河原田盛美著「淸國輸出日本水產圖說」正規表現版・オリジナル電子化注上卷(四)乾鮑の說(その11) 【図版4】
[やぶちゃん注:底本・凡例その他は、第一始動の記事、及び、「(一)鰑の說(その2)」の前注の太字部分を参照されたい。今回はここの右ページ。画像は、底本の国立国会図書館デジタルコレクションの「印刷」で高解像度のものをダウンロードし、例によって、精密に汚損を清拭した。詳しい図版処理の仕儀は「(その8) 【図版1】」の冒頭注を参照されたい。]
【図版4】
■「磐城國《いはきのくに》
菊田郡《きくたのこほり》
関田村(せきたむら)」「産」
「裏面」
「表面」
「側面」
[やぶちゃん注:「磐城國菊田郡関田村」は現在、「勿来関(なこそのせき)跡」で知られる福島県いわき市勿来町(なこそまち)関田(せきた)である。この勿来町では、現在、主にクロアワビ・メガイアワビが漁獲されている。マダカアワビの漁獲量は僅かである。図からも、前の二種の孰れかと思われるが、ネットで、製品化されたメカイアワビを見ると、軟体部が、楕円的なクロアワビに比して、有意に円状に近い(生体の貝殻も丸い)。また、種々の料理を見ると、クロアワビの外套膜周縁部の形が、まさに「裏面」の図のような特有のリボン状になることが判った。以上から、クロアワビに比定する。]
■「陸奥《むつ》産」
[やぶちゃん注:これは、小さなものが上に、その下の別個体にキャプションを附す。そこには、凡そ、前のもののより二回り近く大きい個体が描かれてあるのだが、その表示法とバランスが、如何にも奇異な印象を与える。左右に見える凹みから、上の製品は右が尾部、逆に下のものは、左が尾部であるのも、何となく妙な感じを受ける。ともかくも、この「陸奥産」を狭義の青森県下北半島周辺とするならば、まさに製品化されたエゾアワビの乾したものの形状と完全に一致は、する。]
■「肥前平戸産」
[やぶちゃん注:図は、洋梨型を縦に伸ばした低音スピーカー然としている。この形は丸みを帯びたメガイアワビ(同種は平戸の名産とされている)として十全に納得出来る。]
■「常陸産」
「裏」 「表」
[やぶちゃん注:「常陸産」現在の茨城県相当であり、ここは、エゾアワビの太平洋側の自然棲息の南端に当たる。図の製品が楕円状であるのも、同種と一致する。]
■「薩摩國《さつまのくに》
諸縣郡《もろかたぐん》
夏井村《なつゐむら》産」
「裏」 「表」
[やぶちゃん注:下部の「表」(外套膜の内側部分)は、頭部の凹んだ形から、ハート形に見える。而して、キャプションがないが、「表」図の下部に、側面からの図も添えられてある。
「薩摩國諸縣郡夏井村」ここは、ややこしい。この「諸県郡(もろかたぐん)は、旧日向国(ひゅうがのくに)であり、宮崎県、及び、一部の鹿児島県に跨って存在した郡であり、「夏井村」は、現在の鹿児島県志布志市(しぶしし)志布志町(しぶしちょう)夏井(なつい)に当たる。志布志湾に臨む素敵な場所である(私は一九七〇年、中学二年の時、父母に「万博と鹿児島とどっちに行きたい?」と聴かれ、お祭りが大嫌いな私は、一つ返事で「鹿児島。」と答え、母の郷里の鹿児島県曽於市大隅町岩川に行った際に、母親の親族ら一同で避暑に行った。伯父らとともに、直ぐ前の岩礁で、二時間以上、膨大なウニを採りに採り、その場でみんな食べたのを覚えている。恐らく人生で、一番、ウニを食った特異点であった)。同地ではクロアワビが採れ、ハート形の中に配された図と相まって、間違いない。]
■「磐城國《いはきのくに》産」
[やぶちゃん注:「磐城國」現在の福島県の浜通り、及び、中通りの南部と、宮城県南部に相当する。この地域はエゾアワビが採れる。図は、かなり不格好だが、まず、エゾアワビに比定してよかろう。]
■「越中産」
[やぶちゃん注:側面図が上、下に肉部内部側上方(正直、絵は、かなり汚い)から見た図。「北日本新聞」の二〇〇三年一月十六日の『「アワビ」「高価な貝」漁獲アップを』という記事に拠れば、『富山県内で馭飼するアワビ類はクロアワビ、エゾアワビ、メガイアワビ、トコブシである』とあった。汚いものの、形状から、クロアワビか、エゾアワビの孰れかと思われる。]
■「陸中産」
[やぶちゃん注:産地と形状から、エゾアワビに比定する。]
■「志摩國《しまのくに》産」
[やぶちゃん注:クロアワビであろうと思うが、肉部内側上方を描いているが、屹立した断崖の盆景のように描かれており、これは、肉部の襞を描いたものらしい。この絵を描いた人物は、正直、絵が下手であると言わざるを得ない。悪しからず。]
■「陸奥産」
[やぶちゃん注:一個体を斜めに上方から描いている。一応、エゾアワビに比定するが、明らかにやる気ゼロの絵で、全く以って、アウトの一発退場もの酷いものだ。]
■「北海道産」
[やぶちゃん注:同前の為体(ていたらく)。エゾアワビに比定。]
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