズキ目ハゼ亜目ハゼ科 Gobiidaeの類の総称)と読むことが一般的であるが、漢語としては、第二義で「さめ」(無論、和語)、或いは、「ふか」(=サメ類(軟骨魚綱板鰓亜綱 Elasmobranchii)の特に大きいものの俗称だが、「さめ」と同義としても用いるケースは多い。学術的な言い分けではない。その証拠に、以下の解説中に四~六メートルにもなるシュモクザメ(本邦には三種棲息する)が出ている)を指す。
『「水族志」に載する所、三十五種あり』私はブログ・カテゴリ『畔田翠山「水族志」』を作っている。その初回、『カテゴリ 畔田翠山「水族志」 創始 / (二四六) クラゲ 《リロード》』を見られたい。原文を活字化するのが、手作業であるため、この二年程、御無沙汰しているが、そろそろ再起動しないといけない、とは思っている。その底本の国立国会図書館デジタルコレクションの当該箇所は、ここの「○第六編 鯊魚類」の冒頭の「フカ」以下である。そこに同プロジェクトが進むのは、かなり先になるので、この際、必要な箇所を、概ね、電子化することとした。結果して、★有意に迂遠に長大な電子化注★となってしまった。何故か?
実は――大きな問題が以下に横たわっているから――である!
✕河原田氏は以下に続く部分に於いて正に以上の「水族志」の記載にまるまる則って「ふか」の種の名前を列挙して異名及びその採取した地方・地名も――ソノマンマで全く以って無批判に引用している(全部ではない。また、凡そ鱶鰭にならない種まで含まれており、選択基準もワケワカランである!)――という驚天動地の事実✕
なのである! 仕方がない。以下、蜿蜒と各個撃破してゆくことにする。なお、畔田は、総論の後の、フカ類の各論の冒頭で、ズバり(右丁九行目)、
*
㋑フカ 一名ムギハラザメ【勢州土師】イラザメ【熊野長島】アブラザメ【同上矢口浦九木浦】ツノコ【淡州都志浦】ツマリブカ【熊野】白(シロ)ブカ【大和本草】白蒲鯊【兩航雜錄寧波府志作白鯊】漳州府志ニ白鯊刮ㇾ皮翦作ㇾ鱠ト云即此也此魚五月麥稈ノ黃變時多ク出故ニ「ムギワラザメ[やぶちゃん注:「ワラ」はママ。以下同じ。]」と云勢州人敎善云「ムギワラザメ」ニヨウ[やぶちゃん注:ママ。「醉(よ)ふ」。]ト云者背骨ノ中心空虛ナル內ニ付着セリ故ニ諺ニ「サメ」ヲ食トモヨウヨヲ食[やぶちゃん注:「くふ」。]事ナカレト云此魚背骨管ノ如シ內ニ燈心ノ如キ軟白肉ヲ小竹枝ニテ突ヌキ去ベシ此ヲ食シレバ臭氣アリテ味不ㇾ美本草啓蒙[やぶちゃん注:小野蘭山の「本草綱目啓蒙」のこと。]曰長サ二三尺細沙アリ灰白色味尤美ナリ齒モ沙ノ如クメウガ介ニ似テ極テ細カナリ按[やぶちゃん注:「あんずるに」。]「フカ」ハ背ハ灰白色ニ乄淡紅色ヲ帶腹淡白色五六尺ニ及ブ者アリ大和本草曰白ブカ味尤美ナリ
*
とあり、これは次の「メジロザメ」類、或いは、メジロザメを指していると考えてよい。
「めじろふか」軟骨魚綱メジロザメ(目白鮫)目メジロザメ科メジロザメ属Carcharhinusに属する十四種の総称で、特に名にし負う種は、メジロザメ(別名ヤジブカ:こちらを正式和名とする記載もあるが、「BISMaL」が『メジロザメ/ヤジブカ』とするのに従った。後者の由来は、調べた限りでは、「親父鱶(おやじぶか)」の縮約のようである) Carcharhinus plumbeus 。平凡社「世界大百科事典」の「メジロザメ(目白鮫)」を引く。『メジロザメ requiem shark∥grey shark』は『メジロザメ目メジロザメ科メジロザメ属の海産魚の総称。眼が白っぽい瞬膜(しゆんまく)におおわれることに由来した名称。メジロザメ属には100種以上の種の記載があるが,最近』、『整理されて30種が世界に分布することがわかった。日本産魚名リストによれば,日本近海にはハナザメ Carcharhinus brevipinna ,スミツキザメ C. dussumieri ,クロトガリザメ C. falciformis ,ヨゴレザメ C. longimanus ,ツマグロ C. melanopterus ,ヤジブカ(メジロザメ)C. plumbeus ,ホウライザメ C. sorrah など15種が分布する。このうち,クロトガリザメ,ヨゴレザメ,ヤジブカはほぼ全世界の暖海に生息し,ハナザメは東部太平洋以外の全世界の暖海に,スミツキザメ,ツマグロ,ホウライザメはインド太平洋域の暖海に分布する。大きさはスミツキザメが1m,ホウライザメが1.5mほどの小型種であるが,残りは2~3mになる』。『典型的なサメ型をしていて,瞬膜をもつこと,上顎歯』『の縁辺が』、『のこぎり状であるのが』、『特徴。クロトガリとヨゴレザメの2種は外洋性だが,他は沿岸性もしくは浅海性。卵黄の臥胎盤をもつ胎生で,ヤジブカの例では分鞄期は初夏,妊娠期間はほぼ1年。スミツキザメは2尾の胎児しかないが,他は平均5~6尾の胎児をもつ。マグロ』延縄『や底引網で漁獲され,肉は練製品の原料に,ひれは』、『ふかひれスープの材料となる』とある。
「めじろふか」既注のメジロザメの異名。
「伊勢にて『むぎはらさめ』」サイト「美味求真」の「第八章 魚類篇」の「鮫(さめ)」の「白鮫」に、『鮫の中で大きさが最も小さいものである。麦が熟する頃に漁獲が増えるのでムギワラザメという別名もある』とあった。さても、最小という謂いからには、これは「メジロザメ」の異名というのは、誤りであり、これは文字通りの、
メジロザメ目ドチザメ科ホシザメ属シロザメ Mustelus griseus
である。当該ウィキに拠れば(注記号はカットした)、『地方名はノウソ、マノクリ。全長1 m。日本を含め、アジア沿岸海域で普通に見られる比較的小型の底生性のサメである。肉や鰭は食用になる』。『北西太平洋の熱帯から温帯海域(北緯11度』から『40度)に分布する。北海道以南の日本各地および朝鮮半島、中国、台湾、ベトナムにかけて、東シナ海・南シナ海沿岸の海底付近に生息する。砂泥質の海底を好む。生息水深帯は、浅海から水深2,000mを超える深海まで』。『最大全長101cm。体型は細長い流線形。体色は背側が灰色から褐色、腹側は白色である。ホシザメ M. manazo によく似ているが、シロザメには体表に小白斑が見られないことで区別できる。歯の形状は敷石状』。『主に底生性の無脊椎動物を捕食するが、とくに甲殻類を好み、とりわけカニ類を主食としている。甲殻類では他にエビ類、ヤドカリ類、シャコ類などが餌生物として含まれ、甲殻類以外ではゴカイなどの多毛類の比率が高い』。『胎生。胎盤を形成し、胎仔は母親から直接栄養を供給されて育つ。妊娠期間は約10ヶ月で、雌は全長28-30cmの子どもを2-20尾』、『産む』。『延縄、刺し網、底引き網、定置網などで漁獲される。肉や鰭は食用として高値で取引される。肉は生食用や練り物原料になり、鰭はフカヒレに加工される』。『人には危害を加えない。飼育にも適しており、水族館などでよく展示される』とあった。
「紀伊長島」旧三重県北牟婁郡紀伊長島町(きいながしまちょう)で(旧町域はウィキの「紀伊長島町」の地図を参照)、現在の三重県北牟婁郡紀北町(きほくちょう:グーグル・マップ・データ。以下、今まで通りで、無指示の場合は同じ)の長島地区である。「ひなたGIS」の戦前の地図で「長島町」が確認出来る。
「いらざめ」これもメジロザメではないと思われる。これは、
ネズミザメ目ネズミザメ科アオザメ(青鮫)属アオザメ Isurus oxyrinchus
であろう。何時もの「ぼうずコンニャクの市場魚類図鑑」の同種のページの「地方名・市場名」に、『イラザメ』とある。但し、その地方名は『和歌山県辰ヶ浜』(文献よりとする。この附近)で、長島町は、紀伊半島の東の対称位置で大きな隔たりがあるものの、個人的には、そこでも、同種を指しているものと私は判断する。「イラザメ」の語源は不詳。万一、旧紀伊長島町でシロザメの異名とするということを知っておられる方は、お教え戴きたい。
「同國九木浦」戦国時代の九鬼水軍で知られる尾鷲市九鬼(くき)町九鬼湾の、ほぼ中央北岸に位置する。ここ。
「あぶらざめ」アオザメの異名としては、確認出来ない。「あぶらざめ」と呼称されるものに、ツノザメ上目ツノザメ目ツノザメ科ツノザメ属アブラツノザメ Squalus suckleyi がいるが、同種は太平洋側では相模湾以北にしか棲息しないので、違う。
「つのこ」アオザメの異名としては、確認出来ない。これは、単純に考えると、「ツノザメの子」と読め、ツノザメ目 Squaliformesツノザメ科 Squalidae のツノザメ類は二属三十二種がいるが、本邦で知られる種は、
ツノザメ属アブラツノザメ Squalus suckleyi
が、最も知られる種ではある。しかも、前の異名「あぶらざめ」とも親和性がある。当該ウィキに拠れば(下線・太字は私が附した)、『サメ類のなかでは美味な種の一つとして、食用とされて』おり、『日本では』、『東北を中心にムキサメと呼んで切り身が販売され、煮付けや照り焼き、フライや唐揚げなどにも使われるほか、頭や卵など多くの部位が食用となる。魚肉練り製品原料や安価なフカヒレとしても利用される。 青森県の津軽地方には、煮込んだ頭からほぐした肉と軟骨を、大根おろしや味噌で和える「すくめ」という郷土料理がある』。『和名が示すように魚油が多く得られ、大正期から戦後にかけて肝油の原料とされた。1950年頃まで国際的にビタミンAの原料として漁獲量が急増したが、合成技術の発達により10年ほどで急減した。 現在は軟骨エキスなどサプリメントや化粧品の原料として需要がある』。『初期は魚粕肥料としての需要が中心で、現在はペットフードや観賞魚用の餌、魚粉の材料としても用いられている』。『本種は丈夫な種である為、水族館や実験施設などでも飼育され、教育用の解剖素材にも利用される』とあるのだが、以上の記載から推定出来るように、棲息域は『日本海以北、太平洋側では相模湾以北。ベーリング海』(「ぼうずコンニャクの市場魚類図鑑」の同種のページの「生息域」より引用)であり、』『淡路』島周辺には棲息しないから、畔田の言うのは、本種ではない。ただ、「つのこ」を「角(つの)の魚(こ)」と解釈すると、頭部先端が「尖(とん)がる魚」の意にも採れ、そうすると、アオザメの異名としては、しっくりくるようには思われは、する。
「紀伊熊野」アオザメがいても、問題はない。
「つまりぶか」現行のアオザメは勿論、サメ類の異名としては、確認出来ない。
「雨航雜錄」明代後期の文人馮時可(ひょうじか)が撰した雑文集。魚類の漢名典拠としてよく用いられる。四庫全書に含まれている。
「漳州府志」原型は、明代の文人で、福建省漳州府龍渓県(現在の福建省竜海市)出身の張燮(ちょうしょう 一五七四年~一六四〇年)が著したものであるが、その後、各時代に改稿され、ここのそれは、清の乾隆帝の代に成立した現在の福建省南東部に位置する漳州市一帯の地誌を指すものと思われる。
「ほしざめ」これは、
メジロザメ目ドチザメ科ホシザメ(星鮫)属ホシザメ Mustelus manazo
である。「ぼうずコンニャクの市場魚類図鑑」の同種のページに拠れば、和名は『白い星状の斑文が目立つため』とある。
「かすごろう」ママ注記は「ごろう」は「五郞」であろうと踏んだからだが、「水族志」で確認したところ、畔田は、ちゃんと『カスゴラウ』としていたので(ここの左丁の六行目)、河原田氏の誤記である。ホシザメの面付きは、侠客のような鋭さであるから、しっくりくるネーミングではある。白い斑紋点が散らばる(「滓(かす)」)のと、親和性はある異名として納得は出来るが、この異名は確認出来なかった。しかも、次の注を見よ。
「『くろぼし』【一名、『ほしざめ』。】」こっちが、正統なホシザメということになるのだが、そもそも、この「くろぼし」はホシザメの異名としては、矛盾がひどい。そこで、「水族志」の当該部を見ると(左の「二百五」ページの後ろから七~八行目)、
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㋩黑(クロ)ボシ 一名ホシサカ【本草啓蒙 水戶】啓蒙自身ニ黑星アル者ヲホシサカト云
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であり、河原田の引用間違いで、「ほしさか」とすべきであることが判明する。
「『ちからざめ』【一名、『ほうずぶか』。】)」ワケワカラン! 再び、「水族志」を引く(ここの左丁九行目)。
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㊁チカラブカ【紀州】一名ボウズブカ[やぶちゃん注:ママ。]形狀フカニ同乄[やぶちゃん注:「おなじくして」。]背橫ニ淡黑色ノ條斑アリ斑內ニ黑星㸃アリ味フカニ劣ル一種
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「しろぶか」「水族志」には(ここの、左ページ後ろから四行目以降)
*
㋭シロブカ【有同名】大者アリ身白色ニ乄背淡黑色ヲ帶眼後ヨリ脇ニ至リ淡黑色ノ條アリ半[やぶちゃん注:「なかば」。]ニテ薄ク尾本至テ淡黑條アリ遍身ニ白沙アリ眼中藍色腹下翅白色淡黑ヲ帶尾此レ物理小識ニ載ル白皮ナリ
*
とある。これは、「尾が白い」というのは不審だが、
ネズミザメ上目メジロザメ目ドチザメ科ホシザメ属シロザメ Mustelus griseus
としてよいだろう。「ぼうずコンニャクの市場魚類図鑑」の同種のページを見ると、『1.1m FL』(fork lengthの略号。「尾叉長(びさちょう)」・「尾叉体長」と言う。魚の吻部の前端から、尾鰭の湾入部までの直線距離を指す。)『前後になる。細長く紡錘形。体表に斑文がない。臀鰭は第2背鰭起部よりも後ろにある。眼に瞬膜(しゅんまく』/『まぶた)がある。両顎の歯はトゲトゲしない。口角のそばにある唇褶は内と外が同じ長さ。』とあり、「由来・語源」には、『体色が白いわけでもないので不明』とし、『〈是に(ホシザメ』(ホシザメ科ホシザメ属シロザメ Mustelus griseus )『に)頗る近いものに東京でアカボシ、高知でコシナガと云うのがある。是はGaleorhinus griseus (Pietschmann)〉であるが、類似の別種か同一種か不明で即ち疑問種の好資料である。是では全く白點がなく……。〉『図説有用魚類千種 正続』(田中茂穂・阿部宗明 森北出版 1955年、1957年)』とあり、『明治時代から1938年以前にホシザメは種として確認されていたが、シロザメは種として確認されていなかった。』とある。畔田の先見性が、見て取れる。
「『めじろぶか』【一名、『まいらぎ』、又、『だれ』といふ。漢名、『白眼鯊《ハクガンサ》』。】」「水族志」には(ここの、左ページ最後の一字から、次のコマにかけて)
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㋬メジロブカ 一名マイラギ【紀州田邊】白目鯊 啓蒙[やぶちゃん注:「本草綱目啓蒙」。]曰「メジロブカ」形狀「シロブカ」ニ似テ齒微ク[やぶちゃん注:「すこしく」。]粗ク尖レリ鬣ニ刺ナク沙細ナリ[やぶちゃん注:「こまかなり」。]
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とある。小学館「日本大百科全書」の「メジロザメ」の終わりに、『メジロザメ属は第1背びれが大きく、その高さが第2背びれの2倍以上あること、第2背びれが臀(しり)びれの下か、それより前から始まること、尾柄側面にキール(隆起線)がないことなどが特徴で、35種ほどが知られている。日本近海からはヤジブカ(メジロザメ)のほかに、ヨゴレ、オオメジロザメC. leucas 、クロヘリメジロザメ C. brachyurus など13種が知られている』とあったから、その中の一種であろう。なお、高知県高知市の「桂浜水族館 公式」ブログの「261 (再)大敷網漁の魚達⑮マイラ」で、アオザメの異名として「マイラ」があることが記されてあるものの、冒頭で、『アオザメがなぜマイラと呼ばれているかはわからない』と述べてある。しかし、畔田の語りは、アオザメとは思われない。
「『つのじ』【一名、『つの』、又、『はりさめ』・『つのさめ』。漢名「寧波府志」の『剌鯊《シサ》』。】」]「水族志」には(ここの右ページ二行目から)、
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㋣ツノジ 一名ツノ【大和本草四國】ハリサカ【本草啓蒙水戶】ツノサメ【八丈島物產記】刺鯊 大和本草曰「ツノジ」「フカ」の類ナリ北土及び因幡、丹後ノ海ニアリ其皮鮫ノ如クシテ灰色長三四尺アリ筑紫ニテ「モダマ」ト云魚ニ似タリ肉ニ似タリ肉ニ脂多シ味ヨカラズ賤民ハ食フ其肝大也肝ニ油多シ北國ニハ之ヲ燈油トス西國ニテ「ツノ」ト云モ同物ナルヘシ背ニ刀ノ如ナルヒレアリ又曰「ツノジ」ハ「モタマ」ニ似タリ只背スヂニ角ノ如ナル物二三アリ是「モダマ」ニカハレリ本草啓蒙曰形「メジロフカ」ニ同ク乄鰭ゴトニ一刺アリ是「モダマ」ニカハレリ本草啓蒙曰形「メイジロフカ」ニ同ク乄鰭ゴトニ一刺アリ沙最細ク灰色ナリ淡乾スル者九萬疋【同名アリ】ト云京師ニテハ上巳ノ節物[やぶちゃん注:「せつもの」。季節物(きせつもの)。]トス八𠀋島物產記曰「ヲノザメ」背ニ角ノ如キモノアリ臭氣深シ長三尺餘膽ヲ煎テ[やぶちゃん注:「いりて」。]油ヲ取[やぶちゃん注:「とる」。]ニ六七合アリ
*
とある。これに就いては、「大和本草附錄巻之二 魚類 フカノ類 (サメ類)」(二〇二一年四月十八日投稿)の注で(種を示す部分を改行した)、
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「つのじ」「大和本草卷之十三 魚之下 フカ (サメ類(一部に誤りを含む))」に、『○「つのじ」。「ふか」類なり。北土及び因幡・丹後の海にあり。其の皮、鮫のごとくにして、灰色。長さ三、四尺あり。筑紫にて「もだま」と云ふ魚に似たり。肝に、脂、多し。味よからず。賎民は食ふ。其の肝、大なり。肝に、油。多し。北土には是れを以つて燈油とす。西土にて「つの」と云ふも同物なるべし。背に刀のごとくなるひれあり』とあり、また、「大和本草卷之十三 魚之下 鱧魚(れいぎよ)・海鰻(はも) (ハモ・ウツボ他/誤認同定多数含む)」には、『或いは曰く、『丹後の海に「つのじ」と云ふ魚あり。これ、鱧なるべし』と云ふ〔も〕非なり。「つのじ」は「ふか」の類〔にして〕皮に「さめ」あり。筑紫にて「もだま」と云ふ魚に能く相ひ似たり。鱧とは別なり』と記している。それらでさんざん考証したが、
「ツノジ」はメジロザメ目ドチザメ科ホシザメ属ホシザメ Mustelus manazo
或いは、
ホシザメ属シロザメ Mustelus griseus の異名
としてもあるのであるが、それ以上に実は、「サメ」とは遠い昔に分かれてしまった、現行の生物学上は狭義の「サメ」ではない、
軟骨魚綱全頭亜綱ギンザメ目ギンザメ上科ギンザメ科ギンザメ属ギギンザメ類(軟骨魚綱全頭亜綱ギンザメ目 Chimaeriformes
或いは、
代表種ギンザメ目ギンザメ上科ギンザメ科ギンザメ属ギンザメ Chimaera phantasma )の異名
として、現在も広汎に見られる呼称である。私の『栗本丹洲 魚譜 異魚「ツノジ」の類 (ギンザメ或いはニジギンザメ)』(丹洲の同「魚譜」には六図に及ぶギンザメ類が描かれている。私のカテゴリ「栗本丹洲」を参照)や、『博物学古記録翻刻訳注 ■17 「蒹葭堂雑録」に表われたるギンザメの記載』を見られたい。ここで益軒が言っている「背すぢに、角のごとくなる物、二、三あり」というのはギンザメの様態記載として肯ずるものである(多くの種で第一背鰭が独立して一棘を成し(強くはないが有毒腺を持つ)、その背後の背鰭が高く突き出る)。ところが、それでは、実は決着しない。益軒の呼称と比定種には、彼自身の中で激しい混乱があって、彼の『「もだま」に似たり』という謂いもそれに拍車をかける。私は「大和本草卷之十三 魚之下 フカ (サメ類(一部に誤りを含む))」で、この「もだま」は当初、
メジロザメ目ドチザメ科ホシザメ属ホシザメ Mustelus manazo
と断定した(それに至るまでの考証では「1」から「5」までの候補とその理由を挙げたので見られたい)。ところが、他の益軒に記すそれらの属性を並べてみると、これが、ホシザメでもギンザメでもない感じがあるのである。而して私の結論としては、益軒が――「つのじ」や、それが似ている「もだま」――と言う場合、彼は実は、エイのように平たい、
軟骨魚綱板鰓亜綱カスザメ目カスザメ科カスザメ属カスザメ Squatina japonica
或いは、その近縁種の、
カスザメ属コロザメSquatina nebulosa
の類を念頭に置いていたように考えられるのである。
*
と述べた。以上の注は、相応に、ここで、参考になるだろうと思う。
『「つのじ」【一名、『つの』、又、『はりさめ』・『つのさめ』。漢名「寧波府志」の「剌鯊《シサ》)。】、曰く、『ぎんさめ』【一名、『ぎんぶか』、又、『はたざめ』・『つのじ』ともいふ。「福州府志」の『劍鯊《ケンサ》』。】」これも、前の注を参照されたい。一応、「水族志」も引いておく(ここの右丁の後ろから二行目から、次のコマまで)。
*
㋠銀(ギン)ザメ【日東魚譜】一名ギンブカ【紀州若山】ハタザメ【本草啓蒙】ツノジ【食療正要啓蒙曰几上ニ置クトキ[やぶちゃん注:原文は約物の「トキ点」。]ハ草書つノ字ノ影ノ如シ故ニツノジト名ク刺鯊ノツノジト異ナリ】劔鯊 福州府志曰劔鯊尾長似ㇾ劔閩書曰有劔尾長似ㇾ劔可二以斃一曰東魚譜曰「ギンザメ」皮無ㇾ沙其色如ㇾ銀味佳美而無二臭氣一本草啓蒙曰沙ナクシテ色白シ光アリテ銀箔ノ如シ背鰭ニ長キ鋸齒アリ尾ハ漸ク細長ニ乄絲ノ如シ帶魚(タチノヲ)[やぶちゃん注:条鰭綱サバ目タチウオ科タチウオ属タチウオ Trichiurus lepturus のこと。後に「ノ」が欲しい。]尾ニ似タリ按[やぶちゃん注:「あんずるに」。]「銀ブカ」[やぶちゃん注:これは、以上と以下の記載から、ギンザメ Chimaera phantasma に間違いない。]ハ形狀「フカ」ニ同[やぶちゃん注:「おなじく」。]乄頭背尾上ニ至リ銀色ヲ帶[やぶちゃん注:「おび」。]腹白色皮上沙ナシ鼻圓ク尖出乄[やぶちゃん注:「とつしゆつして」。]世俗ニ云天狗鼻ノ短カ[やぶちゃん注:「短キガ」の誤記か。]如シ鼻上淡黑色ニ乄下白色透明柔軟鼻骨ナシ鼻ヨリ口腮ニ至ル迄淡白色ニ淡紅ヲ帶口頷下ニアリ唇厚ク上唇麁[やぶちゃん注:「あらい」。]皮アリテ板牙[やぶちゃん注:「ばんが」。ギンザメの歯は、互いに癒合して歯板状になっており、上顎に二対、下顎に一対ある。]也口ノ上ニ長圓ナル鼻穴アリ眼大ニ乄白色瞳黑シ頭頂大ニ乄「ホウボウ」ノ頭ニ似タリ身ノ半[やぶちゃん注:「なかば」。]ヨリ下ハ鯰魚ニ似タリ尾長ク細ク末尖テ[やぶちゃん注:「とがりて」。]帶魚尾ノ如シ背ノ下鬣[やぶちゃん注:「したびれ」。]淡黑色ニ乄端微黑色ニ乄端微黑色尾ニ連レリ腰下鰭淡黑色ニ乄淡紅ヲ帶外黑色ヲ帶刺ノ背上ノ方左右ニ並ヒ鋸齒アリ刺ノ次ニ續キ短鬣アルヿ[やぶちゃん注:「こと」。]「フカ」ノ如シ色淡黑脇翅大ニ乄本ヨリ端ニ至リ肉アリテ端薄キヿ「フカ」ノ翅ノ如シ色淡黑ニ乄本ニ淡紅色ヲ帶腰下ニ又短鬣一ツアリテ淡黑色其鬣ノ下ニ足アリ鳥足ノ如シ脚肉色ニ乄末ハ骨ノ如シ紅白色長サ五七寸趾ニ至リ三叉ヲナシ各一指骨アリテ末尖リ左右肉紅色ノ砂アル皮附テ[やぶちゃん注:「つきて」。]鷄冠ノ色薄カ[やぶちゃん注:「ガ」。]如シ兩脚ノ間ニ鋸齒ノ如キ刺アリ按ニ山堂肆考ノ有二劔鯊一觜如ㇾ劔對二排牙棘一人不二敢近一ト云者ハ鋸鯊ニ乄「ノコギリブカ」[やぶちゃん注:これは、ノコギリザメ目ノコギリザメ科Pristiophoridaeのノコギリザメ類(タイプ種:ミナミノコギリザメ Pristiophorus cirratus を指す。なお、ギンザメのは、当該ウィキに拠れば、『背鰭前縁に1本の毒腺のある棘をもつ。刺されると痛むが、人に対する毒性は弱い。』とある。]也
*
「『てんぐふか』【一名、『てんぐさめ』、又、『はたざめ』といふ。】」「水族志」には(ここの右ページ五行目から)、
*
㋷天狗(テング)ザメ一名天狗(テング)ブカ【熊野】本草啓蒙曰ハクザメ此一種淡褐色ナルモノヲ「テングザメ」ト云
*
まず、平凡社「世界大百科事典」の「ウバザメ(姥鮫)」を引く(太字は私が附した)。ネズミザメ目 ウバザメ科ウバザメ属『ウバザメ Cetorhinus maximus 』『ネズミザメ目ウバザメ科の海産魚』。『歯が小さく一見したところ歯がないように見え,また長い鰓孔(えらあな)がしわのように見えるので,おばあさんの意味の姥(うば)からこの名が生じた。愚鈍に見えるのでバカザメ,幼時には鼻先がとがるのでテングザメともいう。英名は basking shark(ひなたぼっこをするサメの意)。世界に1科1属1種で,全世界の寒海部に多く,日本近海では春先に沿岸域に出現する。体が大きく,のどから背中までのびる鰓孔をもつのが特徴。全長12mに達する。人間には危害を加えない。おもに表層域で生活し,大口を開けて時速4kmほどのスピードで泳ぎながら,密生した鰓耙(さいは)で動物プランクトンや小魚をこし取って食べる。歯は円錐形で細かく,ほとんどかむ機能はない。冬には鰓耙は抜け落ちて深海底で冬眠するといわれる。卵胎生。肉はほとんど利用されないが,肝臓中に含まれるスクアレンは化粧品などの原料になるので漁業の対象となる。』とある。画像は、学名でグーグル画像検索したものをリンクさせておく。当該ウィキは解説は、非常に詳しいのだが、画像が全体像写真がなく、良くないからである。一部を引用すると(太字は同前)、『歴史的に泳ぎの遅さ、非攻撃的な性質、そして以前は豊富な個体数のために、漁業の主要産物であった。商業的にさまざまな形で利用され、肉は食品や魚粉に、皮膚は皮革に、スクアレン成分の含有量が高い肝臓は油に用いられた』。『アイスランドでは、肉を発酵させたものをハウカットルと呼んで珍重しており、サメ独特のアンモニア臭が特徴である。現在では、主に鰭(ふかひれ)を取るために捕獲されている。体の一部(軟骨など)は伝統中国医学の薬や、日本では媚薬としても用いられている。』とあった。実は、私は当初、大きく突出した扁平な吻(頭部先端の尖った部分)が特徴である、ネズミザメ目ミツクリザメ科ミツクリザメ属ミツクリザメ Mitsukurina owstoni を候補の一つに考えていた。それは、例えば、当該ウィキで、同種は『英語では Goblin shark と呼ばれているが、これは本種の別名、テングザメの翻訳である』とあったことにも拠る。しかし、『世界各地から報告があるが、出現はまれ。これまでの報告はほとんどが日本からのもので』、『とくに駿河湾や相模湾など水深が1,000 m以上になる深海湾でよくみられる』とあるばかりで、およそ「ふかひれ」の対象になりそうもないなぁ、と思った。小学館「日本大百科全書」の『ミツクリザメ』『みつくりざめ/箕作鮫』には、『軟骨魚綱ネズミザメ目』(Lamnidae)『の科や属の総称、またはその1種の名称。ミツクリザメ科Mitsukurinidaeはミツクリザメ属MitsukurinaのミツクリザメM. owstoni 1属1種からなる。ミツクリザメ(英名goblin shark)は柔らかい体、扁平』『な長い吻』、『非常に突出しやすい口、釘』『状の鋭い歯などをもつのが特徴である。ミツクリザメは横浜沖の深海で捕獲された個体に基づいて、アメリカの魚類学者ジョーダンDavid Starr Jordan(1851―1931)により、1898年(明治31)に新科新属新種として発表された。その科名と属名は本種の報告に貢献した東京大学の動物学者であった箕作佳吉(かきち)に、種名は発見者のイギリス人オーストンAlan Owston(1853―1915)に捧げられたものである。最初は日本特産のサメと考えられていたが、深海調査が進むにつれて世界各地に分布することが明らかになった。日本では東京湾、相模湾』『や駿河湾』『などから採集されている。』とし、『ミツクリザメは深海性で、水深1300メートルくらいまでの大陸斜面に生息し、魚類やイカ・タコ類などを食べる。餌』『が少ない深海域にすみ、遊泳力が弱いため、餌を追いかけてとらえるよりは、静かに獲物に近づき、上下両顎(りょうがく)を一瞬で大きく前方に押し出して、油断している獲物をつかまえるという効率的な摂餌』『方法を獲得した、と考えられている。生殖方法は不明であるが、ネズミザメ目に属することから、食卵型の胎生であると考えられる。全長6メートルほどになる。学問的には貴重なサメであるが』(☞)『産業的には価値がない。水族館で飼育が試みられているが、現状では長期飼育はむずかしい。国際自然保護連合(IUCN)のレッド・リストでは、低懸念(LC)とされている(2021年9月時点)。』とあったので、退場して頂くこととした。因みに、一九七一年に公開された「ガメラ対深海怪獣ジグラ」を見た時、ビキニ姿の海女さんなんぞより、ジグラの造形を見て、「こりゃ、ミツクリザメだがね!」と歓喜したのを覚えている。
「『はたざめ』【一名、『てんかひざめ』。漢名、「黑鯊《コクサ》」。】」「水族志」は(ここの七行目以降)、
*
㋦ハタザメ【日東魚譜】一名テムカイザメ【同上】黑魦[やぶちゃん注:「魦」は「鯊」の異体字。] 本草啓蒙曰形佛幡[やぶちゃん注:「ぶつばん」。仏教の荘厳具(しょうごんぐ)の一種。現行では、木製の物も多いが、本来的には布製の旗で、寺門の外に飾ったり、室内に掛けたりする。]ニ似タリ褐色味美ニ乄臭氣ナシ生食モ亦佳ナリ此皮物ヲ鎊[やぶちゃん注:「けづり」と訓じているか。]スルニ上トス他[やぶちゃん注:「ほか」。]沙ニ勝レリ按[やぶちゃん注:「あんずるに」。]「ハタザメ」ハ形狀「フカ」ニ似テ扁ク頭ノ下左右ヘ長ク出ツ[やぶちゃん注:「ヅ」。]「ハクラヱイ」ノ如シ其下ニ小ナル出タル者アリ皆翅也尾ハ長ク乄「フカ」ノ如シ末ニテ扁シ總身淡黑色ニ乄靑ヲ帶沙ハ褐色ニ乄細シ腹白色
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二つの名で検索しても見当たらないので、使いたくないが、AIを見ると、二種のシュモクザメを挙げていた。確かに、『頭ノ下左右ヘ長ク出ツ』は、しっくりくる。
メジロザメ目シュモクザメ(撞木鮫)科 Sphyrnidaeシュモクザメ属ヒラシュモクザメ Sphyrna mokarran
シュモクザメ属アカシュモクザメ Sphyrna lewini
である。ウィキの「ヒラシュモクザメ」と「アカシュモクザメ」を見られたい。孰れも、鱶鰭にする、と書かれてある。
「『こつうを』【一名『さがぼり』。漢名、『燕尾鯊《エンビサ》』。】」「水族志」を引いておく(ここの右丁の後ろから三行目から)。
*
㋸コツウヲ【本草啓蒙備後鞆[やぶちゃん注:「鞆の浦」のこと。]】一名サガボウ【同上羽州山形】燕尾鯊 本草啓蒙曰全身釘の形ニ似タリ沙アリテ皂[やぶちゃん注:「黒」に同じ。]白色口頷下ニアリ四五尺ヨリ二丈餘ニ至ル形燕尾ノ如シ
*
Decodecochibita氏のブログ「釣り人語源考」の「サメとコチ(後編)」に、諸本を検証された上で、『『日本魚名集覧』(1958年 渋沢)の「エドアブラザメ」の項で「備後鞆ではこれを”コツウヲ”と呼ぶ」と記している』。『エドアブラザメは深海のサメで食用ではない』。『たぶん』、『間違えてアブラツノザメのことだろうと思われるが、もちろん瀬戸内海では冷水を好むアブラツノザメは生息しない』。『備後ではアブラツノザメは食べないし』、『そのような地方名は存在しない』。『渋沢は』、『たぶん『本草綱目啓蒙』(享和3年 1803年 小野蘭山)の記述を引用していて、「備後鞆浦に”許都宇乎コツウオ”あり。是は”許都宇コツウ”のことで色は黒と白、口はアゴの下にあり、長さは小さきものは四五寸、大きなものは二丈余り。尾は燕尾のごとし。是は”燕尾鯊”に当たるものであろう。」と記述しているのを参照し、さらに『本草薬名備考和訓鈔』(文化4年 1807年 錦小路嶧山)の「燕尾鯊は俗に”左賀菩宇さがぼう”とよぶものなり。」を見たのであろう』。『「さがぼう」は福島県・栃木県の山間部でのアブラツノザメの呼び名で、むき身の状態で産地の青森県や宮城県から送られてくる』。『「燕尾鯊」はオナガザメやニタリのことだろう』。『「こつう」というサメはよく分からないが、アオザメの地方名に「カツザメ・カツオザメ」があり』、『少し似ている。』と推定しておられる。ただ、最後で、『古文書の記述をよく考えると、とても古い時代ではコチを「さめ(狭目)」と呼んでいたのではないだろうか』。『あの「ハートや樹木型の眼」こそコチ類の見分け方、かつ「食べては目が悪くなる」言い伝えの根拠なのだ』。『コチの腹の皮はフラットフィッシュであるので海底との接触に非常に強く頑丈だ』。『こちらのコチの方が本家本元の「狭目皮さめがわ」として日用品の魚皮として革製品に利用されたのではないか』。『かなりややこしい話ではあるが…』『律令制が徐々に整う奈良時代、「ふか」と呼ばれた軟骨魚類が徐々に「さめ」という呼称に置き換わってきた』。『そのため』、『元々「さめ」と呼ばれ、食べると目が悪くなるとされた魚を、都の役人が「笏コツに似ているから”コツ”(許都)」と改名し、全国共通として皮を税とし納めさせた』。『それが平安時代を過ぎると、すでに謂れが分からなくなってしまったというわけだ』。『古文書にはサメの記述に「コチに似て・・・」とよく出てきて、底生のサメとコチを同類のように扱っているような印象がある。』という見解も添えておられる(但し、畔田が「コチ」を「フカ」と勘違いする可能性は、まず、ない、と私は考えるので、この考証はしない)。
さて、まず、「さがぼう」=アブラツノザメは既注であるが、気になるのは、『福島県・栃木県の山間部での呼び名で、むき身の状態で産地の青森県や宮城県から送られてくる』というのが、気になる。既に述べた通り、同種は、太平洋側では相模湾以北とされるからである。「水族志」の記載は、紀伊半島周縁であるである。これは保留する。
次に、『「燕尾鯊」はオナガザメやニタリのことだろう』であるが、まず、前者は、
ネズミザメ目オナガザメ科オナガザメ属マオナガ(真尾長/オナガザメ) Alopias vulpinus
である。BISMaLの同種の和名は、マオナガのみである。「ぼうずコンニャクの市場魚類図鑑」の同種のページも「マオナガ」で、「代表的な呼び名」の項で「オナガザメ」とする。冒頭の解説では、『6m前後 TL 前後になる。細長く胸鰭上方に白色域がある。背鰭は2基。尾鰭上葉が非常に長い。瞬膜がない。』とあり、「由来・語源」で、『模式標本のオナガザメであるためだと思われる。それで「真」をつけた。』とある。「生息域」は『沿岸および外洋の表層付近〜水深650m。若い個体はよく内湾の浅いところに姿を見せる』とされ、『北海道の日本海、能登沖、北海道の太平洋沿岸、福島県以南の黒潮域沿岸、九州沿岸』で、『日本海には少ない。』とある。但し、『一般に練り製品などに加工される』とし、『また和歌山県、三重県などでは「一塩いらぎ(干もの)」になる。』とあるだけで、鱶鰭にする記載はない。しかし、当該ウィキに拠れば、鰭を利用する、とある。問題ないので、私は、マオナガに比定する。
「『かつたひざめ』、曰く、『うばざめ』【一名、『うはぶか』、又、『うさめ』】」「水族志」は以下(ここの右ページ最終行から)。
*
㋾カツタイザメ 日東魚譜曰「カツタイザメ」赤褐色有二斑文一如ㇾ癬[やぶちゃん注:音「セン」で、訓は「たむし/ひぜん」。皮膚病の一種。]味佳也本草啓蒙曰カツタイザメ虎頭鯊ニ似テ口邊ニ小肉贅アリテ醜シ軆灰赤色ニ乄微黑ヲ帶斑アリテ癩癬ニ似タリ味佳ナリ魚鑑曰「カツタイザメ」色灰黑ニタムシノコトキ斑アリ口吻(ワキ[やぶちゃん注:読みは「吻」のみにある。])ニ瘤アリ
*
もう、ご覧の通り、これは、ハンセン病の差別用語であった「かったい」を用いた、今はあり得ない差別和名である。しかし、以上の記載から、「カツタイザメ」は古い名であり、標準和名として生きていたものと推定された。調べたところ、国立国会図書館デジタルコレクションで掛かってきた。「箕作博士の著作」(五島淸太郞・『東京動物學會』(明治四三(一九一〇)年二月発行・PDF)箕作佳吉博士の「新年の初夢」(現資料の「六一」ページ下段中央)を引用されてあり、そこで箕作博士御自身の直接話法の中に、この「カツタイザメ」が出現している。かの博士が、標準和名でないものを使うことは考えられないから、まず、これは、当時、標準和名であったと断じて良いだろう。
さて、これは現在の如何なる種か? 以上の畔田の記載から類推するに、私は、
ツノザメ上目カスザメ(糟鮫)目カスザメ科カスザメ属カスザメ Squatina japonica
ではないか? と推定する。誤りとならば、御教授願いたい。「ぼうずコンニャクの市場魚類図鑑」の同種のページと、当該ウィキを、リンクさせておく。
「いつちやう」「水族志」は以下(ここの左ページ七行目から)。
*
㋕イツチヤウ一丁【大和本草】イテウザメ【魚鏡】大和本草曰一キヤウト云「フカ」アリ口廣クシテ人ヲ喰フ甚タケクシテ物ヲムサボル
*
これは、既に、「大和本草卷之十三 魚之下 フカ (サメ類(一部に誤りを含む))」で以下のように考証している。
*
「一(いつ)ちやう」これは当初「一(いつ)ちまう」かと思ったものの(他の部分の表記と比較しても「ヤ」のそれではない)「東洋文庫」の「本草食鑑」の注で『一(イツ)チャウ』と翻刻しているので、それに従った)。しかし「イッチョウ」(「一丁」?)でも或いは「イッチモウ」(漢字表記想定出来ず)でもある種のサメの異名としては全く掛かってこない。一つの鍵は「口」が「廣く」、「人を喰」らい、非常に獰猛で、摂餌対象を残酷に貪(むさぼ)るという点である。世界に棲息するサメのうちで「人食いザメ」、人を積極的に襲い捕食することが確実とされている種は、実は三種しかいない。まず、スティーヴン・スピルバーグ(Steven Spielberg)監督の“Jaws”(1975年・アメリカ)で知られる、
ネズミザメ目ネズミザメ科ホホ(ホオ)ジロザメ属ホホ(ホオ)ジロザメ Carcharodon carcharias
それと同様に危険度が高い以下の二種、
メジロザメ目メジロザメ科イタチザメ属イタチザメ Galeocerdo cuvier
メジロザメ目メジロザメ科メジロザメ属オオメジロザメ Carcharhinus leucas
である。但し、本邦に限ると、亜熱帯から亜寒帯まで世界中の海に広く分布するホホジロザメを除くと、その分布はオオメジロザメは南西諸島に限られ、イタチザメも概ね九州以南である。ただ、昔から本邦では、“Hammerhead shark”の英名で知られる、メジロザメ目シュモクザメ(撞木鮫)科 Sphyrnidae のシュモクザメ類(世界で二属九種。本邦で見られるのはシュモクザメ属 Sphyrna の三種ほど)が人を襲うと信じられている向きがある。一九八二年八月に熊本県天草郡大矢野町沖の羽干島(グーグル・マップ・データ)近くで十三歳の女子中学生が襲われて死亡したケース(三人の子をヨットの船尾に結んだロープに繋いで曳航して遊ばせていた際の事故という少し特殊な状況下での不幸であった)では、シュモクザメが疑われているが、確定されてはおらず、シュモクザメが人を襲った事例は殆んど見当たらない。襲うシーンが出る小説を知っているが、寧ろ、シュモクザメの奇体な頭部が、凶悪な印象を生んでいるだけのように私には思われてならない。ダイバーなどが襲われたケースも私は知らない。但し、シュモクザメはサメとしては珍しく、群れを成して行動し、時にその数は数百匹のレベルに及ぶこともある。それらが大型個体であった場合、そのインパクトは絶大で、熟練したダイバーでも慄っとしたという証言を聴いたことはある。幾つかの記載に、人間にとっては潜在的に危険、と記すものが見られることは事実ではある。ただ、シュモクザメは以下の「かせぶか」がその別名であることからも、この同定候補にはなり得ない。従って、福岡在の益軒を考えると、この謎の「一(いつ)ちまう」はホホジロザメかイタチザメが同定候補となる。勘でしかないないが、冒頭に出ること、わけの判らぬ乍ら、名前が如何にも大きそうな雰囲気があることから、平均体長が四~四・八メートルにもなる最大最強にして凶悪のホホジロザメとする方がいい気がする。
*
「『しゆもくぶか』【一名、『しもくざめ』、又、『かぜふかいてうさめ』。漢名は「閩書《びんしよ》」の『雙髻鯊《サウキツサ》』。】」「水族志」は以下(ここの左ページ後ろから六行目から)。
*
㋵シモクブカ 一名シモクザメ【日東魚譜】カセブカ【大和本草】イテウザメ【魚鏡】雙䯻[やぶちゃん注:この漢字は中国のサイトでも意味不明とする。]鯊 大和本草曰 「カセブカ」其首橫ニホロシ甚大ナルアリ又曰「カセブカ」其橫ハ縱ニ比スレハ少短シ橫ノ兩端ニ目アリ本草啓蒙曰撞木(シユモク)ノ形ノ如ク橫首杖(カセヅヘ[やぶちゃん注:ママ。])ノ頭ニ似タリ魚鏡曰「イテウザメ」頭鴨脚葉[やぶちゃん注:「あうきやくやふ」。イチョウの葉を指す中国語由来の語。因みに、「大辞泉」に拠れば、『本邦の「いちやう(いちょう)」は、江戸時代以来、語源を「一葉」と考え、歴史的仮名遣いを「いてふ」としてきたが、「鴨脚」の宋音ヤーチャオ』(yājiǎo:或いはイーチャオ)『に由来するもので、「いちゃう」が正しいとする。』とある。]ニ似タリ形狀「フカ」ニ同シテ[やぶちゃん注:「おなじくして」。]灰色腹下白色頭ハ銀杏葉ノ如ク末ニテ開ク左右ノ端ニ眼アリ閩書曰䯻鯊頭如二木枴[やぶちゃん注:二字で「杖」の意。]一又名二雙䯻紅一言鯖曰了頭今人呼二侍婢一曰了頭一盖言二其頭上方梳雙䯻未ㇾ成ㇾ人之時即漢之所謂偏䯻也
*
これは、「大和本草卷之十三 魚之下 フカ (サメ類(一部に誤りを含む))」で、以下のように考証した。
*
「一(いつ)ちやう」これは当初「一(いつ)ちまう」かと思ったものの(他の部分の表記と比較しても「ヤ」のそれではない)「東洋文庫」の「本草食鑑」の注で『一(イツ)チャウ』と翻刻しているので、それに従った)。しかし「イッチョウ」(「一丁」?)でも或いは「イッチモウ」(漢字表記想定出来ず)でもある種のサメの異名としては全く掛かってこない。一つの鍵は「口」が「廣く」、「人を喰」らい、非常に獰猛で、摂餌対象を残酷に貪(むさぼ)るという点である。世界に棲息するサメのうちで「人食いザメ」、人を積極的に襲い捕食することが確実とされている種は、実は三種しかいない。まず、スティーヴン・スピルバーグ(Steven Spielberg)監督の“Jaws”(1975年・アメリカ)で知られる、
ネズミザメ目ネズミザメ科ホホ(ホオ)ジロザメ属ホホ(ホオ)ジロザメ Carcharodon carcharias
それと同様に危険度が高い以下の二種、
メジロザメ目メジロザメ科イタチザメ属イタチザメ Galeocerdo cuvier
メジロザメ目メジロザメ科メジロザメ属オオメジロザメ Carcharhinus leucas
である。但し、本邦に限ると、亜熱帯から亜寒帯まで世界中の海に広く分布するホホジロザメを除くと、その分布はオオメジロザメは南西諸島に限られ、イタチザメも概ね九州以南である。ただ、昔から本邦では、“Hammerhead shark”の英名で知られる、メジロザメ目シュモクザメ(撞木鮫)科 Sphyrnidae のシュモクザメ類(世界で二属九種。本邦で見られるのはシュモクザメ属 Sphyrna の三種ほど)が人を襲うと信じられている向きがある。一九八二年八月に熊本県天草郡大矢野町沖の羽干島(グーグル・マップ・データ)近くで十三歳の女子中学生が襲われて死亡したケース(三人の子をヨットの船尾に結んだロープに繋いで曳航して遊ばせていた際の事故という少し特殊な状況下での不幸であった)では、シュモクザメが疑われているが、確定されてはおらず、シュモクザメが人を襲った事例は殆んど見当たらない。襲うシーンが出る小説を知っているが、寧ろ、シュモクザメの奇体な頭部が、凶悪な印象を生んでいるだけのように私には思われてならない。ダイバーなどが襲われたケースも私は知らない。但し、シュモクザメはサメとしては珍しく、群れを成して行動し、時にその数は数百匹のレベルに及ぶこともある。それらが大型個体であった場合、そのインパクトは絶大で、熟練したダイバーでも慄っとしたという証言を聴いたことはある。幾つかの記載に、人間にとっては潜在的に危険、と記すものが見られることは事実ではある。ただ、シュモクザメは以下の「かせぶか」がその別名であることからも、この同定候補にはなり得ない。従って、福岡在の益軒を考えると、この謎の「一(いつ)ちまう」はホホジロザメかイタチザメが同定候補となる。勘でしかないないが、冒頭に出ること、わけの判らぬ乍ら、名前が如何にも大きそうな雰囲気があることから、平均体長が四~四・八メートルにもなる最大最強にして凶悪のホホジロザメとする方がいい気がする。
*
なお、「大和本草諸品圖下 鮪(シビ)・江豚(イルカ)・スヂガレイ・カセブカ (マグロ類・イルカ類・セトウシノシタ・シュモクザメ)」も見られたい。ブットびの絵図を見ることが出来ますぞ!
「『もだま』【大なるを、『いなき』といふ。漢名『魚鮠《ギヨグワイ》』。】」「水族志」は以下(ここの右ページ二行目から)。
*
㋟モダマ 鮠魚 大和本草曰「モダマ」「フカ」ノ類ナリサメアリ灰色白星アルモノアリ長三四尺肉白シ肝ニ油アリ其大ナルヲ「イナキ」ト云長サ一丈バカリアリ其乾タルヲ「ノウサバ」ト云本草啓蒙曰「モダマ」形鮧魚(ナマズ)ニ似テ大ナリ皮ニ細沙アリ
*
これも、「大和本草卷之十三 魚之下 フカ (サメ類(一部に誤りを含む))」で、以下のように考証した。かなり長い。
《引用開始》
「もだま」メジロザメ目ドチザメ科ホシザメ属ホシザメ Mustelus manazo。「WEB魚図鑑」のホシザメから引く。『成熟サイズは全長62~70cm。全長25cmほどで出産され、雄で最大96cm、雌で117cmに達する。体は灰色ないしは茶褐色で、体側に多数の白色斑点が散在すること、背鰭は暗色で縁取られないこと、上側の唇褶は下側よりも長いこと、歯は尖らず、敷石状に並ぶことから』、『他の日本産ドチザメ科』Triakidae『魚類と区別できる。ホシザメ属には体側に白色点をもつものが他に何種か知られているが、白色点を持つ種で北西太平洋に分布するのは本種のみである』。『主に北西太平洋。北海道~九州の各沿岸(オホーツク海を除く)、南シベリア、朝鮮半島、中国、台湾、ベトナムに分布する』が、『例外的に西インド洋のケニア沿岸からも知られる』。『大陸棚上の潮間帯を含む浅海域の砂地や泥底に生息』し、『底生無脊椎動物、特に甲殻類を捕食する』。『卵胎生で胎盤をもたない。交尾期は夏。妊娠期間は10ヵ月ほどで、4月に母親の体サイズに合わせて1~22尾の仔ザメを出産する(普通2~6尾、平均5尾の仔ザメを産む)。成長が早く、3、4年で成熟する。食用で、日本、中国、韓国では延縄で漁獲される』とある。ぼうずコンニャク氏の「市場魚貝類図鑑」のホシザメのページの「地方名・市場名」の項に『福岡県博多(福岡市)ではモダマ』と出、また、『福岡県玄海町』では『ノウサバ』『ノーサバ』の異名を載せる(益軒の『其の乾したるを「のうさば」と云ふ』と合致)。そこには、『体長1.5メートル前後になる。細長く、白い星状の斑文が散らばる』ともあり、「白星あるもの、あり」とも一致するが大型個体の「いなき」は確認出来なかった。「いなぎ」かも知れない。その場合、「稲置」で或いは「稲木」で刈り取った稲を掛ける横木のことを指すのではないかとも思ったりした。「もだま」は「藻玉」か? 意味不明。一部の卵生サメ類の皮革状卵嚢はまさに「藻玉」に相応しいが、本種は卵胎生であるから違う。或いは、別種の卵生のサメのそれを本種のそれと誤認したものかも知れない(例えば、後に「さゞいわり」の私の後者の方のリンクの図を参照)。【2019年8月23日追記】いつもお世話になっているT氏よりメールを頂戴した。それによれば、ネットで「モダマ」で捜すと、まず、
1・ドチザメ比定
「大海水産株式会社」公式サイト内の「大海水産のお勧め魚 熊本県産ドチザメ」に、『熊本県産ドチザメ』(メジロザメ目ドチザメ科ドチザメ属ドチザメ Triakis scyllium)『熊本では、モダマと呼んでい』るとある(益軒の近在)。
2・ホシザメ比定
abukamo氏のブログ「あぶかも」の「モダマ三種」では「モダマ」を私が同定したホシザメと比定し、しかも『博多では「モダマ」という名前で湯引きした』ホシサメがごく普通に売られている旨の記載があった(益軒は人生の殆んどを福岡で過ごした)。
3・カスザメ比定
syunsi3氏のブログ「『車いすで楽しめる食事処』・レシピ&ガーデニング」の「モダマ」(このブログ主は他の記事からみて福岡在の方である可能性が高い)の料理を掲げられた上、当該種を写真で掲げられており、「WEB魚図鑑」の当該種をリンクさせておられるが、それはエイ型形状に近い(しかしサメ)カスザメ(軟骨魚綱カスザメ目カスザメ科カスザメ属カスザメ Squatina japonica)である。問題は「2」との齟齬で、福岡(もしかすると別の地方でも)では或いは広く「サメ」「フカ」或いは鮫の肉を「モダマ」と呼んでいる可能性があるようにも思われる。
4・ドチザメ比定
「ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑」の「ドチザメ」(メジロザメ目ドチザメ科ドチザメ属ドチザメ Triakis scyllium)の「地方名・市場名」の中に「モタマ」「モダマ」とある(多くの別種のサメ類の異名に「モダマ」があることは私も承知してはいた)。
さらにT氏は例の「大和本草」の「諸品図二巻」を調べられ、その「カイノ」と標題する図(リンク先は国立国会図書館デジタルコレクションの画像。左頁下)に、キャプションで(一部に句読点等を施して読み易くした)、
*
モダマ・ツノジノ類。形、甚、「コチ」ニ似タリ。味ハ、「コチ」ニ不似、「モダマ」ニ似タリ。薄ク斬リ、能煮テ、スミソニテ食フ。
カイメノ腹[やぶちゃん注:下部。以下は刊本に書入れされたもの。]
「カイメフカ」・「カイメサメ」・「ナカヱイ」トモ。兵庫「ウカシ」。
コノ魚肉ニテ、生ニテ酢ミソニテ食ス。味、佳也。
漢名「犂頭魚」【閩書】。
*
とある図を指摘し、T氏は、この『腹側の図は「エイ」としか見えない』とされ、『頭と胸鰭の形から、カスザメ又はコロザメのよう』であると指摘されていおられる。これからは少なくとも、益軒は「モダマ」「ツノジ」を、
5・カスザメ/コロザメの類と比定
していたことが判る。因みにエイ型ではあるが、
軟骨魚綱カスザメ目カスザメ科カスザメ属カスザメ Squatina japonica(リンク先は「WEB魚図鑑」)
カスザメ属コロザメSquatina nebulosa(同前)
はサメ類である(因みに、『カスザメは二基の背鰭が腹鰭より後方に位置すること、大きな棘の列が背面の正中線上にあること、胸鰭の先端の角度が小さいことで近縁のコロザメと区別できる』とウィキの「カスザメ」にある)。ともかくも、丁寧に調べ上げられたT氏に感謝申し上げるものの、異名で調べると、却って同定比定が困難になる厄介者ではあるのである。
《引用終了》
実は、この「モダマ」は「大和本草」の他の項の中で、何度も考証してきたのだが、一応、上記が私の決定版と考えて頂いてよろしいと思う。
「『おきむば』【一名、『なぬかぶか』、伊勢にて『あぶらこ』、尾張にて『のうくり』、備後因島《いんのしま》にて『お〻ぜ』。「臺灣府志」に云《いはく》、『龍文《りゆうもん》、沙《さ》にして、最佳《さいか》にして、其翅《そのはね》、尤《もつとも》、美なり。』とす。】」「水族志」は以下(ここの右ページ五行目から)。
*
㋹オキムバ【勢州阿曾浦[やぶちゃん注:「あそら」と読む。現在の三重県度会郡南伊勢町阿曽浦(あそら)。ここ。]】一名ナヌカブセ【紀州若山】アブラコ【勢州土師[やぶちゃん注:現在の三重県鈴鹿市土師町(はぜちょう)。ここ。]】モサメ【尾州常滑】ノウクリ【備後因島】オヽゼ【筑前福間浦[やぶちゃん注:現在の福岡県福津市西福間にある福間海岸。]】龍文沙 形狀守宮(ヤモリ)ニ似テフカノ如シ頭圖ク乄扁シ全身灰色ニ乄微紅ヲ帶背ニワラビ形ノ黑文アリ脇ニ小黑星㸃アリ亦小白圏ヲナス處モアリ腹白色微ニ赤色ヲ帶凡テ沙アリ續脩臺灣府志曰鯊其最佳者皮上有二黑白圏文曰龍文沙其翅尤美
*
これは、
板鰓亜綱テンジクザメ(天竺鮫)目オオセ(大瀬)科オオセ属オオセ Orectolobus japonicus
である。個人的には、そのフォルムと色が、モロ、迷彩服見たようで、大好きな魚である(ウィキの画像をリンクしておく)。ウィキの「オオセ」によれば、『キリノトブカなど』、『地方名』を『多数』有する。『全長1mの底生性のサメで、オオセ科』Orectolobidae『では日本近海に分布する唯一の種』である。『太平洋西部、南日本から朝鮮半島、フィリピン、東シナ海、東南アジアにかけて分布する。沿岸の水深200mまでの砂泥質の海底や岩礁、サンゴ礁などに生息する』。全長は一メートルで、『体型は上下に押しつぶされたような縦扁型。吻は平たく、丸い。口はほぼ頭部前面に幅広く開口する。口の辺縁には複数の皮弁が存在するが、オオセは皮弁数が7-10本であること、先端が二叉することが特徴であり同定のキーとなる。噴水孔』(目のすぐ後ろにあり、ここから呼吸に使う水を吸うことが出来るようになっている。但し、遊泳主体の通常のサメ類ではあっても小さいか塞がっている。本種は底在性傾向を示すために機能している)『は涙型で大きい』。『体色は全体的に褐色のまだら模様で、薄褐色、濃褐色、灰色などの雲状斑が大小モザイク状に配列し、全身に小白色斑が散在する。背鰭2基は体後方に位置する。胸鰭はやや大きい。臀鰭は尾鰭のごく近くに付く。尾鰭は上葉が長く、欠刻がある。下葉はない』。『詳しい生態や生息数に関してはよく分かっていない。体色の模様はカモフラージュであり、夜行性で海底や岩などに姿を隠している』。『待ち伏せ捕食型で、底生の硬骨魚類や甲殻類、サメ、エイなどを狙う』。『卵胎生』で『21-23cmの子どもを最大20-27尾まで産む』。『妊娠期間は約1年と推定される』。『日本では漁獲され』、『食用になる。その他、中国、台湾、韓国、ベトナムなどでも漁獲される』が、『近づくと咬まれる危険性がある』とある。因みに、漢字表記は「大瀬」であるから、歴史的仮名遣は「おほせ」が正しい。
「『おふぜ』【一名、『どぜうざめ』、又、紀伊熊野にて『したち』、『熨斗鯊《のしぶか》』ともいふ。】」前に同じだが、「水族志」では、続いて、独立項となっている(ここ。右丁後ろから五行目)。
*
㋞オフセ[やぶちゃん注:ママ。]【大和本草】一名ドゼウザメ【熊野新宮】ナヌカザメ【本草啓蒙熊野】シタチ【尾州常滑】熨斗鯊 大和本草曰「オフセ」遍身ウス子ヅミ[やぶちゃん注:「うすねづみ」。「薄鼠」。]色ナリ黑㸃多シ腹白ク口濶[やぶちゃん注:「ひろく」。]鬣大小三所ニアリヒゲアリ「マナヅ」ノ如シ目ノ傍ニ耳穴アリ其性强シテ死[やぶちゃん注:「しに」。]ガタシ身ヲ切猶動[やぶちゃん注:「身を切(るも)、なほ、うごく」。]湯ヲ以ユビキテ指身[やぶちゃん注:「さしみ」。刺身。]トス味ヨシ形コチニモ蟾[やぶちゃん注:「ひきがへる」。]又曰オホセ尾キハ角アリ本草啓蒙曰此魚上大ニ下小ク[やぶちゃん注:「ちさく」。]科斗(カイルコノ)[やぶちゃん注:「ノ」がルビに入っているのは、ママ。お判りとは思うが、「科斗」は「蝌蚪」(カト/おたまじやくし)で、「オタマジャクシ」で、ルビは『かへる』の子の」である。]形ニ似タリ水ヲ離シ十日ニ至リテ死セズ
*
このオオセの記載の後半部には、強い違和感を持つ方が多いであろう。私もそうであった。されば、それに就いては、やはり、「大和本草卷之十三 魚之下 フカ (サメ類(一部に誤りを含む))」で蜿蜒と考察を行ってあるので、そちらを見られたい。なお、図入りの「大和本草諸品圖下 クチミ鯛・ナキリ・オフセ・クサビ (フエフキダイ・ギンポ・オオセ・キュウセン)」も見られたい。なお、「ぼうずコンニャクの市場魚類図鑑」の同種のページの「地方名・市場名」には、多数の異名があり、ここに出るもの、及び、類似するものとして、『オウセ』(『紀州』)・『ドジョウザメ』(『和歌山県』)が確認出来る。また、『ナヌカザメ』(『三重県熊野市』:採集地。以下同じ)・『マムシワニ』(『島根県出雲市大社町杵築』)・『カメザメ』(『東京』)・『キリノトブカ』(『東京市場』)・『トラ』(『神奈川県江ノ島』)・『ホンヤモリ』(『長崎県長崎市』)・『カキノコロモ』(『静岡県下田』)・『オニウチノクリ』(『鹿児島』)等の興味深い、或いは、ぶっ飛んだ異名が並ぶ。
「しヽむしやう」名前だけで、解説がない。「水族志」は以下(ここの左ページ二行目から)である。
*
㋡シ﹅ムシヤウ 大和本草曰シヽムセヤウ橫廣シ「ヒキカヘル」ノ形ノ如シ
*
しかし、畔田の引用は誤っている。私の「大和本草附錄巻之二 魚類 フカノ類 (サメ類)」が引用元であるが、そこでは、
*
○サヾエワリ橫廣シヒキガヘルノ形ノ如シ
*
である。而して、次の「『さヾいわり』【一名、『ころざめ』、又、紀伊若山にて『ねこざめ』、筑前福間浦《ふくまうら》にて『かねうち』、漢名『虎頭鯊《コトウサ》』。)】」と同じで、「さゞえわり」「榮螺割(さざゑわり)」で、ネコザメ目ネコザメ科ネコザメ属ネコザメ Heterodontus japonicus の異名としてよく知られる。「大和本草卷之十三 魚之下 フカ (サメ類(一部に誤りを含む))」も見られたい。一応、後者の「水族志」を、長いが、示しておく
*
㋧[やぶちゃん注:原本は「子」に「○」。]サヾイワリ 一名コロザメ【紀州熊野九木浦】ネコフカ【紀州若山】カネウチ【筑前福間浦】虎頭鯊 形狀「フカ」ノ如ニ乄沙アリ頭ハ金頭(カナンドウ)[やぶちゃん注:これは、スズキ目カサゴ亜目ホウボウ科カナガシラ属カナガシラ Lepidotrigla microptera のことである。魚体が浮かばない方のために、「ぼうずコンニャクの市場魚類図鑑」の同種のページをリンクしておく。]ノ如ク方[やぶちゃん注:「はう」。四角。]ニ乄刺ナシ背淡茶紅色腹白色脇ニ紅色ノ斑あり背ニ深褐色ト淺褐色ノ橫條斑ヲナス大和本草曰「サヾイワリ」ト云魚アリ頭大ニ兩目ノ上ノキハタテニカド各[やぶちゃん注:「おのおの」。]一スヂアリテ首方ナリ細齒多シ腮ハヨコニ五キレタリ兩鼻アリ背ニ鰭二[やぶちゃん注:これは、字の誤植で「ニ」である。]各大ナル刺アリテ尖レリ口ハ腮ノ下ニアリ両ワキニ大ナルヒレアリ[やぶちゃん注:恐らく編者の「腰」の脱字。]ニモ小ナルヒレ[やぶちゃん注:恐らく編者の「二」の脱字。]アリ尾ハ小岐アリ[やぶちゃん注:カットがある。「大和本草」では『凡常ノ魚ノ形ニカハレリ』が、ここにある。]皮ニサメアリ色斑ナリ薄ク切[やぶちゃん注:「きり」。]酒ノ糟ヲ加ヘ羹トシテ食ス又指身[やぶちゃん注:刺身。]ニ乄最ヨシ「ツノジブカ」ニマサレリ本草啓蒙曰此魚桔梗ノ蕾ニ似タリ兩鼻アリソノ齒至テ硬强拳螺(サヽビ)[やぶちゃん注:サザエのこと。国立国会図書館デジタルコレクションの「本草綱目啓蒙」の原本(版本)に当たったところ(右丁二行目)、確かに「サヾビ」と振ってあった。]殼モヨク嚼破(カミヤブ)ル齒ノ形蓑荷(ミヤウガ)[やぶちゃん注:漢字は同前で確認したが、やはり「蓑荷」であった。]笋[やぶちゃん注:「たけのこ」。]ノ如シ大ナル者ハ長サ五六寸色白シ背ノ兩鰭各大尖刺[やぶちゃん注:「だいせんし」と音読みしておく。]アリ周身[やぶちゃん注:「みのまはり」と訳読みしておく。]黃褐色ニ乄黑斑アリ沙微ク[やぶちゃん注:「すこしく」。]粗シ
*
「『なでぶか』【一名『みづいらき』、又、『ひれなか』。】」「水族志」は以下(ここの右ページ冒頭行から)である。
*
㋤ナデブカ 一名ミヅイラギ【紀州田邊】ヒレナガ【大和本草】極テ大ナル者アリ黑色ニ乄腹淡黑色赤ヲ帶其尾上長ク乄身ニ半ス下ハ短シ腹下ノ二翅細長也此魚漁舟の海上ニ泊スルニ逢ヘハ尾ヲ舟中ニ勾入テ[やぶちゃん注:「まがりいれて」と訓じておく。]人ノ有無ヲ探ル大和本草曰ヒレ長ト云アリヒレ甚長シ
*
「大和本草卷之十三 魚之下 フカ (サメ類(一部に誤りを含む))」で私は、これを以下のように比定した。一部に追加を添えた。
《引用開始》
「ひれ長」一般に鰭の長いサメというと、一番に想起されるのは、板鰓亜綱ネズミザメ目オナガザメ科オナガザメ属 Alopias(一属三種)であろう。本邦(但し、南日本)にはニタリ(似魚) A. pelagicus・ハチワレ(鉢割) A. superciliosus・マオナガ(真尾長) A. vulpinus の全種が分布する。ウィキの「オアナガザメ」によれば、『全世界の熱帯から温帯、また亜寒帯海域まで広く分布する。全長の半分を占める長い尾鰭により、他のサメと見間違えることはない。大型になり、最大全長は3m〜7mを超えるものまである。繁殖様式はいずれも胎生で、ネズミザメ目に共通して見られる卵食型である。主に外洋を回遊し、非常に活動的である』が、『人に対しては攻撃的で』はなく、『むしろ』、『海中では警戒心が強く、近寄ることさえ難しい。マグロ延縄などで混獲され、肉や鰭、脊椎骨、皮、肝油が利用される』。『魚の尾鰭は上半分を上葉、下半分を下葉といい、サメ類では』大抵、『上葉が長くなっている異尾(いび)であるが、オナガザメ属では上葉の伸長がとりわけ著しく、胴体とほぼ同じ長さか』、『それ以上になる。尾の付け根の筋肉が発達しており、マグロやカジキ、サバなどを切り裂いたり』、『気絶したところで食す』とある。
《引用終了》
但し、次の「水ぶか」をマオナガと比定同定したことから、ニタリ、及び、ハチワレの二種を候補として絞って限ることも可能となったとは思う。
「水ぶか」「水族志」は以下である(ここの右ページ四行目から)。
*
㋶水(ミヅ)ブカ 形狀「ナテブカ[やぶちゃん注:ママ。前の「ナデブカ」。]」ニ似テ尾翅短シ背黑色腹淡黑色切レハ[やぶちゃん注:「バ」。]肉水トナリテ不ㇾ可ㇾ食
*
これは、板鰓亜綱ネズミザメ目オナガザメ科オナガザメ属 Alopias(一属三種)のうち、マオナガAlopias vulpinus としてよい。ウィキの「オナガザメ」によれば、「分類」の項のマオナガに関して(下線太字は私が附した)、『オナガザメ属の中で最も大きくなる種。他の2種に比べて特に外洋性の傾向が強く、沿岸部ではあまり見られない』とし、『他2種に比べて特に尾が長く、体長と同じかそれ以上の上葉をもつ。マオナガの“マ(真)”という名称もここに由来する。尾の長さ以外の全体的形状は、ネズミザメ』(ネズミザメ目ネズミザメ科ネズミザメ属ネズミザメ Lamna ditropis )『に近似している』。『英名の Thintail thresher とは、“厚みのない尾を持つオナガザメ”の意。Common thresher(Shark)(一般的なオナガザメ、の意)とも呼ばれ、英語圏では単に「オナガザメ(Thresher Shark)」といった場合は通常はこの種を指す。』とあることに拠る。
「鼠《ねずみ》ざめ」これはそのままで、
ネズミザメ目ネズミザメ科ネズミザメ属ネズミザメ Lamna ditropis
である。当該ウィキに拠れば(注記号はカットした)、『地方名でモウカザメ、カドザメ、モウカ、モーカなどとも呼ばれる。全長3 m。太平洋北部の亜寒帯海域に生息する大型の捕食者である』。『特殊な筋肉系、循環系により体温を海水温よりも高く保ち、高速遊泳を行う。季節回遊を行うことも知られている』。『属名 Lamna は「凶暴な魚」。種名 ditropis は、「2つの」を意味する接頭語"di"と「隆起線」を意味する"tropis"が合わさったもので、本種の尾柄部と尾鰭にある2本の隆起線に由来している』。『標準和名はネズミザメであるが、いくつかの別名がある』。『モウカザメ(毛鹿鮫)は東北地方でよく使われる名称で、マフカザメ(真鱶鮫)が訛ったものだといわれる。マダイ(真鯛)やマアジ(真鯵)などを見ても分かるように、魚名に「マ(真)」がつくものは「代表種」の意味合いを持っており、東北地方の代表的なフカ(サメのこと)であることからマフカの名が付けられたのであろう。実際、東北はネズミザメの水揚量が多い』。『カドザメ(カトザメ・カトウザメとも)の由来には』、『いくつかの説があり、渾然一体としている。「カド」がニシンの地方名であり、これを捕食することからというもの。また「カド」はカツオの地方名でもあり、やはりこれを捕食することからというもの。これらとは別にネズミザメ漁を初めて行った江戸時代の漁師、加藤音吉の名から来ているという説もある。一部の地方ではカトザメがアオザメを表すこともある』。『サケザメ(鮭鮫)は、英語でもサーモン・シャーク "Salmon shark" と呼ばれるように、サケを捕食することに由来する。漁業ではサケを食害するサメということで、漁師には歓迎されない』。『他に、ラクダザメやゴウシカがある』。『北部太平洋の亜寒帯海域を中心に分布し、ベーリング海やアラスカ湾、プリンス・ウィリアム湾などを主な生息地とする。日本近海では日本海やオホーツク海に現れる。寒冷な環境を好むが、回遊によってかなり南の海域まで進出することがある。最も低い緯度ではハワイ沖(北緯22°)まで南下した例が報告されている。他に、カリフォルニア州沿岸でも生息が確認されており、さらに南のメキシコ沿岸まで進出している可能性もある』。『沿岸域・外洋域の両方に出現する。普段は海表面近くを遊泳するが、水深700 m 程度まで潜ることもある。また、亜熱帯海域では温度躍層を避けて、300 - 500 m 程度の深度を遊泳することが多いようである』。『最大で全長305cm、体重175.0kg。体は紡錘型で水の抵抗を受けにくい。背側の体色は青みを帯びた灰色もしくは黒色、腹側は白色で濃色の斑紋が点在する。尾鰭は上葉がわずかに長いものの、上下がほぼ同じ長さで三日月型をしている。尾柄には明瞭な隆起線があり、さらに尾鰭の中央よりやや下にも隆起線が見られる。種名 ditropis (「二つの隆起線」の意)はここからきている』。『外見は小型のホホジロザメのようにも見えるが、やはり隆起線の数で見分けることができる。同属にニシネズミザメがいるが、形態的にはニシネズミザメの第一背鰭の後縁が白色なのに対し、本種ではそれがないことで見分ける』。『サケザメやサーモン・シャーク "Salmon shark" の名の通り、サケを捕食することでよく知られている。またニシンも好んで食べる。亜寒帯海域では最高次捕食者の地位を占めている』。『太平洋北東部の個体の方が、北西部の個体よりも早く成熟する傾向がある。太平洋北西部では雄は全長約177〜186cm、雌は200-223cmで成熟し、成熟年齢は雄5年、雌8〜10年である。太平洋北東部では雄158cm、3〜5年、雌205cm、6〜9年で成熟する』。『胎生』であるが、『胎仔と母親を直接つなぐ胎盤のような器官は持たない。子宮の中で卵黄の栄養を使ってある程度の大きさになった胎仔は、卵巣から排卵される栄養の豊富な未受精卵を食べて育つ。これはネズミザメ目に見られる卵食型である。妊娠期間は約9ヶ月、産仔数は2-6尾、出生時の大きさは84-96cm』。『以前は卵胎生と呼ばれたが、子宮の中で母親から卵という形で間接的に栄養分をもらって育つことから、広義の胎生に含める』。『ほとんどの種が外温動物(変温動物)である魚類の中にあって、ネズミザメは外部温度に』関わらず』、『体温をある程度一定に保持することができる性質(内温性)を備えている。内温性魚類は、同じネズミザメ科のアオザメやホホジロザメ、真骨魚ではマグロやカツオ、カジキといった種類である。これらはみな高速遊泳を行うという点で共通している』。『ネズミザメの赤筋(遅筋、血合肉)の分布位置は他の魚と異なり、体の中央深部、脊椎骨の周囲に集中している。持続的遊泳に使われる赤筋を外界から遠ざけることで代謝熱を保持し、周囲にある白筋(速筋)へ効率良く伝導させる。さらに筋肉には奇網』(きもう:当該ウィキに拠れば、(『ラテン語: rete mirabile, 複数形 retia mirabilia)または怪網(かいもう)は、脊椎動物に見られる、動脈と静脈からなる構造である。これらの血管は非常に細く、ごく近接して配置されており、内部の血流は互いに逆方向になっている。これは対向流交換系と呼ばれ、熱・イオン・気体などを血管壁を通して効率よく交換することができる。rete mirabile はラテン語で「驚異的な網」を意味する』とあった)『が発達し、保温能力を高めている。奇網では』、『体内からの温かい血液と体表からの冷たい血液が対向流交換系をなし、熱の伝導が行われる』。『この内温性により、ネズミザメは大抵のサメ類が寄り付かない亜寒帯海域という地理的なニッチを獲得している』。『寒い海に生息するので、人が襲われた記録はないものの、大型で獰猛なサメに入るので、危険な種である』。『サケ類を捕食することから、水産上の重要害魚という形で扱われることもある。千葉県勝浦市沖ではかつて、年末から翌年2月ごろまでネズミザメなどのサメを専門に狙う延縄漁業が行われていたが、1993年(平成5年)ごろにはサメの需要の低さからかサメ漁は行われなくなっており、同年3月にはネズミザメがキンメダイ漁を阻害するとして、勝浦漁港のキンメダイ漁業者たちがサメを延縄で捕獲して駆除していた』。『一方で、ネズミザメは食用魚としての利用のために漁獲されている。またマグロ漁で混獲することも多い。漁には延縄や流し網が用いられる。日本国内においてはそのほとんどが気仙沼港(宮城県)に水揚げされ、気仙沼での水揚げ量はヨシキリザメに次いで多い』。『サメ類の中では比較的アンモニア臭が少なく味も淡白で癖が少ないため』、『食用向きとされ、刺身として気仙沼周辺や、それと対照的に備北地方(「ワニ肉」として有名)などの山間部で、切り身は東北地方や栃木県』『では定番、関東地方であれば散見される程度に販売』され、『食されている。一方で東海・北陸や西日本では一部の地域以外ではほとんど目にする機会がなく、知名度も低いためサメ肉と聞いただけで拒否反応を起こす人の割合も高い』。『その他』、『全国的に魚肉練り製品の原料として消費される』。『心臓はモウカの星とよばれ、気仙沼を中心に刺身や酢味噌和えにされる。仙台や東京など東日本の一部居酒屋でも提供されていることがある。こちらは味が独特であり』、『人によって好みが分かれる。また』(☞)『ふかひれも採取される。』とあった。なお、近縁種に『ニシネズミザメ Lamna nasus 』がおり、『ネズミザメに非常に近縁であり、1947年にネズミザメが記載されるまで同一種であると思われていた。両者の決定的な違いは分布域である。ニシネズミザメは大西洋の北部と南半球に分布するのに対し、ネズミザメは太平洋の北部にしか分布しない』とあったので、ニシネズミザメは、ここの比定種には含まれない。
「おろか」「水族志」は以下である(ここの右ページ七行目から)。
*
㋼ヲロカ 大和本草曰「ヲロカ」ト云「大フカ」アリ人ヲ食ス
*
これは、私が、「大和本草附錄巻之二 魚類 フカノ類 (サメ類)」で、
《引用開始》
「をろか」「大和本草卷之十三 魚之下 フカ (サメ類(一部に誤りを含む))」に『○「をろか」と云ふ大ぶかあり。人を食す。」あり』と出る(「をろか」の表記はママ)。そこで私は、
軟骨魚綱板鰓亜綱『メジロザメ目メジロザメ科イタチザメ属イタチザメ Galeocerdo cuvier
としたい。「をろか」は不明(「愚か」は歴史的仮名遣では「おろか」で一致しない)』と注した。追加情報はない。
《引用終了》
とした。現在も、新たな情報は得られていない。
「すねぶか」「水族志」は以下である(ここの右ページ八行目から)。
*
㋨ス子ブカ 大和本草曰「ス子ブカ」色白シ
*
私は、「大和本草附錄巻之二 魚類 フカノ類 (サメ類)」の注で、『不詳。』とした。新たな情報は得られていない。
「つまりぶか」「水族志」は以下である(ここの右ページ九行目から)。
*
㋔ツマリブカ 大和本草曰「ツマリフカ」頭ノ兩方ニ穴二ツアリ
*
これについては、「大和本草附錄巻之二 魚類 フカノ類 (サメ類)」の注で、
ツノザメ目ツノザメ科ツノザメ属ツマリツノザメ Squalus brevirostris
であろう、とし、『漢字表記は「詰まり角鮫」かと思われる。「ぼうずコンニャクの市場魚類図鑑」の同種のページを参照。但し、「穴、二〔(ふた)〕つあり」は不審。鰓孔が四対しかないサメはいない(サメ類のそれは五~七対)と思うが?』と述べた。追加情報はない。
「からす」「水族志」は以下である(ここの右ページ十行目)。
*
㋗カラス 魚鑑曰「カラス」黑ク肉白シ
*
これは、
ツノザメ上目ツノザメ目カラスザメ(烏鮫)科カラスザメ属カラスザメ Etmopterus pusillus
である。今まで私の記事で出たことはない。当該ウィキに拠れば(注記号はカットした)、『太平洋・大西洋に広く分布する。深度0 - 1,000メートルの範囲で日周鉛直移動を行う。リュウキュウカラスザメと種群を構成する。体は細長く暗褐色、体側に黒い模様がある。50センチメートルに達する。卵胎生で成長は遅い』。『1839年、イギリスの生物学者Richard Thomas Loweが学術誌Transactions of the Zoological Society of Londonにおいて、Acanthidium pusillumの名で記載した。その後』、『本種はカラスザメ属 Etmopterus に移された。種小名 pusillus はラテン語で"弱い"を意味する。リュウキュウカラスザメと共に、乱雑に並んだ切り株状の皮歯を特徴とする種群を構成する』。『大西洋では、西はメキシコ湾からアルゼンチン、東はポルトガルからカーボベルデ・アゾレス諸島・南アフリカ、大西洋中央海嶺上。インド洋では、クワズール・ナタール州沖・マダガスカル。太平洋では東シナ海から南日本・天皇海山群・オーストラリア沖・ニュージーランド・ナスカプレート上(Amber Seamountからサラ・イ・ゴメス島沖)から報告されている』。『大陸棚・大陸斜面の海底付近(深度274 - 1,000m)に生息する。1,998メートルまで潜る可能性もある。ポルトガル南方沖のデータによると、岩礁底を好み』、『日周鉛直移動を行うようである。南大西洋では、外洋の0 - 708メートルにも生息。熱水噴出孔でも確認されている』。頭部の『骨格は華奢で、大きな頭部、大きな楕円形の眼、鼻孔には短い前鼻弁がある。上顎歯列は22 - 31、下顎は30 - 53。上顎歯の尖頭は細く滑らかで、1 - 2対の小尖頭が隣接する。38センチメートルを超える雄では』、『小尖頭が増える。下顎歯は滑らかでナイフ状の尖頭を持ち、全ての歯が基部で結合して一枚の刃を構成している。大きな5対の鰓裂がある』。『胸鰭は丸く、その後端上方に第一背鰭があり、背鰭前部には頑丈な棘がある。第二背鰭は第一より大きく、棘も長い。腹鰭は低く角張り、臀鰭はない。尾鰭は短くて幅広く、下葉は発達して上葉には欠刻がある。皮歯は小さく塊状で、間隔が広く乱雑に並んでいるために滑らかな印象を与える。体色は一様な暗褐色で、腹鰭上部からその前後にかけて体側に黒い模様が伸びる。リュウキュウカラスザメ』( Etmopterus bigelowi :一九九三年に日本人に記載された。分布は沖縄に限るわけではなく、全世界の深度百十から千メートル海底・中深層に棲息する)『に似るが、本種は50センチメートルを超えず、腸の螺旋弁の数が少ない(本種は10 - 13、リュウキュウカラスザメは16 - 19)ことで区別できる』。『歯は性的二型を示す』。『餌はイカ・小型のツノザメ・ハダカイワシ・魚卵。卵胎生で胚は卵黄栄養で育つ。産仔数は10。雄は31 - 39センチメートル、雌は38 - 47センチメートルで性成熟する。性成熟時のサイズは地域によって異なり、西大西洋ではクワズール・ナタール州沖より大きい。成長は遅く、体は成長と共に細長くなっていく。ポルトガル南方沖からのデータでは、最低でも雄は13年、雌は17年生きる』。『東部大西洋、日本沖合などで、大量の稚魚が延縄で、少数が底引き網や定置網で混獲されている。ポルトガル南方沖では、深海漁業で多く混獲される3種のサメのうちの1種である。ほとんどは廃棄されるが、少数が干物・塩漬け・魚粉などとして利用されていると見られる。繁殖力は低く成長も遅いため、持続的な漁業圧には耐えられないと考えられる。だが』『、このような事態を示す証拠はなく、分布域も広いことから』、『IUCNは保全状況を軽度懸念としている』。『比較的多く漁獲されるため』、『沼津港深海水族館といった水族館などで短期の飼育記録はあるが、長期飼育はいまだに成功していない』とある。言うまでもないが、鱶鰭にはならない。
「とがり」「水族志」は以下である(ここの右ページ十行目)が、以下の通り、短い。『㋳トカリ【魚鑑】』。メジロザメ目に、イタチザメ科トガリメザメ属トガリメザメ Loxodon macrorhinus(一属一種)がいるが、英文の当該種ウィキを見るに、この種の棲息域は『北緯34度から南緯30度のインド西太平洋の熱帯海域』とするので、違う。トンがったサメはワンサカいるから、判らんね。
「『たちをざめ』【一名、『はりざめ』、又、『しらざめ』、漢名、「臺灣府志」の『鋸鯊《キヨサ》』。】」「水族志」は以下である(ここの右ページ十行最末から)。
*
㋮タチヲサメ【紀州日高】一名ハリザメ【勢州慥柄浦[やぶちゃん注:「たしからうら」。現在の三重県度会郡南伊勢町(みなみいせちょう)慥柄浦。ここ。]】シラサメ【紀州】扁鯊續脩臺灣府志曰扁鯊身扁尾小泉州境漁人曰「タチヲザメ」ハ「ハクザメ」ト云勢州及熊野海ニ出文化八年紀州日郡ニテ捕ル者長サ一間半許橫濶一尺許扁乄厚サ一寸許形狀帶魚ノ如シ觜[やぶちゃん注:「スイ/くちばし・はし」。]火筩(ヤカラ)[やぶちゃん注:これは「矢簳(やがら)」と同義であろう。]觜ニ似テ扁ク頭ノ狀馬頭ニ似タリ圓[やぶちゃん注:「まろき」。]眼大サ寸許白色ニ乄一部許ノ白沙アリ腹ニ至テ沙粗ク頭尾ニ至テ細也尾ノ方自然ト細ク末尖リ背ニ皮ニテ包メル鬣アリ
*
これは、記載から思うに、既に出た、
ホシザメ科ホシザメ属シロザメ Mustelus griseus
と思われる。
「『ゑびざめ』【一名『ゑびぶか』、漢名「廣東通志」の『蝦錯《カサク》』。】」「水族志」は以下である(ここの左ページ三行目から)。
*
㋘ヱビザメ 一名ヱビブカ 蝦䱜[やぶちゃん注:「䱜」鮫の一種を指す漢語。] 形狀鯊魚同乄頭圓ク上唇圓シ其尾腹下ニ曲リテ蝦ノ如シ廣東通志曰又有二蝦錯一尾似ㇾ蝦
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全く比定不能。中文の検索の掛けたが、私の力では捜し得なかった。識者の御教授を乞う。
「ひらかしら」「水族志」は以下である(ここの左ページ後ろから二行目以降)。
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㋙ヒラガシラ 形狀「フカ」ニ同乄觜末濶大也泉州堺浦漁人曰「フカ」ニ一種類ノ如ク扁キ[やぶちゃん注:「ひらたき」。]アリ此ヲ「ヒラガシラ」ト云按大者𠀋ニ至ル全身灰黑色ニ乄沙アリ腹白色也
*
これは、文字通りの、
メジロザメ目メジロザメ科ヒラガシラ(平頭)属ヒラガシラ Rhizoprionodon acutus
である。当該ウィキに拠れば(注記記号はカットした)、『インド洋、東大西洋、太平洋。南アフリカ共和国からオーストラリアにかけて(インド太平洋)。マデイラからモーリタニア・アンゴラにかけて(東大西洋)』分布する。『インド洋では南アフリカからマダガスカルを経てアラビア半島、南アジア・東南アジア。太平洋では中国から南日本・フィリピン・インドネシア・ニューギニア・オーストラリア北部に分布する[3]。中新世にユーラシアとアフリカ大陸が衝突するまでは、テチス海に沿って連続した分布域を持っていたようである』。『ヒラガシラ属の最大種であるが、ほとんどの個体は1.1mを超えない。通常は雌は雄よりも大きい。西アフリカからは、最大で雄は1.78m・22kg、雌は1.65m・17kgという報告があるが、これらが本種であるかどうかには不確実な点がある』。『体は細く、吻は長く尖る。眼は丸くて大きく、瞬膜を備える。噴水孔はない。口角の直後には7-15個の孔がある。鼻孔は小さく、三角形の前鼻弁が付随する。口角には長い唇褶があり、上下の顎に伸びる。歯列は上下ともに24–25。上顎歯には細かい鋸歯があり強く傾く。下顎歯は似た形だが』、『鋸歯が小さく、先端は緩やかに上を向く。幼体の歯には鋸歯はない』。『胸鰭は幅広く三角形で、第3か』、『第4鰓裂の下から起始する。臀鰭は第二背鰭の2倍の長さで、その前方には長い隆起線がある。第一背鰭は胸鰭の後端の上から起始する。第二背鰭は第一よりかなり小さく、臀鰭の基底の後部1/3の点から起始する。背鰭の間に隆起線はない。尾鰭下葉はよく発達し、上葉の後縁先端には欠刻がある。背面は一様な灰色・灰褐色または紫灰色で、腹面は白い。第一背鰭の前縁と尾鰭の後縁は黒く、胸鰭の後縁は白くなることがある』。『分子系統解析から、少なくとも4種に分かれることが示唆されている』。『種小名はラテン語で"鋭い"を意味する。その後、本種は Carcharhinus 属や Scoliodon 属に含められたが、最終的には Rhizoprionodon 属のタイプ種 R. crenidens のシノニムとして Rhizoprionodon 属に置かれた。リュッペルはタイプ標本を指定しなかったため、1960年、Wolfgang Klausewitzは』、『サウジアラビアのジッダで得られた44cmの雄個体をレクトタイプ』(lectotype:生物学に於ける「選定基準標本」を指す。原記載でホロタイプが指定されなかった場合、ホロタイプ(holotype:動植物学では「正基準標本」或いは「正模式標本」と言い、原生動物では「正基準」。)が行方不明の場合、又は、ホロタイプに二種類以上の生物が混じっていた場合、新たに選び直されたり、作り直されたりした標本を指す)『に指定した』。『英名"milk shark"はインドにおいて、本種の肉が母乳の出を促進すると信じられていることによるものである。他の英名としてfish shark・grey dog shark・little blue shark・Longmans dogshark・milk dog shark・sharp-nosed (milk) shark・Walbeehm's sharp-nosed shark・white-eye sharkなどがある。1992年のアロザイムを用いた分子系統解析では、解析に含められた4種のヒラガシラ属の中で最も基底的な位置にあった。フランス南部とポルトガルの中新世中期(1600-1200万年前)の層から産出する R. fischeuri も、本種と同一である可能性がある』。『岸近くの砕波帯から深度200mまでで見られ、砂浜沖の濁った水域を好む。河口に入ることもある』。『低い塩分濃度を嫌うとしている資料もあるが、トンレサップ湖』(ここ)『など』、『カンボジアの淡水域から数回記録されている。生息深度は選ばず、表層から海底まで見られる』。南アフリカの『クワズール・ナタール州』(ここ)『では、個体数は夏をピークに周年で変動し、回遊を行っていることが示唆される。分布域の沿岸では最も豊富に見られるサメの一つで、主に群れを作る底生の小さな硬骨魚を捕食する。稀に頭足類・甲殻類・腹足類を食べることもある』。オーストラリア西岸の『シャーク湾』(ここ)『では、トウゴロウイワシ科・マルスズキ』(スズキ目スズキ亜目スズキ属 Lateolabrax Japonicus 。日本と韓国の一部にのみ分布する。)『・キス・ベラが重要な餌であり、海草に隠れているため』、『他のサメに捕食されないアカメモドキ』(スズキ亜目アカメ科アカメモドキ(赤目擬)属アカメモドキ Psammoperca waigiensis 。分布はオーストラリア南岸のみ。)『を捕食する唯一のサメである』。オーストラリア北岸の『カーペンタリア湾では』(ここ)『主にサヨリ科・マルスズキ・ボラを捕食しており、クルマエビ科の主要な捕食者でもある。小型個体は主に甲殻類・頭足類を食べるが、成長に連れて魚が中心になってゆく』。『カマストガリザメ』(メジロザメ属カマストガリザメ Carcharhinus limbatus )『・Carcharhinus tilstoni 』(英名:Australian blacktip shark)『のような大型のサメや、おそらく海獣も本種を捕食する。クワズール・ナタール州では、人間活動によって大型のサメが減少していることで、本種の個体数が増加している。寄生虫として、カイアシ類』(甲殻亜門多甲殻上綱六幼生綱カイアシ亜綱新カイアシ下綱 前脚上目 カラヌス目 Calanoida)『のPseudopandarus australis が知られている。雌雄は互いに分かれて生活していると考えられる証拠がある』。『他のメジロザメ科同様に胎生である。雌は左側の卵巣と、左右の子宮が機能する。子宮内は胚を1個ずつ収める区画に仕切られている。生活史の詳細は地域ごとに異なる。一般的には毎年繁殖するが、2年おき・3年おきに繁殖するものもある。出産・交尾は、西-南アフリカでは春から初夏(4-6月)、インドでは冬に起こる。これとは異なり、オマーンでは春にピークはあるが、出産は』、『年中』、『行われる。オーストラリアでも出産は年中行われ、シャーク湾のHerald Bightでは、新生仔の個体数は4月と6月にピークを迎える。定まった繁殖期を持たない集団がいる理由としては、(実際に観察されたわけではないが)胚発生時の休眠期間などによって繁殖サイクルが延長されたり』、『複雑になったりしている可能性が考えられる。雌が体内に精子を蓄えることはない』。『産仔数は1-8だが、典型的には2-5であり、母体の大きさに連れて増える。オマーン近海では、雌:雄の性比は2:1以上になり、産まれる個体が全て雌であることも珍しくない。セネガルやインド東部からも、これほど極端ではないが同様の性比の偏りが観察されている。この偏りの原因は不明で、ニューファウンドランドヒラガシラのような近縁種では観察されていない。胚は3段階を経て発達する。第一段階は胚が63-65mmになるまで2ヶ月間続き、この期間の胚は卵黄によって成長し、ガス交換を外皮や、おそらく卵黄嚢の表面を通して行う。第二段階は81-104mmになるまで2ヶ月間続き、外鰓が発達して卵黄が吸収され始め、胚は母体が分泌する子宮乳によって成長する。第三段階は6-8ヶ月続き、内容物を失った卵黄嚢は胎盤に転換され、胚は出産まで母体から直接栄養されるようになる』。『出生時は32.5-50.0cm・127-350g。非典型的な記録では、ムンバイで捕獲された雌が、妊娠期間が完了するかなり前に、既にほぼ発達が完了した23.7cmしかない胎児を含んでいた例がある。雌は、暖かく餌の豊富な沿岸の成育場に移動して出産する。成育場としてモーリタニアのバン・ダルガン国立公園・クイーンズランド州のCleveland Bay・シャーク湾のHerald Bightなどが知られている[19][20][21]。Herald Bightでは、浅い潮だまりや、密で高い植生によって捕食者から姿を隠せるような海草藻場で大きな群れを作っている小型個体が見られる。これらの個体は、性成熟に達するとこのような湾内から離れる』。『西アフリカでは雄は84-95cm・雌は89-100cm、アフリカ南部では雄は68-72cm・雌は70-80cm、オマーンでは雄は63-71cm・雌は62-74cmで性成熟する。この不一致は地域差か、高い漁獲圧による人為選択の結果だと考えられる。チェンナイで計測された成長速度は、1年目は10cm・2年目は9cm・3年目は7cm・4年目は6cm・5年目は5cm・それ以降は毎年3-4cmというものだった』。『肉や鰭』(☜)『が食用とされることもあり、乾燥させたり』、『塩漬け・燻製などにされることもある。魚粉として利用されることもある』。『漁業や混獲・スポーツフィッシングなどにより、多くの生息地で生息数が減少している。沿岸部に生息するため、東南アジアではマングローブ林の開発による影響も懸念されている』。『小型で歯も小さいため、人には無害である。個体数が多く、分布域全域で地域漁業や商業漁業において重要種となっている。セネガル・モーリタニア・オマーン・インドでも最も商業的に重要なサメの一つである。ゲーム』・『フィッシュとして扱う遊漁者もいる。1980年代から1990年代前半にかけてのインド、ベラバルの沿岸での資源量調査では、刺し網とトロールによる漁獲量は持続可能なものであると結論された。だがこの調査は、後に個体数調査には不向きと証明された方法論によって行われている。この評価の後にも、地域の漁獲量は大幅に増加している』とあった。
「『かつたひうちは』【一名、『うちは』、又、『こふたゑひねこ』等なり。】」これは、次に独立させてしまっている「うちはざめ」の異名にして、既に出た差別和名の一つである。「水族志」の、ここの右ページの二行目以降。
*
㋓ウチハザメ」[やぶちゃん注:鍵括弧始めがないのはママ。] 一名カツタイウチハ【紀州若山】スブタヱイ【大和本草】子コ[やぶちゃん注:ネコ。]【熊野三老津[やぶちゃん注:「みらうづ」と読む。」和歌山県すさみ町(ちょう)見老津(みろづ)。]】大和本草曰「スブタヱイ」「カイメ」ニ似タリ「カイメ」ヨリヒラク大ナリ目口ヒレ尾「カイメ」ニ同シ按形狀「カイメ」ニ似テ頭「ヱイ」ノ如シ身尾ハ「カイメ」ニ[やぶちゃん注:原本の鈎括弧閉じる位置がおかしいので、補正した。]似テ同腹ノ左右ノ稜ニ鬣ノ如キ短皮アリテ尾上ヨリ首ニ至ル背淡黑色ニ乄淡紅黃ヲ帶ヒ沙アリ頭ノ中心ニ三ツ左右ニ四眼ノ前ニ二ツ大小ノ黃星㸃アリ眼後ニ水噴ノ穴アリ穴細長ニ乄藍黑色背ヨリ尾ニ至テ細ク短キ刺並ブ腹ハ白色口は「カイメ」ノ如シ肉臭シ食乄腹痛スルヿアリ
*
もうお分かりの通りで、これは、サメ・フカではなく、エイである。まあ、「エイひれ」もあるから、問題はなかろう。種は、既に、「大和本草附錄巻之二 魚類 エイノ類 (エイ類)」で考証してあるので、詳しくは、そちらを見られたい。結論だけを言うと、
サカタザメ(エイ区エイ上目サカタザメ目サカタザメ科サカタザメ属サカタザメ Rhinobatos schlegelii )
であり、「カイメ」というのも、
九州・福岡志賀島・長崎でサカタザメの異名
としてあるのである。而して、後に本文に出る「『さかたぶか』【一名、『かいめ』、又、『すきのさき』・『すきゑひ』、漢名、「閩書」の『犁頭鯊《リトウサ》』。】」も同種となる。
「『のこぎりぶか』(漢名は「廣東名勝志」の『鋸鯊《キヨサ》』)」「水族志」は以下である(ここの右ページ後ろから五行目以降)。やっと、本書の「水族志」の引用が終わった。
*
㋐「ノコギリブカ」[やぶちゃん注:鍵括弧閉じるが欠しているのはママ。]鋸鯊本草啓蒙曰蠻來者ハ至テ大ナル者アリ廣東名勝志曰有二鋸魚一南越謂二之狼藉魚一身長二丈口長六尺廣三寸左右生ㇾ齒如ㇾ鋸按形狀「フカ」ニ同乄上嘴長ク出扁薄左右ニ配列セリ一ハ長ク次ハ短シ刺色白ク透明嘴長ク出扁薄左右ニ排刺[やぶちゃん注:「はいし」。並び方や鋭さが特徴的なトゲ。]アリ一ハ長ク次ハ短シ刺色白ク透明嘴背ハ淡褐色ニ乄醬色ノ條アリ嘴ノ半ノウラノ左右ニ嘴下ノ內左右𪜈一行ニ短刺アリ口ハ觜ノ本ヨリ少シ下ノウラニアリ口ノ籩頬ニモ刺アリテ內ヘ曲レリ背灰色ニ乄首ヨリ背ノ左右ニ分レ淡茶色ノ縱條アリ大者此條ナシ腹白色首以下「フカ」ノ左右ノ如シ細沙アリ本草啓蒙ニ其ノ上唇長シト云非也閩書ニモ有二鋸鯊一上唇長三四尺兩旁有ㇾ齒如ㇾ鋸ト云リ「ノコギリブカ」ハ上唇長ク出テ下唇ハ無者也
*
文句無しで、
板鰓亜綱ノコギリザメ目ノコギリザメ科ミナミノコギリザメ Pristiophorus cirratus
である。ノコギリザメ科 Pristiophoridae には全世界に二属十種がいるが、日本産は、この Pristiophorus japonicus 一種のみである。「ぼうずコンニャクの市場魚類図鑑」の同種のページをリンクさせておく。ただ、鱶鰭になるかどうかは、検索して見たが、出てこない。体長一・五メートル前後で、鰭も、あまり大きくないので、商品価値がないように見受けられる。
「ばげ」これ以下は、「鱶鰭」に製造する対象を、東日本で、どう呼称するかというリストなのだが、試みに国立国会図書館デジタルコレクションで「鱶鰭 ばげ」のフレーズで検索して見たが、思うように「ばげ」なるものが見出せなかった。以下、これを蜿蜒と行うことに、私は、有益な結果が出るとは思われなかった。例えば、「尾長(をなが)」・「星鮫(ほしざめ)」・「『白鮫(しろざめ)』【漢名、「寧波府志」の『鮧鯊《イサ》』。】」・「姥鮫(うばざめ)」・「『しゆもくざめ』(漢名『閔書』の『雙馨戴』)」は、既に注したもので、ここまでお附き合いして下さった諸君には、屋上屋となろうからして、注をする必然性を全く見出せないのである。気になったものだけを、チョイスすることとした。悪しからず。
「尾羽毛(をぞけ)」福岡市の「カネ又田中商店」公式サイト内の「【尾羽毛(オバイケ)】」に、『さかなの尾びれにあたる部分で内部は白いゼラチン質が豊富です。通常さらし鯨(塩漬けのスライスをボイルし冷水にさらしたもの)になっておりますので良く冷やし、酢味噌または、からし酢味噌でお召し上がりください。』とあった。見た目は、私の好きな「クジラのさらし」に酷似ている。大型のサメ類からも、類似品が加工出来ないことはないとは思った。
「四ツ目ざめ」サイト「ocean+α」の「ジンベエザメには目が四つ!? 世界最大の魚の生態と魅力を徹底紹介」(山本 真紀さん記載)の「ジンベエザメには目が4つ?」に、『ジンベエザメの眼の後ろには小さな孔が開いています。これは噴水孔という軟骨魚類(エイ・サメ)に特有の器官で、呼吸を助けるためのもの。海底で生活をする種類ではよく発達しており、エイ類などでは眼より大きいくらいです』。『遊泳性のジンベエザメでは痕跡程度ですが、本来の眼が小さいのでちょうど同じくらいのサイズ。ほら、まるで四つ目に見えませんか』? とあった。そういえば、ここまで、サメや軟骨魚類のみならず、総ての魚類の中(哺乳類である鯨類を除く)、最大種である、
軟骨魚綱テンジクザメ(天竺鮫)目Orectolobiformesジンベエザメ(甚兵衛鮫・甚平鮫)科 Rhincodontidaeジンベエザメ科ジンベエザメ属ジンベエザメ Rhincodon typus
らしき記載がなかったのに気づいた。ここは、俄然、この大御所にトリをとって頂くことと致そう。平凡社「世界大百科事典」から引く。なお、そこでは、別の表記の「ジンベイザメ」で記載されてある。『ジンベイザメ』『 Rhincodon typus 』『ネズミザメ目ジンベイザメ科の海産魚』。『ジンベエザメともいう。英名は whale shark といい,その巨体に由来する。全世界の熱帯から温帯にかけての外洋域に分布する。日本近海には初夏に暖流にのってカツオとともに北上してくる。口が吻端(ふんたん)近くにあり,背中から尾にかけて数本の縦縞と白色または黄色の斑紋があるのが特徴。現生の魚類中最大で,全長18mに達し,体重は数十tに及ぶ。性質はおとなしく人間を襲うことはない。卵生のサメで長さ30cm,幅14cm,厚さ9cmの長方形の卵殻に包まれた卵が見つかったことがあり,その中には36cmの幼魚が孵化(ふか)していた。海の表層を泳ぎ,歯は円錐形できわめて小さく,物をかむ機能はないが,代りにふるい状の鰓耙(さいは)が発達して,小魚や動物プランクトンをろ過して食べる。ときには口を垂直にして多量の品を食べることがある。カツオの中には,このサメといっしょに泳ぐ群れ(サメ付き群)がある。このためカツオの群れを見つける目安となるので,間接的には漁業に役だってはいるが食用にはしない。』とあるが、当該ウィキに拠れば(注記記号はカットした)、『フカヒレは最高級のものとされ、天頂翅と呼ばれ珍重される。先進国の中華料理店でフカヒレが好まれていることが、発展途上国の漁師によるサメ全体の乱獲に繋がっている』とあり、『肉が食されることは少ないが、味はあっさりしているという』とあった。
「いらぎ」「和歌山県」公式サイト内の「東牟婁振興局 」の「いらぎ(アオザメ)」に、「いらぎ(アオザメ) 東牟婁地方の食材コレクション」・「マグロに隠れた紀南地域の美味しい名産品」として、『●特徴』に『サメ類はまぐろはえ縄漁の外道として漁獲され、マグロと一緒に勝浦漁港に水揚げされる。サメ類は主に“フカヒレ” としての利用が有名だが、紀南地方ではアオザメの身を干物にして食べており、 土産物としても売られている』とあり、『●食べ方』に『塩干しや味醂干しの形態で販売されており、火で炙って食べる。独特の風味は、酒のお供に最高。』とする。『●旬』は『周年』で、『●産地』は『那智勝浦町』である。既注のネズミザメ目ネズミザメ科アオザメ(青鮫)属アオザメ Isurus oxyrinchus である。
「かせざめ」これは、正しく、ツノザメ上目カスザメ(糟鮫)目カスザメ科カスザメ属カスザメ Squatina japonica である。
「みすざめ」これは、既に出た、オナガザメ属マオナガ(真尾長/オナガザメ) Alopias vulpinus である。
「ふしきり」最後の最後が、幾ら調べても見当たらぬ。しかし……これって……文字列から言って、メジロザメ科ヨシキリザメ属ヨシキリザメ Prionace glauca では御座らぬかのぅ?]
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